魔法少年 ケンタ☆マグス 古の血を継ぐ者   作:マイスリッド

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第8話

ーー北養区山道ーー

 

マギウスの本部へ向かっている途中、姉貴にこれまでの経緯を説明した。無論マギウスがワルプルギスの夜の事も。

 

ももこ「マギウスがワルプルギスの夜を呼んだぁ!?」

 

かえで「それって何なの!?」

 

レナ「異名っぽいけど、どこかの魔法少年か魔法少女?」

 

健太「んなわきゃねぇだろ。魔女の名前だ。しかも超弩級で災厄の魔女だ。」

 

レナ「はぁっ!?」

 

かえで「ふぇええ!?ど、どうしようレナちゃん!?」

 

レナ「レナに聞かれても困るわよ!っつうかこっちが聞きたい位よ!」

 

やちよ「そう、困った事になったわ。早くいろは達と合流してやめさせないと...。」

 

悠太「ああ、そうしなければ神浜が蹂躙されるかも知れん......。......っ!?まだいたか...!」

 

突然の攻撃を見切った悠太さんはすぐに避ける。すると茂みから羽根達が現れ行く手を防いだ。

 

白羽根「全員!ここを死守するぞ!」

 

黒羽根「は、はい...!」

 

壮介「取りこぼした羽根か......?こんな忙しい時に来るなんてよ......。」

 

十六夜「他の魔法少年少女達が相手をしているとはいえ、羽根にとっては本部へ帰還することもミッションだろうな。」

 

健太「だぁああ!畜生!こんな奴らの為に時間食いたくねぇのによぉ!!」

 

みたま「それなら、私に任せてくれないかしら?」

 

ももこ・健太「なっ......!?調整屋ぁ!?」

 

悠太「みたま、お前...!まさか表で戦うつもりか!?というよりお前、戦えたのか......?」

 

みたま「つい最近なんだけどコツをつかんだのよ。」

 

ももこ「でも、良いのか...?」

 

みたま「ちょっとした心境の変化よ。緊急事態だし、このままじゃいられないとね。」

 

やちよ「本当に任せて良いの?」

 

みたま「えぇどうぞ。先に行ってちょうだい。」

 

白羽根「っ!?行かせるか!!」

 

みたま「おそいわよぉ。」

 

白羽根「がぁっ!?」

 

黒羽根「せ、先輩!」

 

みたま「私も行かせる訳にはいかなくなったのよ。来るならソウルジェム引っ掻き回される覚悟で来てねぇ。」

 

黒羽根「ひ、ひぃぃ......!」

 

みたまを後にして俺達は万年桜のウワサがいる場所へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

ーー北養区 山中ーー

 

やちよ「本当にウワサが......。」

 

健太「ここがいろはの言ってた万年桜のウワサか。」

 

壮介「奥に桜の木があるからそうだろうな。」

 

悠太「だが、姿がないな...。」

 

鶴乃「中を調べてるかも!探してみよ!」

 

健太「ああ。」

 

桜の木の周辺を全員で捜索する。それぞれが3人の名前を呼ぶ。

 

鶴乃「いろはちゃーーん!!」

 

フェリシア「さなーーー!!」

 

健太「しゅーーーん!!どこだー!?」

 

壮介「鶴乃さん!フェリシアちゃん!健太!3人どこにもいないぞ!?」

 

悠太「こっちもいない...。」

 

十六夜「こっちもだ......。」

 

かえで「もしかして、マギウスの翼に見つかって......。」

 

レナ「かえで!録でもないこと言うんじゃないわよ!」

 

かえで「だってぇ~!」

 

健太「いろは...、さな...、俊...、どこに行ったんだ......。......ん?」

 

桜の木の方から人ではない何かの気配を察知し、後ろを向くと一人の女性が立っていた。さっきまではそこにはいなかったはずだが......?

