序章 始まりの幼龍
とある街の深夜、複数台の消防車や救急車、更に多くの外野が集まっていた。
その先にある一軒の家がごうごうと音を立てて燃え盛っていた。
「母ちゃあん!父ちゃあん!」
「駄目だ!近づいたら危ない!!」
「嫌だぁ!母ちゃあん!父ちゃん!!」
その一軒屋には、4人の家族が住んでいた。しかし、この火災で唯一生き残れたのは、この小さな男の子だけであり、「両親」は死亡、妹は行方不明となった。少年は泣いて叫んだ。
「ああああああああああ!!」
少年はただ泣いて泣いて泣きじゃくる。しかし、この時の少年はまだ知らなかった。自分がこの先に起こる数々の障壁が現れる事を・・・
−数年後 見滝原市−
ピピピピ!ピピピピ!
「・・・んっ、朝か・・・。」
見滝原という街の一角にある小さな一軒の家、そこでひとりの少年が目を覚ました。
「嫌な夢だ・・・朝から気分悪いぜ全く・・・。」
その少年は朝目を覚まして顔を洗って歯を磨き、シャワーを浴びる。
「さて、朝飯も食ったし行くか。」
少年はシャワーを浴びた後に制服に着替え、朝食を取りカバンを手に取って部屋の隅にある「自宅墓」に目を向ける。
「行ってくるぜ親父、お袋、由美。」
そうして少年は学校へ向かう。その少年の名はカバンにこう書かれていた。
「高坂健太」と・・・。
見滝原市、群馬県にある地方都市で、近年になって近代的な都市開発が進められており、最先端技術も数多く導入されている相当な規模の近未来型都市となった。
公共機関から一般家庭までタッチパネルによる操作盤が一般化しており市内の新興住宅地には公園とは別に人工的な景観の緑地や小川が整備され、郊外には風力発電用の施設や水門、工場などがある。
その公共機関である「見滝原中学校」はガラス張りで、電子黒板や床収納式机などの最新設備がされている最新鋭の公共機関である。
そんな中学校に通う少年の名は「高坂健太」の姿があった。彼は中学3年になる少年で成績優秀ではあるが素行が悪いため3年生の間では評判が悪い。
健太「学校に着いたは良いものの、特にやることもねぇし、授業が終わったら屋上に行くか。」
そうして健太はいつものように授業を受け、屋上で一息つく。すると屋上の入り口が開いて二人の少年と少女が現れる。
「やはり屋上に居たか。」
「探したわよ健太君。」
健太「お、龍二とマミか。どうした?」
声を掛けてきた二人の名は「松井龍二」と「巴マミ」健太の友人であり、龍二は4年生の時から、マミは中学1年生の時からの知り合いである。
龍二「相変わらず黄昏るのが好きだなお前は。」
健太「まぁ、二人以外まともな友達もいねぇからな。んで嫌な空気の中でやんのも癪に触るし。」
マミ「健太君は優しいのにどうして皆嫌うのかしら・・・」
健太「大体自分でも見当はついてる。人って大体は外面しか評価しねぇし、内面を見てくれんのは龍二やマミみたいな極小数だろうよ。」
龍二「それは言えている。今健太が受けてる仕打ちは「いじめ」と言っても過言ではないし「いじめ」は人が持つ本能的な物らしい。」
マミ「本能ねぇ・・・私達も外に駄目って言えないから加担してる側になるのかしら・・・」
健太「大丈夫大丈夫、二人は俺から見ても「中立的」な立場だから周りも下手に二人に喧嘩売ってこねぇのさ。第一、二人に何かしら危害が加えられんならそいつらをぶっ飛ばしてやるよ。」
龍二「退学処分になるぞ?」
健太「二人を守れんなら構わねぇよ。それに今更ここまでシカトされてりゃあ退学しても気づかれんだろ!ハハハハ!」
マミ「笑い事じゃないわよ・・・せっかく三人一組で頑張って来たんだから。それに卒業まで後1年だからそれまでに私達もなんとかしてみせるわ。」
龍二「ふっ、マミは頼もしいな。」
マミ「当然よ、だって私はもう「孤独」じゃないから。」
龍二「そうだな、俺達は三人揃ってのスリーマンセルだ。孤独ではない。」
マミ「えぇ。あっ、健太君。」
健太「ん?どうした?」
マミ「早乙女先生があなたを呼んでたわよ。何でも手伝って欲しいことがあるんですって。」
健太「うわぁ・・・絶対重労働させられるパターンじゃねぇか・・・。龍二ぃ・・・」
龍二「俺まで巻き込むな。一人で行ってこい。」
健太「二人揃ってのスリーマンセルじゃねぇのかよ・・・」
龍二・マミ「「それはそれ、これはこれだ(よ)。」」
健太「うへぇ〜・・・分かったよ。」
健太はそう言って面倒くさがりつつも腰を上げ、早乙女先生のいる職員室へ向かった。
第1章「出会い」