オールマイトから“ワン・フォー・オール”継承の話を告げられた二日後の午前6時。
勝己と友奈はオールマイトと共に地元の海浜公園に来ていた。
「こんなゴミ山に呼び出して、いったい何の用なんだよオールマイト」
「それはアレさ、“ワン・フォー・オール”を受け継ぐための下準備だよ」
HAHAHAと笑いながらオールマイトは言うが、勝己と友奈は話が繋がらず?が浮かんでいる。
一しきり笑った後でオールマイトが説明を始めた。
「“ワン・フォー・オール”は身体能力強化の“個性”じゃなく、継承者が培った身体能力をストックし引き継ぐ“個性”なのさ。いわば何人もの極まりし身体能力が一つに収束されたもの!!
生半可な体では受け取り切れず、四肢がもげて爆散してしまうんだ!」
「どうやって確かめたんだよそれ」
「勘! なんとなく分かるんだよね、受け継げるくらい体ができてるかどうかも含めてさ!」
怪訝な顔をした勝己だったが、オールマイトは平然と言い返す。
こうも言い切られてしまうと返す言葉もないし、実際に今頼れる指標はオールマイトの勘のみなので勝己も黙った。友奈が爆散する危機とか冗談ではないので、専用の機材でしっかりデータ取ったうえで“ワン・フォー・オール”継承をやってほしいぐらいだが、それがダメだということは重々承知しているのだ。
「えっと、じゃあ体を作るためのトレーニングとしてここのお掃除?」
「YES! この区画一帯の水平線を蘇らせる! それと並行してトレーニングを行えば、丁度清掃が終わるあたりで体は完成しているだろう! 結城少女は元々格闘技で鍛えていたようだし、半年くらいかな?」
「やったー! ここの海浜公園、漂着物や不法投棄で荒れてたけど、撤去したゴミの処理費用が出せなくてどこのヒーロー事務所でも放置されてたんです。そのせいで地元の人は誰も近づきませんでしたし、綺麗にすれば遊べる場所が増えますね! 腕が鳴ります!」
「おお、やる気だね結城少女! 爆豪少年はどうだい?」
「トレーニングになるならやる。道端のゴミ拾うよかやる気は出るな」
「うーむ、爆豪少年のやる気の出し方は少しもやもやするなぁ。ヒーローってのは本来奉仕活動なわけだし……」
「はっ! 無償の奉仕なんぞ俺がやっても違和感デケェだけだろうよ。やりてぇことをやりたいようにやって、それが社会のためになってる。そういう姿で魅せるのが俺なりのヒーロー像なんだよ、今んとこな」
開始で若干ぐだりつつも、海浜公園の清掃活動とトレーニングの日々が始まった。
ある日は、友奈がゴミを持ち上げて運び、勝己は腕を真横に伸ばした状態で大きなゴミを掴んで運搬した。
またある日は、友奈が走り込みを行い、勝己は重りを付けて逆立ちで飛び跳ねながら並走した。
また別のある日は、友奈が小休憩をはさんでいる間、勝己は“個性”を伸ばす訓練だと言われ熱湯に手を突っ込んで汗腺を開いた後に最大火力での爆破を繰り返した。
そんな日常が続いたある日、友奈は疑問に思ったことを聞いてみることにした。話さない理由があるかもしれないとも思ったが、それならそうと言ってもらえるとも考えたからだ。
「あの、かっちゃんの方のトレーニングきつ過ぎないですか? 男女の差じゃすまないと思うんですけど?」
「ん? そりゃ決まって……そういえばこれ一般常識じゃなかったっけ。じゃあ説明しておこうか! 爆豪少年、一旦中断してこっちに来てくれ!」
どうも伝えるまでもないことだと勘違いしていただけだったようだ。
“個性”を使いこなすべくゴミを吊って空路でゆっくりと揺らさず運搬する訓練をしていた勝己が降りてきて、説明が始まった。
「解説の前に質問だ。爆豪少年、君は自分の“個性”が何か理解しているかな?」
「“爆破”だろ。掌の汗腺からニトロっぽい物質出してそれを爆発させてる」
「それは合ってる。でもそれだけかい? 爆破に耐えられる掌は? 同じく爆破を受けても折れない指は? 爆破の反動を抑え込む腕は? 体幹は? 爆破を至近距離で見聞きし続けても問題ない目や耳は? どれも超常黎明期以前の人間のそれじゃない」
「それは……確かにそうだな」
「改めて見るとかっちゃんの体すごい頑丈だよね」
「とまぁこのように、世代を重ねる中で多くの“個性”が混じった現代人は単一の力しか持たない場合はほぼない。パッと見“無個性”と同じ外見をしていても、異形型としての高い身体能力も持っているってことがよくあるのさ!
そして異形型の“個性”を持った肉体は他の“個性”と同様に、高い負荷を長時間に渡ってかけることで成長する!」
“個性”を使用すると吐き気や腹痛に襲われる場合、鍛錬を積むと副作用を起こさない、あるいは起こしにくい体質に成長する。またメインとなる“個性”に関係なくとも、肉体を鍛え上げることで超人的な身体能力を獲得することも可能だ。
とはいえそもそも存在しない機能を獲得することはできないし、成長率や成長限界は個人差がとても大きく、誰もが鍛えれば強くなれるわけではないのだが。
「ただ常人の体にそんなことしたら故障一直線だけどね! だから“無個性”な結城少女のほうは適度に休む必要があるんだよ。大きく伸びるのは“ワン・フォー・オール”継承を終えた後さ!」
「わかりました! 今は焦らず、コツコツと!」
「そういう仕組みになってんのか……。“個性”はあくまで身体機能の一つで特別扱いしてたつもりはなかったが、つもりでしかなかったってことか。まだまだ体も伸び代デカそうじゃねぇか」
「その調子だ爆豪少年。じゃあそろそろ再開しようか」