IS〔インフィニット・ストラトス〕 〜復讐か叛逆を選択する少女〜   作:アリヤ

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第十三話と同時に投稿しましたので、第十三話を読んでいな方は先に第十三話を読むことをお願いします。


第十四話

「はぁあっ!? 突然何言い出すのよ!! そんなの断るに決まっているわ!!」

「……まぁ、断られるのは解っていたが」

 

 唐突に言われたところで、断られる事あまり前で、逆に頷く事の方こそ、驚くくらいだ。

 そもそもそれ以前に、引き抜きする事の方が難しいという事は、ラウラでも解っていた。鈴個人だけの問題ではなく、国同士が絡む問題であり、さらに言えば鈴は中国の代表候補生だ。引き抜きなんかしようとしたら、中国が黙っているわけがない。

 また、IS操縦者であれば自由国籍権が与えられる場合があり、それを利用する選択肢もあるが、それは世界トップクラスの実力を持つ有能な者のみしか与えられない。鈴の実力としては代表候補生レベルだということには変わりがないし、自由国籍権が与えられることは考えられなかった。

 しかし、引き抜きが難しいとしても、ラウラは鈴が欲しいと思っていた。元々織斑千冬を教官としてドイツに戻ってきて欲しいがためにIS学園に来たようなものだが、それを後回しにしてでも鈴の存在はラウラにとって大きかった。

 鈴もラウラの顔が真剣な事からして、冗談で言ったわけではないと思い、鈴は断らなければならない理由をラウラに伝える事にした。

 

「……評価されたことには嬉しいけど、私にはやらなければならない目的があるの」

「目的か……まさか、誰かを守る為などといったふざけたものではないだろうな」

「そんなことだったら、まだよかったわよ。私の目的はある人を捜すため。そしてそのためなら利用できるものはなんだって利用するし、邪魔するなら殺すつもりだってあるわ」

 

 鈴の目は本気だった。目的のためなら犠牲も厭わないような表情で、たとえ世界を敵にしたとしても目的を果たすつもりだという風に、ラウラから見えた。

 そしてまた、自分と正反対だとラウラは思った。ドイツの軍人としてこの先も生きていくつもりでいたラウラにとって、国ですら裏切る覚悟をしている鈴の考え方は思いつきもしなかった事だった。今の状況に満足しているラウラと、目的のために今の状況を利用している鈴。鈴には目的があるにしても、今のままでいいと思っている自分とは、あまりにも違いすぎるとラウラは思ってしまった。

 

「……セシリア、今から自分で自分を守りなさい」

「り、鈴さん!? そんなことをしたら勝てないのでは!?」

「大丈夫よ。正直やりたくなかったけど、本気だすから――」

「ほう、今まで本気で無かったというのか?」

「そうなんだけど、本気だすと国に怒られるから――」

 

 鈴は馬鹿正直にラウラへと一直線で突っ込み、龍砲をラウラへと放った――

 

「ふん、何も策なしで突っ込むなんて血迷ったかっ!!」

 

 ラウラは龍砲を放っただろうと思い、まずその場から避け、自分が避けた方向へ軌道修正してくるだろうとそのままプラズマ手刀で返り討ちにしようと考えた。

 しかし鈴は軌道修正をせずにそのまま突き進み、ラウラが避ける前にいた付近を通り過ぎた。流石に予想外な行動にラウラは驚くが、すぐさま回転して鈴へ攻撃するために追いかけようとした。

 ラウラが振り向いた刹那、ラウラの目の前には鈴がラウラの方へ機体を振り向かせようとし、先ほど投擲したはずの双天牙月を何故か両手に持っていて、攻撃を仕掛けようとしていた。そして避けることができるわけがなく、鈴の攻撃をそのまま受ける事となり、吹っ飛ばされてアリーナの壁に激突した。

 

「くっ、一体何が……」

 

