この世紀末な世界で目を覚まし、フェンリル極東支部に保護されてから3ヶ月が過ぎた。
支部内の工事やらの仕事を貰いつつ過ごした日々は忙しかったし、凄く疲れたけど、何をするでもなく惰性的に学校に行くだけだった毎日よりもずっと充実していた。
まあ、なんであんなところに居て、こんな世紀末な世界で目覚めたのかはとんとわからないままなんですけどね。
で。今はどうしているかと言うと、
『私の声は聞こえているかな?一条君』
「アッハイ」
仕事貰ったりなんだったりとしてもらう為に遺伝子情報の登録が必要と言われてやったし、適合する神機が見つかったら、強制的にゴッドイーターにされるとも聞いてたけど、まさかヒットするとは思わなかったでござるよにんにん。
今居るのは極東支部内のなんか壁にデカい爪痕みたいなのがある実験場みたいな広い円形の部屋で、だだっ広い部屋のド真ん中に俺とゴッドイーターの女の人。それから赤茶色の上下から挟み込みタイプの鉄の箱がある。
「緊張しないでリラックスリラックス」
そう言って、微笑む黒色の長髪に青いリボンを付け、白と黒に金色の装飾が光る軍服のようなものを着た彼女の名前は北嶺サクラ。なんか凄腕のゴッドイーターで特殊部隊?の隊長らしい。
と言うのも、この神機の適合試験には隊長格のゴッドイーターの付き添いが必須なんだとか。とは言えなんでそんな凄い人が付き添うのかと思ったが、単に手隙の人がこの人しか居なかったからと言うシンプルな理由だ。
『なに、すぐに終わるさ。無事かどうかの保証は出来ないがね』
と言うサカキ支部長の言葉には不安しかない。だがしかし、やるしかない。
「男は度胸!南無三っ!」
箱に右腕を突っ込むと、箱の上部分がプシュッと空気が抜ける音と共に降りて来て………とてもじゃないが、言葉に出来ない激痛に襲われた。
ふざけんな!あのキツネオヤジ!ちょっと痛いだけとか嘘じゃねえか!!!ちょ、待っ痛い⁈マジ死ぬ⁈でも、なんか右腕のへんな感触のせいで意識が鳥羽なぁい⁈何コレ⁈俺死ぬの⁈どうなんの⁈てか、北嶺さんはその白銀色のデッカい剣はどっからお出しに⁈
「………絶対、あのキツネオヤジぶん殴る………」
空気の入る音と共に箱が持ち上がり、腕を引き抜きながら手に持ったものをフラフラの体を支えながら一言だけそう言って、そのままぶっ倒れながら気を失った。
「知ってる天井だ」
何度かお世話になった医務室のベッドの上で目を覚ました。気を失う前の激痛が嘘のようにスッキリとした目覚めになんとも言えない気分になりながら、起き上がる。目に入った右腕の手首には赤と黒の手錠の片半分みたいなゴツい腕輪が付いていた。
「グッバイ俺。そして、ハロー人外さまってか」
「あっ、目が覚めたんだ」
声がかけられた方を見ると、そこには俺を助けてこのフェンリル極東支部に保護した張本人である篠田サオリさんが、医務室の入り口からこっちを見ていた。
「その節はどうも」
「気にしなくていいよ。非武装の一般民はフェンリルの保護下であろうとそうでなかろうと助けるのはゴッドイーターとして当たり前のことだしね。それよりも………一条君もゴッドイーターにされちゃったんだね」
パイプ椅子を持って、俺の居るベッドの側まで来ると俺の右腕を見て悲しそうな目をしながらそう言った。
「まあ、そう言う契約でここに置いて貰ってたんだし、しゃあないかなって」
「私はね、フェンリルが嫌い。理屈も事情も分かるけど、だからってあんなの不当契約だよ………」
パイプ椅子に座って落ち込んだようにそう言う彼女からは、俺を助けてくれた時の力強さみたいなものを感じない。
何も言えない。たしかにサカキ支部長をぶん殴ってやりたいくらいの怒りはあるが、彼女のようにはっきりとフェンリルと言う組織が嫌いとは言えない。
「あ、起きたばっかりなのに変なこと言ってごめんね。体は大丈夫?おかしなところとかあったらちゃんと言わなきゃダメだよ」
「いや、別に………」
「そっか。じゃあ私は行くね。任務の報告書書かなきゃいけないし」
「あっ………行っちまった」
言うだけ言うと、さっさと逃げるように篠田さんは医務室を出て行った。
「世紀末だもんな………でも、だからって皆が皆、はいそうですかって死にそうな。いや、死ぬかもしれないような事はやりたくないよなぁ」
ベッドに倒れて、天井を見ながら呟きながら右腕を持ち上げる。そして腕と一体化した動きすらしない赤い腕輪を見て、
「死ぬかもしれない。そんな覚悟が俺にあるのかな………」
言われたから、言われたようにやる。
何も変わってない。より良い仕事に就くためにより良い学校に行けと親に言われ、その言葉の通りに学校を選び、入学して、ただ授業を受けて………何も変わってない。何も考えず、他人に言われるがまま。
俺は、どうすれば良かったのか。どうすれば良いのか分からない。
そのまま悶々としたまま1日が過ぎて………
「コレが俺の神機ですか………なんか篠田さんの神機と違くない?」
手に持ったバカデカイ大砲みたいな神機(片手で持っても木刀か何かを持ってるのと変わらない程度の重さしか感じないことはスルー)を見ながら言う。
