特に報告することはないので、どうぞ。
「ここ...広すぎる、だろ....」
出た後に後悔したが、せめて地図でも貰えば良かった。ここ広すぎる。また迷ってしまった。
「....たい、りょく。つけ、れば、良かった、な....」
ふらふらになりながら歩いていると、後ろから声がかかった。
「おい!そこの不審者め!警察を.........」
....またか、またなのか。そんなに俺は不審者に見えるのか。....あれ、目から汗が..。
「お、おい!急に泣いて...」
「泣いてない」
「い、いや泣いて」
「泣いてない」
「そ、そうか。....いや、そうじゃない!どうして学園内に入ってきているんだ!」
「あ?...あぁ、もう説明するのも面倒くさくなってきた。...ほら、ちゃんと許可証も貰っているし.....」
「な、なんだ。それならいいんだ。だがこの先は学生寮だぞ、行くところを間違えているんじゃないのか」
どう説明してもきっとこいつは。いや、誰もが信じないだろう。言っても無駄だ。
「...あぁ、そうだなーー「あれ?ハチくーん!おーい!」....はぁ」
「ちょ、ちょっと!会っていきなり、溜め息なんかつかないでよー!ひどいよ!」
「ハチマンと......えぇ?!紫吹蘭!?ま、また...」
星宮とあおいが俺に気付いて、こちらに走ってくる。親しげな話し方を聞いて、ハテナを浮かべている紫吹蘭という生徒。
「何だっていい。それよりも星宮とあおいは何かようか」
「ううん。用とかじゃなくて、学生寮に戻る途中だったんだ」
「そこで偶然見かけただけだーーってあおいは、さっきから何に驚いているんだ」
ポカーンと口を開けて、微動だにしないあおい。
「い、いやだってハチマンの隣にいるのって、あの紫吹蘭でしょ?!『美しき刃』と呼ばれるあの...!」
「....ハチ君?もしかしてまたなの?まだ懲りないの?もしかしてもう一回オハナシしないといけないのかな?」
だからハイライトさん、仕事して!怖い、怖いから。星宮のヤンでる時が一番怖いから!
「な、なんだ?もしかしてお前ら知り合いなのか?」
「知り合いというより幼馴染だよ。...私の名前は星宮いちご。中等部の一年だよ?紫吹蘭?さん、って私達より年上?」
「いや、私も中等部の一年だ」
「じゃあ、紫吹蘭ちゃん!って呼んでもいい?」
「ちゃん付けで呼ぶな!」
「じゃあ、蘭って呼ぶね♪」
「いやいきなり名前は」
「蘭って呼ぶね♪」
「だから名前は」
「蘭って呼ぶね♪」
「だ「蘭って呼ぶね♪」わ、分かった...」
「わ、私も...」
怖い、怖いよ。初対面の奴をハイライトがなくなった目で睨みつきるとか。俺がまだ一緒だったときは、こうでは無かったんだけど。何があった。
この後、俺にこの恐怖が襲いかかりそうだったので、今のうちにと、するりするりと抜けていこうとすると、
「ハチ君?逃げるの?」
「いえ、逃げません」
ガッと肩を捕まれ、逃げられなくなる。
ハイライトさん!帰ってきて!
「と、というか待て。さっきから学生寮に向かっているのは、どうしてだ」
「え?ハチ君、学生寮に向かっていたの?何で?...もしかして......」
「え、ハチマン。さすがに、それは......」
星宮はさらに(これ以上何が消えるというんだろうか)ハイライトを消して俺を殺さんというかの如くの目で見る。
あおいは蔑むような目で見てくる。止めて。星宮より痛い。主に心が。
「いや、お前らの考えているようなことじゃない!.....その、な。学園長から、言われたんだよ」
「何を?勿体ぶらないで早く言って?」
「......学生寮に、泊まることになったんだ。だからこうして向かってる」
ピタッと三人が固まり、しばらくすると思い思いの顔をする。
紫吹蘭はシンプルに驚き、星宮は喜んでいるような悩んでいるような顔をして、あおいは。あおいは...穏やかな顔ではなかった。
その後はピッタリ。
『えーー!?』
彼女たちの声が周りにビラビリと響く。
「い、いや嘘だろ?!流石に学園長もそんなことは言わないだろ?!」
「やったー!これでハチ君と一緒だー!.....あれ、ちょっと待って。私とあおいが一緒でしょ?...じゃあハチ君は?」
「スターライト学園に男性が学生寮に泊まるなんて....こ、これは穏やかじゃないわね!!」
「....嘘だと思うなら、学園長に聞け」
ガヤガヤと三人が騒いでいると、ほうきを持って片目を髪で隠した男性がこちらに近付いてくる。
「おい、お前ら。こんなところで騒ぐな」
「あ、涼川さん」
「あ、じゃない。もうちょっと静かにしろ。...後、お前。もしかして、比企谷か?」
「え、あ、はい」
突然の指名に反射的に体が震えるが、すぐに応じる。
「俺の名前は、涼川直人。ここの清掃員だ。...正直な話、助かった。流石に一人じゃそろそろ、限界だったんだ」
「は、はぁ..」
「とりあえず、お前を学生寮の部屋に案内することになっている。行くぞ」
「あ、はい」
話がドンドンとスムーズに進む。ついでに涼川さんの足もスムーズに進む。
「あ、待って!私も行く!」
「私もー」
「い、一応、確認しに...」
「いや付いてこなくていいから」
この時の俺は、まだ知らなかった。
この後起こる、悲劇に....
どうでしたか?面白かったら、幸いです。
では、また。