包囲した艦艇らは同士討ちが起こらないように、また敵艦隊との相対速度が0になるように調整していた。だが、機械にも絶対はない。そのため、情勢を見極めるものが必要だった。本来なら偵察機を上手く使うところだが、偵察機は本国にある最新鋭偵察機G-2タラニスを除いて艦載しなければ大気圏を突破できない。その上、今回は偵察機が用意できなかったので、現時点では航空機によるそれは不可能であった。そのため、艦艇に頼る必要があった。
「敵砲弾の直撃見られず。デブリによる被害なし。敵艦隊の速度未だ変わらず」
重力制御装置が破壊され高速航行できず、包囲に参加出来ない巡洋戦艦ビスケー・ベイは遠くに離れて装置の修理をしていた。偵察用にしても支障がないためこの艦に白羽の矢が立った。修理は完了したが先ほどの理由から全体の様子を見る艦が欲しいという要請により艦隊を細部まで見て頼まれたことを報告している。
「了解、今後も特に敵艦隊の速度に気を付けて報告するように」
艦隊の微調整の必要がないと分かるとすぐに砲撃を再開した。無数の砲弾は、太陽の光を反射したダイヤモンドのペンダントを見つけたダツのように一直線に向かってくる。敵弾は多くが命中し、被弾した艦という艦は表面を月面のようにして、大きく傾いていく。
「張提督、ここは敵の包囲を突破する必要があります。特に下部からくる砲撃による艦底の損傷は大きくかなり危険です」
「分かっている。だから、必勝の命令をお前たちに与えるぞ!」
張は鼻息交じりに言い放った。部下たちは映画のクライマックスシーンを見る観客のように彼にグッと顔を寄せた。大体こういう時に言うことは一緒なのだが、彼らは単に忘れているだけなのか分からないがいつも興味津々な様子である。
「もっとスピードを上げろ! エネルギーを目標惑星を制圧できる程度に残るくらいまで使え! そして真正面に突進だ!」
部下たちは手を叩いて見事だと唸った。低俗な小説での主人公崇拝と全く同じような感じだ。正直言って、他の提督や士官が見たら、こいつらバカなのかと思うところだが、残念ながらそんな考えのできる頭を持った人間はここにはいないのである。昇進した時のように喜び勇んで加速度の調整をして馬鹿正直に突撃していった。
「ん? どういうつもりだ! あいつらは・・・全艦速度を合わせろ!」
敵艦隊の異常なまでの猪突猛進に驚きつつも、臨機応変かつ柔軟な、ある意味行き当たりばったりな采配により相対速度はすぐに縮まり、猪たちは捕獲網を抜けられないのではないかと思われた。
その時、速度、方向の調整をミスした工作艦一隻が包囲している艦にぶつかり、双方とも木っ端微塵になった。デブリが撒き散らされ艦隊は乱れ包囲も砲撃も滞った。繊細な行動を必要とする近距離での包囲だからである。
「こ、こ、こんなバカなことがあってたまるか!」
物語のような展開にバルサ大将の身体は氷のように冷たくなった。他のものも同様である。ひたすら突撃などという戦術もクソもない素人兵法に緻密な準備と現場での見事な対応による賜物があっさり潰されたのだから。
だが、まだ大将は諦めたわけではなかった。
今回は時間がなかったので短いです。すみません。
ここでちょこっと兵器の説明
・G-2タラニス
バース連邦で唯一単騎で大気圏を突破できる偵察機。乗員は4人、武装は空対空ミサイル四発と13ミリ機銃二挺と7ミリレーザー砲。
・巡洋戦艦ビスケーベイ
旧式原子力巡洋戦艦。装甲は複合装甲255ミリ。兵装は20.3センチ連装レールガン四基、130ミリ単装速射砲二基、20ミリ機関砲八基、20ミリ単装レーザー砲12基、艦対空ミサイル50発、対艦ミサイル30発、対潜ミサイル16発、10連装対潜迫撃砲二基。艦載機は偵察機3機。
全長は800m以上。