銀河大戦争   作:伊168

3 / 19
惑星ヴェルン砲撃

「警備艦隊全滅!」

 

通報員の悲痛な声が基地内を貫く。報告を首を長くして待ち侘びていたミシェル少将は、

 

「全滅!?辞書的な意味か? それとも軍事的な意味か?」

 

と誰よりも早く、気になったことを尋ねた。敵の戦力を知る良い手がかりになると思ったからである。

 

「全て撃沈又は拿捕されました……敵軍への被害はほぼ無しのようです……」

 

彼はそれを聞いて思わず一歩下がった。それもそのはず、手強い敵であると思ってはいたが、流石に一隻残らずやられるとは思っていなかったのである。

そして、この惑星には戦艦などの砲撃力のある軍艦がいない。

もし、この惑星に敵軍が攻撃を仕掛けたら----戦艦をもってして勝てないなら小型艦艇のみの防衛艦隊で挑んでも敵のいい練習になるだけではないか。

 

「また、敵艦隊はこちらに向かっている模様!」

 

またしても少将は一歩後ろに下がる。敵軍がこの惑星に来るという予想はしていた。

だが、予想はできていても対策は全く考えていない。

それだけの戦力がこのまま攻撃を仕掛けて来るとすれば----助けも呼べないだろう。だがどう考えても自前の戦力では勝ち目がない。

----一体どのように迎え撃つべきか

少将は士官学校で読んだ戦術の教科書を思い出した。古のヴィクトル元帥が使ったあの戦法を使えば少しぐらい持つのではないか。

少将は期待を胸に命令した。

 

「全艦隊出撃し、雲の下で敵を迎え撃つ。ただし、艦が大損害を受けたとしたらまず人命を最優先すること」

 

敵は荷電粒子砲を使用するため雲の下なら優位に戦えるのではないか--彼はこのことを思い出したのである。

 

旗艦たる軽巡洋艦「アルモニカ」に続いて駆逐艦、哨戒艇や砲艦が飛び立つ。本国艦隊や星団艦隊の1艦隊や2艦隊隷下の水雷戦隊の方がよっぽど立派に見えるほど見窄らしい。

 

「長官、ちょっとよろしいですか?」

 

部下の通信参謀が冷静そうな顔に焦りを隠して少将に駆け寄る。少将は彼の表情から、外に出て聞いた方がいい事であろうと感じた。

そのため、少将は参謀達に断ってから戦闘指揮所を出た。

 

「どうした?」

 

「そ、その……本国より星団軍本部の惑星アローに通信がありました……内容は『1813 我が国は大魯帝国による宣戦布告を受けり、戦闘状態に突入しつつあり』です」

 

少将は思わず後ろにズリズリと下がった。予測はしていたが----宣戦が布告された時間はシモン少将が民間船を無警告撃沈してすぐである。

彼は警備艦隊の動向への注意が散漫であったことを悔いた。歯ぎしりをし、歯茎から血が滴る。だが、トップが動揺してはいけないと思い、すぐに冷静さを整えたように見せておいた。

 

「そ、それは……あそこで……基地内部で言うべきではないか?」

 

「それが……ヴァンサン長官より司令長官と参謀以外には何があっても知らせないように言われておりました」

 

「そうか……兎に角それを念頭に置いて行動しよう。参謀達には耳打ちで伝えてくれ」

 

「承知しました」

 

半数の船が雲の真下に着いた。射程と敵の威力の減衰がちょうどいいぐらいになっている筈だ。敵部隊は上げ舵を一杯にして来るであろう。

敵艦隊が殺到するその時を全ての防衛艦艇はじっと待ち構えた。

 

その頃、

 

「長官!このまま敵基地に強襲攻撃をかけましょう!」

 

「自称」練習艦隊の旗艦内部では既に攻撃準備を整えて攻撃するかしないかという状況になっていた。

 

「もちろんそのつもりだ。全艦に告ぐ、まず前方の惑星の赤道に侵攻、アッシリア基地を真上からミサイルで攻撃しろ。敵軍が沈黙したら一気に攻めよせよ。以上」

 

こうして瞬く間に攻撃命令が下されたため、アッバス星団軍は全ての艦艇の集結が出来ず、圧倒的に不利な状況での戦いを強いられた。また、ろくな対空攻撃がなかったため護衛艦隊は難なく大気中に侵入することができたことも大きかった。

大気圏外からの砲撃を想定していた防衛艦隊にとってなんと不運であっただろうか。そして、駆逐艦の牙は赤道の位置するアッシリア基地に向いていた。

 

「第1主砲塔、重イオン砲発射まで3秒前!2秒前、秒前、撃て!」

 

