目色が変わった日 作:カナーさん
彼は助からない。それはフランドールが一番、よく、わかっていた。
彼は元々弱っていた身体を包帯が生命補助をして無理やり生き永らえさせていたのだ。その均衡が崩壊した現在、どうすることも出来なかった。
魔法で?傷を塞いだ所でどうなる。彼はもう死ぬ寸前の老人と何も変わらない。肉体が活動の、機能の限界なのだ。
吸血…?確かに人間の肉体が無理なら人外にするという案はよい。だが間に合わない。吸血鬼になるのはそんな一瞬なのか?フランドールはそこら辺の吸血鬼としての常識を持ち合わせていなかった。
そしてどちらにも共通することだか彼の肉体が負荷に耐えられない。魔術にしろ吸血にしろ彼の肉体に作用する変化に耐えられない。
だが吸血鬼にする案はかなり希望的観測だがやる価値はある。
それでもフランドールはその道を選ばなかった。
同属では駄目なのだ。お互いに相手の事情を知らないブラブラと宙に浮いた関係が壊れてしまう。それまで壊したくない。
あの夢のようなフワフワとした心地良かった他人行儀から目が覚めてしまうのは嫌だった。それだけは壊したくない。
彼の立ち位置だから良かったのだ。彼に怯える必要がないと何もできるはずがないと強者の慢心を全面にそんな酷く醜い理由から始まったモノだとしても。
深く干渉してこず頭を空っぽにして、
だから壊せなかった。出来る筈がなかった。顔も素性も知らない人だけど人間を
「そんなこと…できるはずがないでしょう!?」
フランドールは泣き崩れた。
初めてだった、この激情の渦は。悔しさだったり怒りだったり悲しみだったり、次々と感情の濁流が溢れ出して心を乱すのは一度も経験にないことだった。
✝
ここは竹林。先程までの惨劇の舞台。だが其処にはあまりにも場違いな物が鎮座していた。
それは
その部屋はフランドールを中心として顕現し、病院のように白く、そして牢獄のような不気味さを両立して濃厚な死を辺りに流し込んでいた。
フランドールはこれを展開すると「付いてきて」と言葉を残して奥にある扉に引っ込んでしまった。
今は現状動けるのが博麗霊夢、霧雨魔理沙、アリスマーガトロイド、十六夜咲夜等々、動きを見せなかった者達だ。例外として八意永琳が無事だが、それ以外は動こうにも動けなかった。
八雲紫、魂魄妖夢、西行寺幽々子は八意永琳の言葉に気を取られたフランドールを抑えようとしたのだろう。背後にあった気配が霧散したのも、このタイミングだった理由だろう。
だが消えたと思った気配は刹那の間に現れ、何もない筈の宙で
魂魄妖夢は自身の腕へ視線を向ける。そこには力が入らなくなった手首がダランっと、植物のように、死体のように力が入らずまるで関節がなくなったように垂れ下がっていた。
手首だけではない指の関節や脚といった駆動の大部分をズタズタに破壊されていた。
故に動ける者は限られていたし、付いて行ける精神状態と立場も限られていた。
だから、ジャリっと八意永琳の側に降り立ったのは、主の代理として来た十六夜咲夜だけだった。
八意永琳が代表としてドアノブに手をかける…。
ハッと気付くといつの間にか二人は扉を潜った先にいた。そこは表から見た白さはなかった。目に付くのは床や天井や壁にへばり付いた、ピンク色の物体。
「っ!」
薄暗い中、その物体をよく見るとわかった。子供が散らかしたように辺りにばら撒かれている物体は惨殺死体のような肉片。だが新に驚いたのはそこではなかった。その肉片だと思ったのが脈打ち、蠢いた。そして気付く。一面が薄暗いのは暗いからではなかった。
二人とも見覚えがあった。壁や天井の色合いは記憶にある筋肉や内蔵の色とマッチした。ここは体内だとそう確信した。
とはいえ二人ともその事実にはそれほど驚かなかった。せいぜいいきなりの事でびっくりした程度で冷や汗をかくような精神的負荷はなかった。
フランドールは先に奥に進んだのか姿は見れなかった。通路は一本のみでその先は靄がかかったように見れない。
二人は靄のかかった場所へ歩みを進めた。
それは程なくして体感でいえば五分もないような場所にフランドールはいた。辺りを漂っていた靄は唐突に晴れ、その姿を現した。
