爆発の影響で渦を巻いた雲の中から健太と龍二が落ちてくる。健太は深い水の中、龍二は地に落ちる。
龍二「くっ・・・ゲホッ・・・はぁ・・・はぁ・・・クククッ、クハハッ!これで・・・これで俺はやっと、一人だ・・・!」
−共鳴の谷 水中−
健太は深い水の中へ落ちていた。健太は無気力な姿となり、水を這い上がる力も無い。健太は龍二を助けられなかったと思いながら重量に逆らえずに落ちていく。するとどこからともなく健太が見知った声が聞こえてくる。
「どないした?まさか、もう諦めたわけじゃないやろな?」
健太「この声・・・兄・・・き・・・?」
声の主は藤村通だった。通は健太に話す。
通「あんな程度の事で、お前らの繋がりは切れるもんなんか?違うやろ。」
そう言って通は健太の背を支える。今度は悠太も健太の背を支える。
悠太「俺と藤村がそうだったように、お前と龍二の繋がりもそう簡単に切れるものではないはずだ。」
通「思い出すんや、お前は、俺と悠太を再び繋げてくれただけやない。これまで多くの魔法少年少女らの心を解かしてきたんや!」
そう言って健太は思い出す。これまでの多くの魔法少年少女達の出会いを。
通「敵対しとった者や、憎しみに包まれとった者…他市の魔法少年少女を拒んどった者、そして痛みを抱えとった者もや。あのウワサやキモチですら・・・そして神浜のわだかまりさえお前は解かしてきたんや!なら、後はたった一人だけやろ!頑固なダチ助けることなんざお前なら造作もない・・・せやろ!?」
悠太「フッ、安心しろ、お前の背には多くの意志が集まっている。」
すると新たにかなえ、メル、立明、宗雄が健太の背を支える。
悠太「師や兄姉弟子、そしてこれまでに作った繋がり…仲間達の意志・・・力が足りないのであれば、皆の手を借りればいい。それが健太、お前の「力」だからな。」
そして恵理子、由美、影信も健太を支える。
恵理子「健太、あなたの心はまだ死んでいないわ。自分から闇に籠もるなら無理矢理にでも引きずり出してやりなさい!」
由美「手を振りほどくなら、その叫びで目を覚まさせてあげて!」
影信「届かない思いなどないからな!!」
いろは「皆、信じてます。健太さんは・・・」
やちよ「不可能を可能にするってね。」
その言葉で健太の身体が少し反応する。
俊「だから、健太さん!」
壮介「こんなとこで休んでんじゃねぇぞ!」
鶴乃「もっとかっこ悪くもがいてみせてよ!」
さな「それが私達の知ってる・・・!」
皆「高坂健太だろ!/です!/だ!」
その言葉を聞いた瞬間、健太は意識を戻して拳を固める。
フェリシア「繋がりは消えねーぞ!」
うい「なら、その手を固めて立ち上がろうお兄ちゃん!」
通「目に炎を灯すんや!!」
悠太「雄叫びを上げろ!」
そしてマミが支え、健太を鼓舞する。
マミ「さぁ!龍二君が待ってる!」
十間「行って来い健太!!てめぇのために!」
皆「未来(さき)のために!友のために!前へ!!」
健太「うぉおおおおおお・・・!!だぁらぁああああああああああああ!!!」
意識を取り戻した健太は水の中から飛び上がり、龍二は驚く。
龍二「なっ・・・!?健・・・太・・・!?」
そして決意を固め、瞳に炎を灯した健太は再び龍二と相まみえる。皆の声援で意識を取り戻し、再び龍二の前に健太が立ちはだかる。
健太「まだだ、まだ、行かせるかよ龍二ぃ!」
龍二「・・・何故だ、何故お前は・・・何度も何度も・・・!何なんだお前は、一体お前は、何なんだぁ!?」
健太「・・・友達だ。だからお前を、一人にはさせやしねぇ!」
龍二「クッ…ハハハハッ・・・お前はそんな風になってもまだそれを言うか。もう分かったはずだ、俺はそっちに戻る気は・・・!」
健太「俺が諦める気がないのも分かってるはずだ!お前に何を言われようが、この気持ちは変わらねぇ。お前に手を伸ばし続ける。最後まで、届くまでな!」
そして健太と龍二は互いに歩み寄る。
龍二「俺の意志も変わらない。俺はお前を切る・・・これまでの道を終わらせるためにな!」
健太「俺はお前を諦めない!これまでの道を繋げておくために!」
龍二「お互い、もう残された力は少ない・・・これが最後の戦いだ。」
そう言って一息つき、そして健太と龍二は再び激突する。高坂健太と松井龍二、二人の長きに渡った本当の最後の戦いが始まる。
戦闘BGM「The Final Fight」ナルスト4
「VS 永久の盟友 松井龍二」
龍二「いい加減しつこいんだよ!さっさと切られやがれ!」
