『世界』のヒーローアカデミア   作:ハルキゲニア

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No.8 親友

 オールマイトが僕のせいで逃げたヴィランを追って行ってから、ずっとため息が出る。かっちゃんやさだくんなら、きっとヒーローに迷惑なんてかけないだろう。いつもより騒がしい商店街を通りながら、あの二人のことを思い出す。

 

 ……いつもより騒がしい? 何でだ?

 

 「なぁ、この近くでヴィランが出たってよ!」

 

 「マジ!? ちょっと行って見てみようぜ!」

 

 ヴィラン!? ま、まさか……!?

 

 

 

   ◇◆◇

 

 

 

 案の定、ヴィランは僕のせいで逃げた奴だった。

 

 「そ、そんな……」

 

 お、オールマイトは!? もしかして、話にあった活動限界なのか!?

 

 「おいおい、あれって結構大物ヴィランじゃね?」

 

 「学生が人質になってて、ヒーローが手を出せないらしいぞ」

 

 その言葉が聞こえて、僕はヴィランをよく観察する。

 

 

 「………!?」

 

 なんとそこには、幼なじみのかっちゃんがいたのだ。

 

 「か、かっちゃん……!?」

 

 周りのヒーロー達が攻めあぐねていた。かっちゃんの爆破の個性が暴走しているからだろう。

 

 その時、一瞬だけかっちゃんが、助けを求めてる顔をしていた。

 

 

 

 ああ、そうだ。

 

 僕のカッコいいヒーローを思い出せ!

 プロのヒーローにだって負けない、何時も僕を守ってくれた、あの背中を……!

 

 「うわぁぁっ!!」

 

 声をあげながら、必死になって走る。

 

 「な!? 馬鹿、戻れ!」

 

 「自殺志願者か!?」

 

 周りの声は聞こえなかった。怖かったヴィランも、不思議と立ち向かっていけた。さだくんなら、オールマイトなら、ここで立ち止まったりしない!

 

 「かっちゃん!」

 

 必死にヴィランの体を掻く。何か声が聞こえたけど、それどころじゃなかった。

 

 「おいデク! テメッ、何で!」

 

 「わかんないよ! わかんないけど、君が、助けてほしそうな顔してた!」

 

 「っ!」

 

 

 

 ―――SMASH!!!

 

 また、声が聞こえた。優しくて、頼もしくて、カッコいい声が。

 

 

 

   ◇◆◇

 

 

 

 あの後の事はあんまり覚えてない。覚えてる事なんてヒーローにいっぱい怒られたことと、オールマイトがマスコミに囲まれてて、お礼が言えなかったことぐらいだ。

 

 夕焼けが綺麗で、つい足を止めてしまった。

 

 

 「私が来たぁ!」

 

 「うわぁ!? お、オールマイト!? 記者に囲まれてたはずじゃ……」

 

 「ハハハ、あのくらい抜けることはどうってことないさ! それより君、あの時、何で走り出したんだい?」

 

 「……それは、わかりません。でも、助けなきゃって、そう…思ったんです」

 

 「やっぱりそうか」

 

 「え?」

 

 オールマイトがまるでわかってたように言う。というか、あの時商店街にいたことに全く気付かなかった。

 

 「過去、英雄として歴史に名を残した人達は、口を揃えてこう言った。『考えるより先に、体が動いていた』と」

 

 その言葉が、僕の胸を大きく揺さぶった。すでに本当の姿に戻ってしまっているオールマイトだけど、その声は確かな重みがあって、

 

 

 『君は、ヒーローになれる』

 

 

 

 個性がないと知らされたあの時、本当に行ってほしかった言葉を、一番好きなヒーローに言ってくれた。

 

 それが、どうしようもないほど嬉しくて、涙があふれでた。

 

 

   ◇◆◇

 

 

 

 あれから10ヶ月、毎日を筋トレ兼掃除に費やした。最初の方はすぐにヘトヘトになってしまったけど、それでもオールマイトを信じて着いてきた。

 

 そして今日、オールマイトの髪の毛を食うという驚きの個性譲渡方法を体験した僕は雄英高校試験会場に来ていた。恐らく、かっちゃんやさだくんも来ていることだろう。

 つい先程、こけそうになったところを女子に助けられて、その流れで女子と会話することが出来た。今日はいいことがあるかもしれない!

 

 

 

 

 と、思ってたけど、説明会場で怖い眼鏡の人に注意されたり、肝心のスタートダッシュに遅れたりで、さんざんだ。

 

 もう少しで試験が終わるのに、まだ1ポイントも稼げてない。というか、0ポイントヴィランがヤバすぎる。まさしく破壊の権化だ。

 

 

 恐怖で足がすくむ。動けない。逃げなきゃって思うのに、体が言うことを聞かない。

 

 

 

 

 

 「WRYYYYYYYYY!」

 

 そんな声が、聞こえるまでは。

 

 突如として空中に現れる人影。その金髪は、どこかさだくんに見えないこともない。遠すぎてよく見えないけど、なぜか直感で、あれはさだくんだとわかった。

 

 仮想ヴィランの頭が大きくひしゃげ、横に倒れていく。

 

 ま、マズイ!

 あそこには瓦礫の下敷きになった人達がいる! 多分、さだくんは気付いていない!

 

 オールマイトの言葉を思い出す。考えるより先に、体が動いていた。

 

 

 「SMAAAAAAASH!!」

 

 

 腕を振るう。とんでもない衝撃波と、粉々になって吹き飛んでいく仮想ヴィラン。

 

 「な、何とか、出来た……!」

 

 

 はじめての個性の感想は、抱く間もなく激痛で意識と共に消えていった。

 

 

 

 

 

 




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