目色が変わった日 作:カナーさん
異変が突然の乱入により空気が場が空間が何より彼女達が混乱した。
中でもレミリアスカーレットの動揺は目に見えて大きかった。それは従者の十六夜咲夜からの
目が飛び出すほどにまぶたを見開いて、地表にさらされた魚のように口をパクパクさせていた。
まあ、当然だろう。この場に地下にいる筈の妹がいることもそうだが、猟奇的で痛々しい姿をしているのだ。
…これが
アレ以降彼女はフランドールとの邂逅を求めていた。愛しているから彼女の初めてのお願いは姉として聞いてあげたかったし、家族として愛しているからこそ離れたくなかった。
故に飢えていた。今まで行きたくとも行けず
届かない場所ではないのだ、紅魔館は城はだった。やろうと思えば会いに行くことはわけなかった。それで平然と狂気地味たオブジェクトになろうとも構わなかった。
彼女は城内部なら大抵の傷は一日以内で治る。アレの時の傷も二日で治った程度。なんなら何度、グチャグチャの豆腐のように、どの部位か見当がつかないほどに崩されても諦める気はなかった。
それ程の心意気があった。だが彼女は堪えていた。
だがその会わないように心掛けていた相手が目の前に現出したことにより、今まで溜め込んでいたものが濁流のように溢れ出した。
…具体的にいうなら現状を見てもらえばわかるだろう。
偽りの月が照らすが紅く染まった竹林。花火のように風船が割れるのような音と雨のように飛び散る血が途絶えることなく辺りに葉、笹が擦れる音と木霊しあっている。
音源はレミリアスカーレット。
彼女は先の状態からいきなり、予兆すら見せずフランドールに直線的な突撃を見事魅せてくれた。
冗談はここまで。実際の所、驚くほど一直線に、磁力に引かれた磁石のように。まるで水を得た魚のように、レミリアスカーレットは周りを無視し飛び出した。
そのままならタックルをかますところだろうがフランドールから約五メートル地点にて、まるでコケたように、重力が倍加したかのように地面に叩き落とされた。
だがそれでも歯を食いしばり即座に動き出すレミリアスカーレットの姿はまるで効果が切れそうになった薬を摂取し直そうとする必死さのようで、人参を釣り竿で前に吊るされて走らされる馬のような滑稽さで、フランドールに近付こうとした。
だが一歩、いや、
そんな一種の均衡状態は八雲紫達が行動を移す前に予測外な事で崩壊する。
それを餅つきでいうなら
これ以上武器を使わせまいとグッと手に力を入れようとするがその前に半身が電車にはねられたように、コアを破壊された使徒の形象崩壊のように、周りに今まで以上の血を撒き散らしながらパンッと破裂し、静寂に包まれた竹林の闇に呑まれて行った。
✝
破裂した体を修復している姿を八雲紫は口を扇子で隠すいつもの姿で事細かに観ていた。
醜悪な姿をしたナニカが現れた時点ではとくに動く理由はなかったがあの
実は八雲紫はレミリアスカーレットに妹がいることは知っていたのだがその実態をまるで掴めていなかった。
自身の能力_境界を操る程度の能力でスキマを繋げようと何度も試みたが結果は惨敗。階段を使い会いに行くこともどういう訳か出来なかった。とはいえ彼女の性格、能力はレミリアスカーレットからある程度聞き及んでいたので、とくに心配はしてなかった。
その能力は危険視するのに充分な代物だったが彼女に干渉さえしなければ矛先はこちらを向かないだろうし、自主的に部屋から
あの異変でも霧雨魔理沙が突撃して行ったのは少しばかり焦ったものだが予測していた通り問題を起こしたくないようで静かにしていた。まあ、外への権利は貰えるならもらっとくか的なノリで、あまり外へ関心がないようだったがそれでも一様保険を施したのだが…。
だからこそ、まさか我々が知った姿が
まるで葬式の時の焼香のようで抹香を香炉にくべている時に感じる、どんよりとねっとりとした視線と圧迫感。
