「ま、まずデブリを除去せよ。その後、敵艦隊に速度を合わせ渦陣を組め。味方に被弾しないように配置せよ」
各艦は戸惑いつつも工作艦でデブリを片付け竜巻のような陣を組み始めた。しかし、この一瞬の隙間を彼らが見逃さないわけがなかった。猛スピードで隙間に突進したのだ。艦ごとのコンピュータは慌てて速度を合わせようとしたが相対速度が大きすぎたためすでに目標は遥か彼方に去って行っていた。しかも、
「抜ける前にお礼をしておけ!」
と張が命令したので逃げる艦から砲撃を喰らい、巡洋艦など数隻が撃沈破され、まさかの大損害を出してしまった。
「クソっ! 全艦後退だ!」
竜巻が崩れ、単調な方陣になり惑星キャベラの方まで引いた。後ろに引いたのも張艦隊が方向の設定を間違えて前方へと飛び去ってしまったからだ。追撃してもいいのかも知れないが、飽くまでも敵を迎撃せんが為に派遣された艦隊であり、国境付近に近づけば、敵の警備艦隊や制圧された惑星の惑星防衛艦隊が瞬時に駆けつける可能性も大きく、危険であるとされていた。安全策を取ったのだがこの様子を皆は絶望にも近い感情で見ていた。警備艦隊が付いて来る可能性は位置的にないだろうし、惑星守備隊も任務的にこちらが迎撃する側であるので出て来ることはないだろう。だが、惑星守備隊の存在があるということは先程の前方には実質敵の占領下にある惑星が存在しているということである。つまり、一旦、一等惑星(星間国家連盟によって惑星ごとに等級がつけられている。一等惑星は人類が生存可能で寿命が長く、資源や自然が豊富である惑星)の方に戻るということは補給ができるからだ。だが、この心配は杞憂に終わった。張が意図的に後ろに引くなどするわけもなく燃料備蓄の十分であることを確認すると簡単な修理だけで反転、前進したからだ。
「敵艦隊寄港セズ」の報せを聞いて皆は安堵した。これで敵の弾薬や砲のエネルギーはすぐ尽きるだろうと誰もが勝った気になっていた。
その時である。突如として前方の重巡洋艦が大きく揺れたのは。
「重巡洋艦ニーム被弾!損害軽微!敵艦隊は28000キロ前方より発砲しているとのこと」
すかさず通信員が早口で報告する。2万キロなんて荷電粒子砲にしたら寝返りをうつかうたないか程度だということを大将らは実感した。また、それなのにアウトレンジをしてこなかった敵に対してこんな使い方をする奴らなんか怖くはないと馬鹿のするものも多くいた。
「もっとスピードを上げて後退せよ」
敵を罵倒することに興じているものが多い中、大将は一方的に攻撃を食らうことは危険であり、敵の発砲が少ないうちに寄港すべきと考え、全艦艇に加速度の上昇を命じた。参謀達は安全策で宜しいと満足げであったが中には「バルサはビビリだ」と非難するものもいた。
艦内の騒つきが収まったころ、通信士が
「惑星ケルム航空隊より入電!『敵艦隊ハ現在貴艦隊ノ43万キロ先後方ニアリ。但シ一隻ノミ前方に突出シツツアリ』とのことです」
どうやら軽巡洋艦か駆逐艦かに偵察機を載せたようである。G-2なんて上等な者は送られてこないからそうだろう。海軍省の編制なんていい加減なものだと思いつつも大将は冤罪が晴れたかのように安堵した。敵が遠距離のため撤退だけでなく、侵攻への対策が予定よりもじゅうぶんに取れるからだ。
目標の惑星まであと2、3万キロ。大将には到着の時がとてもとても待ち遠しかった。
今回も短くてすみません。次回こそは……次回こそは……