爆豪勝己の幼馴染が結城友奈だったら   作:ぬがー

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学級委員長選挙

 雄英高校の始業から三日目、オールマイトが雄英の教師に就任したという情報がついに公開された。

 この情報は全国を驚かせ、連日マスコミが雄英高校に押し寄せる騒ぎになっていた。

 

「オールマイトの授業はどんな感じですか!?」

「“平和の象徴”が教壇に立っているということで様子など聞かせて!」

「教師オールマイトについてどう思ってますか!?」

 

 正門の前でマスコミが集まり、登校する生徒たち―――特にマスコミ対策の授業をまだ受けていない一年生―――を質問攻めにしていた。

 嬉々として質問に答えている者も何名かいたが、大抵はどう答えていい物か困り果てなかなか進めないでいる。

 それを遠目で確認し、勝己はげんなりとした表情を浮かべた。

 

「クッソウゼェのがいるなぁ。あいつら遠慮知らねぇのか」

 

「知ってても放り捨ててるんだろうね……」

 

 ヘドロ事件の後、勝己同様にマスコミに粘着された友奈も嫌そうな顔をする。

 一年近く経った今でも勝己と友奈の顔を覚えている人がいるくらいの大事件だったので仕方ないと言えば仕方ないのだが、あまりに酷かったものだから寛大な友奈ですら関わるのを嫌がるようになっていた。

 

「仕方ねぇ。突っ切るぞ。質問は全部無視だ」

 

「うん!」

 

 正門に近づくとマスコミが群がってくる。非常にうっとおしいが所詮は一般人。勝己が人垣の間に肩を割り込ませ、友奈の手を引いて無理やり進めば突破できた。

 それでも追いかけてくるしつこい奴はいたが、勝己と友奈が正門を通り過ぎると四重の障壁が正門を塞ぎマスコミを遮断した。

 

「こういう時は便利だな雄英バリアー」

 

「危ないからあんまり使いたくないけどね」

 

 雄英バリアーとは学生証や通行許可IDを身に着けていない者が門をくぐろうとすると作動するセキュリティのことだ。校内のいたるところにセンサーがあり、ある程度は侵入者を自動で撃退する仕組みになっている。

 まぁある程度といっても正門の時点で障壁で手足を挟んで千切れたとか起こりうるレベルなのだが、これでもこの時世だと気を使っている方なのである。

 

「じゃさっさと行くか。今日ホームルームと一限目連続してやるらしいしなんかあるぞ」

 

「なんだろうね。テストとかじゃないといいなー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は君らに学級委員長を決めてもらう」

 

「「「「「「学校っぽいの来たーーーーッ!!!」」」」」」

 

 安堵で息をつくとともに、歓声が起こる。

 普通科などでは学級委員長といえば雑務に近いが、ヒーロー科では「集団を導く」というトップヒーローの素地を鍛えられる役割だとされている。自己研鑽の為にやっておくべき役職であり、国内最難関の雄英でクラスのまとめ役をやったという実績はプロになっても影響を及ぼすのだ。

 とはいえ実態は「率いられるより率いたい」「まとめ役をやりたい」と思うような人間がヒーロー科を志望するというだけかもしれないが。

 

「委員長! やりたいですソレ俺!!」

「ウチもやりたいス」

「ボクの為にあるやつ☆」

「リーダー! やるやるー!」

 

 Aクラスでも例年同様自薦が相次ぐ。勝己も皆と同様に挙手していた。

 そんな中、一際大きな声が上がった。

 

「静粛にしたまえ!

 “多”を牽引する責任重大な仕事だぞ……!

 「やりたい者」がやれるモノではないだろう!!

 周囲からの信頼あってこその聖務……!

 民主主義の則り真のリーダーを皆で決めるというのなら、これは投票で決めるべき議案!!」

 

「そびえ立ってんじゃねーか!! 何故発案した!!!」

 

 発案者の飯田も立候補したいのか手を大きく挙げていた。それでも正しいと思う方法を提案したことを評価すべきなのだろう。

 そして一人提案者が出たので、友奈も続けて意見を発した。

 

「ヒーロー科ってこれからも普通科と入れ替わりがあるんだよね? それなら除籍になりにくそうな人から投票で決めるのがいいんじゃないかな?」

 

「あー……確かに学級委員長除籍でまとめ役不在はまずいわな」

 

「なら推薦二人と爆豪か? この三人以外で投票やって、一番多かったのが委員長、二番が副委員長って感じで」

 

「せんせーコレでいいですか?」

 

「時間内に決まるんならなんでもいいよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 で結果。

 

「爆豪12票、八百万4票、轟0票。決定だな」

 

「っしゃあ!」

 

「うーん、悔しいですがあの後ですし仕方ないですね」

 

「……」

 

 勝鬨を上げる勝己と、若干悔しそうな八百万、無関心を貫く轟をクラスメイトが眺める。

 轟は委員長をやる気は初めからなかったようなので文句なさそうだが、飯田はこの結果に疑問を感じたようだ。

 

「えらく票が偏ったが、何かあったのかい!? 僕には口の悪さが目立ったのだが!?」

 

「そりゃお前……ってそういや飯田初日終わってすぐ帰ったっけ。後で説明してやるよ」

 

「うむ、頼んだぞ切島君!」

 

 この後、飯田は気が緩んだ時の一人称が「僕」なことでクラスメイトからいじられることになるのだが、勝己も友奈も見かけなかったので省略する。

 相澤はまとめ役が決まったのでいそいそと寝袋に収まりながら、委員長と副委員長に最初の指示を出した。

 

「じゃあ委員長、副委員長、残りの委員決めよろしく。俺はその間寝る」

 

「それでいいんですか先生?」

 

「こっちで決めていいってんだから、それでいいじゃねぇか。問題になりゃ丸投げした先公のせいにすりゃいいんだし、さっさとやるぞ。

 他の委員は立候補制でやるぞ! ただし引継ぎに備えてA組用の活動記録を付けさせる! 俺がチェックして弾いたときはやり直しだ! 異論は認めねェ! それでもやりてェ奴ァ手ェ挙げろ!」

 




委員長を飯田に譲ったりはしませんでした。
選挙の結果を勝手に覆すとかアレだし、得票数第2位の八百万の立場がないので。

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