妖怪の賢者である矜持故、認めたくはないが出し抜かれている。ただ観察している限り背後の存在以外はとくに脅威は感じない。背後の存在も感じるだけ、お互いに牽制しあっているように先手を打てばやられる、そう考えたほうがよいだろう。
それに注目すべきもう一体。レミリアスカーレット。やはり間違いない。知らないナニカが
✝
能力により半身を吹き飛ばされたレミリアだが、どういう訳か、その肉体は瞬時に、今まで剣で潰されていた時よりも圧倒的に速いスピードで修復していた。
そしてフランドールの能力のインターバルの間に手を伸ばそうと動かすがそれすらも再び破裂した風船のように原型を留めることなく破壊された。
どういうことだっ!??と内心混乱しながら
その為、能力の発動には手を握る動作が必須だと勘違いしていた。だから驚いたのだが、その驚きは手を握らなくとも破壊できることではなく、妹が自分に嘘を付いていたことによるショックからだった。
だからというのはおかしいが、死ぬかもしれないなんて
そんな特攻を続けていたからか、三十秒もしないうちに半身を吹き飛ばさている間に修復が始まるほどその速度が上がっていた。その迫力からか少し後ずさるフランドール。
がその空間には既に展開されたスキマが蜘蛛の巣のように、その口を拡げフランドールを絡め取ろうとしていた。
フランドールを絡め取ろうとしたその時、ドスッという皮膚を切り裂いて骨に当たった包丁のような鈍く重い音が辺りに響く。
妖精、妖怪など達にとって能力とはその者の本質に基づくことが多い。氷の妖精チルノは冷気を、常闇の妖怪ルーミアは闇を、八雲紫もその例にもれない。境界の妖怪である彼女は境界を操る力がある。
だから、能力はその者の本質そのものと考えることが出来る。
故にこういう考えもすることが出来る。
能力を攻撃すればその者に本質的なレベルのダメージを負わせることができる、と。
八雲紫は自身のこの痛みをそう解釈した。服に傷はない。博麗霊夢から受けるダメージなどとは比べられない痛みが胸を伝う。喉に骨が刺さったような拭えない、取れない痛み。
フランドールが背後に展開されたスキマをバッと振り返って握ったその瞬間、スキマは形を保てなくなり、八雲紫の身体に痛みが走った。
もちろんそんな隙をレミリアが逃す筈がないが、こちらも肩を掴まれると雪の結晶のように全身が千切れて、トランプタワーが崩れるように全身が崩れ去った。
これにはいよいよ魔理沙達も危機を覚え始めた。あの八雲紫が妊婦のように痛みを堪えている。あの八雲紫がだ。それに加えフランドール?のあの禍々しい姿と圧迫する空気。
これまでの異変では命の危険を感じることは何度もあったが、あくまでごっこ遊び。超えた場合でも相手は弾幕での攻撃だった。
それがこんな死を連想される、死闘であることをわかっている厄介事に魔理沙達は茶々を入れる度胸はなかった。
だから、博麗霊夢が普段通りに動いたのは驚きと微かな安心を抱いたのは皆共通だった。
その姿に微かな震えを、幼き日に一度見せた恐怖からの震えを八雲紫だけが感じとっていた。
博麗霊夢は八雲紫に近づいた。痛みのあまり、空中で留まることが出来なくなり、相手の同じ地上で内心もがき苦しんでいる八雲紫の側へ母親が幼子を優しく撫でるように、フワッとゆっくりと降り立った。
そして「どうすればいい?」と真面目な表情で相手をいたわるように聴こうとした。
そう口を開こうとした。
フランドールはすぐ横でありえない速度で修復している姉に目もくれず八雲紫と博麗霊夢をその色の変わってしまった、元の色を涙のように流す瞳で写していた。焦点が博麗霊夢に定まる。ピントが無害だった博麗霊夢に、そのぼやけたピントを合せ、クリアに写した。
