Infinite・Genius 【インフィニット・ジーニアス】 作:EUDANA
ISの世界に突如として現れたスマッシュ
そのスマッシュの脅威と孤独に戦い続ける1人の騎士がいた
仮面ライダービルドに変身する桐生戦兎は、IS学園の友人である織斑一夏とそのセカンド幼馴染の凰 鈴音の試合を観戦していた。
しかしその試合の最中、突如として上空から所属不明の未確認ISが現れた!
2人の援護に回ろうとした仮面ライダービルドだったが、同じタイミングで学園内に現れたスマッシュと戦闘に入り、負傷者を出すことなく見事に勝利した。
しかし、所属不明機は未だ健在…
どうなる、第9話!?
———————————————————
アリーナ 地上
「うおおおおおっ!」
一夏は叫びながら不明機目掛けて突撃する。
しかし不明機は一夏の雪片の斬撃に的確に反応して回避していた。
「くそっ!」
「馬鹿!ちゃんと狙いなさいよ!」
「狙ってるつーの!」
鈴の問答との間も一夏は不明機を倒すため思案していた。
(鈴が注意を引いてくれても、俺の突撃には必ず反応して回避する——参ったな…シールドエネルギーの残量は60…どうする?)
目の前のISと相対している一夏だったが、さきほどからシャッターで閉じられた観客席から爆発音のようなものも聞こえていた。
(何が起こってるのかわかんねえけど、モタモタしてられないな…!)
「鈴、あとエネルギーはどのくらい残ってる?」
「180ってところね…それがどうしたのよ?」
鈴の言葉を聞いた一夏は自分の考えてる行動を伝えた。
「なら、俺が合図したら俺の背中目掛けて龍咆を撃ってくれ」
「なっ…!馬鹿、あんたそれ本気で言ってんの!?」
鈴は狼狽した後、当然ながら反対した。
しかし一夏は決意を固めながら説得した。
「頼む、これしかもう方法がねえんだ!俺を信じてくれ!」
「……っ!」
説得を受けた鈴は何か言いたそうな顔をした。
しかし、直後2人はこの口論を中断することとなった。
『一夏ぁっ!!』
アリーナ中にその声は響き渡った。
毎日のように聞いていたその声を聞いて一夏は慌ててアリーナ内からも見える部屋…放送室へと視線を向けた。
アリーナが見える位置に取り付けられているスタンドマイクの前で、管制室にいたはずの箒が必死の形相で叫んでいた。
『男なら…男ならそのくらいの敵に勝てなくてなんとする!』
「ほ、箒!?あいつなんで……グアッ!」
箒に気を取られた一瞬、不明機に接近を許され、そのまま巨大な拳で殴りつけられた。
一夏を殴り飛ばした不明機は、今度は放送室の箒へと反応した。
一夏は焦りつつも体制を立て直し、鈴へさきほどの要求を催促した。
「クソッ!あいつ、箒を狙う気か!?……鈴!時間が無い、頼む!」
「…ああ、もうっ!どうなっても知らないわよ!」
渋々承諾した鈴は一夏の後ろに回り込んだ後、龍咆を起動した。
発射される直前、放送室の箒のつぶやくような声が聞こえた。
『一夏……死なないでくれ…。』
視界の端に映る、箒の滅多に見ないような悲しそうな顔を脳裏に焼き付け、一夏は発射された龍咆と共に加速しながら感情を走らせる。
(俺は…箒を……鈴を……千冬姉を……関わる全ての人を————守る!)
