「こ、これ以上は、ぼぼぼ僕が許さないぞ!」
上ずった声、涙が零れそうな瞳を必死に目の前の3人に向ける少年、緑谷 出久。
それに対して、出久と向き合う3人はまるで、自分の立場を理解していない弱者に向けるような目をして嘲笑う。
手が爆発するビックリ人間爆豪 勝己と愉快な手下達2人。
そしてそれらを端から見ているクールなイケメン、俺。
「おい定時、テメェ今俺のこと馬鹿にしただろ!」
「まあまあ、落ち着け皆。喧嘩は良くない」
「無視してんじゃねぇ!」
……勘の良いガキは嫌いだよ。
青い空、白い雲。なんて遊ぶにはピッタリの空模様なのに、何故男の子ってのは喧嘩が好きなのか。
「ッチ! おいデク、お前さぁ、立場わかってんのか?」
「ヒッ!」
「ヒャヒャヒャ、やっちまおうぜ勝己!」
手がニョキニョキ伸びる少年がチンピラ発言を噛まし、それを合図に自慢の翼を広げるポッチャリ君。
「いい加減にしろ、かっちゃん!」
と、止めに入るも、
「うるせぇ! 邪魔だ!」
そう言って俺を爆破させようとしてくる。
……あぁ、もう無理だ。こうなれば仲直りは望めない。
ここに、俺たち3人の仲には、消えない傷が出来てしまった。
◇◆◇
「ハァ……」
綺麗な空を見ていると、どうしてもあの頃を思い出す。出久とかっちゃんと俺の思い出を。
あの日、俺達3人は関わるべきじゃないと直感で理解してしまったから。
幼稚園を卒業してからは、あの2人とは会っていない。小、中共に違ったからだ。2人は腐れ縁のように一緒だったが。
そして俺は今、行くべき高校を決めあぐねていた。
候補としては、第一に雄英高校が来る。先生からも、「お前なら行ける!」と太鼓判を押されてはいるものの、ひとつ問題がある。
これは俺の予想だが、かっちゃんが入学する。
昔から強個性と持て囃され、それを扱える才能があった彼は、自ずと一番が好きになっていった。勿論、高校も一番の雄英を選んでくるだろうし、入ってくるだろう。これは俺なりの彼への信頼の証しでもある。
だが、俺とかっちゃんは喧嘩別れのようなものをした。ぶっちゃけ気まずくなるだろう。俺が。
「……ハァ」
またもため息が溢れてしまう。親の期待、先生の期待、周囲の期待が、今だかつてこれほど重くのし掛かってきたことはない。
やはり行くしかないだろう。ザ・ワールドを活かす為には、ヒーローになる必要がある。
「失礼します。3年2組の神田です」
「おぉ、神田か。決まったのか?」
決まったのか、とは、高校のことだろう。進路希望のプリントを提出していなかったのは俺だけだったからな。
「はい。待たせてしまってすみません」
「イヤイヤ、全然。優等生のお前には、いつも世話になってるしな! それで、何処にしたんだ? やっぱり…」
「ええ。雄英にします」
そういったとたん、職員室から、おぉ! と声が聞こえる。なんと言ってもこの中学初の雄英志望で、受かる可能性のある俺だ。教師達も嬉しいのだろう。
………ま! 俺ってば優等生だし?
「おお! 行ってくれるか! やっぱりなぁ。俺は嬉しいぞ! 神田!」
先生はそう言って俺の背中をバシバシ叩く。この先生にもお世話になった。必ずや、雄英に受かって喜ばせよう。
◇◆◇
雄英に行くと決めてから、俺は人生で一番頑張った。寝る間も惜しんで、とはまさにこの事だろう。そのお陰か、俺は自分でもビックリするほど緊張していなかった。
もう受かる気しかしない。
準備は万端。両親に見送られながら、いざ行かん、試験会場へ!
会場についたは良いものの、広すぎぃ!
危うく迷子の仔猫ちゃんになるとこだった。既に筆記試験は終わったが、微妙であったと言っておこう。実は昔から勉学はあまり得意ではなくてね……
え? 知ってる? やかましいわ!
