魔法少年 ケンタ☆マグス 古の血を継ぐ者   作:マイスリッド

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第16話

奴等はキュゥべぇに「成り代わる」という発言を言った。

 

健太「キュゥべぇに成り代わるだと...、それでお前らはキュゥべぇ自身の役割を奪って魔女にならない世界を作ろうとしているのか。」

 

龍二「そうだ。ドッペルになることでエネルギーを得て宇宙を維持し、魔女にならない世界を作る。魔女が消え去れば俺達は平穏に暮らせる事が出来る。その為にも俺達は早くイブを魔女化させなければならない。そして発生した相転移エネルギーを利用し神浜を包む被膜を視界に広げると同時に魔女になったイブを被膜に固定する事が出来れば、灯花が言ったエネルギーを宇宙に返す唯一のゲートが出来る。」

 

吉信「後はエネルギーを回収しつつ宇宙に返す性質を持つイブが世界中で発生したエネルギーを自動で宇宙に送ってくれます。宇宙が存続するのならキュゥべぇが干渉する理由はなく干渉しようと思っても神浜と同じ被膜があるため、むやみやたらに魔法少年少女や魔女も生まない我らの桃源郷が完成するのですよ。」

 

悠太「なるほどな、キュゥべぇが神浜から姿を消したのもお前達の仕業ということか。」

 

ねむ「キュゥべぇを遮断している被膜は保険だよ。灯花はキュゥべぇが現れたって簡単な言葉で片付けたけど、僕と吉信の力で彼らのネットワークに介入して情報を根こそぎ抜き取ろうとしてから警戒されたんだ。」

 

吉信「ただ、我らを魔法少年少女にしたのもキュゥべぇ自身、こちらの真意を半分でも知って個体同士を並列化しているなら神浜の内情を気にしていても適度な干渉はしないと踏んでいたんですよ。それにドッペル化する時に発生する負の感情エネルギーやウワサに巻き込まれた人が生み出す感情エネルギーをキュゥべぇに回収されたくありませんからね。」

 

ねむ「ただ、その役目ももうすぐ終わり。ワルプルギスの夜がすぐそこまで来ているからね。」

 

やちよ「あなた達はワルプルギスの夜を甘く見てる。いくらこれまでが上手くいっていたとしてもあの魔女が来てみなさい。今までの計画だって残らないかも知れないわよ。」

 

龍二「ふん...、甘く見ているのは七海やちよ、貴様じゃあないのか?」

 

やちよ「え?」

 

するとその場から瞬時にやちよさんに近づいて首を掴み、叩き伏せる。

 

やちよ「ガハッ...!?」

 

マギウス以外「やちよさん!?/やちよ!」

 

龍二「ふん!」ギュイン!

 

健太「なっ...!?かっ...、体が...!?」

 

いろは「動かない...!?」

 

壮介「くそっ...!」

 

龍二が俺達に手のひらを向けて、俺達の動きを封じた。

 

龍二「これが、「輪廻義眼」の力を使う者の力だ。これでまだ甘く見ていると言えるか?七海やちよ?」

 

やちよ「くぅ...、あなた...、一体、何者なの...!?」

 

龍二「...俺の今の肩書きは「マギウス総司令会長」だ。そしてもうひとつ教えよう。「旧松井一族第89代当主」古くから神浜に住んでいる魔法少年少女達なら、分かるはずだ。」

 

悠・十・や「っ!?松井一族!?」

 

健太「松井一族...?何すか悠太さん、十六夜さん!」

 

悠太「健太、お前、何も聞かされていないのか...?」

 

健太「...はい。」

 

十六夜「松井一族は、この神浜の基礎を作ったとされる一族だ。」

 

健太「神浜の...、基礎...!?」

 

俺は十六夜さんから「旧松井一族」の話を聞いた。

 

まず、この神浜を作ったのが「松井一族」だ。その時はまだ小さな組織であり、神浜という地域は今みたいに大きくはなかった。

何故なら今の区分で分けられている地域はかつて魔法少年少女達の激戦区となっていた。

「松井一族」は北養区内で勢力を高め、次第にエリアを広げるために新西区、水名区、栄区、参京区、南凪区の順番で支配していき、これに危機感を感じた工匠区、大東区が松井一族に宣戦布告をしたが、これを退け、一族達は真ん中の中央区以外は全て制圧し、「神浜」と名付けたそうだ。

その日から他府県から侵略してくる魔法少年少女達を退け、いつしか神浜最強の一族と謳われた。月日が流れ、江戸時代末期に入ると突如としてその名が葬られてしまったそうだ。

 

健太「松井一族が...、どうして急に...?」

 

十六夜「理由は分からん。一説によれば、当時、開国に迫ったアメリカの艦長を暗殺するために江戸へ向かおうとしていたが、江戸幕府に暗殺が発覚し、当時の松井一族の長が責任を取って一族を解散させたという説が濃厚らしい。」

 

龍二「和泉十六夜、その説はハズレだ。」

 

十六夜「何...?」

 

龍二「正解を教えてやる。一族が消えた理由、それは......。」

 

龍二が口を開く。放たれた言葉は信じられないものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

龍二「当時の「高坂一族」に敗れ、滅びた。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

健太「っ!?」

 

俺は言葉が出なかった。俺の一族が、龍二の一族を滅ぼした...!?

