We ZARD   作:ハレル家

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 ……メカエリチャン……メカエリチャン……

 あ、本編スタートです。次で後半かな?


第三話 Who that guy=正体不明

 

 盗賊団がアジトとして利用された洞窟内はじとり、と地味に湿っていたが道は広くて明るかった。

 洞窟の通路には松明が連なるように燃え、暗い洞窟内を明るく照らしていた。

 だが、全員――マリアナ達四人とナナシの空気は張り詰めるほどに緊迫していた。いつ自分達が松明の灯りに誘われ、燃えてしまった蛾のようになるかわからないからだ。

 そんな彼ら五人はいま――

 

「……」

「……」

 

 ――ナナシに対して説教していた。

 

 洞窟の入口辺りに侵入者対策の仕掛けがないことを確認したメイナードとジャックは勝手に来たナナシに対して注意という名ばかりの説教を行った。

  まるで阿修羅のように怒りの眼差しを向けるジャックにナナシは全身から冷や汗を流しながら固まる様子はまさに『蛇に睨まれた蛙』だった。助けを求めようとマリアナとオリバーに視線を向けるもオリバーは首をかっ切るジェスチャーで答え、マリアナは苦笑いを返した。

 思わず涙目になるナナシだが、彼は怒られて当然の行為をしている。

 ギルドの依頼中に許可なく介入する事はギルドリア王国クエスト条令に抵触する恐れがあったのだ……もちろん依頼が他の人達とかぶってしまった時や地元民等の人物と協力する事は条令に触れないが、彼は記憶喪失とはいえ決定的な身分が証明されていない。

 下手な行動を起こし、依頼を受注した人達の妨害をすれば公の場で罰せられる。

 その事を知っていたメイナードは悪意がないナナシが罰せられるのは後味悪いと思い、待ってるよう伝えたが彼は来てしまった。思わずため息をはいた彼に責められる謂れはない。

 

「こうなってしまった以上、勝手な行動は控えるように……妨害行為とみなして訴えるからね」

「ハ、ハイッ!!」

 

 ジャックの冷たい視線に負けて敬礼しながら返事をするナナシ。

 そんなナナシを一瞥したジャックは『まったく、只でさえあの案件も解決していないのに面倒事ばかり……』と呟きながら前に進み始める。

 

「な、なぁ、アイツ少し怒ってるけど、あの案件ってなんだ?」

「あの案件……『正体不明(フーダット・ガイ)』の事か」

 

 邪魔した罪悪感はあれど、誰よりもキレてたジャックにビビりながら不思議に思ったナナシはメイナードに質問すると、メイナードはジャックが最近関わった事件でよく耳にする関係者を口にした。

 

正体不明(フーダット・ガイ)?」

「最近、話題になってる人物よ。ニュースは……というより知らないよね」

 

 マリアナが代わりに答えるも記憶喪失のナナシには全くわからない話題なので首を縦に振る。

 

正体不明(フーダット・ガイ)ってのは、数ヶ月前に現れた人物の事で出身地はおろか名前がわからない人物なの」

「なんだその胡散臭い人物」

「お前も人の事言えないだろ。ブーメランしてるぞ」

 

 その人物に表情を胡散臭そうな人を見るような目で言うナナシをオリバーは指摘する。

 

「その人は凶暴化した生物の駆除や暴走したゴーレムの破壊、居座っていた盗賊団の討伐を無償で行ったの」

「なんだ。いいヤツじゃん」

「ドコがだ!!」

 

 ナナシが思ってたより悪い人じゃないと判断して呟いた瞬間、ジャックがナナシの言葉に飛び付いて否定する。

 

「放置より行動してくれた事には礼を言わざる得ないけど問題はその後! 狩りすぎてその生物は保護対象に指定され、ゴーレムとの戦闘の余波で建物が倒壊して歴史的建造物が半壊、盗賊団の被害より周囲の自然を破壊した被害が大きいし、挙げ句の果てに禁止区域とされる“聖域”を行ったり来たり反復横跳びしてた話があるんだよ! 一発ぶん殴らなきゃ腹の虫が治まらない!!」

 