 

かえで「ふぇええええええ!?何か出てきたよぉ!?」

 

悠太「...ウワサか。」

 

十六夜「戦う意思はないみたいだな。」

 

鶴乃「健太君、ウワサなら三人の事見てるかも知れないよ!」

 

健太「そうだな......、アイの時と同じように意志疎通できるのか......。」

 

万年桜「大丈夫。ここで起きた事は全て知ってる。」

 

健太「ここで起きただと!?何が合ったんだ?それに俺達の前に現れたのは......。」

 

万年桜「そう、私は透明になれる魔法少女にあなた方を待てと言われた。」

 

鶴乃「おぉ!さな、ナイスファインプレーだよ!!」

 

フェリシア「んじゃ色々教えて貰おうぜ!」

 

健太「そうだな。それじゃあ色々教えてくれるか?」

 

万年桜「どうぞ。」

 

健太「いろはとさな、そして俊はここに来たんだよな?」

 

万年桜「はい。」

 

健太「それで、三人はどうなった?マギウスの翼に見つかったのか?」

 

万年桜「灯花とねむ、マギウスに見つかった。」

 

壮介「マジかよ...、マギウスが来るなんて運が悪すぎだろ......。」

 

健太「それで、どうなった......?」

 

万年桜「いろはは、後に現れたアリナの結界に囚われてフェントホープに連れていかれた。そして二人の魔法少年少女が後を追っていった。」

 

健太「フェントホープ?なんだそれは?」

 

万年桜「「ホテル・フェントホープ」マギウスの本拠地。」

 

健太「なるほど...、いろはの言ってた事は本当だったのか......。」

 

十六夜「だが不幸中の幸いというべきか三人が無事なようで良かった。」

 

悠太「すまない、ホテルフェントホープはどこにあるか分かるか?」

 

万年桜「向こう。」

 

悠太「向こう...、見ている先の事か。あの奥にマギウスの本部があるんだな。」

 

みたま「わぁ...、うわさってこんな所なのねぇ。」

 

健太「みたまさん......。」

 

みたま「私の方も終わったわよぉ、あれぐらいの数なら案外やれちゃうものねっ。」

 

健太「やれちゃうものねって...、あんた、本当に良かったのかよ......?中立を破る事になるんだぞ?」

 

みたま「ここまで事態が大きくなればマギウスだって気付くわ。それにいずれはどっちかにつかなくちゃならないからって思ったわ。」

 

健太「そうか......、それがあんたの本意なら俺は何も言えん。」

 

悠太「で、どうして中にまで入ってきた?後詰めなら外で十分務まるだろう。」

 

みたま「伝えなくちゃならない事があるのよ。」

 

健太「それは、マギウスに関わる事なのか?」

 

みたま「えぇ......。私は中立であると同時に対価さえあれば何でも提供する調整屋...。私はね...、中立というポジションを維持する代わりに彼女達に協力していたのよ......。ついさっきまでね......。」

 

健太「みたまさん......、あんたは...、対価として彼女達に何を与えていた......?」

 

みたま「...グリーフシードよ。けどワルプルギスの夜の件でもう供給はいらないと言われたわ...。」

 

ももこ「そんな......、あたしらが支払ってたものをマギウスに横流ししてたのかよ......。」

 

健太「......みたまさん、一つ聞いても良いか?」

 

みたま「...何かしら?」

 

健太「その供給がいらないと言った奴は誰だ?」

 

みたま「......龍二君よ。」

 

健太「......!?」

 

みたま「実はね、貴方が神浜に来ることも全て知ってたわ......。そして貴方が龍二君と仲違いした理由も全て聞いたわ。」

 

健太「......くそっ!奴が俺を恨むのはよく分かる......、だが何であいつは関係ない神浜の魔法少年少女達まで巻き込むんだよ!?あいつは!何がしてぇんだよ!!」

 

壮介「......なぁ、健太。」

 

健太「なんだ......?」

 