 

龍二「その顔、初めて知ったような顔だな。まぁ無理もない。その後に「高坂一族」も滅びてしまうのだからな。」

 

健太「......」

 

俺は理解出来なかった...。俺と龍二の一族が滅びたのなら何故「高坂」と「松井」という名字が受け継がれているんだ...?

 

いろは「でも...、一族が滅びたのなら何故健太さんと龍二の名字に高坂、松井がついているんですか...?」

 

龍二「当時の松井一族は関東の実権を握っていてな、いずれは関東から北陸へ進み、東日本を支配しようとしていた。だが、それをよく思っていなかったのが、「高坂一族」だ。高坂一族はこの時、関東を松井一族の支配から解放するために、神浜へ進軍し、その情報を知った松井一族はすぐさま北陸から神浜へ引き返し、新西区、水名区、栄区、参京区、南凪区に留まっていた魔法少年少女達を集め、防衛に徹した。工匠区、大東区はこの気を逃すまいとして進軍していた高坂一族と手を組んだ事で魔法少年少女達の枢軸軍、連合軍として戦争を起こした。結果、松井一族は撤退を余儀なくされ、静かに表舞台から姿を消した。」

 

やちよ「その戦争...まさか...。」

 

龍二「ああ、その戦争は古くから受け継がれている魔法少年少女達の間で「神浜東西戦争」と呼ばれている。そして松井一族が何故撤退を余儀なくされたか...、健太、お前の一族がワルプルギスの夜を呼んだからだ。」

 

健太「何......!?」

 

いろは「嘘......」

 

壮介「なっ...!?」

 

鶴乃「健太君の...、一族が......!?」

 

さな・俊「......」

 

フェリシア「おっ、おい健太ぁ...、知ってたのかよ...?」

 

健太「いや...、だが...」

 

龍二「何故ワルプルギスの夜を呼んだか...、一族はワルプルギスを呼ぶ事で松井一族を完膚無く叩き潰すつもりだったんだろう。俺の一族は必死の抵抗でワルプルギスの夜、高坂一族と徹底抗戦した。だが犠牲となった魔法少年少女はどんどん増えていき撤退した。高坂一族はこれを喜んだがワルプルギスは標的を松井一族から高坂一族へ変え、高坂一族を滅びへと追いやった。だが、このままワルプルギスを野放しにしておけば神浜そのものが壊滅してしまうと思い、松井一族の輪廻義眼継承者がワルプルギスを倒し、神浜に平和が訪れた。これが高坂一族と松井一族の血塗られた歴史というわけだ。」

 

やちよ「輪廻義眼継承者が...、ワルプルギスを倒したの...!?」

 

龍二「いくら輪廻義眼継承者といえど一人の人間、そこで編み出したのが、「革命のウワサ」だ。」

 

健太「っ!?あのウワサが...!?」

 

龍二「そうだ。このウワサはワルプルギスを倒した所謂「伝説のウワサ」という奴だ。だから、七海やちよ。あまり、マギウスを舐めない方が良いぞ?」

 

やちよ「くっ...。」

 

龍二「後、何故高坂一族が滅びたのにも関わらずお前という存在がいるのは、生き残りがいて今の見滝原で勢力を集めた事で一族は滅びを免れたんだ。」

 

健太「............」

 

龍二「だから俺はお前との縁を切ったんだ。これ以上お前と関われば一族はよく思わない。だが...、お前はそれでも、俺に関わろうとする...。何故だ...?何で俺にそこまで関わろうとする!?俺はそれが理解出来ない!!」

 

健太「......んなもん、一族同士の因縁だろうが関係ねぇよ。「友達」だから。」

 

俺は立ち上がって龍二に話す。

 

健太「龍二...、お前と分かり合うには一筋縄じゃいかねぇって初めてあった時からわかってた。それに、拳で分かり合うのがお前とのやり方なのは間違いないよな!だから、お前の憎しみ、晴らしてやる。」

 

