銀河大戦争   作:伊168

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惑星ジェーンの戦い

すでに日が傾き、ビル群を夕焼けが照らす中会議は未だに続いていた。

 

「私は戦車の予算を半分にし全てを空母運用に回すべきと思います。今の空母はお飾りです。艦載機の量産が必要かと」

 

空軍最高司令の発言にまた陸軍が反発した。

 

「空母はもう不要だと決着が付いている。空母など廃棄で十分だ。また破壊光線も必要だ。レーザー照射で戦艦の装甲を引き裂くことができる。こんな素晴らしい兵器はない! 今では100ミリの装甲を1分程度の照射で焼き尽くせる! 海軍との爆風防護膜(陸軍でのシールドの呼び方。破片や爆風を遮ることから)の共同開発は装置の省エネ化と小型化に協力してくれるなら賛成しよう」

 

二人の言い争いは続く。それもそのはず二人は主義主張も違うのだ。熱心な空母必要論者のミュレーの提案を不要論者の彼が認めるわけがない。だが、空母不要論が主流であるために空軍側は賛成を失っていき、ついに反論できなくなっていった。陸軍がこの場を制したのだ。

 

「よし、では、海軍の最初の要望のうち陸軍の予算削減と空軍の増強を除くものと陸軍兵器、破壊光線、冷凍光線、原子力戦車改の開発、空軍新型陸上機の開発、空軍新型艦載機の開発停止、陸軍新型戦車、120センチ要塞砲、対潜砲弾、人工竜巻、陸上戦艦の開発停止、原子力空母レマンの転売を決定する。各自このブラック企業顔負けの議事録を印刷しておいたから部署ごとに持ち帰るように」

 

やっと終わった。皆は溜息をはいてペットボトルと汗だらけの机を後にした。海軍司令長官とは彼らは挨拶したが空軍と陸軍のものは睨み合うだけでその場を去った。これにより非装甲航宙巡洋艦の開発が進み、シールド技術も向上の兆しが見られた。

 

会議終了から数日経った時、ついに燕王国の攻略部隊が動き出した。

馬鎮武を最高指揮官とした燕国艦隊は惑星キャベラの防衛隊、砲艦二隻、守備隊三万を壊滅させ、占領すると惑星ジェーンに殺到した。

ジェーンには政府軍から購入した星間級レーダーがある。それが機能していれば事前に察知できただろう。

だが、不幸なことに故障のため一機も使い物にならなかったためジェーン防衛艦隊は不利な状況での戦いを強いられることとなってしまったのだ。

 

燕国艦隊は付近の空域に集まると、次々に配置を決めていく。

馬中将が、

 

「張艦隊は敵艦艇の撃滅を呉艦隊は張艦隊の援護を、史艦隊は対地攻撃を我が艦隊はここで待機する以上!」

 

「いえ、対地攻撃は我が艦隊にお任せください。敵艦隊は猪に任せておけば十分です」

 

馬の命令を呉は真剣な顔をして断った。また彼に目をかけている馬はこの命令の変更をあっさり認めた。対地攻撃が認められると呉は薄く笑い、

 

「よし、対地攻撃を開始する。無差別爆撃をしろ。民間人も皆殺しにしろ! 開拓地の端から燃やし一人残らず炙り殺せ!」

 

その女のように美しい顔からは考えられない命令に張らはゾッとしたが、呉の艦隊の面々にとってはいつものことであり、むしろ人の死に様を多く見れると喜び勇んだ。

 

「ちょっと待て! 民間人を殺して何になる? 避難勧告を出すのが先だろうが!」

 

我慢できずに張は叫んだ。マイクが壊れそうなぐらいに怒鳴った。呉は軽蔑するような顔をして手で耳を塞ぎながら、

 

「黙れ、士気の向上につながる。物資は幾らでもあるんだ。貴様のような貧困階級出身の下賤な鳥頭に指図されたくないな……」

 

とだけ言って張の返答の途中で通信を切った。もちろん張は怒ったがぶつけようがなく、繋がっていないマイクに向かって宇宙空間でも聞こえるのではないかというほどの大声で怒りをぶちまけた。

 

「おい、呉!こんど同じようなことをしたら承知せんぞ!」

 

と言って切られているのだが通信を切る動作をした。この光景に慣れている部下たちもこの怒りようには縮み上がって終始しんとしていた。そうしている間にも地表は真っ赤に燃え盛っていった。聞こえないはずの民間人の悲鳴が聞こえるような凄惨さであった。

 

 

星間級レーダーに何も反応がなかったのに、突然攻撃を受けたジェーンの艦隊は混乱し、散り散りになっていた。群れからはぐれた羊が狼に喰われるが如く分散した艦隊は各個撃破されていった。

精鋭と言われた第9艦隊のみがまともに戦えていた。

こんな中でも、戦艦アントワーヌを旗艦とした第9艦隊はなんとか艦艇を集め、反撃に向かっていたののだ。とても勇敢な行動である。

しかし、そんなことは筒抜けであった。馬は面倒くさそうに張艦隊に攻撃命令を出すと、侍らせていた芸者と酒を酌み交わした。

そして、部下にもっと戦場から離れていくように命じ、大凡戦闘中とは思えないぐらいに寛いだ。

まるで年明けの休日のような寛ぎようである。

 

「クソッ! 総司令長官がこんな体たらくでやる気が出るか!?さっさと通信を受け取れ! この豚野郎!」

 

こればかりは張だけでなく張艦隊の者も皆怒り出した。自分は戦わないくせに他人には当然のように高圧的かつ一方的に命令を下すからだ。前線のものはたまったものではない。

第1、馬も前線に出るべきではないか。そうでないとただでさえ寡兵なのだから、技術差があっても余計な被害を負ってしまうではないか。

 

「閣下、前方1万メートルに敵艦隊発見! ジャン=バディスト級戦艦1隻、ラ・ヌール級巡洋戦艦19隻、パリ級重巡洋艦60隻、サンルイ級駆逐艦80隻、ポール級駆逐艦120隻、シャトー級駆逐艦70隻、type6砲艦450隻、級名不明の巡洋艦らしきもの100隻、type12フリゲート200隻、計1100隻です」

 

「我が艦隊より100隻多いか……うん、いいだろう! 縦陣を組んで全戦隊突撃!」

 

使い慣れた艦隊であるが為か駆逐艦隊の時よりも柔軟な移動ができる。

あっという間に目標に接近すると一斉に大量の至近弾を浴びせた。敵の対空レーザーも性能はまだまだで、1秒も照射しないと目標を無効化できない。

そんな発展途上国らしい中途半端なものであり飽和攻撃でジリジリと艦艇を減らされた。

数が減り出すと一隻に当てられる攻撃が多くなる。

そのため、艦艇はみるみる減り、あっという間に陣形は乱れてしまう。負けじと巧みな艦隊運動のもと、包囲する。

しかし、中途半端な包囲など張艦隊の攻撃力からしたら寧ろ餌でしかなく更に大損害を出してしまう。

 

「敵重巡洋艦隊壊滅、敵戦艦我が艦に砲撃してきます!」

 

「こっちは巡洋戦艦ではなく高速戦艦だ! 戦艦とも撃ちあえる! 敵戦艦部隊に中性粒子ビーム砲を叩きつけろ! 何か小細工があっても力でねじ伏せるまでだ! 」

 

「閣下がそう言うならできるはずだ! 万歳!」

 

またしても張艦隊は周りが軽蔑し兼ねないくらいに騒ぎだしていつもの如く突進を繰り返した。レールガンとビーム砲の行き交う様はまるでファンタジーの世界のようだった

 

 

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