パンティーセット
とある商店街のアーケード。
何を食べようか考えていた俺はふと目に留まった喫茶店の看板に釘付けになった。
『本日目玉!!先着3名様限定“パンティーセット”!!』
「ぱ、パンティー!?」
俺は混乱した。喫茶店でなぜパンティーという言葉が出てくるのか。
何が何なのか分からない俺は、悩む。
(飲食店でなぜパンティーを提供するのか?もしかしたら喫茶店の風をした風俗店なのか?それとも……)
様々な憶測が脳裏によぎっては消える。
俺は『本日目玉!!先着3名様限定“パンティーセット”!!』の脇にあるメニューが書かれた看板を見る。そこには『ブレンド350円』、『モーニングセット500円』などどこの喫茶店にも載っているメニューが記載されていた。
(ここは八百屋や魚屋、クリーニング屋などが密集した商店街。一般客が普通に通る場所に風俗店が一件、しかも他の店のように堂々とあるとは考えにくい)
「とりあえず……入ってみるか」
考えるだけ時間の無駄だと思った俺は、喫茶店のドアを開けた。
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四人ほどが座れるテーブル席と五席ほどのカウンター席というモダンな感じが漂う店内。
「いらっしゃいませ!」
亜麻色の短髪を揺らしながら、しなやかで均整の取れた小柄なウェイトレスが笑顔で見る者を元気にするような挨拶をする。
(どうやら俺がこの日最初のお客のようだな)
客のいない店内を見た俺はカウンターに座り少し顔を俯かせながら例のパンティーセットを注文した。
「かしこまりました、少々お待ちください!」
ウィイトレスは恥ずかしがることなくオーダーを受けるとそのまま店の奥へと下がった。
「ん?……まてよ」
ウェイトレスの反応を見て、俺はふと思う。
(もしこれが本当のパンティーなら……あのウェイトレスはあんな対応をするだろうか?普通なら赤面したり口ごもったりなど恥ずかしがる素振りを見せるはずだ……なのにあのウェイトレスは恥ずかしがることなく注文を受けた……!!)
俺の脳裏にある答えが浮かび上がった。
(わかったぞ、これは下着の“パンティー”ではなくパンと紅茶で“パン
そう考えると先ほどのウェイトレスが恥ずかしがることなく注文を受けたのがわかる。
「くくく。これは一本取られたな」
俺は苦笑する。パンティーセットというメニュー名に衝撃を受けたこと。……もしかして本当にパンティーが出てくるんじゃないか、と僅かだがやましい気持ちで店内に入った自分に。
(まぁいい。『“パンティーセット”というメニューを見て『パンティーを出しているのか!?』と思って店に入ったらパンと
「お待たせしました、こちらパンティーセットでございます」
「ほぉ、これがパンティーセット…………ッ!!??」
目の前に出されたものを見て、俺は目を大きく見開き、言葉を失った。
温かみが感じられる木製のトレイの上に置かれた白い皿の上には。ピンク色の下着のパンティーがあったからだ。普通ならサラダが盛りつけされていそうなガラスの器には、やや小ぶりのピンク色のブラジャーが綺麗に折りたたまれていた。
「あ、あの……これって?」
カタカタとロボットのような動きウェイトレスを見ながら尋ねる。
「つい先ほどまで私が身に着けていたパンティーとブラジャーですが?」
「私が……身に着けていた…………」
俺は改めてウェイトレスを見る。
すらりと伸びた腕にやや小ぶりな胸。猫を思わせるほっそりとした体つきで、丈の短いスカートからは艶めかしい太腿が覗いている。そんな健康的な脚を黒いニーソが包み込んでいる。
「……あっ!いけない!」
そう言うとウェイトレスは現在進行形で身に着けている黒いニーソを脱いで丁寧に折りたたむと、普通なら箸かスプーンが置いてある所に脱ぎたてのニーソを置いた。
「お客様、申し訳ございませんでした!うっかりしていました!」
ウェイトレスは申し訳なさそうに頭を下げた。
「……い、いや。大丈夫だよ。……誰にでも間違いはあるから……」
俺は会計を済まし、出されたパンティーとブラジャー、ニーソをポケットに入れると、ササッと左右に知り合いがいないか確認し、足早に店を後にした。
無論、この話は誰にも話していない。
夜勤の休憩時間に浮かんだネタです。いったい自分はどこに向かいたいのか?わからなくなる今日この頃です。