隠密行動多めだと奇襲→拘束で済んじゃうから内容膨らまねぇ……。
「CチームもIチームもお疲れ様! 早速だが講評の時間だ!
まずはそれぞれ感想を言ってもらおうか!」
戦闘訓練終了後のモニタールーム。
そこには視聴していたオールマイトとクラスメイト、そして暗い表情をしたCチーム、Iチームの四人が揃っていた。
オールマイトからの問いかけに、八百万が口火を切って話を始めた。
「……何もできませんでした」
「八百万少女は仕方ないさ。君は1階から、爆豪少年は5階から潜入し、速攻で人質の保護とヴィランチームの確保を狙っていたんだろう? それなら位置次第で遭遇しないことだってあるさ!
それより最初にサーモグラフゴーグルを創ったのはグッドだ! 確保テープを巻けば捕まえたことになるルール上、葉隠少女への対策は必須だったからね! いい判断だと思うよ!」
「! ありがとうございます!」
八百万の顔が明るくなった。
次いで尾白が反省を始めた。
「……爆豪が5階の窓から入ってくるのは想定できていませんでした。そのせいで奇襲くらってあっさりリタイアです」
「うん、“個性”で飛べるからと言って“個性”無しで高所に登れないわけじゃないからね。窓の桟があれば登るには十分だ。あの飛び方はインパクトが凄いけど、それに惑わされちゃったのが尾白少年の敗因だね」
個性把握テストにおいて、制御が難しそうな“爆破”でブレることなく空を飛ぶ勝己の姿は印象的だった。尾白と葉隠もその記憶が強すぎたのか、勝己が飛ぶなら音がすると思ってしまい奇襲を受けることとなったのだ。
「……授業だからって気ィ抜けてた。手加減した攻撃じゃなく、多少やり過ぎても一撃で意識を落とすべきだったわ」
「アレで手加減してたの!? すごい痛かったんだけど!?」
「痛みで人質手放すように攻撃したんだから当然だ。だってのに手放すどころか人質攻撃しやがってクソが」
「アレはまぁ、ただ負けるの癪だったしね?」
3階から4階への階段で頭上からの不意打ちを仕掛けようと待ち伏せをしていた尾白を捕獲した後、連絡がつかないことを葉隠が怪しむ前に勝己は速攻を仕掛けた。
だが扉を開けた部屋が外れだったため、結局葉隠が気付いて人質を盾にする時間ができてしまったのだ。
いくらヴィランチームが人質を傷つけられないルールとはいえ、追い詰められればなんでもするのがヴィラン。人質を奪還したいヒーローチームとしては強硬姿勢を続けるわけにもいかず、悔しさで表情を歪めながら八つ当たりのように爆発を起こした。
その爆破に紛れて手元に出したスーパーボールを打ち出し、部屋の壁で跳弾させ死角から葉隠を攻撃したのだ。
痛みで拘束が緩んだ隙をついて葉隠を人質から引き離そうとしたのだが、あろうことかこの女、人質を思いっきり殴った。
人質役が頑丈な口田だったためダメージはほぼなかったが、設定だと虚弱な人物ということになっている。そのためオールマイトより人質に大怪我との判定が下った。
訓練はヴィランは確保したものの人質が大怪我したため、かなり甘く見て引き分けということになった。
「葉隠少女の言う通り、ヴィランには後先考えず「癪だから」という理由だけで全部無茶苦茶にしようとするやつがいる。授業でこれを体験できたのは幸運だったね爆豪少年。現場に出てから遭遇するよりずっといい」
「……うっす」
「葉隠少女もだ。ヴィラン側を演じてみて、その心理を多少は理解できたと思う。君の“個性”は今回のような事態を防ぐにはうってつけだ。これからも精進していってほしい」
「わかりました!」
「他の皆からは何か意見ないかな?」
「でしたら先生、このルールのままだとある程度戦った後、人質作戦で時間稼ぎするのがヴィラン側の安定手になってしまいます。設定を「人質」から「ヴィラン側の組織の重要人物であり、ヒーロー側のターゲット」に変更してはどうでしょうか?」
「そうだね。人質作戦を一例くらいは見せたくてこのルールにしたし、変更しようか。他にはないかな?
……ないようだね。じゃあ次の組、行ってみよう!」
初戦で想定外が起こった以外は授業は順調に進行していった。
第2戦のDチーム対Aチームでは、Dチームの飯田がヴィラン側。
一人でターゲットを守りながら戦うことになった飯田だが、隠れたり罠を仕掛けることが出来ないうえに“個性”を使えばエンジン音で居場所がばれるという詰みっぷり。しかも直線が短い室内では最高速を出すこともできない。一階から虱潰しに捜索する友奈と麗日に発見され、そのままターゲットもろとも確保されAチームの勝利となった。
第3戦のBチーム対Hチームでは、Hチームの常闇、蛙吹がヴィラン側。
この戦闘ではBチームの組み合わせが良すぎた。音で索敵が行える障子と抜群の戦闘力を持つ轟を前に、足音を立ててしまう常闇がまず確保された。足音を立てず、舌でターゲットを持ち上げられる蛙吹は懸命に逃げ時間を稼いだものの、氷結による気温の低下から動きが鈍り確保され、Bチームの勝利となった。
第4戦はFチーム対Jチームでは、Jチームの切島、瀬呂がヴィラン側。
クラスでもトップクラスの体格を有する砂藤、口田コンビだが、確保テープを巻けばOKなルールではそれを活かすことが出来なかった。瀬呂が肘から射出するテープに確保テープを張ることであっさりと二人の確保に成功。Jチームの勝利となった。
第5戦は残りのEチーム対Gチーム。Eチームの芦戸、青山がヴィラン側を務めた。
途中青山が味方のはずの芦戸にマントを溶かされるというアクシデントこそ発生したものの、耳郎のイヤホンジャックによる索敵と上鳴の放電攻撃によって順当に撃破されGチームの勝利で幕を下ろした。
「お疲れ様!
大きな怪我もなく、皆真摯に取り組んだ!
初めての授業とにしちゃ皆上出来だったぜ!」
「相澤先生の後でこんな真っ当な授業……何か拍子抜けというか……」
「真っ当な授業もまた私たちの自由さ!
しかし真っ当な授業か……!
教師としては新人な私にそれができるか不安だったんだ! 何これ凄く嬉しいな!!」
オールマイトの本気で嬉しそうな表情で場の空気が一気に緩んだ。活躍できないまま負けてしまった者も、勢いに飲まれて笑っている。こういうことが出来るのもオールマイトの強みの一つなのだろう。
「じゃあ今日の授業はここまで! 皆着替えて教室にお戻り! コスチュームを置き忘れないようにね!」