IS〔インフィニット・ストラトス〕 〜復讐か叛逆を選択する少女〜   作:アリヤ

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第二十話

「あ、そういえば紹介しないとね!! シャルちゃんも知っていると思うけど……あーちゃん、名前って何だったっけ?」

「アレット・デュノアです!! いい加減名前を覚えて……欲しいのですが」

「うん、妥協点として許してあげよう!! それでシャルちゃん、あーちゃんは服装を見て解るとおりメイドだから、いろいろと雑用に使ってあげてね。本当はちゃんと調きょ――躾してから見せたかったけど、そんな時間無かったから許してね」

「…………」

「おーい、シャルちゃーん?」

 

 シャルロットはこの場にアレット・デュノアが居ることにすら驚いたのに、束から次々に言われるメイドやら躾という言葉を言われ、理解が追いつかずにいた。

 

「……なるほどね。束さんが言っていたお土産というのはアレット・デュノアのことを指していたのね」

「あ、いっちゃん、今日は復活が早いね!!」

「束さんとシャルロットを二人にさせたら何するか解らないので急いで来ただけです」

 

 先ほど束によって胸を触られて倒れていた一夏が、復活して追いついてきた。シャルロットは一夏の声が聞こえたお陰なのか、ようやく状況を把握することが出来、まあ一夏がアレットに対して言っていたお土産という意味からして、アレットの扱いがなんとなく察してしまった。

 

「お、私のことを心配してくれたの」

「逆です!! シャルロットに何かするような気がしたから急いで来たのです!! 束さんは弄る側でしょうに!!」

「そんな……私よりシャルちゃんの方が大事なの?」

「そんな昼ドラみたいなことを言ったところで、私には通じませんよ!!」

「く、クーちゃん!! いっちゃんが冷たいよ!!」

 

 束は自分の近くにいつの間にかいた、ラウラ・ボーデヴィッヒに似たくーちゃんと束が呼んでいた女性に抱きついた。シャルロットはいつの間にいたのか解らない彼女を見て思わず驚いたが、その彼女は束の頭を撫でながら、一夏に話し始めた。

 

「一夏さん、束様を虐めてはダメでしょう」

「えっ!? なんでクロエが束さんを擁護するの!?」

「そうだそうだ!! クーちゃんの言うとおりいたっ!?」

「残念ですが、先ほどの発言は冗談です。全体的に束様がいけません」

「ぶたれた!! クーちゃんにぶたれた!! ぶたれたせいで、天才の脳細胞が幾つか死んだよ!!」

「……ぷっ、」

 

 一夏は束とクロエ――クロエ・クロニクルの三人で会話する光景が二ヶ月ぶりで、思わず笑みが吹き出してしまうほどだった。一夏がIS学園に侵入してから帰ってきていなかったので、懐かしく思えてしまったのだ。

 しかし、このままではシャルロットとアレットの二人がついていけないだろうも思った一夏は、すぐに束に話を戻させることにした。

 

「束さん、今はふざけてないでこの状況を教えてください。私としても、アレット・デュノアについて知らないですから」

「あ、そうだったね!! まぁ、簡単に言えば誘拐してメイドにしただけだよ!!」

「さらっととんでもない発言を聴きましたけど、なるほど。シャルロットに対するお土産に近いのですね」

「そうだね!! 最初は放置してスラムどもに陵辱される光景を見ようとも考えたけど、虐めていた相手に虐められる光景も見たいと思ってね!!」

 

 虐められる対象が目の前に居るというのに、堂々と言うのかとシャルロットは思ったが、その時のシャルロットに苦笑いはなかった。

 思ってはいけないことだとシャルロットは考えていたけども、過去にアレットから虐められていたことを考えれば、アレットに復讐したいと思ってしまう部分があったからだ。復讐させてくれる場を設けてくれるとは思ってもいなかったので、束に感謝したくてたまらなかった。もちろん、シャルロットの性格的に本性を出そうとしたくないタイプなので、内心的に感謝するだけだが。

 

