爆豪勝己の幼馴染が結城友奈だったら   作:ぬがー

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準決勝戦1

『さぁさぁいよいよ準決勝!

 今でも忘れられねぇヘドロ事件の解決者! コンビが分かれて対決だ! 爆豪VS結城!!』

 

「(皆すっごく強かった。たぶん“ワン・フォー・オール”じゃなきゃ勝てなかったと思う)」

 

 友奈は才能ある少女だ。

 “無個性”ゆえに身体能力で劣り目立つことはなかったが、体を動かすセンスが特に高い。超常黎明期以前なら様々なスポーツで万能な選手として引っ張りだこだっただろう。

 だが彼女がいるのは雄英高校、日本で最もレベルの高いヒーロー養成校だ。そこにいるのは才能あふれるヒーローの卵ばかりであり、友奈の才能でも霞んでしまう。

 “個性”が“ワン・フォー・オール”ではなく、親から受け継いだ普通レベルの“個性”なら勝てなかった、という自己分析に誤りはないだろう。

 

「(それでも勝ち上がってここまで来れた。もう私だって戦う力がないわけじゃないんだ。前は分担するしかできなかったけど、今なら一緒に戦えるんだから)」

 

 雄英に入学して初見殺し“個性”の危険性を実感した。

 今まで見えていた以外のヴィランの脅威について学んだ。

 多くのヒーローに守られて見えなかった現実を直視してみると、勝己と友奈では危険度が違い過ぎて「役割分担」だとはもう思えなかった。

 

「(だからここでかっちゃんに認めてほしい。私はかっちゃんのサイドキック(相棒)なんだって胸を張って言いたいから)」

 

「スタ―――――――ト!!!!!」

 

 ミッドナイトの合図と共に友奈が駆け出す。

 友奈に空中戦を行える能力はない。勝己が頭上を取り、そこから爆撃を連打してきたらもう詰みだ。一方的に攻撃され、反撃しようと跳びあがれば場外に吹き飛ばされてお終いである。

 

「(戦った後のことを考える余裕なんてない! 今出せる力、全部出し切る!)」

 

 “ワン・フォー・オール”の出力を15%程度まで無理やり上げる。限界を超える出力を出した代償に体は軋み悲鳴を上げるが、感覚的に試合中は維持できそうだ。

 雄英体育祭は興行だということが影響しているのか、勝己が先手を取るも飛び上がることはせずに足元めがけて収束爆撃を放つ。友奈はそれを横跳びで躱しながら距離を詰め、勢いを乗せた拳を振るう。

 

「温ィんだよ」

 

 爆破の反動で加速された裏拳が友奈の腕を弾いて逸らす。

 そのまま腕を取られ投げられそうになるが、勝己相手に体が宙に浮けばそのまま着地することが出来ず負けることが確定する。友奈はとっさに腕を振り切りどうにか投げられずに済んだ。

 だがそこへ追撃の足払いが繰り出される。跳んで避けることはできず、転倒こそしなかったものの体勢が崩れた。

 そこからはもう一方的だ。勝己が攻め続け、友奈は負けないように防ぐだけで手いっぱいであり、じりじりとフィールドの端に追い詰められていく。

 グラントリノ直伝の先の先を取ることで相手に何もさせずに倒す格闘術だ。彼はコレで学生時代のオールマイトを完封し、一年に渡ってボコボコにし続けトラウマを植え付けた。

 勝己はコレを「ずば抜けた才能」「高すぎるほど高いモチベーション」「モチベーションの高さを空回りさせない環境」の三つに恵まれたことで自分用に調整、習得していた。体育祭直前に習得した走馬燈状態も合わさり、ただ速くてパワフルなだけなら最早敵ではない。

 

「(かっちゃんが強いのはよく知ってる! 隙を窺ったりしてたら見つからないまま押し切られる! 強引にでも動いて隙を作らないとダメだ!)」

 

 勝己が友奈をよく知るように、友奈も勝己をよく知っている。

 勝己は大技の打ち合いでねじ伏せるような勝ち方も好きだが、相手の弱みを突いて何もさせずに圧倒する勝ち方も好きなのだ。今やっているのは後者であり、耐えているだけで隙など見付かりはしない。どうにか友奈の得意分野である力比べの流れに移す必要があった。

 

「(一瞬だけ“ワン・フォー・オール”の出力をさらに上げる! 負担は大きいけど、今は仕切り直ししなくちゃ!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、れ?」

 

 そしてそういう強引な行動で生じる隙を狙うのがグラントリノ流だ。

 友奈が力を入れるため呼吸を挟んだ瞬間、顎を裏拳が打ち抜いた。友奈の視界は歪んで揺れ、まっすぐ立つことすら出来ていない。

 

「これじゃ認められねぇな。やっぱ友奈は人助けの方が向いてンだ。納得いってねェみてぇだが、危険性とかじゃなくて重要性とか貢献度で考えてくれ」

 

 勝己が友奈を突いて場外へと押し込んでいく。友奈は転ばないようにするのが精いっぱいだ。

 

「(まだ終わってない、早く立て直さないと! じゃないとかっちゃんが一人で行っちゃう、それは絶対嫌だ!!)」

 

 友奈は気合いを振り絞り立て直そうとするが、体は付いて来ない。

 感覚を取り戻すことがないように調整しながら勝己は友奈を押し出していき、ついにフィールドの端までやってきてしまった。もうほぼ詰みだ。

 それでも友奈は諦めない。必死に打開策を考え続け、不意に全てが停止した。

 

「ッ!!!!????」

 

 靄に包まれた人影達が友奈を見据える。なんとなくだが友奈には彼らが歴代の“ワン・フォー・オール”継承者だと確信できた。

 彼らの中から代表者らしき人影が前に出て、口元の靄が晴れ言葉を発した。

 

『偶然とはいえオールマイト(8人目)も凄い後継を見つけたものだ。他者から授けられた力を扱う適正が飛びぬけて高い。

 力をストックし過ぎて至ってしまった“個性”特異点も、君なら乗り越えられるだろう。大丈夫だ、僕たちも支える』

 




友奈は原作で最も高い勇者適正を持っていました。それを「神樹から授けられた力を扱う才能」があったと解釈し、この二次創作では「誰かから授かった力を扱う才能」があるとして扱っています。
“オール・フォー・ワン”から他の“個性”をもらったのでは活かせない、純粋な力をストックし引き継ぐ“ワン・フォー・オール”を継承した場合にだけ活かせる長所です。
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