その瞬間、博麗霊夢はナニカを持ち前の勘で感じとった。だが体は動かなかった。ナニカを感じとりはしたが、害を成すものではなかった為動く必要がなかった。
だから勘ではなく自分の意思でフランドール?へ視線をやった。
バシャッと倒れたバケツのようにフランドールが咳き込みながら吐血した。
「あ、あっ……アァ!?」
口からの吐血が始まると、腹から流れ出していた流血もダムが崩壊したように、傷を拡げ、今まで垂れ流されていた量を上回りながら、生暖かいヌチャリした感触と少しばかりの粘液が乾いた冬の竹林に溶けていく。偽りの月が照らす地へ。姉が描いた紅い色を毒々しい色で塗りたくっていく。
まるで鉛を飲み込んだかのようなお腹から感じる熱と違和感。飲み込んだ異物を吐き出そうとする拒絶反応。痛さからか微かに涙目になりながら、フランドールは蹲り、痛みを和らげようとする。
「_____!」
今までで一番大量な血が撒き散らされる。あまりの量に、喉を塞がれ音が出せない。
その姿を見て八意永琳はある違和感を感じ、いやある考えに行き着いた。
口からの血は吐き出すままなのに対し、腹から流れる毒々しい血は必死に手で抑えようとしているのだ。
人里では医者の代わりとして診たりする彼女だからこそ辿り着いたある仮説。だがそれはほぼ確信に近いものだった。ならば急がなくてはならない。このままでは彼女が
少なくともアレは自分達のせいで悪化している。それに…。チラッと蓬莱山輝夜を見る。斬られた部分を隠すかのように手で労っている。傷が消えきっていないということは彼女の仕業であるのは明白。それを辞めさせるためにも彼女を止めなくてはいけないなと八意永琳は考え、彼女_フランドールへ近づいて行く。
周りから目線による言葉が飛んでくるがそんなもの知るかとゆっくり近づいて行く。
おそらく、フランドールの能力の対象は自身への害で分別されている。
最初の蓬莱山輝夜はこの異変の中核。次のレミリアは異常な突撃。次の八雲紫は背後のスキマの展開。今の八意永琳は知る由もないのだが、一番最初の鈴仙はフランドールの目が良すぎるあまり、鈴仙の能力に干渉。どれもフランドールに害ある者と認識された者達だ。
ここで走り出そうものなら問答無用で八雲紫と同じ軌跡を辿るだろう。故にゆっくりの歩みを進めているのだが…。
「(観られているわね。それも360度全方位から感じるってことはそういうことかしらね)」
今まで逐一、背後から感じた葬式のときのような重苦しい空気が今では、動物園で目で舐め回す観光客のように、劇で失敗したときに感じる観客と仲間のように、視線が体を覆っている。もし、何かこれ以上の行動をすれば不老不死ですら直せない傷を負うことになる。
魔理沙達も下手な動きを見せると攻撃されるのはわかっているのでなにもしない。
レミリアはいつの間にか剣で地面に標本のように固定されており、もがこうとするとその部分が破壊されていくため、動かないほうが得策だとわかったからか当初の勢いはなくなっていた。
レミリアが動かなくなったため八意永琳のジャリッ、ザリッという地面を踏みしめている音とフランドールの押し殺した吐息が静寂な夜の竹林に小さく響き渡る。
そして手が届くほどまで近づいた八意永琳。フランドールは顔を少し上げ、ギョロッとその眼を八意永琳へしっかりと向け捉えていた。
「こちらに貴方を害する気持ちはないわ、だからその矛先を下ろしてくれないかしら。じゃないと貴方も
バッと顔を上げ、目を見開く。そこには驚きの表情があった。目にしかなかった感情が顔に出てきていた。
フルネームだったりそうでなかったりするのは一様意味があったりします。読みにくいとは思いますがなにとぞ…。
レミリアスカーレットをレミリア・スカーレットに、すれば?とも思いますが、その場合、統合として八雲紫を八雲 紫に分けるのがなんか違和感があったので、全部くっつけることにしました。