健太「へっ!お前じゃあ俺との繋がりは切れやしねぇよ!」
龍二「繋がり繋がりうるせぇんだよ!お前は!繋がりがあるからこそ苦しみが生まれるんだ!それが強ければ強いほど俺を悩ませるんだ!健太ぁ!お前との繋がりが一番めんどくさいんだよ!何故闇に落ちた俺をさっさと切らない!?」
健太「仕方ないだろ!俺はお前を兄弟のようだと思っちまってんだから!だからこそ心と身体が勝手に動いちまうんだ!お前が一人にならないようにってずっと考えちまうんだ!」
龍二「っ!お前はっ・・・!」
健太と戦うに連れ、龍二の心も揺らぎ始める。そして龍二は雷切を発動し、健太は螺旋気弾を発動し、互いに技が当たると吹き飛ぶ。
健太「ぐぁっ!」
龍二「ぐぅっ!以前と同じように俺が勝つ!お前はまた俺に及ばずに負けるんだ!」
健太「俺が前とは違うって分かってんだろ?俺は負けねぇ!」
龍二「いいや違う!お前は変わってない!それが俺をムカつかせるんだ!」
健太「なに!」
龍二「昔から変わらないお前のその姿が!くそっ・・・!!」
そう言って二人はありったけの魔力でぶつかる。そして互いに魔力はもう底に尽きかける。だがそれでも二人はお互いの信念のために戦う。
龍二「くそっ、お前さえ・・・お前さえ横にいなければ俺は!」
健太「残念だったな!最初から側にいたのが俺でよ!俺はこう見えて蛇年だからしつこさだけは1人前でな、お前が諦めるまで俺は諦めねぇぞ!!」
龍二「ぐぅっ!お前・・・!健太ぁああ!!」
健太「龍二ぃいい!!」
お互いが走りながら拳を固めクロスカウンターを浴びせる。二人は少し吹き飛ぶ。
健太・龍二「「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・。」」
健太と龍二は既に魔力が極限状態に陥っている。だが、それでも互いに歩む。
健太「ぐぅっ・・・オ・・・ラァ!!」
龍二「惜しい・・・な・・・フンッ!」
健太「ぐはぁっ?!」
健太の隙をついて龍二がアッパーを食らわす。
健太「はぁ・・・オラァ!!」
龍二「ぐはっ・・・!?」
健太は反撃で強烈な左フックを龍二の顔面に食らわす。龍二はすぐに起き上がり、反撃で足蹴りを健太の顔面に食らわす。
龍二「オ・・・ラァ!!」
健太「ぅぐっ!?」
龍二「食らえぇ・・・!!」
健太「食らうか・・・よ!!オラッ!」
龍二「ぬがぁっ!?」
足蹴りをしたタイミングで龍二は健太の上にマウントを取って殴りかかるが健太は頭を避けて龍二の顔面に頭突きを浴びせる。
龍二「く・・・そがぁ・・・!」
健太「この・・・やろぉ!!」
お互いが殴り合いとなり、体力が尽きるぎりぎりまで殴り続ける。そして残っていた微量の魔力を互いに拳に込め殴る。
健太・龍二「オラァアア!!!」
健太「ぐぅうう!!」
龍二「ぬぅうう!!」
そして二人は力に任され吹き飛ばされる。龍二は右の岩壁に、健太は左の岩に激突する。そして龍二は右手に全ての魔力を込めて雷切を発動する。
龍二「そろそろ、終いにしようぜ・・・」
健太「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・!」
健太も最後の力を振り絞り螺旋気弾を発動する。
龍二「この戦いを・・・!」
そして健太と龍二は飛び出し利き手を差し出し技をぶつける。
健太「龍二ぃいいいいいいいいいい!!!」
龍二「健太ぁああああああああああ!!!」
健太・龍二「「うぉあああああああああああ!!!」」
そしてお互いの技がぶつかり大爆発を起こしそれは共鳴の谷全体に広がる。
龍二「・・・・・・・・ぅっ・・・・」
健太「・・・ようやく目ぇ覚ましたか。」
龍二「ぐっ・・・!・・・っ!?」
龍二は目を覚まし、身体を無理矢理起こそうとしてふと右腕に違和感を感じ見ると右腕が半分無くなっていた。健太も同様で左腕を無くしていた。
健太「見てのとおりだ、無理に動けば傷が広がるぜ。」
龍二「・・・・・・こんなになってまで・・・何故、俺の邪魔をする・・・?」
健太「・・・・・・・」
龍二「俺は闇に落ち、全てを切るために力を得た・・・。どんなやつでも一度は俺を切ろうとした。だが、お前は決して俺との繋がりを切ろうとしなかった・・・何故そうまでして俺との繋がりを切ろうとしない!?」
健太「へへっ・・・何度も言ってんだろ、お前も分かってるはずだぜ・・・」
龍二「いいから答えやがれ!」
健太「・・・「友達」だからだ。」
