IS〔インフィニット・ストラトス〕 〜復讐か叛逆を選択する少女〜   作:アリヤ

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遅れてごめんなさい。

本当は6月中に投稿する予定ではあったのですが、7月まで回ってしまいました……


第十一話

「なんで、僕なんかを誘おうとするの?」

 

 シャルロット・デュノアは一夏達が何をしようとしているのか――ということよりも、どうして自分なんかを仲間にしようと考えたのかということの方がまず気になった。

 デュノア社を簡単に潰せるような組織だと先程のニュースで感じ取れ、代表候補生という看板しかない自分なんかが必要な理由が解らなかった。

 他に仲間にすべき人間は世界にいない筈がなく、にもかかわらず自分が選ばれた理由が知りたかった。

 一方の一夏も、その質問をしてこないとは思っていなかったし、目的よりも先に問うとは思っていた。詳しいことを束から聴いてはいないが、束から聴かずとも何を考えているのか一夏には想像でき、その想像した答えをシャルロットに答えとして話した。

 

「私も実は詳しいことを聴いてはいないけど、多分私と同じような人間を出さないために先手を打っただけでしょうね……」

「あなたと……同じにならないように?」

「こんな女性のような格好をしているけど、数年前まで私は男だったのよ」

 

 一夏の言葉に、シャルロットは驚いた表情をしていた。真面目に話している事からして性転換手術を行ったわけではなさそうだし、容姿や顔立ちからして完全に女性としか思えなかった。

 自分から進んで女性になったわけではないと考えると、他者からによるもの意思ぐさ。だからシャルロットにとって、一夏の話は思ってもいなかった話ではあった。

 

「私のような存在を出さないためにも、私はあなたを仲間にしたい……ただそれだけよ」

「……でもそれってあなたの意思だけだよね? 本当に大丈夫なの?」

「解った。確認してみるよ」

 

 シャルロットが気にすることも当然だと一夏は思い、確認してみることにした。話を聴いている限り、一夏のみの意思でしかなく、仲間の意見を無視した理由としか思えず、本当に大丈夫なのかという不安がシャルロットにはあった。

 しかし、一夏もその事は考えている。まだ束には伝えてはいないが、一夏が話せば大体のことは大丈夫だろうとは思っていた。とはいえ、シャルロットの不安も解らなくないため、束専用の連絡端末にて束に通話することにした。数秒すれば出てくれるだろうと考えたが、1秒もせずに繋がった。

 

『もすもすひねもすぅ~ いっちゃんどうかしたの~』

「そっちはすべて終わったのですか?」

『うん!! ついでにお土産を持ってきてね!』

 

 お土産という言葉が少し気になったが、どのみち後で知れることであろうと考え、連絡した本題へと話を切り替えようとした。

 

「それで、連絡した件だけど――」

『シャルロット・デュノアの件でしょ? 別に大歓迎だよ~』

「……もしかして、盗聴してました?」

『まっさか~ いっちゃんの服すべてに束が盗聴器なんて仕込むわけがないじゃないか~』

「…………」

 

 物凄く白々しい嘘ではあったが、今の今まで一夏が声に出して放った言葉すべてが束に知られていたことになる。束と付き合ってから独占欲が強いと一夏は思っていたが、ここまでするかと一夏の考えていたレベルを余裕で越えていた。

 

『あっ、ちなみにいっちゃんの所在も衛星使ってリアルタイムに居場所が解るわけでは――』

 

 束が最後まで言う前に、一夏は通話を切り、即座に端末の電源を切った。

 そして綺麗な笑みではあるが、オーラが怖そうな雰囲気を出して、一夏はその笑みでシャルロットの方へと顔を向けた。思わず一歩後退りしてしまうほどで、一体先程の会話で何があったのか気になると同時に、一夏に怯えていた。

 しかし、この状態をなんとかしようとシャルロットは考えるが、その前に一夏がシャルロットに話始めた。

 

「シャルロット・デュノア……」

「な、なにかな……」

「服かして!!」

「は、はい!!……え?」

 

 思ってもいなかった言葉に、シャルロットは思わず聴き間違いではないかと疑った。

 しかし一夏の顔は怖そうな雰囲気を出していた時とは違い、涙目になりながらも申し訳なさそうに頼んでいる顔になっていた。

 とはいえ、あまりにも冗談で言った雰囲気ではなく、本気で頼んでいるとように思えた為、シャルロットは苦笑いしながらも了承することにした。

 

「わ、解ったよ。何があったか気になるけど、後で教えてもらえばいいから……」

「あ、ありがとう!!」

 

 さっきまでの空気はどこにいったのだろうかと、シャルロットは思いつつも、IS学園に来てから着ることがほぼなくなった私服を一夏に貸すことにした――

 

 

 

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 シャルロットから借りた白いドレスに青いシャツ、さらに黒いタイツまで貸してもらい、靴と下着以外のものは全て着替えた一夏だが、そのあとシャルロットには今度の日曜日に外出届を出して、一夏が住みかにしている近くの公園にて待ち合わせることにした。

 あまり寮の中で詳しいことを話すことは避けたかった為の対処で、束と連絡する際も束という名前を一度も言わなかった理由でもあった。

 

「う~ん……靴と下着はサイズが合わなかったから仕方ないけど、もし束さんが下着にすら盗聴器仕掛けていたら本当にどのようにしようか……」

 