そこは彼女達は知らない、フランドールが見つけた、彼がいた場所。だがそこは変わり果てていた。
一言で言うならば融合。彼がいた部屋はまるで肉の壁に侵食されたかのように部屋を支配していた。肉を見ればドクンと脈打ち、それが生きていることを訴えてくる。そして脈打つほど拡大し、支配を拡げていた。
「…っ」
流石にこればかりは思うところがあったのか顔を歪めるがそれでもゆっくりフランドールに近づく。
フランドールは八意永琳達に見向きもせず、ポツンっとカカシのように立ちその足元にある黒い何かがを見続けていた。
近づいた八意永琳達は黒いモノが何なのかようやくわかった。
人だった。身長は十六夜咲夜ぐらいだろうか。黒い包帯を体全体にめちゃくちゃに巻き付けていた。そして一番目に付いたのは胸に通貨のように大きな穴がポッカリと空いていた。
空いた穴から肺が、心臓が微かだが、動いていたのが見えた。空いた部分は削り取られたのか形が不格好だったがそれでもなお動いて、その微かの動きで抉り取られた臓器から血液が流れ、フランドールの靴まで汚していた。
「本当に…彼を助けれる?」
それは先程まで見ていたフランドールからは想像もつかないほど弱々しく儚い声だった。
「…そのために来たのよ」
とはいえこれには八意永琳も予想外だった。寄生虫でもいて、それに操られている等々は考えていたが、まさか妊婦のように腹の中に人を…とは流石に考え付いていなかった。
「その前に状況を説明してくれるかしら。事によっては手の施し方も変わるから」
優しく問いかける。先程までとはまるで別人のような雰囲気故の態度だった。
フランドールから語られたのは聞いた本人ですら発想し得なかったことだった。
フランドールは干渉できない彼ごと部屋自体を物体として、自身の胎内に捩じ込んだ。抵抗する腹の肉を押し切りブチブチという肉が切れる音がフランドールの耳に届くが手を止めない。再生し反発する肉をグチュッとお構いなしに押し込んだ。
それでも抵抗し、押し出そうとする肉をグチュグチュとした感触が部屋に押され圧迫感が腹を満たしても手を止めず、全部を押し込めるまで捩じ込み続けた。中に入れることで外界と隔絶した。そうすれば時間の問題はなんとかなる。何故かそんな風に思った。
「そういうことね…」
八意永琳はだいたいの事情を聞いた。今見えている肉の壁は恐らく再生した彼女の肉体だろう。なら彼女は?目の前にいる彼女は…
「フォーオブアカインドってね。魂を模倣する技なのだけど、これの応用で魂だけ独立させたのよ。まあ独立とは名ばかりで、位置をずらしただけなんだけどね」
蓬莱の薬を魂の開放だとするならフランドールは魂の固定だろう。
「なるほど、ならなんとかなるわね。他に何か言ってないこととかはないわね?」
「うん。ないよ」
「あなたにも手伝ってもらうわよ」
「料理と解体はあるけどその手に関することはやったことないわよ?」
「構わないわ」
✝
かなり強引な手であったが傷はある程度塞ぐことは出来た。
彼も目を覚ましたし、めでたしめでたし…とはならなかった。
「それで?あんた達を返す手段はあるけどわたしは?」
彼は目を覚まし、見知らぬ人に驚いたものだが状況を聞いてそう問い返した。彼はフランドールに言いたいことがいくつかあったがフランドールの様子を見ると後回しにした。
そうフランドールは吸血鬼なのもあり、ほぼこの部屋は融合というよりは癒着して一体化していた。
そして彼がいうにはこの部屋出ると生きていけないということだった。
「言ったろ?ここはわたしを閉じ込める檻であると同時に俺を活かす場所でもあるんだ」
状況は絶望的だった。彼は黒い包帯が万全であるなら問題はないようだったがそれはフランドールによって一部を破壊されている。
そして不味いことにフランドールの肉体がこの部屋の融合、癒着しようしていた。このまま彼を残していくと間違いなくフランドールに取り込まれる。それは明白だった。
十六夜咲夜や蓬莱山輝夜の時間操作を試そうとするが彼は「それは無理だな」と遮る。