まず、砲身は普通に真っ直ぐ伸びたライフルみたいな形状だが、その下に普通のライフル銃にオプション装備として取り付ける小型のグレネードよろしく銃が引っ付いていて、砲身の根元部分にはリボルバー型のシリンダーが付いたなんとも奇妙な感じで生物じみた機関部がそれとストックとグリップが一体化したパーツを繋いでいて、機関部を守るための申し訳程度の装甲と引き金が付いたサブグリップにスコープが取り付けられている。
有り体に言ってリボルバーライフルとでも言うべき珍妙な代物だ。
「まあ、試験改造中の神機だしね」
ツナギの上半分を腰に巻いてタンクトップと言う男らしい格好に頭には年代モノのゴーグルをつけて燻んだ感じの灰色の髪を結い上げた女の人が苦笑いしながら言う。彼女の名前は楠リッカ、ゴッドイーターの扱う神機を始めとした数々の武装を手がける整備士の人だって紹介された。
「試験改造中?」
「うん。それは元々は最初に開発された神機。第零世代型って言われてる部類のものなんだ」
「つまり骨董品?」
「そうなるかな。今は第二世代型が主力で、少しずつだけど第三世代型の神機も作られてそれを使うゴッドイーターも増えて来てる」
「じゃあ、なんでまたそんな用済みの骨董品をわざわざ改造してまで………」
「神機一つ作るにも莫大な費用と時間がかかるし、何よりも適合者を探す方が大変なんだ。昔に比べたら遥かに適合の成功率は遥かに向上してるけど、絶対じゃないしね。でも、ゴッドイーターは数が足りていないのが現状なんだ。ゴッドイーターが片手の指で足りるくらいの数しか居ない支部だってあるのが現実」
「だから、骨董品でもなんでも改造でもなんでもしてどうにかこうにか人手を用意しようって訳ですか」
「そうだね。とは言え、まだまだそれは改造試験改造中で、とてもじゃないけど実戦じゃまだ使えないから、アラガミを倒して来いなんて言われることはないよ」
「はあ………で、こいつは一体どんな感じなんですか?」
「基本は第零世代型だから、オラクルの放出をするんだけど、そのままじゃ威力不足でね。だから、それを補うためにオラクルを凝縮することで威力を上げるようにしたんだ。まあ、それ自体は成功したんだけどね………発射完了まで引き金を引いて5秒かかるんだ」
「5秒………あの、それって」
「うん。とてもじゃないけど、アラガミを仕留めるなんて無理だよ。だからそれを補うために神機の下部に対アラガミ弾を撃つライフルを取り付けたんだ。コレでアラガミの足を止めて、チャージ完了した神機本体で撃つのが基本の戦い方になるね」
どう考えてもクッソ産廃武器じゃねえか⁈
「うん、気持ちはわかるよ。こんなので戦えって無茶な注文だよ。でもこれからも強くなって行くアラガミと戦うためにも、コレは必要なことなんだ」
「まあ、覚悟も何も決まってない今のまま、あのバケモノと戦わなくていいのはいい事か………」
「あははは。血気盛んにアラガミに突っ込んで行く子が多いから、君みたいな子は新鮮だよ」
「正直にヘタレって言ってくれて構いませんよ?」
「言わないよ。血気盛んにアラガミを狩ってやるって出て行った子達が神機だけで帰って来ることは多いんだ。私達は君達ゴッドイーターを死なせるために神機を作ったり、整備したりしてる訳じゃない。君達皆に生きてここに、アナグラに帰って来て欲しいから新しい神機を作るし整備してるんだ。だから、その慎重さはコレからも大事にして欲しい」
「………はい」
「さて、それじゃあ早速だけど、ダミーアラガミを使った実証試験を始めよっか」
リッカさんの言った事は絶対に忘れないことを誓って、彼女の後に続いて移動する。
『さて、それじゃあダミーアラガミを生成するよ。神機の準備はいい?』
「はい」
砲身下部のライフルの操作グリップも兼ねたサブグリップを掴んで、しっかりと構えると目の前に灰色の鳥みたいなバケモノが何もないところから突然現れた。3ヶ月前の経験ごフラッシュバックして自然と体が硬くなったが、
「動かない?」
『うん。身動きしないようにしてあるからね』
そんなことが出来るのかフェンリルは。凄いもんだと、そんなことを考えながら砲身を棒立ちのダミーアラガミに向けて、メイングリップの引き金を引く。そして、5秒待ってから引き金を放した瞬間、
神機の砲口から極太のテレビアニメで見たビーム砲よろしく光線が撃ち出されて、当たったダミーアラガミが消し飛び、光線の照射が終わるとガコンとシリンダーが回転した。
「お、オーバーキル………5秒間のチャージも納得の破壊力………」
『正直言って、想定以上の威力だよ………』
コレは、固定砲台として使えるとか判断されちゃわないよな?
その後、リッカさんと共に神機のレポートを仕上げて解放された俺はゴッドイーターとして充てがわれた部屋に向かった。
部屋の入り口の壁に備えられたドアロック端末に教えられた番号を入力して部屋に入るとそこは一人で使うには少し広めの部屋だった。昨日まで生活していたのはアパートみたいな感じで相部屋だったから余計に広く感じる。
「なんにせよ。明日からも頑張らなきゃな」
元の時代の世界に帰れるかは分からないが、何故この時代に放り出されたのか、いつか分かる時が来るはずだ。
「安定のジャイアントコーン………」
事前に置かれていた段ボール箱の中には二着分の着替え他ね基本的な生活用品が詰まっていた。そして、全部で5箱の段ボールの内4箱は3ヶ月の生活で食い慣れた。1メートルくらいある巨大なトウモロコシ。この世紀末の世界の一般的な主食であるジャイアントコーン先輩でした。米?超高級品です(