『いよいよラスト! 雄英一年の頂点がここで決まる!
雄英体育祭一年の部、決勝戦!! 爆豪VS轟!!!』
「なんか表情変わってんなァ……? 常闇との試合の後になんかあったか?」
「……なんでそんなことを聞く?」
「俺ァ学級委員長様だぞ? クラスの問題児のこたァ多少は気に掛けとるわボケ」
試合開始直前の舌戦。
轟からすれば挑発に感じるだろうが、勝己にとっては真面目な探り合いだ。
友奈のリクエストは「見ていて楽しい試合」だ。
つまり勝己が一方的にボコるんじゃダメだし、挑発して怒らせ無理矢理全力を出させるのもアウト。轟が自発的に全力を出したくなるように誘導しないといけない。己の道を突っ走り、周りはそれに付いて来いというタイプの勝己には難しい要望だ。
だがヒーローとしてオールマイトを超えんとするなら挑むべき問題でもあった。夢へとさらに突き進むため、友奈が用意してくれた壁を避けて通るという選択肢はない。
「(ま、凡俗どもを奮い立たせるよかマシだわな。あんだけ言われてまだここに立ってンだ。なんかしら抱えてるモンはあるはずだし、今だって燻ぶってるだけですぐに燃え上がれるに決まってる)」
『両者準備は万端だなッ!? 待ったは無しだ! 審判、合図頼むぜ!!』
「スタ――――――――――ト!」
先手は轟、常闇戦、芦戸戦同様に大氷撃で勝己を氷漬けにしようとする。障害物がなく距離を取って始める決闘での安定手だ。
だが勝己相手にこの程度で「距離を取っている」という認識は甘い。
事前に裸足になって入場しており、手足四か所からの爆破で一気に氷を跳び越え間を詰める。
「相手見て手は選べバァカ!」
両手から爆撃を放ち轟を吹き飛ばす。右半身はギリギリ氷で覆ってガードしていたが、左はもろに入った。それでもほぼ熱がっていないあたり、熱に対する耐性はあるのだろう。
勝己はそのまま中空へと飛び上がり、爆音にも負けないよく通る声で轟に語り掛ける。
「飛べるヤツに地を這う攻撃してどうすンだゴラァッ!? 常闇に言われたこと忘れてンのか!? それともただの間抜けか!?」
「忘れては、いねぇ!」
「堂々と間抜け自白してんじゃねぇッ!」
空から収束爆撃が連打される。
轟は氷の高速精製で回避するが、性質上右には移動しづらい。すぐに回避しきれず爆撃を浴びた。
「何がしたくて
「ッ、うるせぇ! ついさっき分かんなくなったとこなんだよこっちは!!」
「知るかボケェッ! 本気の夢がちょっとやそっとで分かんなくなるか!! そりゃさっきまで目ェ曇らせてただけだろォが!!!」
勝己の攻撃が激しさを増す。
それを轟はギリギリのところで防ぎ続ける。反撃に移ることも出来ず、答えることもできないストレスから、子供のように言い返した。
「じゃあお前は何がしたい!? 何のために俺に話しかける!? 勝ちたいだけなら一気に押し出せばいいだろ!!?」
「ガキかテメェは! 言えねェとでも思ってんのかッ!?
俺はオールマイトをも超えるNo.1ヒーローになるッ! そのためにやるべきことやってンだけだ!!」
勝己は堂々と自身の目標を叫んでのけるが、轟は耳を疑い爆撃をもろに受け場外ギリギリまで吹き飛ばされた。
それを見て白けたとばかりに勝己は爆撃をやめフィールドに降りる。ぐるりと観客席を見渡すが、誰も彼もが似たような表情をしていた。
「俺がコレ言うとどいつもこいつも似たよぉな反応しやがる。俺ごときがオールマイトを超えれるわけねェってアホを見る目で見下しやがってよォ!
テメェらクソ共が決めた限界なんざ知るか! 俺はそうなりたいって思った!! ならそうなるために進み、叶える!!! そンだけだ!!!!」
「……本気で言ってんのかよ?」
同じことを言い、同じ夢に向かって突き進み、結果挫折した男を知るが故の疑問。
二十年以上不動のNo.2であり、その他のヒーローとは隔絶した才覚を有する父ですらああなったのだ。轟にとってオールマイトは越えようと思って超えられる程度の存在ではない。とてもではないが勝己の言葉は信じられなかった。
「本気に決まってんだろォが!
そりゃ一人じゃ迷走したり立ち止まることもあったかもしれねェ! 折れちまう可能性だって当然ある!
だがな、俺にゃ本気で肯定して支えてくれるヤツがいンだよ! こんなに心強いモンはねェ!!