 一夏はシャルロットの寮部屋を後にしてから、自分の住みかに戻るつもりでいるが、その前に家から数駅ほど離れたところにあるネオン街にて新しい靴と下着を買いに来ていた。

 束が学園内に盗聴器を仕掛けるのであれば気にすることもなかったが、さすがに一夏自身の服などに盗聴器を仕掛けている事についてはさすがの一夏も癇に障り、多少の自由は欲しいと思っていた。

 服や靴に盗聴器を仕掛けているのであればまだ許せるが、下着に仕掛けているのであれば、制裁を与えようとも考えていた。まぁ、服に盗聴器を仕掛けていた時点で制裁を与えるつもりではいるが、下着に仕掛けていた場合はそれ以上の制裁をするつもりでいた。

 本当なら服も買いたいところだが、閉店になる時間帯に近いということもあって、ぎりぎりな時間帯に寄るなんていう行為は店員に対してさすがに失礼かと思い、仕方なく最低限度手に入れておきたい物だけ買うことにした。

 まず一夏は靴屋の中に入り、靴は自分のサイズに合い、尚且つ移動に適しているものを数分のうちでいくつか買った後、すぐに店を後にして現在は下着の店の前にいた。

 

「……少し前なら、こんな店入ることすらなかったのにね……」

 

 一夏は元男であり、女性向けの下着店なんていうところには一生入らないところだろうと思っていたが、まさかお世話になることになるとは思いもしなかった。

 一夏を女にしたのはすでに束の手によって壊滅しているが、もし束に救われなかったらと考えたらものすごく鳥肌が立つほど恐ろしい想像しか浮かばず、束に救われて本当に良かったとは今でも思っていた。だが――

 

「はぁ、束さんの愛が重すぎるよ……」

 

 そんな独り言を呟きながら一夏は自分のサイズに合う下着を探し出していた。正直言えば、試着などもしたいところではあったが、閉店まであまり時間がないことからサイズ以外の事は適当に何着か選んで店を後にすることにした。

 あとは駅に向かって最寄り駅まで電車を使って家に帰るだけだが、その前に着替えたいという気持ちもあり、近くで着替えられる場所がないか探そうとしていた。

 

「……やっぱり、お手洗いとかその辺しかない――っ」

 

 場所を探していた一夏ではあったが、何かまずいと感じたのか、すぐさま人気がない路地裏へと移動し、そしてポケットに入れてあったハンカチで口を押えた。

 

「ごほっごほっごほっ……薬が、切れたようね――っごほっ」

 

 何度か咳き込んだあとようやく落ち着きを取り戻し、すぐにもう片方のポケットに入れてあった財布を取だし、その中にあるカプセル型の薬を一つ飲み込んだ。咳き込むことにはもう慣れてはいるが、年々と少しずつ酷くなっていた。

 これは、一夏が誘拐されて実験として扱われたときによる副作用の結果で、女体化の薬品や越界の瞳(ヴォーダン・オージェ)を使われて、さすがに健康でいられる状態なわけがないと束から伝えられている。しかし、世間に伝えられている病名の中には当てはまらないし、人為的によってできたものであるため、天才の束でも完全に治すという事は出来ず、病気を弱らせる薬しか作ることができなかった。束が一夏に投与したナノマシンも多少弱らせる効果を持っているが、それでも完治させるまでには至らず、薬を飲まなければ咳き込んでしまうという問題は解消されなかった。

 今でも束は一夏を直す方法を探しているが、そもそも束は薬を作ることに対して天才というわけではない。医療的な知識はあるとしても、束が得意としている分野ではないし、医療に詳しい友達や知り合いがいるわけでもなかった。

 

「……ふぅ、やはり肉体的に辛いということか。よりにもよって、下着を着替える前に出てしまうなんて……」

 

 もし、束が本当に下着などに盗聴器などを仕掛けてあったとすれば、絶対に心配して来るだろう事は容易に想像がついた。

 一夏の状態を知った時、一番悔やんでいたのは束自身で、自分の性格のせいで他人との接点を全く作らなかったことに怒りを覚えていたことだってあった。

 今現在でも束は知り合いではない人間には興味がないし、どうでもいいとは思っている。しかし、その性格がゆえに別分野での天才との接点がなかったのではないかと考えてしまい、自分の性格に対して後悔しているくらいだ。

 シャルロット・デュノアに興味を持った理由も、一夏の事があったからと言えるだろう。シャルロット・デュノアの経歴などを調べた時、もし束たちが目的通りデュノア社を潰し、シャルロット・デュノアに対して何もしなかったら、どのような将来になっていたのか容易に想像がついた。何より最悪なのは、一夏みたいな扱いをされるという可能性すら考えられたことだ。

 昔の束であれば気にせず、他人がどうなろうと関係ないと考えただろう。しかし、一夏の一件があったこともあってか、一夏と同じような扱いにされる可能性があると考えただけで、二度と一夏のような実験材料として扱われる人間を出さないと自分のわかる範囲だけでも努力しようとし始めたのだ。

 

「……着替えは帰ってからにしよう。着替える意味もあまりなくなった気がするし」

 

 聞かれていたとしたら、多分一夏が暮らしている家に侵入してきているだろうと考えた一夏は、路地裏を後にして、電車に乗って家まで帰ることにした――

 

 

 

 ――余談だが、家に帰って見たらやはり束が家に侵入しており、一悶着あったりしたというのはあえて触れないでおこう。

 

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