爆豪勝己の幼馴染が結城友奈だったら   作:ぬがー

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中学時代2

「おおおおぉぉぉぉぉぉぉオオオオオオオ!!!!!」

 

 爆ぜる。

 爆ぜる。

 爆ぜる。

 

 爆発をまき散らし、勝己を取り込もうとするヘドロのような流体の(ヴィラン)を弾き飛ばす。

 しかしヴィランもその程度では諦めない。勝己の抵抗が激しくヒーローも集まってくるだろうが、この体と“個性”を乗っ取ることが出来れば蹴散らして逃げるのも簡単だと考えたためだ。それに駄目でも下水道が近いこの位置なら隠れミノを捨てればもう一度隠れ潜むことが出来る。やめる理由はなかった。

 

 爆ぜる。

 爆ぜる。

 爆ぜる。

 

 道路が砕け、建物に火が付き、ヒーローと共に野次馬が集まってくる。

 ヘドロヴィランが流動体の体を持つために対処できる者が限られる上に、爆破に怯み、消火に手を取られ、飛び散る破片から野次馬を守るため集まってきたヒーローは一切手だしすることが出来ないでいた。

 

 爆ぜる。

 爆ぜる。

 爆ぜる。

 

「(こんなドブ男にぃい、俺が呑まれるかぁああああああ!!!!!!!!)」

 

「ハハハ、えれぇ力だ!! こりゃ大当たりだぜぇ! この“個性”と力なら怖いモノなしだ!!」

 

 ヘドロヴィランは通常であれば約45秒で完全に肉体の乗っ取りを完了できる。なのに勝己はもう10分以上抵抗を続けていた。

 強力な“個性”を持った隠れミノだとは思ったが、この持久力と暴れるほどに上昇していく火力は想定以上だ。それこそ偶然街に来ていた平和の象徴(オールマイト)を力尽くで突破するのも可能と夢想するほどに。ヘドロヴィランはこの幸運に笑いが止まらなかった。

 

 爆ぜる。

 爆ぜる。

 爆ぜる。

 

「ダメだ!これ解決出来んのは今この場にはいねぇぞ!!

 誰か有利な“個性(ヤツ)”が来るのを待つしかねぇ!!」

 

「それまで被害を抑えよう。何!すぐに誰か来るさ!

 あの子には悪いがもう少し耐えてもらおう!」

 

 ついにヒーロー達も勝己の今この場での救出を諦めた。オールマイトがこの街に来ているという情報もあるし、人質も自力で耐えられている。なら無茶して死人を出すより、安全策を取るというのも仕方がなかった。

 何人か今救出できないことを悔やんでいるヒーローもいるが、大半はもう切り替えている。今の時代のヒーローはこんなものだ。

 

 爆ぜる。

 爆ぜる。

 爆ぜる。

 

「つーかあのヴィラン……さっきオールマイトが追いかけてたやつじゃね?」

 

「オールマイト!? 来てんの!?」

 

「にしちゃ現場来るの遅くね? 他でも事件起きてるんかな」

 

 事件を肴にワイワイと騒ぐ群衆。危険にさらされている被害者も、立ち向かったり群衆を守るヒーローも完全にただの見世物感覚だ。ヴィランによる事件自体は珍しいモノではないし、命を懸けずヒーローに守られた民衆はどこでも大体こんな感じである。

 勝己はそれを気にしたことは今まで特になかった。モブキャラ相応の力しかない彼らが動かないのは当然だと。だが今ばかりはそれが勝己の心を追いつめる。

 

 爆ぜる。

 爆ぜる。

 爆ぜる。

 

「(ドブ男が一向に剥がし切れねぇ……ッ! 息をする余裕もなくなってきた……。俺がこんなところで死ぬってのか……?)」

 

 勝己は今まで、誰かに救けてもらえるような生き方をしてこなかった。自分は常に守る側で、救ける側で、何より倒す側であろうとしているためだ。格下、弱者に救けられてしまう屈辱は理解できるし、なにより憧れたオールマイト(ヒーロー)は勝己にとってそういう存在だったから。

 だけどもう取り繕いきれない。

 声を出すこともできないまま、思わず民衆の方を見てしまった。

 

「(あ……)」

 

