銀河大戦争   作:伊168

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反撃開始

あれからどれほど経っただろうか。ついに艦隊は目標の惑星ジェーンに着陸した。乗員たちは久々に天然の空気を吸ったためか魚が水を得たように生き生きとしている。その中、大将はこの赤道上を軌道している多数の衛星があるのだと思い、虚空をまじまじと見つめていた。敵艦隊が読み通りのスピードで動いてくれたらこの衛星が役立つ。大将はまず陸戦隊だけに命を下した。

 

「ここは多数の敵弾による被害を受けるだろう。よって民間に被害が出ないように開拓団を撤収させよ。宇宙船が足りない場合は旧式駆逐艦に乗せて、我が星団の主星、アローまで送るんだ」

 

続いて他のものには応急処置可能な部分の修理や弾薬の補給をさせた。この乗員たちの必死の作業により萎れた野草のようだった彼女らは出港時のように勇ましさを取り戻した。誰がどう見ても負けはありえないというほどの見事な整備だった。

 

「閣下、このような作戦を取るならば星団艦隊に断っておくべきだと思いますが」

 

腕を組んで暇そうにしている大将を見かねて一人の参謀が具申した。

 

「ああ、そのつもりさ。だが一応統合参謀本部にも連絡しておこう。アレから許可を貰っておけば陸軍による追及は受けなくて済むだろう」

 

大将は当然のことのように言い返す。だが、現在の統合参謀本部総長は陸軍派で、陸軍と海軍とは不和。つまり海軍に都合の良いことなどするはずがない。普通に考えてもそんなことは無意味だ。そのため、参謀は頭がおかしいのかコイツという目を向けて、

 

「はい、すぐに通信員に準備をさせます」

 

と呆れた様子で言った。

 

「こちら対魯防衛艦隊司令長官ジュスト・バルサです。急遽、作戦変更をせり」

 

大将は自身の作戦について淡々と報告した。すると報告も終わらぬうちに統合参謀長が露骨に不愉快そうな声で意義を唱えた。

 

「駄目だ。10倍もいるなら普通は負けない。いくらお前のような無能者でも勝てる。そのために人工衛星を破壊するなど馬鹿げている」

 

「ですが、敵の技術力は……」

 

大将が大戦犯のシモン少将や無念にも散ったミシェル少将を思い浮かべつつ敵の強大さについて論じようとした時だった。

 

「貴様の言い訳など聞かん! 兎に角中止しろ! できないなら貴様を私の権限で更迭するぞ!」

 

異常なまでの怒声が大将の耳を貫く。だが大将も負けてはいない。許可も貰えず、寧ろここまで怒鳴り散らされたならばもうどうにでもなれと思った大将は、同時に統合参謀長の脅し同然の指示に鬱勃とした怒りが湧き上がり、滅多にない大声を上げた。

 

「何だと!?ロクに前線に出たこともない癖に! できるものならやってみろこの大馬鹿者!」

 

統合参謀長は怒ってヒステリックになって言い返してきたが、大将は無視し星団艦隊司令長官に連絡をし、許可を貰うと作戦を遂行した。それと同時に海軍ごときに謗られ怒りの反論も肩透かしを喰らい、怒りに怒った統合参謀長は黄色いスイッチを弄ると、港湾施設の管理者と声を潜めて話し始めた。

 

開拓団の撤収、艦船の整備が終わった頃、張の駆逐艦隊は大将より妨害の任務を受けていた各惑星の航空隊や防衛艦隊を殲滅し惑星キャベラの目と鼻の先まで迫っていた。もちろん、彼らの選んだ突入先は赤道上にあるこの惑星唯一の湾内施設である。ここを叩けば敵艦隊も惑星も手に入るのだ。だが、張が突進してくることはお見通しであり大艦隊は衛星と張の到達を待ち望んで空中に布陣し、砲火を浴びせんとしていた。目標の到達を彼らはクリスマスイブを待ち望む子供のような気持ちで待っていた。

 

「敵艦隊の砲撃に備えて煙幕を出せ。また、ミサイルに備えて機関砲の発射準備をせよ」

 

大将のいつも以上に自信に満ちた声が伝わり、高度の上昇を止め、戦闘準備を開始した時である。人工衛星なんぞ放っておけと言わんばかりにその間を通って進軍する張艦隊と共に人工衛星群が目前に現れた。

砲手達がこれを見逃さないわけがなかった。原子力艦は一斉にレールガンを旧式駆逐艦は通常砲弾を人工衛星にぶつけた。当たらない弾などほとんどなく、次々と人工衛星は金属の破片に豹変した。砲弾からバトンを受けた残骸は高速を極め、デブリの波は魯国駆逐艦を侵食し、弾薬庫が誘爆して黒焦げになったり、気圧差で外に吸い出されてデブリに体を切り割かれたり、重力制御装置などが壊滅し兵員が潰れてしまったりと魯国艦隊のクルー達はは先程の戦勝とは真反対の阿鼻叫喚の地獄に呑まれた。

 

「クソッ! やられた!」

 

勇ましく、猛虎と言われる張も最早年老いた虎同然であり、前進も攻撃も満足にできなかった。クルーの命を優先せねばと思った張は報告任務を受けていたこともあり、副総統に劣勢を伝えた。直ぐに副総統から撤退命令が下り、張艦隊は二隻にまで数を減じて、後ろに引くこととなった。自身の不注意と慢心のせいで負けたことで張は帰投しても血が滲んでも下唇を噛み続けていたという。

 

彼らの悲劇はこれだけでなかった。停泊中のビスケー・ベイと生き残った航空隊や防衛艦隊に帰投中を狙われ、さらに僚艦一隻を失ったのだ。結局生き残ったのはドック入りしていた2隻と張の乗艦のみだった。

 

「みんなよくやった! 今回の戦勝は諸君らの日々の鍛錬の賜物だ。だが、驕ってはいけない。驕れば何れああなる。これからも日々精進してくれることを期待する」

 

大将が軽く挨拶を終えると将卒たちは緊張を解き子供のように喜んで自分たちを、そして勇敢に戦った敵兵を讃えた。彼らの歓喜の声は東西千里を越えてまでも響き渡った。

 

「さて、工作艦は自動操縦にしてデブリと地上の瓦礫を掃除してくれ。乗員は残りの艦に乗って、アローに帰ろう。直接戦勝報告をするぞ」

 

直接報告する、みんなすぐ帰れるという二点は兵たちにとっては前者は粋として後者は本能的に大きかった。みんな

 

「バルサ大将バンザイ」

 

だの

 

「やった!帰れるぞ」

 

だのさっきまで大将を批判していた参謀達までもワイワイ騒ぎながら惑星キャベラを後にした。残りの燃料を全部使ってしまうほどの速度を出して。

 

 




だが2000文字。開戦の原因を作った癖に降伏し生き長らえた本国ではシモン少将は戦犯扱いです。
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