「長官!念のために偵察機を出しておいた方がいいのでは? 」
情婦参謀が騒がしい中、必死に声を出す。
すると、張長官はすぐに反応した。もしかして、邪魔をしてしまい、機嫌を悪くしたのかと情報参謀はオロオロする。
張長官は、
「大丈夫大丈夫」
と言いながら近寄った。そして笑顔で、
「そうだな。全艦小型偵察機を出せ」
元から準備をしていたのかわからないが、特に準備時間もなく駆逐艦16隻に搭載されtりる虫型の小型偵察機は小糠雨のように基地に降りていった。
もちろん、基地の人間はそんなことを知るよしもない。蚊程に小さいので簡単に目視できずレーダーにも映らないからだ。
「使える砲はもうないか……こうなったら地下倉庫の駆逐艦を全て出すか」
基地の地下に、多数の部下と共に逃げ込んでいたミシェル長官は基地が沈黙したことを危険に感じた。
このままにしておけばこの惑星は本当に陥落してしまう。前線が二箇所も落ちれば混乱は避けられない。ここは絶対に守りきらねばならない。
ならば敵に通用するものを使わないといけない。その通用するものが倉庫内の新鋭駆逐艦であった。
もし、対等に戦ができていたら最高の脇役になっただろう。だが、最高の脇役も今は惑星最高の主役だ。
「あの新鋭艦をですか?」
部下が目を揺らして尋ねる。
「そうだ。従来の艦艇では傷すらつけられなかった。今、敵の動きは止まっている。このすきに一撃を加えたら勝てるはずだ。アッバス星団軍の誇りを守るためにも駆逐艦ごときに蹂躙されるわけにはいかん」
一面焼け野原になった寂しい基地で生き残った部下に基地司令官ミシェル少将は敵への怒りを込めて命令を下していった。
間も無くして、星団海軍が密かに竣工していた高いステルス性を持つ駆逐艦10隻が倉庫から出て行った。
一番艦で旗艦、尖った特徴的な船体を持つ「ムルト」が先導すると
「全星団は諸君らの活躍を期待している。我らが星団のため、死んでも敵を食い止めよ」
少将の激励に士気も上がり、いよいよ駆逐隊はついにミサイルの発射準備にかかった。沈めることより戦闘力を減らすことを優先したのだ。
同時に、敵艦隊に迎撃されないように妨害も行った。
「長官!蚊が飛んでいませんか?」
手をパチンとやって首席参謀が尋ねる。蚊ぐらいは入ってしまうだろうと思った長官は側にいた部下に換気をさせ、殺虫スプレーを噴射させた。
その頃、張長官の部下たちはすでにミサイルの発射やレーダーを照射されたことを確認していた。それ以前に、防衛艦隊の行動など小型偵察機によって全部バレていた。
妨害など全く意味がなかったのである。効果は焼け石に水未満であった。焼け石ではなく、野原に水を垂れ流しているようなものだ。
だが、ミサイルを撃たれてはたまらない。部下たちは、大慌てで報告を行った。
「長官!偵察機からの映像に我が方に忍び寄る駆逐艦を見つけました。その位置、南緯2度、西経65度、高度500メートル! また、ミサイルの発射準備をしております」
敵艦見ユの報告を受けて張はグラスを突き上げて喜んだ。なぜ飲酒をしているのかはわからないが、多分褒められたのだろうと思った部下たちは歓声を上げた。
「フハハハハ! そうでなくてはな。敵さんも面白いことをする。気づかないとでも思っているのかハハハ……総員戦闘配置につけ。敵のお遊びに引っ掛から無いように機関砲とレーザー砲の準備もしておけ。後は重イオン砲で片付けろ。それとレールガンの砲塔の取り替えを急げ」
矢継ぎ早に命令が飛ぶ。馬鹿と言われる彼だが命令だけは早い。尤も、だからこそ猪と言われるのだが。
その時、自分たちの行動がバレているとは気づいていないミシェル艦隊は低空にとどまっていた。すでに一撃目を発して二撃目の準備にかかっていたのだ。彼らの希望を背負ってきたミサイルが護衛艦隊に着弾しようとしていた。
だが、発射よりかなり前に予測されていたミサイルなど見せかけにすらならない。
「ミサイル接近、迎撃せよ」
「第1レーザー砲照射!」
「第1、第2機関砲準備完了!」
と部下たちは一切焦ることなく行動していく。絶対に喰らわない兵器なんてものは怖くないのだろう。
次々と照射されるレーザーに捕らえられたミサイルは接近する前にあっさり破壊され、やっと近づいたミサイルも弾んだ声と共に発射された機銃弾に引き裂かれた。
この完璧な迎撃に無残にもミサイルは全て破壊されてしまったのである。
あっさり攻撃を跳ね除けてしまったので、更に士気が上がった。
防衛艦隊が攻撃しようがしまいが士気が上がってしまうのだ。
敵軍の鋭気をそごうとミシェル少将は思っていた。それゆえのミサイル攻撃であったのだが----なんと皮肉なことだろうか。
「いいぞいいぞ。全艦真下を向いて重イオン砲発射!」
張長官はいつまでも喜んでいるだけの男ではない。あっという間に命令が飛ぶ。
ミサイルが爆散したことで空が一点だけ黒く染まったので、
----やった、命中した
と船員らは思い、喜びを噛み締めていた。
張長官の命令の元、重イオン砲が発射されたのは、悲壮感漂っていた艦内は歓喜に包まれ、ミシェル艦隊の面々が山も震えるぐらいの歓声を上げたその時だった。
上空から何筋もの光線が放たれミサイル装填中の艦艇に命中したのだ。
知覚した瞬間にはもう到着している。そんな代物を避けるなど不可能だ。そのため、弾着は極めて正確であり、一発も狂うことなく弾薬庫に突き刺さった。弾薬庫の多数被弾によって起こった爆発により殆どの艦艇が海の藻屑と化した。