計16隻の駆逐艦から一斉に重イオン砲が発射された。

流石のミシェル少将でも、これほど早く攻撃を開始するとは思っていなかった。

狩猟豹の如き砲撃に、なすすべも無く防衛艦隊の駆逐艦も哨戒艇も火を吹いて海中に没して行く。

 

「これほど早くに攻撃だと……ぜ、全艦砲撃開始!」

 

少将は、

----やられたか

と思いつつ命じた。

指揮官の焦りや狼狽を感じ取った将兵たちの士気がぐっとさがった。

だが、機械には士気など関係ない。負けじと軽巡洋艦「アルモニカ」から83ミリレールガン、駆逐艦から70ミリレールガンが発射される。哨戒艇に至っては速射砲である。

幾十もの砲弾が敵艦隊を襲った。普通に考えれば、一隻ぐらい屠れそうだ。

しかし、軽巡洋艦の砲が命中した時は敵駆逐艦も軽く揺れたが、他は傷をつけることすらままならなかった。

 

「弱い弱い。おい、奴らに本物のレールガンの威力を見せてやれ!」

 

張長官は上機嫌で命じた。

16隻の駆逐艦によるレールガンの斉射、それは凄まじかった。防衛艦隊旗艦「アルモニカ」の倍の大きさを誇る砲から放たれたレールガンは全ての艦艇をあっさり串刺しにする。撃沈されるスピードは一層早くなり、気勢も大いに削がれた。

 

「全艦さらに後退せよ……」

 

どの艦もまともに抗えない。こんな地獄があろうか。少将は弱気になってついに後退を命じてしまった。

 

その時、一発の砲弾が軽巡洋艦「アルモニカ」の艦橋に真っ逆さまに落ちた。それは艦橋どころか艦そのものを貫いて、海へと無責任にも落ちて行った。

即座に爆音が唸り、艦は悲鳴を上げて崩れ落ちる。乗員たちはボートに乗る暇もなくパラシュートを携えて落下していく。

こうなってしまったならば、一人でも多く助かってくれ----戦闘指揮所でミシェル少将は艦長と共に敬礼をして祈っていた。

 

「おお! 閣下!艦長!やはりここにいらっしゃいましたか! すぐに、ご退艦下さい。もう、この艦は五分も持ちません!」

 

准尉が大声を上げて呼びかける。だが、二人は首を横に振るだけであった。

 

「閣下!犠牲を減らすようにご命令されたのは貴方でしょう!貴方も船員の一人です。ご退艦ください!」

 

半ば強引に准尉は二人にパラシュートを渡して外へと導いた。彼らが海上に逃げおおせた頃に、軽巡洋艦「アルモニカ」は予備動力の一つである原子炉(主機は核融合炉)に何かあったのか爆発轟沈した。空を見上げると戦っている艦艇はもういない。

彼らは基地へと大急ぎで泳ぎ始めた。

 

防衛艦隊の抵抗を押しのけた敵艦隊の次なる獲物は、基地になった。

本来はレールガンを使うのだが、生憎砲身を喪失していた。そのため、仕方なくミサイルを使うことにした。

 

「空対地ミサイル発射3秒前!2秒前!1秒前!テェーーィ」

 

砲術長の大声に押し出されるようにミサイルは風を切って基地に向かって行った。守備隊による必死の対空戦闘も虚しく、基地に次々と着弾しその力を削がれて行った。

 

「敵勢は沈黙した! これより敵基地に接近し、砲撃を加える。各艦はレールガンの発射準備をせよ」

 

息つく暇なく命令が飛ぶ、駆逐艦らは、か弱い基地に新たな牙を剥こうとしていたのである。

全く傷を負わなかったこともあって、安心した張長官は部下たちと談笑していた。

 

「副官、バース星の軍は弱いな。地方軍だとしてもこれは酷い。艦齢100年近いやつばっかりの老人部隊にやられるようでは…本国の軍も大したことあるまい」

 

「工作員によるとアッバス星団軍は地方軍で最も勇猛果敢だそうです。本星以外、敵ではないでしょう」

 

副官の発言によって、自分たちが本星までいち早く攻め上がることができると確信した将兵らは、そこに帝国の国旗を打ち立てる事を夢見てさらに上機嫌になった。桃のように肌の色を染めているものすらいる。

 

何人かは、そろそろ基地がを落としたのではないかと、モニターにl注目した。

そこには山の中で忘れ去られた廃墟のようになった敵基地があった。

それでも、まだ抵抗がある。こんな基地にミサイルを撃ち込むのは老人の鳩尾を殴りつけるも同然だが、誰一人として同情はしない。

むしろ絶え間ない対地攻撃で形を変えられて行く基地を眺めながら、彼らは祝盃をあげて喜び勇んだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。