「はぁっ!?」
「え、えええぇぇぇぇぇっ!?」
「HAHAHAHAHA、驚いているようだね少年少女! 私が、いた!」
警察官の塚内が運転するパトカーに乗せられ、着いた先はありふれたビルの一室。ここはマイツプロが保有する、オールマイトの秘密を知る者が会談する際に用いる隠れ家的な場所らしい。
ここでオールマイトに会えるのかと、若干ソワソワしていた勝己を余所に八木の肉体が膨れ上がりスーツがはじけ飛んだ。
画風が明らかに違うこの人こそ誰もが知るNo.1ヒーローオールマイトであり、八木の正体だったのだ。
「オールマイトの“個性”は不明だったが、発動系の体格強化だったのか。にしてもここまで変わると全然わからねぇな」
「んー、爆豪少年それは違う。プールでよく腹筋力み続けている人がいるだろう? アレと同じさ。怪我と手術で憔悴した体を力ませて全盛期と同じ体格に見せかけているんだよ。ヒーローとしての活動時間は一日三時間程度が限界になってしまったしね」
「…………マジかよ」
あっさりと告げられた「オールマイトの衰弱」と言う事実にさすがの勝己も動揺した。
日本の
そのオールマイトが弱体化していると知られれば、必ず治安は乱れる。オールマイトに代わる者が未だいない状況では絶対に知られてはいけない内容だ。
そんな話がいきなり出てきて、まだ本命の話が出てきそうな雰囲気に勝己と友奈は唾を飲み込んだ。
「まぁさっさと本題を話そうか。私の“個性”だ。
写真週刊誌には幾度も“怪力”だの“ブースト”だの書かれ、インタビューでは常に爆笑ジョークで茶を濁してきた。“平和の象徴”オールマイトはナチュラルボーンヒーローでなければならないからね。
実際のところ、私の“個性”は聖火の如く引き継がれてきたものなんだ」
「引継ぎだ? 聞いたこともねぇが、あんたが言うんならマジでそうなんだな。そりゃ隠すしかねぇか」
「ああ、この事実がばれれば“力”を奪わんとする者が現れるのは避けられない。大混乱の火種になりうるし、使わず隠すか消失させてしまうべきだと思うかもしれない。それでも社会には必要なんだ」
「そりゃわかるさ。あんたの功績を知らない奴なんていない。誰にも否定なんかできねぇよ」
「ありがとう。でだ、私の体はもうこんなだし、後継者を探していたんだ。そして君たちと話して決心できた」
「あ?」
「言ってくれたじゃないか、私を超えると。結城少女もだ。君が彼を支えてくれるなら進むべき道を間違うことはないだろう。君たちなら“
あまりの急展開にしばし二人は呆けていたが、内容を理解してくると表情に抑えられない喜びが浮かんだ。普段不機嫌そうな顔をし続けている勝己も今ばかりは純粋な笑顔を浮かべている。
何しろかのオールマイトに後継として認められたのだ。喜びを抑えられるはずもなかった。
「やったねかっちゃん! オールマイトが、かっちゃんのこと後継者に値するって!!」
「すげぇうれしい! でもお前も言われてんだろ! 友奈が救けてくれたから、俺は決意を固められたんだ! もっと自分のこと誇れ!!」
わいわいと喜ぶ二人。そんな姿をオールマイトは微笑ましそうに眺めていたが、やがて咳払いで中断を促した。
「すまない、まだ話が途中だからね。私の後継者になるにあたって、この“個性”―――“ワン・フォー・オール”を受け継いでもらいたい。とはいえ二人に分けて渡すなんて器用なことができる“個性”じゃないからね。どちらに渡すかと言う問題なんだが」
「なら友奈のほうに渡せ。俺は自分の“個性”がある」
「ええっ私!? こういうのはかっちゃんがもらうべきなんじゃ」
「結城少女の言うことも一理ある。爆豪少年の目標を達成するにあたって、この力は大きな助けになるはずだ。それでもいらないと?」
「いらねぇよ。元々自分の力であんたを超えるって決意したところだったんだ。それよか友奈に自衛能力あったほうが心労減るわ」
「……結城少女?」
オールマイトも怪訝な目を友奈に向ける。自衛手段が必要ってなにしてんの君、と言いたげだ。
「あ、あのですね、困ってる人がいて、私が頑張ればどうにかなるなら、やるべきじゃないかと」
「それで路地裏入ってチンピラに殴られて怪我したことあったんじゃねぇか……ッ! 困ってるヤツ見逃さずに救けられるのはすげぇけど、体張りすぎなんだよお前は!」
「ああ、なるほど。よく死ななかったね結城少女。いや、爆豪少年が頑張ったおかげか」
ヒーロー飽和社会と呼ばれ、多くのヒーローがパトロールをしている時代でも、人知れずチンピラに絡まれたりと被害に合っている人はいる。
というか“個性”を持て余し暴れたい人間が多すぎる時代なのだ。そういう人間が見つかりにくい路地裏などに溜まり、職業ヒーローたちは袋叩きを恐れて手出ししなくなる。そんな危険地帯は結構多いし、迷い込んで被害に合っている人も同様だ。
そんな被害者を友奈は見捨てない。大通りまで逃げれば誰かしらヒーローがいるので追われないからと、路地裏に迷い込んだ人を救けようとする。
そしてそれが上手くいかないことも当然ある。一回殴られて怪我をしたが、相手が腕力強化の“個性”持ちだったらそのまま死んでいた可能性だって十分あった。
それ以降は勝己が本気で友奈を守るようになったので同じことは起きていないが、よく体のできていない少年少女が生き残れたものだとオールマイトも感嘆した。
「あと俺だと元の“個性”があるが、友奈は“無個性”だ。今日の事件で今まで気づかなかった自分の“個性”を発動させるコツを掴んだっつー方が“ワン・フォー・オール”を使っても怪しまれにくい。
でかい力を持って友奈が無茶しないか心配だが、危険なとこには俺が行くし、譲渡可能な“個性”って事実を隠すほうが重要だ。
あとは雄英のヒーロー科を記念受験予定だったが、そっちに本腰入れれば友奈も本格的な“個性”の訓練時間を確保できるぜ」
「なるほど。じゃあそれで行こうか」
「……勘はいいんだろうけどよぉ、もっと考えて行動しようぜオールマイトォ」
デク「オールマイトのようなヒーローになりたい」
轟「オールマイトのようなヒーローになりたい」
ルミリオン「オールとまではいかないが、ミリオンを救う人間になりたい」
かっちゃん「オールマイトをも超えるヒーローになる」
オールマイトは超えられない前提で話をするヒロアカ世界で、かっちゃんの向上心はとびぬけてると思う。
次点で本気でオールマイト越えに協力してくれる人も、支えてくれる人も、競い合うライバルもいないままだったっぽいエンデヴァー。