目色が変わった日   作:カナーさん

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現在


❸ 下

 永夜異変が起こってから幾分か経過した頃だった。

 

解決組達にボコボコにされた鈴仙達はその後手当てを受けていたときだった

 

それは唐突だった。

 

 「な…にぃ…コレ…は!?」

 

キリキリとした空気の中掠れた声で鈴仙優曇華院イナバは声を上げることしかできなかった。

 

彼女以外にもこの場にはいたが声を上げたの鈴仙ただ独りだった。

彼女以外は、自分の体を抱き締め、地面にダンゴムシのように蹲り、カタカタと歯を鳴らしていた。

全身の毛が逆立ち、目の焦点が合わず、喉から登りつめてくる嘔吐感。

 

いったいなぜこれほどの殺気を向けられているのか…そしてこれを向けてくるのは誰なのか…?

 

彼女は周りと同じよう自身の体を抱き締め、しかし蹲ることなく、目を見開き、ギョロギョロと忙しなくその目を(うごめ)かせながらだが、そんなことを考えていた。普通ではない空気感。それが彼女にこんな思考させたのかも知れない。

 

答えすぐに出てきた。

 

上から僅かだがうめき声が聞こえた。言葉に変換出来ないほどの声量。

 

彼女は震える顔と目を上に上げた。

竹が(そび)え立っている。真上には偽りの月。

 

 「あ…」

 

彼女はそれ以上声を上げる事が出来ずに倒れた。

理由は彼女にはわからなかった。

 

近く竹にはベッタリと血液が…彼女だけでは決して足りないほどの量が今まさに付着したかのような濃厚さで、撒き散らされていた。

 

中には楽にしてもらえなかったのかドクンドクンと、活きていることを証明する音が奏でられていた。

奏でる毎に位置はズレ、ズレる事で肺などを圧迫することで空気が漏れ出ていたのだ。彼女がうめき声と感じたのはこれだ。

 

その光景はまるで()の串刺し公が見せしめに作り出したような景色。

 

倒れる最中、瞳に写ったのは先程まで(うずくま)っていたであろう同胞。ダンゴムシのような姿勢だった同胞の背ははまるで(さなぎ)の抜け殻のように首から腰にかけてパックリと開いていた。

そこには臓器などなかった。あるのは抜け殻とかした、くり抜かれたスイカやメロンのように残された皮膚のみ。

その平常ならば目を背ける惨状に、不幸にも彼女は同胞としてではなく、風景として風景画でも眺めるような、蚊帳の外のような心境で見つめて…

 

そこで意識が途切れた。

 

 

 

シミを広げていく鈴仙。満杯のバケツを蹴っ飛ばしたように血溜まり拡げていく。

 

その側に、そっと桜の花弁が舞い降りたように降り立つ一つの陰。

 

 名をフランドール・スカーレット

 

 

鈴仙の瞳を見る前から狂っているとされ、紅魔館地下に幽閉されていた筈の彼女。そこには狂気など微塵もなく、瞳には怒りと____

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは霊夢達が八意永琳を撃破し、蓬莱山輝夜に挑もうとしたそのときだった。

 

ゾ、

 

と背中にいきなり冷たい手を入れられたような悪寒が走った。

 

冬の外気に晒されているときに水をぶっ掛けられたような震えが霊夢達を包んだ。…それだけではなかった。

 

ギョロッと背中を射抜く視線を感じた。

バッと反射的に後ろを向いた者もいたがそこには誰も居らず、視線は途切れず射抜き続けている。

 

ピチャっと何かが蓬莱山輝夜の頬に滴り落ちた。頬に伝った涙を拭うように手を伸ばし、拭ったそれを見た。

 

紅かった。そして強烈なクラクラするほどの鉄の香り。

 

血だ。そして血以上のなにか。それの結論に至るのは皆共通だった。

 

指先だけで拭ったはずなのにそこが源であるかのように噴水のように湧き出し、流動体のように輝夜の手を血が手袋のように覆ったそれを見れば一目瞭然だった。

 

そして、その結論に至った瞬間。

高速で物体が落下する風切り音と共に蓬莱山輝夜は肩から腹まで縦一線、まるで割れた水風船のように血が噴き出した。

 

そして噴き出した血によって一瞬封じられた。落下する血のベール。

そして背景がはれた時それは居た。

 

その姿はレミリアスカーレットと十六夜咲夜は見覚えがあった。

 

 「フラ…ン?」

 

声を絞り出したのはレミリアスカーレットだった。その声には戸惑いがあった。

 

 

突如の事で動きを停める霊夢達だった。彼女達からしたら近くにいる吸血蝙蝠の関係者なのはその姿とその反応で明白だった。

だが問題はそこではない。

 

 姿が初めて見る彼女達でも理解できるほど異常だったのだ。

 

 瞳はまるで、白黒が逆転したかのように白が中心を独占し、散らされた紅は黒くなりは白の周りを逃げ場を無くすように囲み、出遅れた一部の白は黒に追い出される様に、瞳から涙のように溢れ出していた。

中心を堂々居座った白は少しばかり光沢のような輝きを放っていた

 

 腕はまるで、元々がそうだったと疑いたくなるほどにビットリと血がこびり付き、しかし今付着したかのように液体の状態を保ち、指先からポットっと雫を落としていた。それは今さっき肉袋に手を突っ込んできたと言っても信じれるほどで、先程の蓬莱山輝夜の手を放置していたらきっとこうなっていただろう。

 

 …。

 

 もっとも異質だったのが腹部だ。まるで服を着たまま切開された様に黒い毒々しい血が服を汚していた。

ドロドロと沸騰しているかのように脈打つ。まるでそこに胎児がいるかの様に…。脈打つ血管が切開したところから溢れ、血液が白紙に墨汁を垂らすように、しかし確実に範囲を

(うえ)へ、(した)へと拡大していく。母胎を喰い荒らしていくように服を肌を臓器を精神を侵食し、蝕んでいく。

 

 そしてその顔は青白く虚ろで、その中でも瞳から輝く怪しい光沢は歪んでおらず、強い意志を感じさせた。

 

 

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