 まるで鬱憤(うっぷん)のダムが決壊したかのように愚痴が町を沈める洪水のごとく流れ、溢れだす勢いに圧されるナナシ。

 

「……ぜぇ……ぜぇ……」

「……そ、そうなんか……」

「……あぁ、うん」

 

 心の捌け口として暴露したのか冷静になり、目を点にしたナナシの言葉に空返事して再び歩き始める。

 

「と、ところでさ、身分証明書の特徴って何かないか?」

「あ、あぁ、そういや言ってなかったな」

 

 少し気まずい空気に耐えられず、ナナシは身分証明書がなんなのか質問する。メイナードも場の空気を変えられると思って答えた。

 

「緑色の小さな長方形の板でレベルが記載されているはずだ」

「……レベル?」

「その人が経験した場数や体験を示す数字の事だ」

 

 聞いたことない言葉に疑問符を浮かべるナナシにメイナードは詳しく説明を始める。

 

「それって高ければ高いほど強いのか?」

「多ければ多いほど強いわけではないです。その人の人生はどれ程の苦難を乗り越えたかを示す数値で、そのレベルからどんな人生を歩んできたかを詳しく調べる事ができるシステムなの」

「なのに毎年、学園内で『レベル高いから俺ってばサイキョーだな!』という勘違いを起こすバカが毎年多いんだよ」

 

 ナナシの質問にマリアナが答える。オリバーは入学初日に絡んできた件の人物を思い出しながら、めんどくさいモノを見たような表情になる。

 

「レベル……あっ! もしかして!」

 

 ふと、何かを思い出したのか急いで懐に手を突っ込むナナシ。途中、入れ歯や小銭、何かの宝石のような結晶が出てくるが濃い緑色の小さな長方形の平べったいカードを取り出した。

 

「この変な緑色の事か!」

「そう、それそれ。それが身分証明書だよ」

「確認してもいいか?」

 

 濃い緑色のカード――身分証明書を見つけたナナシが嬉しそうに言う。オリバーの言葉に身分証明書を渡そうとするナナシ。

 

「うわっ!?」

 

 瞬間、オリバーとナナシの間を黒い何かが遮った。驚きのあまり尻餅をついたナナシを横目に他の四人は武器を構え、遮った何かに視線を向ける。

 

「……犬?」

「なんでこんな場所に」

 

 その正体は黒い犬だった。クリッとしたつぶらで大きな目とモフモフの黒い毛並みの子犬に首を傾げるメイナードとオリバー。

 しかし、ナナシは自分の手元を確認して固まり、震え始める。

 

「……奪われた……」

 

 手元にあった身分証明書は黒い子犬の口に『落とさない』と言わんばかりにしっかりとくわえられ、子犬は走って洞窟の外へ駆け出した。

 

「待ってぇぇ! オレの大切な過去の手懸りぃぃぃ!!」

「あ、おい!!」

 

 奪われてなるものかと子犬を追跡するナナシにオリバーが声をかけるも無視し、ナナシはそのまま子犬と共に外へと駆けていった。

 

「……いっちゃった」

「放っておけ。勝手に村に戻ってくると思うし」

「それより、前を見た方がいい」

 

 呆然とするジャックにオリバーが気にしないように言う。するとメイナードが二人に前を見るように指示をする。

 目の前には土で出来た二周りも大きな人型の生物が四人を威嚇していた。

 

「ゴーレムか。警備巡回していた所で気付かれたのかな?」

「何にせよ。戦わなきゃいけねぇのは確かだろ」

「もうすぐ半分だったけど、対策は当たり前のようね」

「三人とも。直ちにゴーレムを倒した瞬間、一気に奥へと走るぞ!!」

「了解!!」

 

 ナイフを構えるジャック、腰に携えてた刀を抜くオリバー、三日月を飾り付けた白い長杖を構えるマリアナ、メイナードが三人に指示を出した瞬間にゴーレムが走り、戦闘が始まった。

 

 

 □■□■

■ ???

 

「様子はどうじゃ?」

「大丈夫。一人、こっちに来てる」

 

 それと同時に、四人の戦闘の裏で何かが動いた。





 次回は二日か三日後に投稿しまーす。

 NEXTヒント……FGO!!

『ヒントにならねぇよ!!』
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