壮介「みたまさんの調整屋に行った時、お前、記憶を一部失ったって言ってたよな......。」

 

健太「あぁ......、それがどうした?」

 

壮介「......その一部の記憶、戻ってんじゃないのか?」

 

健太「っ!?」

 

ももこ「壮介君、どういう事だよ......?」

 

壮介「今の健太の言葉、思い出してください。健太はさっき「奴が俺を恨むのはよく分かる」と...。つまり、健太は龍二が健太を恨んでいる理由を思い出してるって事なんすよ。」

 

ももこ「...っ!言われてみれば、確かに......!」

 

やちよ「健太君...、あなた......。」

 

鶴乃「健太君、何か隠してるの?」

 

フェリシア「教えろよ!なんで龍二とかいう奴と喧嘩したんだよ!?」

 

悠太・十六夜「.........」

 

健太「.........いずれこうなるときは来るって思ってたけど、まさかここで話すときが来るなんてな...。」

 

ももこ「健太...。」

 

健太「それに俺も隠し事は良くないしな。ただ......、これを聞いたらあんたらはもう俺を信用できないだろうが話す。」

 

そう、俺は記憶を取り戻していた。なぜ俺が龍二と仲違いになったのか全てを彼女らに話した。

 

作者からのお願い

これを読んでくださっている読者様の中には忘れている方もいると思われます。今一度回想としてご閲覧下さい。

 

 

 

健太「発端となったのがある日の10時位の時、龍二から電話がかかって来たんだ。」

 

 

 

 

~回想 見滝原 健太の家~

 

健太「誰だ....、ん?龍二か。」

 

携帯電話に表示されていたのは龍二からだった。俺は電話に出る。

 

健太「もしもし、どうした?」

 

龍二『なぁ、今から少し話せるか?』

 

健太「ん?どうした?何か厄介事か?」

 

龍二『いや、お前に少し聞きたいことがあってな。今から落ち合えるか?』

 

健太「良いが、あそこの公園で良いか?」

 

龍二「ああ、それじゃ」

 

 

 

健太「呼び出された俺はそのまま目的の公園へ向かったんだ。」

 

ももこ「そこに龍二がいたのか?」

 

健太「あぁ、先に到着していた。その時の俺は奴が呼び出した理由を知らなかった......。」

 

 

 

龍二「よぉ、健太。」

 

健太「龍二、話ってなんだ?また何かおごってくれってか?」

 

龍二「.........」

 

健太「......なんだ無視かよ......。」

 

龍二「なぁ、唐突だが....、お前は、魔法少年がいると思うか...?」

 

健太「さぁな、わからん。」

 

龍二「だよな...。」

 

健太「どうした?何かあったのか?」

 

龍二「俺、聞いちまったんだよ。お前が...魔法少年になったって...!」

 

健太「!!...な、何でそれを...!?」

 

龍二「お前が屋上で何か集まってる時にな......。」

 

俺は迂闊だったと思った。まさか聞かれていたとは...!!

 

龍二「なぁ、悪いことは言わない!そんな危険な事から足を下ろせ!!」

 

健太「落ち着け龍二!!俺は大丈夫だ!」

 

龍二「どこが大丈夫何だよ!お前、下手したら死ぬかも知れないんだぞ!」

 

健太「んなこたぁわかってらぁ!!」ドンッ!

