特にいうことないので、どうぞ。
電気でも流れたのだろうか。そんな感覚が体に走る。
なんともむず痒い。それでいて、脳を甘くとかしていくような、快感が俺を襲う。
頭の回転が遅くなる。呂律も回りにくい。体が上手く動かない。神崎さんから、目を離すことができない。
耳元で話し掛けられただけなのに、その破壊力は計り知れない。少なくとも、俺はこれを続けられて理性を保てる自信がはっきりいって、ない。
昨日注意されたのに、一日たたずして理性を溶かしにかかってくる。頼むから離れてくれ...!!そんで学んでくれ..!!
「...あら。八幡君?聞いているの?」
「ぇ...あ、はぃ」
音量も絶対におかしい。声音なんかもっとおかしい。でも、そのおかしいのを治せない。
たった一言。たった数十文字。それだけで、俺の思考は全て停止させられる。
「...もしかして、八幡君。耳弱いの?」
「.....っ..!!」
獲物を見つけた肉食獣のごとく。目が一瞬、きらんと光ったかと思うと、もう一度。今度は囁くではなく、ふーっと、短く息を耳に吹き掛けてきた。
もちろん、俺には大ダメージだ。
「..やめ、て....くだ..さい......」
「......へぇ..」
最早、トップアイドル神崎美月の姿はそこにはなかった。
ここにいるのは、弱点を見つけ、いじめいたぶり、理性を溶かしてくる。...まるで、この世には存在しない筈の、サキュバスを相手にしているような気分だ。
「ほんろーに、弱いろれ?」
「舐めながら...!!言わないで、下さい...!!」
なんかこの人、変なスイッチ入ってないか...?昨日のことと言い、異性に対してのボディタッチが過激すぎる。
...確かに、神崎さんの方から少なくとも、悪くない感情を持たれているのは本人から聞いた。
だが、それにしたって、だ。なにがなんでも好感度が高過ぎやしないだろうか。
何度もいう、重ねていう。俺と神崎さんは初めて会ってから、数日しか立っていない。
他にも、おとめとか。蘭は、まだマシなほうだ。それでも、やっぱりおかしい気はするが。
なにがそう、この人の性格を変えた?確かに助けた。確かにこの人の心を打ったのかも、しれない。それにしたって、度が過ぎている。
結論、女の人って怖い。
「あむ.....ん..」
「あ、う、あぁ!!いい加減離れてくださ...さい!!」
「きゃ!?」
体は以前、力が入りづらかったが、それでもなんとか振り絞って、神崎さんを体から引き剥がす。
見事に成功し、神崎さんは離れたのだが....ここで俺の体力がなくなってしまい、ばたりと倒れ混んでしまう。
若干この時点で嫌な予感はしていた。何度か似たような展開が起きているので、なんとなく次の展開も読めていた。
だが、体と心の意見は一致せず、そのまま体は、神崎さんの方へと...。
「....////」
「.. あの、神崎さん?一応言いますけど、これは事故。事故、ですからね?」
「た、確かに少し調子に乗りすぎたな~なんて思っていたわよ?だから、怒られるのは覚悟していたけど、これは、ちょっと...心の準備が、まだ...というか、ね」
「いま退きますから、ちょっと待っていて下さい」
神崎さんが思考に更けている間に体を退かしてしまおうと、そちらは無視して手に力を入れる。
ぐっ...と状態を起こして、ベッドの上で一度深呼吸をしてから、神崎さんとの距離を広げる。
「で、でも、八幡君がどうしてもっていうのなら、私としても、やぶさかじゃ.....」
「昨日はお世話になりました。今後、このような事が起こらないよう、十分注意して、適切な距離感を保ちながら過ごしていきます。では、失礼します」
口早にまくしたてて、急ぎ足で部屋から出る。
神崎さんが喋るよりも、動くよりも早く動く。本当に何かあっては、俺なんかよりもあちらが困ってしまうだろう。ただでさえ、仕事に支障が出ているのだから、俺がこれ以上関わるのもこの人にとっては、害でしかない。
例えどんな理由であっても、神崎さんが俺と接するというのは、あってはならない。本人がどうのではなく、それを見る世間の目がどう見るかなのだ。
俺はこの人に大恩がある。それを知っていようと、知らないだろうと、俺はそれを仇では返したくない。
あの店での出来事も、本当はヘイトを全て俺に向けるつもりだった。まさか、神崎さん自ら会見をするとは予想だにつかなかったが。
つまり、何が言いたいのかというと....
「へ?あ、ちょ、ちょっと、待ちなさい!!」
「すいませんが待てませんので、それでは!!」
逃げるが勝ち、ということである。
ーーーーーーー
場所は変わって、目の前に対峙しているのは、ラスボスその一こと学園長である。
多分、俺が転生して俺TUEEE状態になっても、勝てる気がしない。チートでも勝てないって、そんなんチーターやん、チーター。
「何か?」
「いえなんでも」
おい、なんだあの目。ただ笑っているだけなのに、睨みのせいでひと一人が死にかけたぞ、俺が。
寿命が十年ほど縮まった気がする。
「そう。では、比企谷くん。本当に、なにも、なかったのよね?」
おかしい。文字数にして、たった二十文字程度。それを発音するだけで、人をここまで恐怖に陥れられるのか。
「正真正銘。本当になにもありませんでしたよ。...というか、そんなこと出来るように見えます?」
「いえ、まったく」
さらりと言われると言われるで、俺のメンタルがやられる。そこまで否定します?
「な、なにはともあれ、なにもしていませんよ。じゃなきゃ、こんな普通に話してなんかいませんよ」
「それもそうね。それに元々情報はもらっていたし、あなたが何かするだなんて、そもそも頭の中に入れてすらいなかったもの」
情報をもらってた...?もしかして、月影さんか?
てか知ってたんなら最初から言ってくれよ...。減った俺の寿命が無駄じゃねぇか。
「確認よ、確認。念のためにね。なにもないなら、それで結構。これからも、出来るだけ、問題がないように学園生活を楽しみなさい」
「えぇ、俺からは、なにもしていませんから、安心してください」
「話はこれで終わりよ。今日はもう寮に戻っていいわ。とりあえず、仕事は免除しておいたから安心しなさい」
「......わかりました。それでは、失礼しました」
そのまま変な空気が流れたまま、部屋から出ようとドアノブを捻ろうとすると、声がかかった。
「そうそう、忘れていたわ。比企谷くん、十分に注意してから言葉を発しなさいよ?」
「..それって、どういう..」
意味ですか、と続ける前にドアノブが回った。
俺が力をかけたわけではない。だとしたら、外からのものだと思われる。
そして、そこから出てきたのは、
「失礼します。....あ..やっと、見つけた」
最早恒例となっているハイライトを消した星宮が、怖いほど綺麗な笑みを浮かべ、現れたのだった。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
織姫学園長の口調。難しい....。
よかったら、評価とかお願いします。気が向いたらで結構なので。
それでは、また。