「……そういえばいっちゃん、さっきまで追いかけられていたんだよね?」

「そうですね。まさか、更識楯無がIS学園以外で追いかけてくるとは思いませんでしたが……」

「あの女もしつこいね……いっそのこと更識家を潰そうかな?」

「何さらっととんでもないことを言っているのですか……」

「まぁ、それは冗談だよ。あの女よりも私はいっちゃんに対して言いたいことがあるから」

「あ、地雷踏んだかも」

 

 地雷踏んだと気づいた一夏は、無意識に一歩後ろに下がっていた。

 その様子を見ていたシャルロットは何となく想像出来てしまった。女同士の恋人ほど、別の女と話しているだけで嫉妬や束縛してしまうってこと。逆に男の方が束縛が緩く、男と話しても文句などは言わなくなるらしいということを、前にテレビで聴いたことがあったなとシャルロットは思った。元々男だった一夏はその辺のことは疎く、束が嫉妬している理由に気づいてないのだろうと。

 しかし、一夏の場合は女になったからという理由だけではない。男だった一夏は元々女性に好かれることが多かったが、そのことに気づいてすらいなかった朴念仁だったので、昔からの性格故に意識したこともなかった理由も含まれていた。中には千冬の義妹になるためと考えていた人もいただろうが、それらも含めて付き合いや好きという意味をはき違えていたのが一夏のいう人間だった。

 

「それじゃあいっちゃん、ちょっと二人でおはなししようか……」

「っ!? いつの間に束さんが背後にっ!? って、襟首を引っ張らないでください」

「それじゃあクーちゃん、シャルちゃんの説明は全部任せるね!!」

「解りました」

「く、クロエ!! 助け――」

「ほらほらいっちゃん、さっさと行くよ」

 

 一夏はクロエに助けを求めようとしたが、クロエは合掌して一夏の助けを無視した。このあと二人が何をするのか察していたし、今の束を止めるとこちらにもせよ被害が及んでくるので、クロエとしても避けたかった。

 

「さて、束様と一夏さんは一日帰ってこないと思いますので、シャルロットさんには、今後私たちがしようとしていることについて話しておきます。外出届は明日まで申請していますので、私の説明が終えましたら、休むなりアレットを好きにするなり、問題を起こさなければ好きなように構いませんので」

「それ、どういうことですか!!」

「アレット、ここに連れてこられたときに束様が言いましたよね。ここではあなたの反論は許さないと。主やその仲間に好きなようにさせられるメイドだと。それに、あなたへの躾はまだ終わってないのですよ」

「……どうしてわたくしがこんな目に」

「シャルロットを虐めていた過去の自分を恨みなさい。さて、今後の予定について話しましょうか。一応、これはアレットも聴いてもらいます」

 

 途中からクロエの雰囲気が重くなったことを感じ、シャルロットは唾を飲み込んだ。これから話される内容はかなり重要なことだろうと、シャルロットは感じ取れたがら――

 

「正直言いますと、IS学園の合宿が終わるまでの間はこれといって何か動くことはありません」

「要するに、合宿までは普通に生活していいっていうこと?」

「そういうことです。まぁ、その間も一夏さんはIS学園に侵入する事になりますので、近況報告は一夏さんから聴くことになると思います」

「……それで、その後のことは?」

 

 これ以降に話す内容が重要だと感じたシャルロットは、クロエから話される内容を待っていた。場合によっては、それなりの覚悟が必要な気がしたからだ。

 

「……詳しいことは言えませんが、束様は全世界に対して報道を行う予定です。今の世界を生み出した原因として、責任のために――」

「……もしかして、それは覚悟をしておく必要があるということ?」

「そうですね。ある程度は覚悟しておく必要はあります。もちろん、メイドであるアレットも……」

 

 シャルロットは息を呑んだ。それなりの覚悟で束の下に来ることにしたが、まさか束が世界中に対して何か起こそうと既に考えているとは思いもしなかった。

 そしてアレットも、最初はメイドで連れてこられたから、他人事のように思っていたが、束が世界中に向けて起こそうとしているならば、アレット自信にも被害が及ぶことは目に見えていた。それなりの覚悟をしておいた方がよいという、クロエからの忠告だと――