 

龍二「うぉ!?」

 

俺はあまりにも迫って来るため龍二を突き飛ばす。そして龍二は反動で後ろに飛ぶ。

 

健太「俺だってなぁ!そんなことはわかってんだよ!いちいち突っかかってくんな泣き虫がぁ!」

 

龍二「!!」

 

健太「は!?」

 

俺は余りに激昂してしまい、龍二に言ってはならない言葉を放ってしまった。

 

龍二「.....そうか...、やっぱりお前もそう思ってたのか...。」

 

健太「す、すまん...!わざとじy」

 

龍二「るせぇ!!今からもう俺らは三銃士じゃねぇ...、そして...。」

 

健太「....」

 

龍二「今からもう俺らは盟友じゃねぇ...!」

 

健太「!!」

 

龍二「じゃあな、元友よ。」

 

龍二はそういうと俺を後にし、公園を去っていった。俺は一人公園に残される。

 

健太「.....」

 

そして俺を嘲笑うかのように雨が降ってきた。俺は傘を持ってきてないためずぶ濡れになるが、傘を射す気にはならなかった。

 

健太「...くそ...。」

 

俺はただベンチに座ってアメをなめるしかなかった。

 

 

 

~現在 万年桜のウワサ~

 

健太「あん時の俺は本当にどうかしていたさ。自分は大丈夫という自信過剰な所と俺のプライドが邪魔したんだろう。あんな言葉が出てきたのかも知れん......。」

 

壮介「......なるほど、道理で龍二が俺とキリカ、織莉子を使ったんだな......。」

 

健太「へっ......、笑えるだろ?けど壮介、お前が言った言葉、半分正解半分外れだ。」

 

壮介「あの言葉?」

 

健太「なんだ、覚えてねぇのかよ。「悪いが俺も名前は知らん。だが町を荒らすあんたは放ってはおけないからな」って言ったんだよ。」

 

壮介「半分正解半分外れって事は......。」

 

健太「そうだ、俺は今みたいにこうやって人助けするような人間じゃあなかった。だから実際、俺は荒れてたんだ。後、俺が何で魔法少年になったかも話す。」

 

 

~過去 見滝原 健太の家~

 

キュゥベぇ「こんばんは、だね」

 

健太「.....!?し、喋った!?お、お前...、喋れるのか...。」

 

?「うん、僕はキュウベェ。君は?」

 

健太「俺は...高坂健太だ...。」

 

キュウベェ「健太か...よろしくね!」

 

健太「あ、あぁ...。」

 

キュウベェ「唐突だけどさ...君は魔法少女や魔法少年はいると思うかい?」

 

健太「本当に唐突だな。さぁな、わからん。見たこともなけりゃ聞いたこともねぇよ。」

 

キュウベェ「君は知らないんだね。なら一から話してあげるよ。」

 

 

 

 

健太「その時の俺はまだ魔法少年少女の事も一切知らなかった。だから俺は調子に乗って契約してしまった...。」

 

 

 

 

 

健太「なるほどな、つまり簡単に言えば願いを叶える代わりに化け物退治をしてくれってか。」

 

そして何故俺を選んだのかキュウベェに聞いてみる。

 

健太「何故俺を選んだ?他にもいるんじゃないか?」

 

キュウベェ「君には少し異彩な力を感じるんだ。何か感じた事はないかい?」

 

健太「いや、よくわからん。」

 

キュウベェ「無自覚なんだね。」

 

健太「やかましい。」

 

キュウベェ「さて、話を戻すけど、僕と契約して、魔法少年になってよ。」

 

健太「なら、先に願いを叶えさせてくれ、話はそれからだ。」

 

俺はキュウベェに先手を打たせないために先に願いを叶えさせるよう促した。先に契約してからだと騙されることが多いからな。

 

キュウベェ「いいよ。願いを聞かせて。」

 

健太「.....スリルを味わえる戦いがしてぇんだ。」

 

キュウベェ「それだけかい?」

 

健太「あぁ、悪いか?」

 

キュウベェ「いや、でもこれで契約成立だね。」

 

そして俺は誘われるように拳を差し出し、キュウベェとタッチすると、卵のような物が出てきた。

 

健太「これはなんだ?」

 

キュウベェ「それはソウルジェムといって君の力を示す道具だよ。変身するときにも使える。」

 

健太「ほぉ...。」

 