 目が合った。

 幼いころからずっと一緒にいた少女、結城友奈。

 彼女にとっての救けるヒーローとしてもあろうとした、勝己の原点。何もこんな情けない姿を彼女に見せなくてもいいだろうに、と勝己は自分の運の無さを恨んだ。

 いくら幼馴染とはいえ幻滅されるだろうか、そう思っていたが友奈は勝己の想像を超えた行動を取った。

 つい先ほどまで表情に浮かんでいた恐怖を一瞬で飲込み、勝己に向かって駆けだした。

 

「馬鹿ヤローッ!! 止まれ! 止まれ!!」

 

「死にに来た馬鹿がいるな。オーケー、望み通り爆死だ」

 

 ヒーローの制止を無視する友奈に、ヘドロヴィランが勝己の体を操って攻撃しようとする。

 だが勝己はまだ完全に乗っ取られているわけではない。無理やり動かされる腕と“個性”を必死に制御し、ヘドロヴィランを棒立ちにさせた。

 

「かっちゃん!」

 

「馬鹿ッ! なんで来た!?」

 

 友奈は勝己にまとわりつくヘドロを必死に払いながら答えた。

 

「私のヒーローが救けを求めてた! ヒーローがピンチの時は、私が救ける!」

 

「………………………………………………………………………………………………は?」

 

 予想外の言葉に勝己の思考が停止した。

 ヒーローとは最後には勝つからすごいのであって、負けるどころか死ぬ間際になって救けを求めるようなやつなどクソだ。少なくとも勝己の認識ではそうなっている。

 それに自分は実績だってまだ立てられていない。倒すヒーロー見習いとしてやってきたことなど、小学生の時に上級生を返り討ちにしたとか、ヴィラン未満のチンピラを撃退したくらいだ。救けるヒーロー見習いとして友奈がやってきたことの方がよほど結果を残している。

 だと言うのに友奈は本気で言っているように見える。

 本気で、勝己のことをヒーローと呼んでくれている。

 ならいつまでも醜態を晒してるわけにはいかない。

 最後には勝つのがヒーローなのだ。まだ最後は来ていない。

 

「もう十分だ。どいてろ」

 

「あうっ!?」

 

 腕を振るい友奈を払いのける。ヘドロが連動して動いたせいで思ったより威力が出たが、怪我はしていない。

 そのまま後ろから伸びた樹に引っ張られて安全圏まで退避できた。

 

「ハハハ諦めたか? 安心しな、君は俺にとってもヒーローさ! こんないい“個性”と体を渡してくれるんだから!!」

 

 ヘドロヴィランが再び乗っ取ろうとしてくる。もうずいぶん体を覆われていた。このまま抵抗しなければ十数秒で乗っ取りは完了するだろう。

 

「(腹くくっただけだバカが)」

 

BOOOOOOOOOOM!!!!!!

 

 両方の掌を自分に向け、今日一番の大爆発を巻き起こす。

 学校の制服に耐火性能などあるはずもなく、爆炎は体表を焼き払いながらヘドロを吹き飛ばした。 

 

「ッ!!!!????」

 

「ハッ、落ち着きゃいけるじゃねぇかクソがぁっ! なんでこんなの相手に醜態晒してんだ!!」

 

 乗っ取りは無理と判断し、マンホールから下水道へ逃げ込もうとするヘドロヴィランを爆撃で吹き飛ばし逃がさない。

 流動体で掴むこともできない体でも、爆風なら吹き飛ばせる。核のようなモノは見当たらないが、分散して逃げたりもできないようなのでまとめて払えるため、一度引き剥がせば後は作業だ。

 勝己が粘っていた間にヒーローが用意した拘束用の箱へ向けてヘドロヴィランを放り込み、事件は終息した。

 




勝己が誰かに救けられることを多少は許容するようになりました。

なお勝己の言う「ヴィラン未満のチンピラ」とは「“個性”を使った犯罪を複数回行っていないため、正式に『(ヴィラン)』認定されていないやつ」と言う意味。
まだ認定されてないだけで危険性は変わらず。
勝己にとっては偶に怪我をすることは合っても死を感じることはない程度の雑魚だったが、友奈には普通に死の危機。友奈は誰かが危ないと思ったら救けに行ってしまうので、遭遇頻度も高かったからなおさら。
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