さて、これからは本番の実技試験!
説明会場の照明が消え、テンションアゲアゲのヒーロー、プレゼント・マイクが登場。俺も暇潰しに一度だけラジオを聞いたことがある。生でプレゼント・マイクの挨拶が聞けるとは思わなかった。
が、まぁ、うん。会場はシーンとしてたけど、ね。仕方ない。
それにプレゼントマイクもそこまで気にしてなさそうだし、良いよね!
「……勿論、他の受験生の妨害等、アンチヒーローな行動は御法度だかんな!」
でけぇ声だなぁ。
「一つよろしいでしょうか!」
おぉ、いかにも真面目そうなメガネ君が質問するらしい。
どうやらプレゼント・マイクから説明されていないが、プリントには記載されている4種目の仮装ヴィランのことらしい。
フッ、気付かなかったぜ……! さてはあいつ、デキるッ!
「そいつぁ0ポイントのお邪魔虫! 謂わばゲームに出てくるギミックモンスターだ!」
ハハーン、そう言うことね! おそらく並みの個性じゃ倒せん感じになってるんだろう。見つけても放置が鉄板かな?
とか思ってたけど、さすがにこれはやりすぎじゃねぇか!? 雄英高校さんよぉ!
ズゴゴゴゴゴゴゴ!
と、そこらのビルをぺしゃんこにしながら愚鈍に進み続ける0ポイントヴィラン。会場の中に街があったことも驚きだが、こいつはそれを凌駕する。
今までコツコツ1、2、3ポイントヴィランを倒してきたが、「さっきまで遊んでましたが、何か?」 と言わんばかりの破壊っぷりには、さしもの俺も呆然とするしかない。
いやはや、こいつは逃げるしかねぇなあ!
「誰か……助け…て……」
なんて、か細い声が聞こえるまでは、俺もそう思ってたさ。
これはプロヒーローの卵を決める試験。こんなとこでひよってて、何がヒーローかってんだ。笑わせる!
「ああ、今助けるぞ!」
すまん、ザ・ワールド。さっきまでの情けない俺は忘れてくれ。
ザ・ワールドと目が合う。その目がどこか、しょうがないといってる気がして、つい笑ってしまった。
先程のか細い声の主、どこかの女子生徒だろう。その子の足の上に、かなり大きめの瓦礫が乗っていた。
それをザ・ワールドは難なく吹き飛ばす。
「え?」
もう安心だ。何故って? 俺が来た!
いつか見たテレビを思い出す。あのとき憧れたオールマイトは、見てくれているだろうか。確か雄英の教師になったはず、なんてどうでも良いことが頭に浮かぶ。
「あ、ありがとう…」
「気にするな」
0ポイントヴィランを見上げる。
でけぇなあ!
行けるか? ザ・ワールド。
いや、愚問だったな。
「行くぞ!」
ザ・ワールド!
ブウウゥゥゥンッ!
時を止め、足を同期させたザ・ワールドで俺ごと上空に飛び上がる。
フフフ。今の俺は既に5秒もの間、時を止めることが出来る!
ちょうど0ポイントヴィランの肩の上に着地したところで時が動き出す。
急に現れた俺に、機械の癖に驚いたような仕草をする0ポイントヴィラン。遅い!
行くぜッ! ザ・ワールドォ!
「WRYYYYYYYYY!」
大声と言うものを久し振りに出した気がする。ザ・ワールドの本気の拳は、0ポイントヴィランの頭をひしゃげるに留まらず、そのままの勢いでぶっ飛ばした。
「貧弱! 貧弱ゥ!」
言ってやったぜぇ! DIO様の御言葉をなぁぁぁ!
あ、ヤバい。どうやって着地しよう!
うおおおぉぉぉ!
フンッ! と、地面にめり込みながら着地する。今、めっちゃ足痛いです。誰か! ヘルプミー!
『終了ー!』
と、プレゼント・マイクの声がする。
中々、すごい一日だったぜ…!
敢えてDIO以外の名言を少なくしていくスタイル。(無くすとは言ってない)
これからもアンケート機能を使うべきでしょうか
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使うべき
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正直要らない
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そんなことより投稿だ!