人は、生まれながらに平等じゃない。
これが齢四歳にして皆が知る社会の現実。
爆豪勝己は幼いころより溢れる才能の片鱗が見えていた。
幼稚園児ながら親が書いているのを見て漢字を覚え、川辺で水切りをすれば誰よりも上手に投げられた。
だが頑張った結果出来るようになったんじゃなく自然と出来るようになったため、周りの皆が出来ないことが不思議で仕方がなかった。
そんなある日、周りよりも少しだけ遅れて発現した“個性”を皆に見せた。
「おぉ~~、こりゃまたすごい“個性”だなあ! ヒーロー向きの派手な“個性”ね! 勝己くん!」
手元で起きる爆発を見て保育士たちが勝己を褒めちぎる。皆に“個性”が発現した時とはかなり違う反応だ。
勝己は大人に特別扱いされて自然とこう理解した。
「(俺がすげーんだ。皆俺よりすごくない!)」
さらに後日、勝己は近所に住む“無個性”と診断された少女――結城友奈を見た。
社会全体で“個性”持ちは8割程度だが、世代が下るにつれて“個性”持ちの比率は大きくなっており、勝己と同い年では唯一の“無個性”だ。
本人は気にしていなさそうだが、周りが彼女をからかっている。
「(あいつがいっちゃんすごくない)」
友奈が男なら見下して終わりだっただろう。だが友奈は可愛らしい女の子である。当然ながら反応は違った。
「(じゃあ困ってたら俺が救けてあげないとな!)」
勝己もこの世代の多分に漏れず、ヒーローに憧れる男の子。気になる相手がいたら悪戯するより救けたいのだ。
そしてこの時、彼は初めて「他人を救ける」ことを意識した。多くのヒーローにとって踏み出すまでもなかった小さな一歩だが、彼にとっては大きな一歩を踏み出したのだ。
時は流れ、爆豪勝己中学2年生。
意外なことに彼は放課後の教室でクラスメイトに勉強を教えていた。
「だからここはこっち見りゃいいんだよ。余計なことごちゃごちゃ書いてるが無視して要点だけ見ろカス」
「えーと、つまり……こう?」
「それでいいんだよ。はよ次解け」
無駄な罵倒が入るが、クラスメイトは気にもしない。このクラスに居ればよく聞く言葉の為慣れきっているのだ。
爆豪勝己は自尊心が強く人の上に立ちたがる性格だが、それでもヒーロー志望で将来の夢が「高額納税者ランキングに名を刻むこと」と語る少年である。長者番付に乗るですらなく、社会貢献の大きさで評価されたいと思う性格なのだ。そんな訳でルールを破って暴力を振るい屈服させるより、相手を救けることで自分が相手より上と実感するのを好んだ。勉強を教えるのもその一部であり、生来の口の悪さ以外は社会にうまく適応していた。
もしもの話だが、ヒーロー気質だけが強い無個性の幼馴染などがいた場合はこうはなれなかっただろう。
勝己にとって「救ける」とは相手より上にいるからこそ行える行為。それを明らかに格下の相手にされるのはとてつもない屈辱であり、それが続けばメンタルはクソを放り込まれ下水で煮込まれたような状態になっていたはずだ。そうなれば人を救ける余裕などなく、粗暴なだけになってしまっていただろう。
その後も勉強は続いたが、しばらくすると友奈がやってきた。
「かっちゃん、部長が次のヒーロー部の活動決まったって。今から打ち合わせするから部室行こう。皆もう集まってるよ」
ヒーロー部はヒーローっぽい活動を行う部活であり、なんと地元のヒーロー事務所の協力を得て現場に行くことも多い部活だ。そこに勝己と友奈が所属している。
入学時期にはもっと多く部員が居たのだが、中学生が出ることを許される現場など清掃活動か幼稚園・保育園などのチャリティーイベントの手伝い程度なので大半はすぐに退部してしまう。残っているのは彼ら含めて10人足らずの小規模な部活だ。
勝己もやめようと思ったが一緒に入部した友奈が楽しみながら続けているので、途中で投げ出した根性なし扱いされるのが嫌で今でも続けている。
「わかった。おい、残りはさっきまでの応用だ。ちょっと手順が多いだけで解き方は変わらんから自分でやっとけ。俺に手間取らせたんだから復習サボったらぶっ殺すぞ」
「ああ、ありがとな。部活頑張ってくれ」
勉強を切り上げ、友奈と共に部室に向かう。
「かったりぃなクソが。せめて次は事務所の運営について聞けりゃいいんだがなぁ。俺はプロになったらソッコー独立するし、ちんたらサイドキックする気はねーってのによ」
「あはは、かっちゃんはすごいもんね。でも独立するまでだけでも事務所に来てほしいって気持ちも分かるし、今はじっくりやるしかないんじゃない?」
「わかっとるわ。ただの愚痴だ。聞き流せ」
この日決まった活動は近くの山の登山道の清掃活動。趣味が登山な勝己は珍しく黙々と清掃活動に精を出し、皆を困惑させることになった。
この作品でのかっちゃん
・口は悪いが面倒見はいいやつ。
・内心バカにしながら便利に使ってやろうとした奴らは見抜かれ見放されたので頼り過ぎは厳禁。
・何度か濾過された汚水くらいのメンタル。
幼馴染枠に友奈を選んだ理由
・可愛い女の子。
・デクとの対比で「ヒーローになるのが目標で人助けはそれに付随する行動」⇔「人助けが目的で○○になる、は手段」
・デクとの対比で「派手に活躍するヒーローが好き」⇔「地道なヒーロー的な活動(ボランティア活動等)を楽しんで行う」
・ピンチでもないのに勝己を救けようとすることが、逆に相手を傷つけると気付けそう。
・勝己をボランティア活動に借りだしたりできそうなコミュ力あり。
ヒーロー部は友奈のおまけで作った原作にない部活。