「この部屋で靄が見えた時点で選別されてるんだよ」
選別された時点で駄目なのだ。選別を跳ね除けるほどの干渉力でないと変質させることすらできないのだ。少なくともフランドールですら破壊できてなかったのだ。フランドールの能力ですら干渉できていなかった代物を広域よりな十六夜咲夜の能力では効果は望めなかった。
「でもなら何故、妹様はあなたに干渉できたのですか?」
「あぁそれね、多分能力以外の力でも働いたんじゃないか?」
「なんて適当な…」
十六夜咲夜に適当な返しをしたが、彼自身も知らないことのほうが多いので無理もなかった。
「で、お医者さん。これは後どのくらいでわたしを喰らうんですか?」
「…保って一日ね。後はそこの娘の頑張りかしら」
ビクンっとまさか話を振られるとは思っていなかったのか飛び跳ねさせてアワアワと焦るフランドール。
「何から何までありがとうございました、お医者さん」
✝
彼とフランドール以外が帰った所で八雲紫達はさっさと異変を終わらせ(蓬莱山輝夜の傷は治っていた)もう一つの問題…フランドールについて頭を抱えることになったがそれは八雲紫達賢者組と紅魔館組だけで、ほかはいつも道理の日常に帰っていった。八雲紫には八意永琳が事情を話して協力を取り付けた。それとうさぎ達は無事回収し、治療中だ。
「…さてさてわたしからしたら何が何なのかようわからん状態だし、記憶も朧げと来た」
フランドールは座りもせず黙って目も合わさず、けれども彼の言葉に耳を傾けていた。
「…未来は絶望的だが、今現在はわたしは結構嬉しかったりするんだよ。なんせ君をちゃんと見れたんだからね。モザイクみたいにブロック状でしか捉えられなかった当初から相当の進歩さ。常人と同じものを同じ様に見れたんだからな」
フランドールが破壊した影響で彼は目が見えるようになっていた。思考もそれに伴って安定していた。
「……………………」
少しばかり表情はよくなったが以前顔を彼に向けようとしない。
「…気にするな、とはいわん。世迷言として聞き流すのもいいだろう。あの二人が居ては話せなかったことだ。…君にだけ送る遺言なんだよ」
「っ!」
ギリっと歯と唇を力一杯に噛む。手を握りしめ、爪が食い込み、ビリっと手の平に電流が走る。
痛みによる自制。それはほとんど効果を表してなかった。
「…まずはその不可解な状態について話すか。お医者さんやメイドさんから色々聞いたんだが、姿が変質したんだろ?それについて心当たりがあってね」
フランドールはカカシのように其処には佇むだけで行動は起こさなかった。理由は様々だが彼の時間を奪いたくないというのが大きかった。だから私なんかの為に時間を使わないで欲しかった。だが遺言と言われてしまえばフランドールにそれを辞めさせる権利はなかった。
「ずっと考えていてね、メイドさん曰くかなり変わってるようだったからね。結論から言うとな、わたしのイメージに引っ張られているようなんだ」
これには思考停止していた脳でも疑問に埋め尽くされた。とはいえ疑問に思うだけでそれ以上頭が回らなかった。
「君を初めて見た時ね、後ろの羽根をヘンゼルとグレーテルの童話にあった道しるべの石を連想してね。煌めく
それに魔法を使えてるってことであの家の魔女だなっと思ったし、さらに言えばここも釜とも言えなくはない。ほら童話の中じゃあ魔女が最後に見た風景だろ?そういう繋がりでどんどんヘンゼルとグレーテルのイメージが強くなって。
そして今回の事件だ。だから、この拘束具を突破できたのは多分、わたしが原因なんだろうな。明日死ぬのもわたしが悪いんだろうな」
「それは違う!!」
「悪いのはあいつ等だよ、異変さえ、月さえ可笑しくならなかったらこんなことにならなかったんだ!何も悪くないよ…ないんだ…」
何も考えなれなかった頭だがそれだけは反射的に動いた。そして涙を目に貯め徐々に小さくなっていく声。
「…配役は恐らくわたしが魔女、君がグレーテルとヘンゼルの両立、君の家族はそのまんま家族かな。つまりわたしは自分のイメージで死ぬんだよ、自分で決めたものでね」
「だから違う「違わないだろ!!」っ!?」
