IS〔インフィニット・ストラトス〕 〜復讐か叛逆を選択する少女〜 作:アリヤ
かなり空いてしまいましてすみません。仕事などで忙しいものでして……
なるべく早く書けるようにしたいとは思っているのですけどね……
「珍しいですわね。鈴さんから模擬戦の誘いをしてくるなんて……」
「昨日の授業で山田先生と模擬戦して思ったのよ。代表候補生にはなったけど、まだあたしにはタッグを組まないと五分五分にはならないと」
「仮にも教師ですからね。たとえわたくし達が代表候補生であったとしましても、教師に勝とうとするにはかなり難しいかと……」
「それでも、あたしはやらなくちゃいけないのよ。未だに行方不明である一夏を探すためにも」
凰鈴音とセシリア・オルコットが教師の山田真耶とタッグで戦った後、鈴はセシリアを誘い、アリーナを借りて模擬戦を行おうとしていた。
真耶と戦う前、鈴はセシリアと組めば何とか真耶に勝てるだろうと考えていたが、結果は模擬戦が長引くだろうという千冬の考えによって、引き分けで終えた。別に真耶の実力を侮っていたわけではないが、自分の実力が全然足りないという事を実感してしまい、実力をつけるためにもセシリアを誘って模擬戦を行うことにした。
この時鈴は多少ながらも焦っていた。今の実力ではたとえ一夏を見つけ出してそこに敵がいたとしたら、到底勝てるわけなく何もできずに負けてしまうだろう――そう思ってしまった鈴は何としてでも実力を早くつける必要があると思い、代表候補生であるセシリアを誘ったのだ。
そんな鈴の様子をみて、セシリアは鈴が焦っているように見えていた。鈴が実力をつけたい理由は前に聞いているため、どうして焦っているのかは理解していたが、焦っていたところであまり意味がないという事も知っていた。焦っているおかげで肝心なところを見逃すかもしれないため、この模擬戦で気づかせてやりたいと考えていた。
「……そこまで言うのでしたら、お相手になりましょう。元々ここに来た時点でそのつもりでしたが」
「わざわざごめんね。さてと、さっさと始めましょうか。いくわよ
「それではわたくしも。ブルー・ティアーズ!!」
鈴は待機状態である専用機――
「さて、お互いに準備もできたところだし、模擬戦を始め――っ!?」
模擬戦を始めようとした刹那、突如二人のISのレーダーに警告音が鳴り響いた。すぐに気付いた鈴とセシリアは即座にその場から移動し、数秒してその場にワイヤーブレードらしき攻撃が鈴とセシリアが丁度居た辺りの地面に直撃する。二人はすぐさま攻撃が飛んできた方向へと振り向くと、そこには黒のISを纏っているラウラ・ボーデヴィッヒの姿が見えた。
「さすが代表候補生と言ったところか。不意打ちでも避けるとはな」
「……ドイツの第三世代、シュヴァルツェア・レーゲンですか」
「いきなり不意打ち攻撃とか、良い度胸しているじゃない」
「ふん、避けられて当然だ。避けられないくらいなら同じ代表候補生として憐みの視線を送っていたところだ」
「……それで、一体何の御用ですか?」
そろそろ本題に移らせようと、セシリアはラウラに急かした。
「簡単な事だ。貴様らの実力を見て、教官がここに居るのにふさわしいかどうかを確認するためだ」
「教官……織斑先生の事?」
「その通りだ、チャイニーズ」
