騎馬戦で予選一位通過の勝己は持ちPが1000万、しかも自分で持っていてもポイントにならない。
つまりここでも一位を取るなら自分のポイントを奪われることなく保持し続け、かつ誰よりもポイントを奪わなくてはならない。わかりやすく逆境だ。勝己にとっては望むところ、トップ故の重圧、試練はさらなる高みへと導いてくれる有難い物なのだから。
逆に周囲の選手は嫌そうにしている者もいた。勝己からポイントを奪えれば一位通過は決まったようなものだが、空を飛べるため奪うのがそもそも難しく、しかも積極的に他からポイントを奪いに来ると言う。一位通過安定のポイントを持たせ、ポイント争いから浮いた状態にして放置できなくなったのは辛い。
「細かいルールを説明していくわ!
制限時間は15分。
振り分けられたポイントの合計が騎馬のポイントとなり、騎手はそのポイント数の表示されたハチマキを装着! 終了までにハチマキを奪い合い保持ポイントを競うのよ。なお勝ち上がれるチームの数は終わってから発表するわ!
取ったハチマキは首から上に巻くこと。取れば取るほど管理が大変になるわよ!
そして重要なのはハチマキが取られても、騎馬が崩れてもアウトにはならないってところ! ただしそれで時間稼ぎ狙うようなら独断で失格にするからね!」
選手たちがざわつく。
ルール通りなら最低で11組、最大で24組の騎馬がずっとフィールドで居座ることになるからだ。特にハチマキを持たない騎馬は反撃を恐れず突っかかってくる。かなり荒れる試合になるだろう。
「“個性”発動アリの残虐ファイト!
だけどあくまで騎馬戦! 悪質な崩し目的での攻撃などはレッドカード!! 一発退場とします!!!
そして障害物競争の結果を受けての追加ルール!
まず騎手が騎馬から離れるのは禁止! 騎馬ごと空を飛ぶのもダメ!! 大ジャンプくらいなら認めます!!! ただし判断基準は他と同様に私の独断なので、グレーゾーンを狙った行動連発してたら唐突にレッドカードでも知らないわよ!!!!」
追加ルールがすがすがしい程勝己を狙い撃ちにした。現時点で空を飛べるのは勝己だけとわかっているのに、騎馬から離れての攻撃や騎馬ごとの飛行禁止など露骨過ぎる。
そう思った選手たちにミッドナイトの容赦ない口撃が浴びせられた。
「こうでもしないとチームメイト関係なしに、上空から爆豪くんが強襲をかけてハチマキ荒稼ぎして終わりそうだったからね。厄介なのは後に回せばいいし。
彼にとっての試練にも助力にもなれない、あなたたちの不甲斐なさ故の追加ルールよ。存分に恥なさい」
「「「「「「ッ!!」」」」」」
選手一同の表情に怒りが浮かぶ。
空を飛ぶ前に押さえる手段が有った者、撃ち落とす手段が有った者、降りてきたタイミングで返り討ちにする算段を立てていた者。いずれも共通して自分たちが軽く見られたことに腹を立てていた。ここまで行動を縛らなくては見世物になりすらしないほど自分たちは弱く見えるのかと。
しかし主審の判定はもう覆せない。ならばその判断が間違いだったと、現トップを下して証明するまでだ。
「それじゃこれより15分! チーム決めの交渉タイムスタートよ!」
「おい障子、俺と組め」
交渉タイム開始早々、勝己は周りを無視して障子に声をかけた。
当の障子はと言うと予想外の申し出に驚きを隠せていない。
「意外だな、結城辺りと組むと思った。結城なら一人で騎馬ができるだろうし、その方がお前も動きやすいだろう?」
障子の意見は的を射ている。実際友奈を騎馬に勝己が騎手の二人チームを作れば、縦横無尽に跳ね回りハチマキを荒稼ぎすることもできただろう。だが今回は少々事情が違うのだ。
「そりゃそうだが、今回友奈は俺に挑んでくるつもりだかんな。俺も別でチーム探してんだ。お前が友奈以外じゃ一番相性がいい」
「ほう、先に理由を聞いてもいいか?」
理由を聞いた後で「やっぱ組むのは無し」と言えば、勝己はこの騎馬戦において主軸となる戦法を敵に知られてしまうことになる。それでも話すかという問いかけに、勝己は躊躇なく答えた。手の内と対応策がバレた程度で負けはしないという自負があるからこその判断だ。
「俺の“個性”は掌からニトロっぽい汗を出す。あくまでニトロっぽいだけで実際は別物でな、成分いじりゃすげぇ光るだけ、すげぇ音がするだけ、みたいな運用も出来んだよ。
接近戦だとこの二つを主軸に戦うが、テメェなら“複製腕”で潰れた目や耳を作り直しゃ立て直せンだろ?
ついでに言や、複数の手が迫ってるってだけで相手の騎手にプレッシャーは与えられるしな。で、どうすんだ? 俺倒して一位狙うか、俺と他なぎ倒して一位狙うか」
「一位狙い以外あり得ないという前提で話すのがお前らしいな。
……わかった、組もう。自分でやっておいてなんだが、手の内を聞いてからお前を狙うというのは気が乗らなかった」
「よし、決定だ。なら次スカウトに行くぞ」
「目星は付いているのか?」
「たりめぇだ。
この騎馬戦じゃハチマキ持ってねぇ連中のゾンビアタックが一番厄介だ。だから拘束が出来る八百万か瀬呂で一枠。爆破で大ジャンプしたり爆速ターボ使っても大丈夫なように固定する仕事もあんな。
あとは逆にハチマキ取るまで逃がさねぇように、こっちの騎馬が拘束されるかもしれねぇ。そん時ゃ拘束を壊して離脱できるようにするやつもいる。これにゃ芦戸が適任か」
「それなら問題なさそうだな。では早くスカウトに行くとしよう。他に取られてしまうかもしれない」