「現にわたしは死ぬじゃあないか!明日だぞ!納得してた前とは違んだよ!半ば死んでいた、死に損なっていた時じゃあないんだよ。あぁようやくか、なんて思えていた頃じゃないんだ。活きたいと思っちまってるんだ」
フランドールを遮り声を荒げる彼。
「〜〜っ。あぁもういいや。次にわたしの遺体だが燃やし尽くすか埋めてくれ。遺品なんてないから死骸を処理するだけでいいから。何だったらここに放置でも構わない」
後なにかあったか…?と完全に死ぬ気の彼にフランドールは言いようのない感情を抱いた。
それは前にあった彼にキレた時に似ていた。
彼が諦めているという点でも似ている。湧き上がる激情。それを一生懸命抑える。今まで感情を抑えるという事をしてこなかったせいでフランドールはそこらが苦手だった。指が、腕が痙攣する。それを必死に抑えつけようと握りしめる。
はっきり言ってしまえばフランドールは感情を抑えることが出来なかった。
だからこんな行動を取ってしまうのもコントロールが出来ていないからだった。
ガシっと吸血鬼の握力で彼の首を片手で掴んで持ち上げた。
前回では機能を十全に発揮して吸血鬼の力すら跳ね除けた拘束具も今の状態ではせいぜいすぐ壊れないようにするので精一杯だった。
彼の顔の稼動域は拡がったが手足などは以前固定されていた。故にもがく事すら出来ず、声すら出せず呼吸すらままならない。
フランドールの手に、彼の首から伝わるドクっという脈が少しずつ強くなっていくのを感じる。
生命の鼓動ともとれるものを手に感じながらフランドールは彼を壁に勢いよく叩きつけた。
もちろん壁の強度はフランドールの力に耐え切れる筈もなく、ビスケットのように容易く粉砕された。
そして抑えつけていた壁がなくなったことにより崩壊したダムの水のように肉が雪崩込んできた。
彼は咀嚼されるように肉に飲み込まれたがそれでもフランドールは首を離そうとはしなかった。
飲み込まれ数秒、フランドールは引きずり込まれそうな彼を無理矢理引っ張り出し、そのまま投げ捨てられた。
「______!」
怒涛の数秒で呼吸が上手くできてなかった。
そんな彼が変化に気付いたのは呼吸が安定したときだった。
なにか違和感があると思い自身の体を見ると、なかった。命綱がなかった。生命線がなかった。拘束具がなかった。あるのは生前から着ていた服のみ。
バッとこれはどういうことなのかっと聞こうと顔を上げた時。
ジューっというまるで焼肉をした時のような音が先程引きずり込まれた場所から聞こえ始めた。
フランドールにはない経験だが、それは吸血鬼が太陽光を浴びた時に酷似していた。
彼にはそれがわかった。拘束具を呑み込んだことからなる作用だと。
「何してるんだ!?」
正気ではない。一連の行動から、そう結論付けるのも無理なかった。
フランドールはゆっくりと幽鬼のように振り返った。
「…あなたの住む場所がないんでしょ…?…私が壊したから…。だから作ることにしたの。ここに。わたしの
「出来るはずよ。だって部屋を押し込めたんですもの…。今までかい明できてなかったソレも体の中で分かいして理かいできれば。こうちくできるはず…」
彼は初めて、フランドールに恐怖を、妖怪としての狂気を垣間見た。
倒れた動く人形のように動きたいように動けない。寒気に襲われたように震え、鳥肌が立ち、ガチガチと奥歯を何度もぶつけた。自身の呼吸が異様に目に付く。
そして人であった彼は感じなかった身近の狂気に堪えきれずガタッと気絶した。
✝
彼が目を覚ました時、私は床に倒れた彼を四つん這いで覗き込むような形で見ていた。
単純に驚かせようなんて軽い気持ちでそんな姿勢をとっていたのだけど、彼は「あぁ死ぬのか」ってそのまま目を閉じて、手を合わせて、まるで棺桶に仕舞われた遺体な姿勢を見せてくるものだから「え…」って思わず呟いてしまった。
まあ、その後色々な気持ちを含めてデコピンをお見舞いして、彼が手で頭を押さえて悶ていたのは何故だか、爽快というか、やりきったというか、嬉しい気持ちだった。
私が望んだ最高では無いけれど、最善の結果にはなったんじゃないだろうか。