「……そのチャイニーズという言い方やめてくれない?」
チャイニーズという呼び方に鈴は思わず怒りで攻撃をしようと思ったが、すぐさま冷静になっていた。ここで攻撃を仕掛けたらラウラの思う壺であるし、そんな感情任せに行動していたら一夏だって見つけ出すことだってできないだろうとすぐに思ったからだ。
「とにかく私と戦え。二対一でも構わないぞ」
「ずいぶんと余裕をかましてくるじゃない。その余裕をあたし一人だけでへし折ってあげるわ!!」
ラウラの挑発に乗ったわけでもないが、鈴は持っていた双天牙月を連結させてすぐさまラウラへと投げた。
「ふん、そんな解りやすい攻撃――当たると思ってっ!?」
「当たるとは思ってないわ。だけど、本当の攻撃からそらさせるには丁度いい囮でしょ?」
突如わけがわからない衝撃波をラウラが受け、シールドバリアにかなりダメージを受けてしまう。正直こんな攻撃はラウラ相手に通じないとは鈴は考えていたが、相手を侮っているような様子に見えたために行い、案の定鈴の思惑通りになった。
鈴は戻ってきた双天牙月を受け取りつつ、笑みを浮かべながら話し続ける。
「余り侮らない方が良いわよ。さすがに今みたいなふざけた攻撃はするつもりないけど、あんたの対応によっては考えるわよ」
「……なるほど。確かにタッグで教師と互角に渡り合ったほどの実力はあるようだな。その点は改めるとするが、私に勝てると思っているのかっ!!」
「ちょっと上から目線に苛立ちを覚えたけど、それは本気で戦ってから言ってみなさいっ!!」
ラウラはシュヴァルツェア・レーゲンの両肩とリアアーマーに搭載されているワイヤーブレードを鈴に向けて放ち、鈴はすぐさまその攻撃を避ける。だが鈴が避けることはラウラにとって想定内であり、避けてすぐに避けきれない状態で右肩に搭載されているレールカノンからの砲撃が鈴に向けて放つ。
「ぐっ!!」
「隙を与えるつもりはないぞ、チャイニーズ!!」
「だから、チャイニーズっていう呼び方やめなさいって言ってるでしょうが!!」
レールカノンから放たれた後も隙を与えずにワイヤーブレードで鈴を自分の思い通りに動くように誘導する。だが鈴もこのままでいるつもりはなく、機体がラウラと正面を向いた一瞬を利用して龍砲による衝撃波をラウラに向けて放ち、そのままラウラの攻撃をよけていった。
「なにっ!?」
さすがのラウラも鈴の行動は予想外だった。一秒すら隙を与えず、最低でも避ける方法しか取れないような攻撃を繰り返していたのにもかかわらず、一秒も正面を向いていないのに鈴が反撃を仕掛けてきたことに驚きを隠せなかった。そもそも正面を向くタイミングなんてラウラの思考を読み取っていなければできない行動であるし、避ける思考と同時で考える事なんてあまりにも無謀で、たとえ同時に別の考えを行動に移そうとしても数秒のロスは絶対に掛かってしまう。だが鈴はそのような事を簡単にやってのけてしまい、まるで自分が予想通りの展開になったという顔をしていた。
ラウラがまたしても衝撃波を受けてしまったがために、鈴への猛攻撃は止まってしまった。そしてそれをチャンスだと思った鈴は一気にラウラへと近づき、双天牙月で振りかざそうとした――
(これでダメージを与えれば残りのゲージは少なくなるはずっ!!)
