銀河大戦争   作:伊168

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惑星リシュ会戦

反転した旧式駆逐艦らは即座に敵戦力の確認、砲撃の準備を始めた。

敵情を知らずに行動をするということは、着の身着のままで真夜中に登山するのも同然である。だから、確認は絶対に怠らない。

 

「張司令長官、敵の戦力が出ました。戦艦1、重巡2、駆逐4のようです」

 

「思ったより少ないな。もらったぞハハハ」

 

護衛艦隊の司令長官、張延は鋭い目を丸めて余裕であるという表情をした。

しかし、長官は余裕綽々だが、周りのものは相手に戦艦がいることを恐れて顔を暗くしている。彼らの士気が低い理由は言うまでもなく、駆逐艦で戦艦を倒すことは水上ならともかく宇宙戦闘では少し厳しいからである。

 

「何をビビっている。あれは戦艦ではない。戦艦みたいなガラクタだ! だいたい、魯国の駆逐艦は銀河最高だぜ! 全艦に告げよ、散開し、巡航速度で砲撃、レーザー砲をあらかた倒したらミサイルで飽和攻撃せよ。以上」

 

命令を受けて、全艦は大急ぎで準備をした。だが、多くの作業を円滑に素早く行うことは難しい。長官はどっしりと構えているが戦艦の砲が直撃でもしたら--船員の脳裏をそんな不安がよぎる。

 

「シモン少将!敵部隊回頭を始めました。今が……」

 

「よし、砲撃で一気に決めるか。いやぁ……自ら死にに来るとは、敵の指揮官は頭に欠陥があるようだね」

 

「駆逐艦で戦艦に……フフフ……望み通り返り討ちにしましょう」

 

「そのつもりだ」

 

民間船を無警告撃沈した張本人、シモン少将の指揮する国境警備艦隊は残りの駆逐艦も容赦なく撃沈するつもりであった。このような行動をするのも宣戦布告を知らないからであろう。彼は焦るどころか余裕綽々である。

 

「提督!アッシリア基地防衛艦隊司令長官、アレクサンドル・ミシェル少将が通信を求めております」

 

「よし、繋げて」

 

モニターにミシェル少将の顔が映る。モニター式の超光速通信は五年前に同盟国シェーンベルグ朝銀河帝国から提供されたばかりの最新鋭技術だ。

 

「アッシリア基地防衛艦隊司令長官アレクサンドル・ミシェルだ。ロマン・シモン長官、すぐに大魯帝国の練習艦艇に詫びを入れ給え」

 

「ハハハ……それは命令のつもりか? え?」

 

シモン少将が侮蔑するような表情で言い返す。彼にとって、不法侵入者への無警告撃沈は当然のことだったのだ。

だからこそそれを責めるミシェル長官がおかしくて仕方なかった。

 

「いいや、個人的な助言だ。このままでは……彼の国に宣戦布告のネタにされかねない。最悪の事態を避けるためだ、泥を被ってくれ」

 

「ハハハハハ君は……脳みそを見てもらった方がいいんじゃないか。領域を犯した奴らが悪い、そうそう簡単に宣戦布告などせん筈だ。万が一なっても負けるわけがない」

 

「いや、そんな訳がない。彼の国の行動はよく知ってるはずだろう。

戦争になれば……半年も持たん。本国のベロン長官やデュラン長官はもし戦争になれば半年か一年ほどは暴れて見せるが、それを過ぎればもうダメだろうと言っていた。私達よりよく研究している本国の人達が言ってるんだ。

今ここで詫びれば降格や停職で済むだろう。でも、もし戦争になれば君は戦争の原因を作った悪人、無能として永遠に歴史に不名誉を残してしまうんだよ! 国のためにも君のためにも……すぐに停船し、詫びを入れるんだ」

 

少将の眉が釣り上がり、露骨に不快感を表情に出す。

 

「私は国境での行動における全権を軍令部より委任されている。たかが基地防衛艦隊の司令長官ごときのお前がいちいち口を出して来るんじゃない! この臆病者が!」

 