キュウベェ「ソウルジェムは戦う度に汚れてくるから魔女を倒したときに出てくるグリーフシード交換しなきゃ行けないんだよ。」

 

健太「...交換しなかったらどうなる?」

 

キュウベェ「死ぬね。

 

健太「な~るほど~。」

 

キュウベェ「君は、怖くないの?」

 

健太「へ、怖いわけないだろ。やっと俺の満足感を達成出来るんだからよ!」

 

キュウベェ「景色が変わったらそこには魔女がいるから気をつけてね。そしてこの事は口外厳禁だから。」

 

健太「おう。」

 

キュウベェ「それじゃ、また会うときまでね。」

 

キュウベェはそういうと窓から飛び出してどこかへ消えた。

 

 

 

 

~現在、万年桜のウワサ~

 

全員「.........」

 

健太「どうした?笑えよ?笑いどころだぜ?」

 

レナ「笑いどころ......?ふざけないでよ!!」

 

健太「......」

 

レナ「全然笑えないし、そもそもあなたが龍二とかいう奴にそんな罵倒を浴びせなかったらこんな大事にはならなかったのよ!!」

 

かえで「レナちゃんダメだよ!」

 

健太「......悠太さん、十六夜さん、失望しましたよね?俺を信用してくれたのに、こんな形で裏切った形になったんすから......。」

 

悠太・十六夜「......」

 

健太「姉貴、こんな馬鹿で糞みたいな奴が弟で、ごめん......。」

 

ももこ「.........」

 

健太「やちよさん、鶴乃さん、はっきり言って俺は二人に説教できるほど、完璧な人間じゃないんすよ ......。」

 

やちよ「......」

 

鶴乃「そんな事ないよ!健太君は料理も出来て、自分より他の人に気遣ったりするし......、健太君がそこまで深く考える必要はない!」

 

健太「へへっ......、お気遣いありがとうございます鶴乃さん。でも俺はもう信用無くしちまってるから無理して鶴乃さんが気遣わなくて良いんすよ。」

 

鶴乃「健太君、さっきから気になったけど、どうしてさん付けなの?」

 

健太「......俺には鶴乃さんを姉さんなんて呼べるような資格はないっすよ......。」

 

鶴乃「!?」

 

健太「皆が一生懸命魔女と戦って命繋いでる魔法少年少女達の世界に軽い気持ちで足突っ込んだ愚弟なんす......。だから俺は姉さんって綺麗な言葉は使えないです。それに......。」

 

鶴乃「えっ......、フェリシア......?」

 

フェリシアの方を見ると、大粒の涙を流して泣いていた。何を言っているかは分からんが、俺を恨んで泣いてんだろう......。

 

健太「今更謝った所でどうにかなるわけでもないが......、もっと早くお前に言わなきゃならなかったな......。」

 

フェリシア「ヒッグ...ヒグ......」

 

健太「あ~あ、本当にダメだな俺。自分の事を好いてくれた女の子泣かしちまったし。」

 

壮介「お前、今フェリシアが言った事、聞こえなかったのか......?」

 

健太「あぁ聞こえたさ。俺を恨んでるんだろ?もうわかってるっての......。」

 

壮介「......」

 

健太「はぁ、俺ってやっぱり......」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

健太「「人間失格」だな。」

 

壮介「っ!!」

 

 

 

 

 

すると、壮介が俺に近づき、無言で俺の胸ぐらを掴み......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴォッ!!