 いきなり吹っ飛ばされて、ラウラは何が起こったのかは理解できなかった。

 ラウラ以外の観客やセシリアは鈴がした行動を見ていたが、誰もが想像しないような方法を行っていたことに驚いた。まず、先ほど鈴が放った龍砲が、そもそもラウラを攻撃するものではなく、鈴が投擲に使用した双天牙月を空中に飛ばすためにしようし、その軌道をラウラの背後に飛んでいくように鈴は仕向けた。物理計算などをしなければうまく行かないし、たとえ計算したところでそう簡単に成功するとは思えないが、鈴は平然とやってのけた。あまりにも常識から逸脱した戦い方に、誰もが驚かない理由がなかった。

 

「さて、双天牙月を直撃で受けてかなりエネルギーを減らしたはず。言っておくけど、さっきの攻撃は偶然でもないし、しっかり計算して私がやっただけだから」

「け、計算してそう簡単にいくような攻撃ではありませんわよ!!」

「まぁ、確かにセシリアの言うとおりだけどね。元々分離して投げた双天牙月を回収するために、龍砲で放つという方法を身につけただけだし、何度も失敗したくらいよ」

「普通なら途中で諦める筈ですわ!!」

「途中から利用すれば、相手に驚愕を与えられないかなと思ってさ。現にダメージを与えられたことだし問題ないでしょ?」

「……頭痛いですわ」

 

 鈴の行動に流石についていけなくなっていたセシリアは、ISを纏ってなければ手を頭につけていただろう。

 一方、ラウラは鈴とセシリアの会話を聴いて、鈴がどうやって双天牙月を回収したか理解した。しかし、ラウラにとってあまりにもふざけた方法に、自分は負けてしまうのかと思い、鈴に対して怒りが覚えた。

 

「………ざ…るな」

「うん? なんか言った?」

「ふざけるなと言ったんだっ!! あんな攻撃、私を侮辱しているのか!?」

 

 ラウラの怒りは鈴以外の人間であれば納得できた。鈴の行った方法は他人から見れば遊んでいるようにしか見えず、そんな攻撃を受けたとしか思えなかった。まあ、鈴は中国の代表候補生であることから、ある程度の実力があるにも関わらず、エンターテイメントみたいな戦い方をされたら、ふざけているようにしか見えなかったのだ。

 

「……言っておくけど、私はふざけたわけではないわよ」

「だったらなんだ、あの戦い方は!? もっと最善の方法が幾らでもあったはずだ!!」

「……確かにそうかもしれないわね。あんなやり方が最善だとは私でも思わないし、簡単な方法でダメージを与えられたかもしれない」

「なら私の言うとお――」

「最後まで聴きなさい。確か最善の方法を使えば確実にダメージを与えられたかもしれない。でもそれは今ほどのダメージを与えられたのかしら? それに、私の実力で最善の方法は可能なのかしら?」

「そんなもの、やってみなければ解らないだろう」

「……そうね、その通りよ。だけど私とあんたの実力の差からしてほぼ不可能よ。実力が無いことはあんたが言ったことでしょうから解らない? 私だって実力が足りないのは自分で自覚しているわよ!! どんなに私が無力で、誰かを救おうとする事だって出来ずに時間だけが過ぎていく!! 代表候補生にはなったけども、それ以上の実力を身につけることは出来なかった!! 他人を真似たところで結局その他人以下の実力しか手に入らない!! ならどうすればいいかなんて、頭で考えるしかないじゃない!! 私はISでふざけた事なんて一度もないし、他人と同じように実力を上げていては意味がない!! 私は敢えてほぼ不可能な手段を確実に可能にさせるように努力しているだけよ!!」

 

 鈴にとって、あの戦い方こそが自分なりの戦い方だ。常識に囚われてはいけない――それが鈴の考え方で、奇想天外な戦い方して、確実に隙を出させるという方法を思いついた。鈴は過去に中国代表のIS操縦者と対戦したことがあるが、その際も奇想天外な戦法で勝負し、流石に勝つことは出来なかったが一度だけ追い詰める事を成功させた。

