銀河大戦争   作:伊168

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激しい砲撃戦

そもそも敵弾が到達してこないこともあってか張艦隊は凄まじい速度で接近し嫌という程砲撃を浴びせた。これは至極当然のことだが近づいているため多くが命中するのである。蕭々とした宇宙空間を重イオン砲が切り裂くと後続艦や僚艦などが次々と火を噴く。いくら駆逐艦の豆鉄砲でも永遠に耐えられる訳はなく脱落艦は後を絶たなかった。

 

「巡洋戦艦『ビスケーベイ』中破!重力調整装置使用不能!脱落!駆逐艦『シャラント』撃沈!」

 

先陣をきっていた巡洋戦艦の脱落に七艦隊の閣僚陣は全身から滝のように冷や汗を流す。巡洋戦艦だからといって一応は戦艦と名が付いている。戦艦が駆逐艦に沈められるというのは航空機の優位性やミサイル万能論が廃れて何百年と言う間殆ど無かったのだ。前に沈んだ「カルトー」は戦艦でも最早骨董品でガラクタのような戦艦でしかなかった。だが今回は本国所属の主力艦である。戦力では優っているし、喪失艦も20程度であるので、数だけなら深刻ではない。だが、士気は数値に出ている損害以上に打撃を受けていた。これでは敵の姿を見る前に壊滅しかねない。どうにかせねばと思ったバルサ大将は目の前の状況に窮した参謀達に相談することも助言を受けることもせずに命令を下した。

 

「ク、クソッ!こうなったら全戦艦から中性粒子ビーム砲を発射させよ」

 

中性粒子ビーム砲は戦艦のみわずかに備えている兵器である。ここぞという時に使う必殺兵器という扱いだが、戦艦に積める程度に加速器を小型化したのは良いが性能が下がったりエネルギーを異常に消費したり大気中では全く使い物にならないなど、大魯帝国などの先進国からはこの国の科学力の低さを物語るものにしか見えないというのが現実である。

 

「しかしエネルギーが……」

 

「構わない。今は敵艦隊の撃破が先だ。航行できる程度に残しておけばいい」

 

司令長官の強行によりビーム砲が放たれた。それは魯国軍の砲弾に嘲笑われながらおよそ1万キロ先の敵艦隊に向かっていった。彼らにとっては超兵器扱いの艦載用中性粒子ビーム砲も悠々と襲いかかって来る重イオン砲と比べたら酷く見劣りする。

これで粉砕できる!--そう息巻いていた彼等も既に意気消沈していた。閣僚達の足元には大きな水溜りが出来ている。敵艦隊が態々接近してくれていることなど誰も気にしてはいない。

 

「張司令長官殿!前方からビーム砲接近。ミサイルよりは圧倒的に速いが目視できるほどの速度です!」

 

報告できるほど遅いのか--張艦隊の面々の嘲笑を含んだ呟きで艦内は埋め尽くされる。中には豪快に笑っている者もいる。その喧しさも全く問題にならないほどの大声で張は命令した。

 

「そうか! ではつっこめ!」

 

「やってやれ!」

 

参謀の一人が参謀らしくもない乱暴な言い方で盛り上げる。誰も彼も敵の攻撃を全く問題にしていない。しかも普通は慎重になるところを張は一層喜んだだけであったのでその兵は不思議に思った。ポカンとする彼を張長官は見て言った。

 

「そんなに心配することはない。奴らの戦艦は至近距離でも餌だった。あいつらは切り札のつもりでも俺からしたら笑わせに来てるとしか思えない。どうせ当たるわけがない。俺が保証する。もし当たったら君の一番好きな酒を好きなだけ奢ってやる」

 

「いいえ閣下、酒は祝勝会までとっておきますよ。では」

 

「よし! 敵弾は命中しないから全艦全速力で衝角攻撃をするつもりで敵艦に突進しろ!」

 

「了解!」

 

張艦隊は野蛮と言うべきか勇敢と言うべきかバース星の新鋭艦も凌ぐ速度で突撃した。制御装置が悲鳴をあげるほどの加速度だ。そして、敵艦隊が点から米粒のように見え始めそこにいるということが実感できるようになっても怯むものは誰一人として居なかった。

 

「敵艦隊と我が第2遊撃隊との距離、1200キロ! 戦艦の最大射程に入りつつあり。尚、敵艦隊は減速しつつあり」

 

敵艦隊が接近している。一周回って冷静になっていたバルサ大将はそのことに気付き、ほくそ笑んだ。

 

「敵は接近戦をするつもりか……よし、まだ発砲させるな。第2遊撃隊は動きを止めて、他の隊は速度を下げつつ前後の距離を縮めよ。敵が全艦艇の射程に入り次第、砲撃を開始せよ」

 

この状況でまだ待てだと?--首席参謀と総参謀長が苦虫を潰したような顔になる。一刻も早く敵を排除したい、弱体化したいのにも関わらずのさばらせておくとはバカなのかと思ったのだ。だが、彼らに命令する権利はないし、先程の醜態が元々低かった信用を完全に0にしたため、長官に文句を言っても最早取り上げてくれないだろう。

信用は失うことは簡単でも取り戻すことは容易ではないのだ。なら余計なことはせずもう、この男に勝手にやらせておこうと参謀長らは思うのだった。

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