 

 

 

 

 

全員「!?」

 

 

 

 

 

 

思い切り俺の顔をぶん殴った。そのまま俺は吹っ飛び、倒れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

壮介「はぁっ......、はぁっ......。」

 

健太「......イッテェな....、いきなり何しやがる......!?」

 

壮介「目ぇ覚めたか大馬鹿野郎......。」

 

健太「何だよ......、俺に対する憂さ晴らしってか......?」

 

壮介「そんなんじゃねぇよ。ただ、慈悲の念に絡まれてるてめぇがムカついた。それだけだ。」

 

健太「んだとこら?」

 

壮介「この際、はっきり言ってやる。誰もお前を恨んじゃいないぞ。」

 

健太「何?」

 

壮介「お前さっき、自分で糞みたいな奴って言ったな?」

 

健太「あぁ言ったよ。それが何だってんだ?」

 

壮介「そもそも、お前が糞みたいな奴なら、神浜に来る前にてめぇを消炭にしてるさ。だが俺がそうしなかったのは、お前は、心優しい奴だってわかってるからだよ......。」

 

健太「......戯れ言をほざくのもいい加減にしやがれ...!俺は心が汚れてんだよ......!」

 

壮介「戯れ言言ってる訳じゃねぇ。それにお前の心が汚れてるんなら記憶ミュージアムの時、あんな感情のこもって筋の通った言い分が出てくるわけないだろ。」

 

健太「なっ...!?聞いてたのか......?」

 

壮介「あぁ、聞いてたさ。仮にも愚弟だって言ってたけど、そんな奴をももこさんや鶴乃さんが面倒みると思うか?」

 

健太「......」

 

壮介「違うだろ?さっきの龍二との喧嘩の時、お前はまだ気持ちの整理がついてなかったんだろ?」

 

健太「......」

 

壮介「......質問を変えよう。フェリシアが泣いてた理由、分かるか?」

 

健太「......いや。」

 

壮介「......なら本人から直接聞いてみな。」

 

健太「......フェリシア」

 

壮介と入れ替わりでフェリシアが俺の前に立った。そしてフェリシアは口を開く。

 

フェリシア「......オレ、辛かったんだ。健太が、そんだけ思い詰めてるのを....。」

 

健太「俺は、思い詰めてなんて......」

 

フェリシア「嘘つくなよ......!お前、本当は、知って欲しかったんだろ......?」

 

健太「っ!?」

 

フェリシア「やっぱり......、そうじゃなきゃわざわざこんな所で話すはずないもんな。」

 

健太「おっ、俺は......」

 

悠太「......今まで黙っていたが、過去を知られたくないのは分かる。俺もそうだったからな。」

 

健太「......」

 

悠太「だがな、その気持ちを打ち破って仲間に話す事で、互いの信頼という物が得られるんじゃないか?」

 

健太「っ!」

 

悠太「お前は、みかづき荘のリーダーという懸念に捕らわれて、本当の自分を見失って塞ぎこんでしまっている。そうだろ?」

 

健太「......」

 

壮介「健太、今この場で話したのも、わざと俺達から嫌われる為に話したのか?」

 

健太「......あぁ。」

 

ももこ「......何でなんだよ...。」

 

健太「......短く言えば、巻き込みたくなかった。ただそれだけだ......。」

 

やちよ「どうして...?」

 

健太「さっきも話しましたが、そもそものきっかけが俺と龍二の喧嘩から始まって今じゃ別の街まで迷惑かける始末......、だから自分に嫌気がさして嫌われようと思ったんすよ......。」

 

全員「.........」

 

健太「......俺を嫌って下さい。んで俺が単身でマギウスの本部に突って話つけてきます......。」

 

壮介「......嫌いなんてなれっかよ......。」

 

悠太「......わかった。」

 

壮介「っ!?マジで言ってんすか!?」

 

悠太「ああ。」

 

健太「......ありがとうございます...。悠太さん。」

 

悠太「......俺はお前を嫌いにはならない。」

 

健太「えっ......!?」

 

壮介「!?」

 

悠太「一人で話つけに行くなんざ一人前になった奴がする事だ。半人前のお前には難しい事だ。」

 

健太「......じゃあどうすれば良いんすか?」

 

悠太「見てわからないか?「仲間」がいることを。」

 

健太「っ!?」

 