龍二「・・・お前の言った「友」とは、お前にとってのそれは何を意味するものだ?」
健太「そんなもん、口で説明出来るほど簡単じゃねぇよ。ただ、お前がそうやって一人で抱え込んでるのを見てるとなんでか・・・・・・」
龍二「・・・?」
健太「俺まで、痛くなるんだ・・・。」
龍二「っ!」
健太「すごい痛くて、本当に言葉では表せないけど・・・だからこそ、放っておくわけにはいかなかったんだ。」
龍二「・・・・・・」
龍二は健太の言葉を聞いて目を瞑り、走馬灯のように記憶が蘇る。
〜side龍二〜
健太、お前が小学生だった頃、常に一人でいたことは知っていた・・・俺と同じで周りから蔑まれていたな・・・。
だが、お前は俺とは違ってそれを物ともせず馬鹿な事をして他人に関わろうとしていた。
最初はお前のそんな姿を見て馬鹿な奴だと思い、お前を見下していた。だが、言葉とは反対に俺はお前に興味があった。
そして俺達は互いに成長し同じ中学生となった。中学生に入っても変わらないお前の背を見た俺は…お前と共に歩みたいと思った。
そして俺は、お前やマミと一緒になる内、己の家族を見るようになった。
だがら、お前が苦しむのを見るたび俺も、痛かったんだ。お前の痛みが分かった時、初めて仲間だと思えた。だが、お前は魔法少年となって強くなっていく姿を見て、放っておくわけにはいかなくなった。
お前には・・・俺には無い「強さ」があり、いつも俺の前を歩いていた。その姿は、かつての夢乃姉さんのように・・・。
今日だってそうだ、お前は・・・・・・
〜sidefin〜
健太「痛てて・・・!」
龍二「・・・・・・・」
健太「はぁ、まだ身体動かすのは難しいか・・・せっかくてめぇをぶん殴って目を覚まさせてやりたいのによぉ・・・。」
龍二「フフッ、フハハハッ・・・!」
健太「あ・・・?」
龍二「ハハハハハッ!」
健太「なっ、何だよ?」
龍二「お前はこんなにボロボロになって、まだやる気かよ?」
健太「当たり前だ!何度だっt「認めよう。」・・・は?」
龍二「・・・・・俺の「負け」だ。」
龍二の唐突の敗北宣言に健太は一瞬ポカンとしたがすぐに正気を戻す。
健太「ばっ、馬鹿かお前は!これは勝ちとか負けとかそんなもんじゃねぇんだよ!あのな!ダチのてめぇが駄々こねて拗ねてるからぶん殴って目を覚ますって奴なんだ!そもそも勝負すら始まってねぇよ!!」
龍二「なぁ、健太・・・俺はお前に対し敗北を認めた。ここで俺が死ねば八龍仙人の時代から続く戦いの連鎖は、幕を降ろすだろう。これも一つの革命というやつだ。これ以上、神浜の魔法少年少女に迷惑を掛けぬ為に俺自身で決着(ケリ)をつける。」
健太「死んで決着が着くなんて思うなよ・・・死ぬくらいなら生きて俺に協力しろ!俺のやりたいことは、この日本に住む全ての魔法少年少女の協力だ!もちろん、お前も含めてな!」
龍二「お前がそれで良かったとしても、他の魔法少年少女が納得しないだろう。」
健太「あーもう!それ以上グチグチ言うならまたぶっ飛ばすぞ!」
龍二「俺がまた、お前に楯突くかもしれないんだぞ?本当に良いのか?」
健太「お前はもうそんなことはしねぇっての!」
龍二「・・・何故、そう言い切れる?」
健太「あのなぁ、これ以上おんなじ事言わせんな!」
龍二「っ!」
健太「っていうかよ、まだお前は分かってなかったのかよ。ま、お前も俺と同じで意外に馬鹿だもんな、ハハハ!・・・っ!」
そう言って健太は左を向くと、龍二は顔を背けているが涙を流していた。
龍二「・・・うる・・・せぇよ、馬鹿助が・・・。」
二人の腕から流れる血は自然と手を繋ぐようになっていた。そして崖上にマミと悠太が現れる。
マミ「やっぱりここだったのね、悠太さん。」
悠太「ああ、行ってきな。」
マミは崖を降り、悠太は三人を見守る形になる。
龍二「マミ・・・・・・」
マミ「・・・・・・」
健太「マミ、助かったぜ。」
マミ「良いのよこれくらい。」
龍二「・・・マミ、すまなかった・・・。」
マミ「すまなかったって、何が?」
龍二「俺は、今までお前に対して散々な事をしてしまった・・・今更謝っても、許されない事は分かっている・・・。」
マミ「・・・・・・・ほんとよ、全く・・・!」
マミも涙を流す。それを崖上から静かに悠太が見ていた。
悠太「フッ、ようやく揃ったな。長い兄弟喧嘩しやがって・・・。」
そう言って悠太は静かに微笑む。こうして長きに渡った兄弟喧嘩は決着となり、神浜市を巻き込んだ神浜東西戦争は本当の終結を迎えた。
最終章 古の血を継ぐ者 完