――そう慢心してしまったのが鈴の失敗だった。
この時のラウラはシュヴァルツェア・レーゲンに搭載されている力を全て出してなく、そのことに気付いていない鈴はこのままいけば勝てると思い込んでいた。
ラウラの方からしてみれば、鈴の行動は想像していた通りの動きをしていた。予想外な行動はいくつかあったが、全体的な事を考えれば想定内の範囲だった。
だからこそ――攻撃を仕掛けようとした鈴のISが突然動けなくなったことが、鈴には驚きだった。
「な、なんで急に動きが止まったの!?」
「教えると思うか? 確かに代表候補生だという事は認めても良いが、それでも私には及ばない」
「くっ、動いてよっ!?」
「無駄だ。私が意識している限り、動くことは絶対にできない」
これでは格好の的でしかない。どうにかして動かそうとするが、動く気配はまったくなく、どうすることもできなかった。
「さて、これで終わりだっ!!」
ラウラがレールカノンからの砲撃を放とうとした――
まったく持って動けないこの状況に、鈴はダメージを受ける覚悟をし、思わず目を瞑ってしまったが、数秒経過しても放ってくる様子はまったくなかった。思わず目を開けてラウラがいるほうへ顔を向けるが、そこにいたのはなぜか攻撃を受けていたラウラの姿があった。
「……すっかり鈴さんしか眼中になくなっていたようですけど、わたくしのことをお忘れになるとは侵害ですわね」
「くっ、貴様ぁ!!!!」
「あら、周囲の目が見えていないあなたがいけないと思いますけど?」
鈴はどういう状況かすぐに把握できなかったが、セシリアとラウラの会話を聞いてなんとなく把握することができた。
ラウラがダメージを受けているのはブルー・ティアーズの『スターライトmkIII』から放たれたレーザーライフルによるものだろう。ライフル銃ということもあって、攻撃に気づかれなければ確実に狙えるに近く、状況的にはもっとも最適だった。無意識ではあるが、鈴がラウラの意識を完全に自分に向けさせてくれたおかげで、この状況が作れたようなものだ。
鈴が持っている性格やセシリアのISであるブルー・ティアーズの性能からして、相性はいいほうだろう。鈴が相手に鈴のみを意識させるようにし、その間にセシリアがライフルを構えて確実に狙う――見事なコンビネーションだ。
ちなみに、教師の麻耶と模擬戦を行った際にもこの状況は作ることができたが、さすが教師であるというべきか、完全に鈴のみに意識させることはできなかった。それでも、なるべく鈴のほうを意識させたおかげで、五分五分な戦いをすることができたわけだ。
「さんきゅーセシリア。さすがに今回は焦ってたわ」
「こちらこそ感謝するべきですわ。鈴さんが意識を自分自身に向けさせてくれたおかげで、この状況が作れたのですから」
ラウラの意識が一時的でも鈴から外れたおかげで、自由に動かせるようになっていた。
とはいえ、さすがのラウラも今回の反省からセシリアにも意識をしてくるだろう。二度も同じような攻撃は通じないことは麻耶のときに経験済みで、そのたびにセシリアは攻撃パターンを考えていた。
攻撃の邪魔をされたことにラウラは多少の苛立ちを覚えながらも、セシリアと鈴の二人に攻撃を仕掛けようとしていた。それに対応するかのように鈴とセシリアも行動
『そこの生徒っ!! なにしている!!』
突如、織斑千冬の声が聞こえ、三人はその場で動きを止めてしまう。そして興が冷めたのか、ラウラはシュカルツェア・レーゲンを解除し、アリーナを後にしようとした。
「続きは学年別トーナメントで行おう。覚悟して待ってろ」
「……分かったわ。そこで決着をつけましょう」
本当ならこのまま続けたいと思っていた三人ではあったが、これ以上続けたら千冬に何されるかわかったものではないため、渋々ではあるが仕方なく中断することになった。
そのままラウラはアリーナを後にし、鈴とセシリアもそれぞれのISを解除してアリーナから出ようとする。
「何なのでしょう。あのドイツの代表候補生――ラウラ・ボーデヴィッヒという人は?」
「まぁ、たぶん千冬さん関係でないかな? 昔、千冬さんが教官としてドイツに行ってたことは知ってるし」
「なるほど。わたくしと鈴さんに戦いを挑んできたのはなんとなく分かったような気がしますわ」
「あまり詮索する必要はないでしょ? 今度のトーナメントで決着つければお互いに納得できると思うし」
「……そうですわね」
セシリアはその学年別トーナメントで何か起こりそうな予感がしていたが、今からどうにかするにも難しく、気のせいだと思い込んだ。
だが、その予感がほぼ的中していることに、このときのセシリアは知る由もなかった――