彼もここが私の胎内だって改めて、考えたようで少しの間難しい顔をしていたけれど、今じゃ「縛られてあるのは前と変わらんし、寧ろ手足が自由になっただけ良し」っと少し強がっていたけれど、割り切りはなんとかなったみたいだった。
冷静に考えて見れば胎内に人を飼うなんてイカれてるなんて思うのも無理ない。私だってそう思う。
自分の中に誰かいるなんて恐怖ものだ。
私だって少し怖い部分がある。
だからこう考えてる。
私の幼い頃、人間でいうサンタさんをまだ信じている頃、私は望んでいるものがあった。
私だけの秘密の部屋、秘密の友達。一種のおとぎ話の特別なもの。何故そんなものを欲したかわからないがまあ、幼い頃の思考なんだから特別なナニカが欲しかったのかもしれない。
とにかく、私は満足している。彼を飼い殺しにしたともいえる状況だけども、満足だ。
友達と今を過ごせるなら。
「ヘンゼルとグレーテルか…」
彼は私が持ってきた童話を自分の手で読んでいた。
「最近思ったのだけど、あなた童話とか結構好きよね?」
「ん?あぁそうだね。幼い頃読んだってのが大きいのかな、年齢を重ねてから読むとまた印象が変わって面白いんだよ。っと童話で思い出した。わたしが前、ヘンゼルとグレーテルの童話を君に重ねた事があっただろう?」
「えぇ覚えているわ。私本体が羽根だった頃でしょう?」
あははっと微妙な表情で頭を軽く掻く。
「…ほら部屋を腹に入れ込めばなんとかなるって何故か思ったんだろ?あれについて考察をね」
「…聞かせてくれる?」
相変わらず私は、推測とか考察は好きだった。答えに辿り着いた時の快感といえばいいのかやりきったという爽快感?が心地良かった。
「配役で考えた時に閉じ込めらたのってヘンゼルだろう。腹に入れ込むのも閉じ込めるっていえるだろ?で、ヘンゼルは食べられるまで肥えさせられていた。つまりヘンゼル食べられるまでは死ぬ事が出来ない。…結論から言えばこの状況も結局わたしが作ったものだったって事だよ。ヘンゼルの役割を持っていたならグレーテルが救うのも道理だしね」
「なるほど…その理論で言うと、あの黒い拘束具が魔女の役割ってことね。…わからないけど、あなたの性格的に皮肉入っているわね」
「わたしらしいだろ?」
「えぇ、とってもね」
恐らくその推測は的を射ている。ただグレーテルに告げ口した神がいないけど…まあ、彼にとって所詮ただの空想なのだから穴があってもいいのだろう。
ただ本を読んで夢想する…。そんな程度でいいのだ。
夢想せず、その先を思わず見てしまおうとする私を引き留めてくれるのはやはり彼しかいないのだし。
「ねぇ、ヘンゼル?」
こんな悪ふざけにノッてくれるのも彼だけだ。
「…なにかなグレーテル」
「背中貸して?」
「?いいけど__」
彼の後ろに座ってそのまま彼の背中に体重を預ける。
彼が寝ている間に試した楽な姿勢だ。実はもうひとつの方がいいんだけど…
「君のお姉ちゃんにやってもらえよ………悲しむぞ」
「えーだって試したけどサイズが小さいんだもん。それに私に背後を取られて平気な顔できる奴がいないし」
「レミリアさん…大きく強く生きろよ」
「はいはい。じゃあ動かないでね」
✞
ガクッと支えが失ったように私は少し後ろに体が逸れる。
最近知ったのだけど、彼は毛布とか、熱がある程度籠もると寝てしまうようだった。たぶんだけどあの拘束具がずっと微睡みの狭間だったのでそれが影響してる。
さてっと私は移動する。胡座のまま寝ている彼にお邪魔としてっと。
…やっぱりこれが一番だなぁ。なんというか包まれてる感?雛鳥の巣みたいで。
…彼を包み込んでいる私の一番安心する場所が彼の中とは…う〜ん。皮肉?
そういえば彼が言っていたが、私は一生懸命だったりナニカ目的を探していたりする時、まるで目色が変わったみたいっだと。
あなたに会ってから目色は変わりぱなしだけどね。と寝てる彼に告げ、私も微睡みに流された。
これにて一様完結です。
もう一つの作品にも手を付けないといけないので明言は出来ませんが、残った伏線とか回収したいですね。主にレミリアについて。