返答も受け付けず強制的に通信を終わらせると、少将は敵艦隊への砲撃を命じた。資源惑星リシュの宙域にて開戦後始めての艦隊戦が行われることとなったのだ。

 

「とんだ邪魔が入ったからに……」

 

通信をしている間に敵艦隊は回頭を終えたので、黄金の五分間は終わっていた。あんな奴の通信、はじめから断っておけば--そう思いつつ少将は散開した敵艦の各個撃破を命じた。

互いにレールガンの射程に入ると、番犬が空き巣に飛びかかるように、発射された砲弾が互いの艦艇に突き刺さる。

幾度か砲火を交えた後、何を思ったか大魯帝国駆逐艦部隊は突然レールガンによる攻撃をやめ、重イオン砲による砲撃に切り替えた。

何がしたいんだこいつら--警備艦隊の面々が嘲笑う中、警備艦隊所属駆逐艦「タルン」にその重イオン砲が命中した。その瞬間、今までの下衆な笑い声が消えた。彼らが見た先にはもう「タルン」は残っていなかったのだ。

バース連邦では技術的に光速の一割のスピードも出せない荷電粒子砲を、亜光速とは言わないが光速の半分以上のスピードでぶつけたのだ。これほど速ければ避けられる筈がない。

それにこの高威力は不公平ではないか。

 

「落ち着け、まだ戦艦があるだろう」

 

士気の低下を食い止めようとした少将の励ましで、いくらか安心感を取り戻したか、艦内でまたゲラゲラと笑い声が立ち始めた。

 

「駆逐艦がペラッペラだな。砲が75ミリの豆鉄砲である時点で色々察していたが……」

 

張少将は一撃で爆沈したバース連邦駆逐艦を見てふと呟く。周囲の者もウンウンと頷いている。戦艦も楽勝なのでは? という空気が立ち込めた。

 

「第四駆逐隊だけ敵駆逐艦を駆除、残りの隊はまず重巡洋艦を潰すぞ」

 

「かしこまりました」

 

12条(実際には見えていないが)の光線が重巡洋艦「パリ」を襲った。流石に重巡洋艦。硬いには硬いが、それでも大したことはない。装甲は剥がれに剥がれ、いたるところで火の手が上がった。

その様子は、まるで線香花火である。

 

「シモン少将!駆逐艦4隻全て撃沈されました! 重巡洋艦パリも飽和攻撃により中破、炎上しています!」

 

「戦闘服を着て酸素発生装置を切るように命令しろ! 」

 

16隻の駆逐艦にただただ一方的に大艦がやられていく。少将にとって悪夢でしかなかった。

 

中破どころか大破まで被害を受けた「パリ」は恐れをなし、独断で白旗を揚げた。

その時には、もう一隻の重巡洋艦も集中砲火を浴びている。防衛艦隊は圧倒的に劣勢であった。

 

「よし、ミサイルに切り替え!」

 

やっと忌々しいイオン砲がやんだと思った矢先、ミサイルである。

重巡洋艦「ニース」の対空装備はもう絶望的なほどに破壊されていた為、最早ただの標的だった。

同艦は数えきれないミサイルを浴び、砲撃で弱ったところから次々とやられていった。傷口をさらに抉られ、どうにもならない。瞬く間に「ニース」は視界から消えていた。あるのは鉄屑だけである。

 

獲物はあと一匹。言うまでもなく自動的に標的は旗艦の戦艦「カルトー」になった。

 

いくつものミサイルが飛来する。ミサイルを撃ち落とせば撃ち落とすほどに砲撃も増す。レーザー砲が次々と消えて無くなる。艦も装甲が弱いところから次々と被害が出ていた。

 

そんな中、不意に弾幕を切り抜けたミサイルが戦艦カルトーの副砲に命中した。弾薬庫に火が回り、噴火するように爆発した。

その後も絶え間無く襲いかかるミサイルに恐れをなし、旗艦「カルトー」は白旗を挙げたのであった。アッバス星団警備艦隊は全滅したのに対し魯国護衛艦隊は一切の被害を出さなかったのである。

この戦いはテレビやネットを通じて拡散され、バースの国民を恐怖に震え上がらせた。

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