 カタログスペックの通りな戦い方はするつもりはなく、誰もが考えないような策で戦い抜く方法こそが本来の鈴の戦い方だった。クラス代表戦では他の代表候補生みたいな戦い方を行ったが、それも相手に情報伝えないためで、本来ならラウラ相手に対してと本気で戦うつもりは、たとえ国から本気を出すなと言われなかったとしても本気だすつもりはなかった。

 一方、そんな鈴の言葉を聴いていたセシリアは鈴に対しての評価を大きく変わっていた。鈴と最初戦ったときは努力をし続け、絶対に諦めないような人間と思っていたが、それは確かに間違えではないし、その努力の結果が今の状態だということは聴かなくても解っていた。ただ――

 

(――実力がないと言っていますが、ほぼ不可能なことを可能にしている時点で、鈴さんの実力はありますし、努力する天才ですわ。それに、ボーデヴィッヒさんが言っていたとおり、状況把握とそれに合わせて作戦を考え、優位に立てる方法を見つけ出すことも含めれば、わたくしは鈴さんと一対一で対戦したとして、勝てるでしょうか……)

 

 答えは否だろう。カタログスペックの範囲内でしか戦えないのであれば、自分が鈴に勝つことは不可能だとセシリアは思った。

 自分は天才だとは思い込んでいない鈴だが、他人からみれば天才としかおもえない。それこそ、ラウラが言っていた通り将来待望のIS操縦者に鈴はなれるだろうと思うくらいだ。

 そのラウラだが、未だに鈴の戦い方がふざけているようにしか思えなかった。軍人からしてみればそのように見えてしまうことは仕方ないのかもしれないが、そもそも戦闘することにおいて常識というものは何だろうか。常識という言葉を使うとすれば、戦闘において起こることは非常識の事ばかりではないだろうか。そのことを考えると、ラウラは軍人としてはまだまだ常識に囚われているのかもしれず、鈴の戦い方には気にくわなかった。

 

「さて、まだまだ動かせないでしょうから、そろそろ終わらせましょう。あんたが言うふざけた戦い方でね」

 

 余りにも予想していなかった展開に、ラウラは現状の把握をしておらず、ようやく機体の状態を確認した。

 シールドエネルギー残量はラウラが想像していた以上になく、一撃でも受ければ確実にゼロになるだろう。残っていればチャンスがあるとラウラは即座に思ったが、もし先ほどみたいに奇想天外な攻撃をされたら避けられる自信はなかった。それに、戦えるとしても鈴の後ろにはセシリアが残っている。片方を狙ったところでもう片方から攻撃されるのは見えているし、鈴とセシリアの連携がどれほど良いかラウラが一番解っていた。

 

(私が、負けるだと……)

 

 ラウラは既に勝てる道筋が見えず、負けてしまうと思ってしまった。敗因を探れば鈴の実力を誤っていたということだが、そもそもあんな攻撃方法で戦うことを想定するということは不可能だった。

 それに、ラウラにとってこんなところで負けるとは想定外だろう。軍人である自分が、軍人ではない人間に負けるなんてどれだけの屈辱か、考えるまでもなかった。

 

《力が欲しいか……》

 

 突如、ラウラの脳内に直接声が聞こえてきた。既に負けると思い込んでいた時に聞こえてきた声は、まるでその時を狙ったかのように思えた。しかし、ラウラの答えは既に決まっていた――

 

《……寄越せ!! 私に力を!! あいつらを圧倒的に倒す力を!! あのふざけた戦い方をするあいつを倒す力を!!》

 

 

Damage Level…………D

 

Mind Condition…………Uplift

 

Certification…………Clear

 

 

【Valkyrie Trace System】…………boot

 

 

 刹那、ラウラの意識は途絶えた――

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