雄英高校生活二日目。
今日からは通常の時間割に沿って授業が行われる。
午前中は必修科目、一般教養の授業。
内容こそ予習しているのが前提で難解だが、筆記試験を通った生徒だけあって程度の差こそあれど皆問題なく授業に付いていけている。なので感想としては「普通」というのがA組の総意だろう。
それが終われば昼休憩を挟んで午後の授業、ヒーロー基礎学の時間だ。
「わーたーしーがー!!
普通にドアから来た!!!」
オールマイトが来ただけで生徒たちはざわざわと興奮して教室の空気が変わる。超人社会に生きる生徒たちにとってオールマイトは現人神みたいなものなので、その教えを受けられるとあれば興奮を抑えるのはまず無理だ。冷静なのは推薦組と教わり慣れた勝己と友奈だけである。
「ヒーロー基礎学!
ヒーローの素地を作る為、様々な訓練を行う課目だ!!
単位数も最も多いぞ!
早速だが今日はコレ!! 戦闘訓練!!!」
オールマイトの言葉に勝己の他、戦闘に愉しみを感じる者がニヤリと笑う。“個性”の使用が原則禁止されている超人社会において、“個性”を用いた戦闘はヒーローに与えられた最大の特権であり最も華のある仕事だ。そして世間から最も期待されている仕事でもある。これを楽しみに思わない生徒はあまりおらず、表情を変えない生徒も内心では昂っていた。
「そしてそいつに伴って……こちら!
入学前に送ってもらった『個性届』と『要望』に沿って誂えた『
「「「「「おおお!!!!」」」」」
コスチュームもまたヒーローに認められた特権の一つ。壁からせり出してくるケースに収められたソレに興奮しない者は轟だけだった。
「恰好から入るってのも大事なことだぜ少年少女!
自覚するのだ!!
今日から自分はヒーローなんだと!!!
じゃあ着替えたら順次グラウンドβに集まるんだ!」
「「「「「はーい!!」」」」」
男女に分かれてコスチュームに着替える。
勝己の戦闘スタイルはグラントリノに師事した結果、接近戦なら蹴りを主体としたモノになっている。通常であれば蹴りを放てば踏ん張りが効かず態勢が崩れたりもするが、腕で移動や態勢の保持が行える勝己には使いやすいものだったのだ。
なので下半身のコスチュームは耐久性を特に高めている。
靴は頑強で切断や貫通に強く、ズボンは防刃、防弾、耐熱など様々な耐性を持たせてある。その他にも膝には攻撃を目的としたプロテクターも付いており、相手が棘だらけだろうが炎を纏っていようが蹴りつけられるようになっているのだ。結果、相応に嵩張りダボついた様に見えるようになった。
上半身は肌を晒さない薄手のスーツ。
オールマイトから指導を受けていた時に過去のヴィランとの戦闘経験について聞いたりもしていたのだが、攻撃を当てればそれで勝利が決まるような“個性”が存在することを知った。なので回避動作が取りやすいように薄手で、多少の攻撃では破ることが出来ないスーツを用意することにしたのだ。頭部はデザインの問題でカバーできていないが、そこに攻撃を食らえば薄手のスーツではどのみち死ぬのでそれほど気にしてはいない。定番のヒーローマスクと爆発を模した飾りで十分だ。
また肩には首をカバーするプロテクターがついている。
“個性”持ちの人間は身体構造自体はバラバラだが、共通した弱点もあると知っているためだ。具体的には首の後ろ。超常黎明期以前からコミックなどでよくある「首トン」だが、あれが“個性”持ちを気絶させるには有効なのである。勝己自身やグラントリノも積極的に狙う場所なため、対策も当然立てているのだ。
そして最後に手榴弾を模した大きな籠手。これの機能は多少悩んだ。
初めはニトロのような汗を溜め、最大火力の砲撃を放てる機能にしようと思った。だが態勢を崩さない範囲での最大火力なら腕のダメージを覚悟すれば道具無しでも撃てるし、精度の高い攻撃ができる。何より市街地で使えばヴィランが暴れた以上の被害が出かねない。そんな訳で別の機能を付けた。
籠手を腕に取り付けギミックを作動させると、掌にピンポン玉サイズのボール―――
これを爆破で飛ばせば威嚇射撃や行動の阻害には十分。銃とかだと銃口の向きと指の動きで強いヴィランやヒーローだと見切れる奴ばっかりだが、これなら射線が読まれづらく実践的だ。なかなか満足のいく仕上がりだった。
勝己が着替えと動作確認を終えたのでグラウンドに向かうと、同じく着替え終わった切島が歩きながら話しかけてきた。
「爆豪も着替え終わったか。なかなかいい感じじゃんか」
「たりめぇだ、ヒーローが格好つけねぇでどうする。思い入れ重視で素人の手作りみてぇなの着てるヤツいたら爆破するわ」
ヒーローとは命懸けで行う職業であり、民衆からの人気が大事な職業だ。
だからこそそのための道具であるコスチュームは機能的で見栄えのする、出来るだけ性能の高い物を使うのが鉄則だ。力が足りず負けるなど言語道断だし、見た目が悪くては救けられた民衆が安心できないのだから。
そこらを考えない者は意識が低すぎるか、自分の“個性”に過剰な自信を持ち慢心してしまっている者だろう。勝己にとっては味方にしたくないし、ライバル視などされれば酷い侮辱だと感じるレベルだ。
「ははっ、さすがにそんな奴いねぇだろ。で俺のはどうよ!?」
「……ほぼ上半身裸に何言えってんだ。強いて言やぁその肩の、腕動かしにくいんじゃねぇか?」
「製造元の独断で付いたんだけどよ、案外動きの邪魔にならないんだよコレ。見栄えいいし、便利な道具仕込んでるし、いい仕事してんだぜ?」
「マジか。パッと見じゃわかんねぇもんだな」
グラウンドβまでの道のりを遅れてきた常闇、上鳴、瀬呂も含めて話しながら進む。
予想より長かった道を通り過ぎグラウンドβに着くと、先に来ていたオールマイトが出迎えてくれた。
「始めようか有精卵共!!!
戦闘訓練のお時間だ!!!」