悠太「......いいか?お前は仲間に頼らなさすぎだ。みかづき荘のリーダーになったからには皆を引っ張って行かなきゃならない。だがな、健太も一人の人間だ。ストレスだって溜まる。だからこそ、色んな人間に支えてもらうんだ。」

 

健太「......」

 

悠太「きゅうべぇと契約した時はまだお前はソウルジェムに命が宿ってるなんて思わなかったんだ。だが、あの記憶ミュージアムの件でお前は本当にソウルジェム=命の具現化したものだと実感した。ならそれで良いじゃないか。」

 

健太「けど...!」

 

悠太「けどもくそもない。はっきり言えば、お前が隠し事をしてるのはずっと前から気付いてた、それは十六夜も同じだ。」

 

健太「......」

 

悠太「出来ればこういう事は早めに言って欲しかったのが本音だ。だが、こうやって嘘偽りなく話した事は認める。だから俺はお前を嫌いにはならないし失望もしない。」

 

健太「悠太さん......。」

 

悠太「それに、嫌いになった所で俺が得するもんはひとつもない。さっきも壮介が言ったがお前がそんな屑野郎ならいろは達だってついてこない。そうだよな?皆?」

 

壮介「当たり前っすよ!俺はいつだって健太を信用してますから!」

 

やちよ「私もよ。」

 

フェリシア「俺もだ!」

 

鶴乃「私も!」

 

ももこ「もちろん!健太はあたしの可愛い弟だから!信用するよ!」

 

十六夜「もちろんだ。」

 

健太「みんな......。」

 

悠太「後、あいつらもだな。」

 

健太「えっ?.........レナ、かえで......。」

 

かえで「健太さん、レナちゃん説得出来たよ。」

 

レナ「......」

 

健太「......すまない。ありがとう」

 

かえで「いいよ、ほらレナちゃん。」

 

レナ「わ、わかってるわよ......。......あんた、さっきより顔が明るくなったわね......。」

 

健太「そうか......?」

 

レナ「そうよ...、さっきのあんたの顔を鏡で見せてやりたい位暗かったのよ......。」

 

健太「ははっ......、そんな暗かったか...。」

 

レナ「本当なら、悠太さんみたいにしっかりあんたを説得してあげたかったけど、レナのプライドが邪魔して、あんな言い方になって......。」

 

健太「気にしてねぇよ。現にそうなっちまったのは事実だからな。」

 

レナ「だから......、その......。」

 

健太「......」

 

レナ「......さっさとマギウスを倒して龍二と仲直りしなさいよ!いいわね!?」

 

健太「お、おぉ......。」

 

かえで「レ、レナちゃん、急に変わっちゃったよ......。」

 

ももこ「また変なスイッチ入ったみたいだな......。」

 

悠太「ふっ......、何だかんだ言ってお前も吹っ切れたみたいだな。」

 

健太「はい、ありがとうございます悠太さん!」

 

悠太「礼には及ばんさ。さて......、みたま。」

 

みたま「......何?」

 

悠太「お前は、誰と取引してもおかしくない。だから俺達に責める権利はない。だが、全てが終わって俺達の仲間だと言うなら、皆に教えてやれよ、お前の事をな。」

 

みたま「......うん、わかったわ。」

 

健太「よし!それじゃ行くか!いろはも皆助け出すぞ!」

 

壮介「へっ!久々に暴れられそうだ!俺の龍槍が疼いてるぜ!」

 

鶴乃「よ~し!最強の見せ所だね!」

 

みたま「あの、私の口から言えた事じゃないけど...、ここを守るわ。誰一人入れさせないから!」

 

悠太「......わかった。ここはお前に任せる。」

 

健太「お願いします!みたまさん!」

 

みたま「任せて!」

 

みたまさんの意思を理解した俺はここを任せ、フェントホープへ向かう。いろはも皆助け出してこの戦いを終わらせる!

 

第8章「侵攻せしマギウス」~完~


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