 さすがに空気を重くしすぎたかなと思ったクロエは、念のため最後に付け足しておくことにした。

 

「……まぁ、まだ確定事項ではありませんし、起こすかもしれないということですので、ある程度は覚悟しておいてくださいということです。私から話せることは以上ですし、詳しいことは束様にお願いします」

「……解りました」

 

 自分の覚悟が少し甘く見ていたと、シャルロットは思った。しかし、ここまで来たからには後戻りなんてできないし、そもそも今のシャルロットには帰る場所もない。すべてを捨てて束の下に来たのだから、さらに覚悟を決めなければと思った。

 シャルロットがさらに覚悟を決めて数秒後、クロエはふと何かを思い出したかのような顔をして、シャルロットとアレットに話した。

 

「そういえば、束様が専用機を作ってくれるようです」

「えっ、でも僕は専用機を所持しているのだけと……」

「その専用機はフランスの物ですし、デュノア社の事件が浮き彫りになったことによって、シャルロットさんが愛人の子供だと気づかれるのは時間の問題です。今ですらデュノア社は束様によって倒産寸前ですから、愛人の子供が代表候補生だという負の印象は、フランスとして考えてみたらどうしても避けたいはずです。だからシャルロットさんの専用機を回収するような行動を取るでしょうし、代表候補生の剥奪もあり得るでしょう」

「そうだとしたら、僕はフランスに強制帰還されそうだけど……」

「IS学園の学則的に大丈夫です。IS学園で生活している間は、全校生徒がどの国にも属さないことになっていますから」

「え、そうだったのっ!?」

「そういうこともあって、シャルロットさんにはIS学園で生活してもらう必要があるのです。こちらから余計な行動をせずに済むためにも」

 

 まさか、IS学園にそのような校則があると思ってなく、思わず驚いていた。その校則があれば、シャルロットは束からの接触が無かったとしても三年間の安全は確保出来ていたということだからだ。

 話が多少脱線していたので、クロエは話を専用機の話に戻した。

 

「とにかく、シャルロットさんには束様特製の専用機を渡します。しかし、これは公にしてはなりませんので、使用する際は束様の許可が必要となり、許可がでない限り展開出来ないようなシステムになると思いますので」

「その辺は代表候補生だったこともあって弁えているよ」

「なら大丈夫です。ちなみに、先ほどから自分は関係ないことだと思っているアレットにも、シャルロットさんと同じような制約を付けた専用機を渡しますので」

「えっ、どうして私なんかに!?」

「それは束様に聴かないと解りませんが、私としては束様から呼び名で言われているあたりから想像はできます。束様は興味ない方は二人称で呼びますので、何かしらあるのでしょうね。今は一夏さんのおかげで良い方に進んでいますが。まぁ、滑稽だから覚えられているという可能性もありますが。さて、」

 

 伝えるべき内容は全て言ったクロエは、突然指を鳴らした。すると、アレットの足元付近から輪っかの形をした機械が現れ、アレットの足首を動かなくするように、手錠の要領で固定された。

 

「なっ、一体どういうことですの!?」

「束様からの命令で、話しておくことが終わったら、シャルロットさんの手伝いをしろということでしたので」

「……あぁ、そういうこと」

 

 シャルロットはクロエが言った意味がすぐに解らなかったが、自分に何をさせようとしているのか想像出来てしまった。要するに、仕返しをしろということだと――

 

「それではシャルロットさん、私はシャルロットの言葉に従いますので。ただし暴力的なことは、私もシャルロットさんも禁じられていますので」

「それってやらせようとしていること一つのような……まぁいっか。僕もアレットには復讐したいところだったし」

「ちょ、ちょっと待って……い、一旦落ち着きましょう」

 

 アレットはクロエとシャルロットを落ち着かせようとするが、二人は気にせずに、動けないアレットに近づいていくのだった――

 

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