特に報告することはないので、本文見てください。
では、どうぞ。
誘拐。
ニュースでよく聞くこの単語。聞くだけで人の不安を煽ってくるので、あまり聞きたくはない。
意味は一つ。だが、それを実行するのは、様々な理由がある。
身代金の為、監禁する為、自分の物にする為...などなど。
どれもやはり良いことではない。では、逆に良い方の誘拐とは何だろうか?
例えば、自分の友人が大変な目に遭っているのに、両親はなにもしない。そういう場合、良くはないが、誘拐は良い方と言える...訳はない。
誘拐はすべてに関して、悪いことしかない。下手をすれば、殺人などよりも意地が悪い。
なので、誘拐はやってはいけないこと。いけないことなのだがーー
「ーーで?何か申し開きはあるかしら?」
「......ございません」
目の前にいるのは、誰もが知る。そして、尚且つ俺の命の恩人と言っても過言ではない人。いや御方。
誰もが認めるトップアイドル。神崎美月が俺の前に仁王立ちでこちらを睨み付けるように、たっていた。
かくいう俺はというと、両手両足を縄で縛られ、何も出来ない状況。
普通に会ったのであれば、喜ばしいどころか、卒倒してしまいそうな勢いだが、場面が場面なので、そんな気持ちは微塵も。
......いや、会うことが出来て少しはあるが。
まぁ、何故こうなってしまったのかと言うと。
毎度おなじみ。過去の回想シーンにより説明。
・・・数時間前
星宮達はモデルのオーディションに出るために、蘭に教わろうと、突撃しに行ったところ、何とまさかの着替え中。
星宮達だけだったら良かったのだが、俺は星宮に連れられて一緒に来ていたので、俺は顔がゆでダコとなった蘭に殴られはしなかったが、追い出され、着替え終わった蘭に怒られた。
恥ずかしいので、しばらく顔を合わせたくないと言われたので、俺はそのまま掃除をし始めた。
時折、蘭の引き締まりながらも、女性らしさを帯びた体を思い出して、顔が赤くなりながら、忘れようと一心不乱に掃除をした。
その時に俺は集中し過ぎて、周りが見えておらず、目の前に迫っていた人に気付かず、そのままその人を巻き込んで転んでしまった。
どうやら女性だったらしく、ぶつかった際に「キャッ!」と、どこか聞き覚えのある声が聞こえた。
俺はすぐさま謝ろうと起き上がろうと手に力を入れると、ふにゅん、と嫌な予感がしつつも柔らかい感触が俺の手を襲った。
それと同時に今度は艶を帯びた声で「キャッ!」と言って、そのぶつかった人が驚き、体を動かす。それに俺もまた巻き込まれた。
今度は何も動かさないでおこうと思い、体を鉄のように固くすると、神はいないのかそれとも俺を見捨てたのか。
倒れた衝撃で今度は、俺の方に倒れてきたその人の何かに手がぶつかり、「ひゃあ?!」と言って、こちらに体重を乗せてきた。
その重さもプラスされ、さらに俺の手に何かの感触が強くなる。またもや、柔らかい感触だった。
慌てて動こうとするが、今までの経験則からして動くのはいい手ではないと思い、その人に話しかけて、冷静になってもらおうと考えた。
だが。
そこにいたのは、俺が予想できなかった。できるはずもない人物が俺の目に止まったのだ。
どのくらい長いのだろうか。おそらくは腰まで伸びた紫色の髪を、ポニーテールにしていた。
髪だけではない。世界に二人もいないだろう、その美形。パッチリと開かれた綺麗な目。美しいほど綺麗に伸びている眉毛。何を取っても完璧としか言いようがない。
その人が誰かなど、考えるまでもなかった。
世界一のトップアイドル。
俺の命の恩人と言っても過言ではない人物。
神崎美月がそこにいたのだ。
そしてここで俺は最大のミスをおかした。
動かまいとしていた手を驚きのあまり、上に少し勢いよく上げてしまった。
そのせいで神崎美月さんは、筆跡に表しにくいような声をあげた。良かった。近くに人がいなくて。
そしてこうなった。
なぜ、ここにそこからの説明がないかと言うと、俺はその時、半ばパニック状態になったせいで、記憶が曖昧なのだ。どうしても、思い出せない。
で....。
「潔いのは認めるけど、このままだとあなた確実に警察行きよ?」
「...その.....何でもしますので、それだけは勘弁していただきたく...」
お得意の土下座も使えないこの状況。何でもしますと言わない限り、俺に未来はないだろう。
「...何でも?」
「あ、その、十階建てのビルから落ちてとかは、流石に...」
「言うわけないでしょう。...そうね、だったらーー」
腕を組み一瞬考えた後、俺に向けて指を向ける。
「だったら、明日。またここに来なさい。時間は朝の4時。遅れたら許さないわよ」
と言って、俺の縄を解き、解放する。
「....え?」
「二度は言わないわ。ほら、私も忙しいの。さっさと出て」
冷たいながらも、当初よりかは優しめな声で俺を促す。
「じゃあまた明日」
「は、はぁ....」
何はともあれ助かったがーーどうして俺を解放したのだろうか。
その日は、それで終了した。ちなみに俺が突然いなくなったことに、涼川さんは特に何も言わないでくれた。ヤバい、この人イケメン過ぎる..!
そして次の日の朝。
俺は4時の三十分前に着くと、そこには既に神崎美月さんの姿があった。
「...あら、早いのね」
「....まぁ、何かあったら困るので」
「そう。早いことは良いことよ。..じゃ、ついてきて」
スタスタと歩いていく彼女を追って、急いで俺も走り出す。
「ちょ、ちょっと待ってください。今日、俺は何を..?」
「そういえば言ってなかったわね。今日一日。あなたは私のマネージャーをやるの。私の元々のマネージャーには、言っておいたから大丈夫よ。..はい、これに予定が全部書いてあるから」
そう言って渡してきた紙には、びっしりと分..いや、秒刻みで仕事の予定が書いてあった。
「あ、後。ちゃんと学園長先生に言っておいたから、そこら辺も大丈夫」
.....え?マネージャー?
「早くしなさい。時間は待ってはくれないわ」
「え、えっと...」
「返事は?」
「ひゃ、ひゃい!」
どうやら、今日一日。波瀾万丈になるっぽい。
どうでしたか?面白かったら、幸いです。
では、また。