だから俺はブレねぇ曲がらねぇ止まらねぇ! 夢を叶えて、その先に進む!! わかったかッ!!?」
勝己の叫びに観客席はどよめく。
そこにいるほとんどの観客はオールマイトという絶対の存在に慣れ切り、挑むという発想すら無くした大人達だ。彼らにとって勝己の主張は狂人のソレに近く、理解できるものではなかった。
理解できた大人は、同じ夢を追ったエンデヴァーくらいのものだ。
「ふん」
エンデヴァーは機嫌が悪そうに鼻を鳴らす。彼が夢を追った時、応援してくれる者などいなかった。そして周囲の想像通り夢は叶わず、それでも諦めきれずズルズルと迷走を続けた。挙句の果てに
そんな彼にとって勝己はとても眩しく妬ましい。どうして自分はああなれなかったという思いが沸々と湧いてくる。
「(あの少年にもいつか限界が訪れる。頂きにたどり着けるのは焦凍のような特別な者だけだ。だからこそNo.1になるのはお前の義務なんだ。負けるなよ焦凍)」
そんな風に負け惜しみも混じったエールを息子に送った。
一方当の息子はというと、大多数の観客同様困惑していた。才能が有り過ぎるせいでこれまで轟を支えようと思う人になんて会ったことがなかったためだ。
「……わかるかよそんなもん。皆が皆、お前みたいに強かねぇんだ」
「根性無しが。まぁいい。試合開始前に言った通り、俺ァテメェのクラスの学級委員長様だ。余力でテメェのことも支えてやっからとりあえず動けや。壁いくつか越えりゃ強くなってンだろ」
「ッ、どこまでも上から言いやがってよ……! どうなろうが、知らねぇぞ!!」
轟の顔に引きつったような笑いが浮かぶ。大きな壁に挑むヒーローとして、まだ上手くは笑えないがそれでも一歩踏み出した。
左から炎を纏いながら、氷を勝己に向かって伸ばしていく。ギリギリまで迫ったところで追い越すように炎を噴射し、冷えた空気や水分を一気に膨張させ大爆発を巻き起こした。
『一回戦の爆発再び!! こりゃ爆豪散々煽って負けちまったかッ!?』
『無いとは思うが、もしやと思っちまう威力だな。さてどうなったか……』
観客席、実況席からは爆発で起きた蒸気で何も見えない。
ようやく霧が晴れた時、フィールドはボロボロになっていたが両者とも健在だった。
「威力は高ェが狙いが雑! まさかこんなので俺を倒せるたァ思ってねェだろォな!?」
本人の言う通り、威力こそ高かったもののそれをまき散らすだけ。火力は覚醒を果たした勝己をも上回っていたが、勝己に当たる分だけなら相殺も十分可能だった。
自身の最大火力をあっさり凌がれ、挑む壁の高さに轟は笑みのぎこちなさを薄れさせていく。
「あわよくばって思ったがそりゃそうだよな。まだ手はある。行くぞ」
「ダラダラ喋ってねェでさっさと来いやァッ!」
炎がばらまかれ、氷が地を覆い、それらがまとめて爆破され吹き散らされていく。並みのプロでは乱入することすら不可能な大火力の打ち合いだ。
「ハッハーーーーッ!」
「おおおおぉぉぉっ!」
氷での防御や場外対策は有効だが、攻撃としては遅く届かない。アクセルベタ踏みしか出来ず試合で使っていい火力ではないが、勝己なら防ぐと信じて轟は炎をメインに攻め立てる。
勝己は高速機動を最低限に、期待通りの打ち合いに興じる。純粋な出力では明らかに劣るが、立ち回りと貫通力の高さでむしろ有利な状況を維持して見せた。
しばらく膠着状態が続いたが、ついに転機が訪れた。
「ッ!?」
体温上昇と疲れから凸凹になったフィールドに轟が脚を取られる。
僅かなスキだがそれを埋めることは出来ず、勝己が一気に接近し中空へと吹き飛ばした。
「ぐぁっ!?」
「これで! 俺の! 勝ちだぁぁぁあああッ!!」
空中で身動きの取れない轟に対し、勝己の爆破が追い打ちをかけた。
場外へ吹き飛ばされたなら小規模な水蒸気爆発で立て直す目もあったが、それすら許さぬラッシュが叩き込まれる。
熱には耐性のある轟も爆破による衝撃は耐えきれず、ついに気を失って地面に落ちた。
「轟くん戦闘不能!
よって爆豪くんの勝ち!!
以上で全ての競技が終了!! 今年度雄英体育祭一年優勝は、A組爆豪勝己!!!」
期末試験デク「いくらハンデがあってもかっちゃんがオールマイトに勝つなんて…」
大体これがかっちゃんの周囲にいた人の総意。かっちゃんが何を言おうが、どれだけ頑張ろうがどうせ無理だと思ってる。
夢を守るため周囲全てに反発し「俺を見下すなモブどもが」って見下し返し続けた結果が原作のクソ煮込みかっちゃんだと思ってます。まず易きに流れビッグマウスしても叩かれない周囲を見下すお調子者キャラに、次に雄英で自分以上の才能を知って自分を追い込むため敵を作るキャラにって流れで。
この二次創作では友奈がいるので心に余裕があるので、楽な方に流されないし、オールマイトを「越えるべき壁」と思えない弱さにも多少は理解がある。おかげモブ呼びはしなくなってます。