龍二「......俺は松井一族を背負っている。お前の一族に俺の一族を半壊滅状態にされ憎しみを背負わない訳がない。憎しみを、晴らすだと?やれるものならやってみるがいい...!俺は変わりはしない...!お前と分かり合う気もない...!死ぬ気もねぇ...!ここで死ぬのは貴様らだ...!」

 

壮介「ふざけんな...!ここで死ぬだと?俺はまだ死なないぞ...!」

 

俊「僕も...、まだ死ぬつもりはありませんよ...!」

 

いろは「私も、まだ死ぬわけにはいかないんです...!ういを見つけるためにも...!だから、私達はワルプルギスの夜を消します!」

 

やちよ「そうね...、マギウスの計画が成功すれば魔法少年少女の解放は叶うと思うわ...。今まで聞いていた通り、未来の魔法少年少女達が救われると思う。けど、理屈を聞いても被害を受けることに変わりはない。」

 

健太「そうだ。神浜には百万を越える人がいるし、大切にしたい思い出だってある。それを私事で巻き込んで壊滅させるわけにはいかねぇんだよ。それに、お前が今やっている事は俺の先代達がやったことと同じ事してんだよ。」

 

鶴乃「魔法少年少女しか見てないからそんなことが言えるんだよ...。私だって万々歳がある。皆で盛り上げた商店街だってある。通ってきた母校だってある。それを私は...、私のワガママで潰せないよ...。」

 

フェリシア「そうだぞ!かこの書店やあやめのつつじの家もみーんな壊れるかも知れないだろ!?それにやちよの家だって!」

 

さな「はい、私も神浜は自分の家とか嫌な思い出が多いけど皆の思い出も消して良いとは思わない。こんな私でも、友達になってくれた人だっているんです...!その人達の悲しい顔なんて見たくないです...。」

 

十六夜「確かに、彼女達の計画に乗れば滅びが見られるかもしれん。だが些かお遊びがすぎる。」

 

悠太「イブがワルプルギスの夜を食らった後に制御出来なければもはや終末...、人類そのものが手を取り合う前に荒んでしまう可能性がある...。」

 

灯花「ここまで聞いても否定するんだ...。」

 

ねむ「驚きを通り越して圧倒されるよ...。」

 

アリナ「けど、あれだヨネ。」

 

吉信「えぇ、ここにいるから分からないかもしれませんが、状況はみなさんが思っているよりひどいかもしれませんよ?」

 

健太「どういう事だ?」

 

灯花「私達をどれだけ痛めつけて泣かせたとしても、たとえイブが消えたとしてもワルプルギスの夜は止まらない。」

 

ねむ「ごめんね、みんな。」

 

アリナ「だから、アナタ達に残されたセレクションは2つなワケ。1.アリナ達の計画をブレイクさせてこの町を魔女化する町にバックさせた挙げ句ワルプルギスの夜に神浜を蹂躙させる。2.素直にアリナ達の計画を見守って魔女化のない世界になるのを待つけどワルプルギスの夜に神浜を蹂躙させる。」

 

龍二「まぁどちらにせよ、町の被害は避けられん。ワルプルギスを止める以前にもう接近しているからな。」

 

吉信「どちらにしても犠牲が出るなら選ぶ方は決まっていると思いますがね?」

 

灯花「そうそう!今、皆がワガママを通すとみーんな無駄死にになっちゃうよ?それでもいいのかにゃー?」

 

龍二「......」

 

健太「それでも、構わねぇなら...!マギウスが未来の魔法少年少女達を救うって言うのなら俺は未来の人類を救う!イブにワルプルギスを食べさせて魔女にはさせねぇ!」

 

龍二「ふっ...、この期に及んでまだそんなことを言うか...。まぁいい。時間だ。」

 

すると突如聖堂の結界が崩れてきた。

 

健太「っ!何だ!?」

 

吉信「とうとう藤村さんが消した見たいですね。」

 

ねむ「一緒に藤村も消えたかも知れないよ。」

 

アリナ「みふゆのボディが無事ならそれでも良いんだケド。おかげでラストスパートってワケ。」

 

龍二「ここに留まっていれば俺達も巻き込まれる。吉信、灯花、ねむ、アリナ、行くぞ。」

 

灯花・ねむ「うん!」

 

アリナ「オッケー。」

 

吉信「承知いたしました。」

 

健太「っ!?待て龍二!!」

 

壮介「健太!ダメだ!」

 

健太「ちぃっ!くそっ!」

 

悠太「気持ちは分かるが今は動くな!皆!それぞれで固まれ!」

 

悠太さんの指示で皆それぞれ動かずに固まる。そして結界が崩れ、フェントホープが倒壊した。


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