残った全てのエネルギーを回して雪片の特殊能力、零落白夜を起動して不明機へと突撃して行った。
腕に付いたビーム砲を放送室にいる箒へと向けていた不明機だったが、予想外の速度で突っ込んできたハズの一夏に対して、もう片方の腕のビーム砲を向けた。
「クッ!……うおおおおおおおおお!!」
こちらへ反応した不明機の反応に驚愕したが、今更後に引くわけにも行かなかった。一夏は叫びながら接近していった。
しかし零落白夜が当たるよりも先に不明機の砲身が光る方が早かった。
そのままビームを一夏目掛けて発射——しようとするも、その攻撃は胴体に浴びせられた青いレーザーによって中断させられる。
突撃しながら、一夏はハイパーセンサーで後方を確認した。
そこにはシールドとシャッターにポッカリと空いた穴からレーザーライフル——スターライトmkIIIを構えたブルー・ティアーズ…セシリアの姿があった。
(ごめんなさい織斑先生…
その姿を見て笑いながら一夏は不明機の懐に飛び込み、そして不明機の胴体を横一閃に切り飛ばした……。
▼
アリーナ 中央
零落白夜によって機能を停止し、横たわっていた所属不明機から少し離れた位置で一夏はISが解除された状態で座り込んでいた。
鈴との試合、突如乱入してきた不明機との戦闘、方法が無かったとはいえ鈴の龍咆をわざと受けるなど…数々の無茶の末に体力を使いきっていた。
「どうやら終わったみたいね」
通信越しで言う鈴に一夏は笑って答える。
「ああ…無茶言っちまったけど……鈴、ありがとな!」
「え?…いや、別にあたしはその…」
突然一夏に礼を言われた鈴は顔を赤くしながら画面越しの一夏から目を逸らした。
すると2人の会話に割り込むようにセシリアが通信を開いてきた。
「ンンッ!お二人とも、わたくしのことも忘れないでくださります!?」
「忘れてねえよ、セシリアもありがとな。」
わざとらしく咳払いをするセシリアに苦い笑いしながら一夏は鈴と同じように礼を言った。
すると思い出したかのように鈴がセシリアに話しかけた。
「あそうだ!セシリアあんた、あの遮断シールドどうやって突破したのよ?あの不明機並みの高火力武装なんて持ってたの?」
「え?ブルー・ティアーズは一撃が重いパワー系ってより広い攻撃範囲で次々に狙撃するタイプだろ?そんなのあったかな…」
2人の疑問にセシリアは気まずそうに顔を逸らして話した。
「いえ、それがですね…観客席まで来たもののどうすればと考えていたら、偶然にもシールドにヒビが入っていましたの。ですので一夏さんたちの戦闘で入ったものかと思いまして…。」
しかしそこまで聞いても一夏にも鈴にも特に心当たりは無かった…。
放送室で事の顛末を見届けていた箒は、一夏の無事を確認すると安堵の表情を浮かべてため息をついていた。
「一夏……良かった無事で——」
しかし、箒の視界にアリーナにいる一夏、セシリア、鈴の3人の様子が映った。
感謝の言葉を述べて談笑する…。そんな光景を前に、箒は窓に手をつけながらさきほどよりも悲しそうな表情を浮かべていた。
(何故……何故私はあそこに居られないのだ…
私は、一夏の足を引っ張ることしかできないのか……一夏の側で見ていることしかできないのか——)
込み上げてくる感情から涙を流し、アリーナから目を逸らして放送室から出ようとする箒だったが——
直後、倒れていた不明機の心臓に近い箇所からわずかに赤い光のような物が漏れるのを見た。
見間違いだろうかと涙を拭ってもう一度不明機へと視線を向けると……倒れていたはずの不明機が腕のビーム砲を数メートルほど離れた位置で座り込んでいた一夏へと向けていた。
3人とも視界に入っていない上、通信していた為かその動きに気付いていなかった。
箒は思わずマイクに走り寄って大声で叫んだ。
「一夏ァ!後ろだっ!!」
放送室の箒が叫ぶのを聞いて遅れて振り向いた一夏は、目の前で倒れていた不明機が身体を起こしながらビーム砲を向けている光景を目の当たりにした。
「あいつ、まだっ…!」
「一夏ッ!」
「一夏さんッ!」
鈴が盾になるためにと近づこうと、セシリアが不明機を止めようとスターライトmkⅢを構えた。
しかし2人の動きよりも早く、ビーム砲から光が漏れ出し…
そして、一夏目掛けて光が照射された。
一夏は目前に迫ったビームから片手で顔を覆いながら目を瞑った。
…しかし、一夏に攻撃が直撃することはなかった。
すぐ前から、ビームが何かに防がれるような音が響いていた。
覆っていた手をどけて目を開くと——
不明機から照射されたビームが目の前に迫っている光景…
そして、片手でそのビームを防ぐ茶色と水色の異形が佇んでいた……。
一夏の前に立ち、ダイヤモンドの左腕をかざしてビームを防いでいた仮面ライダービルド ゴリラモンドフォームは、一夏の勇敢さと無茶に呆れつつも褒めていた。
(こいつはこの前の代表決定戦と言い今日と言い…無茶でもしなきゃ生きられねぇのかよ…。ま、でもカッコよかったぜ。……あとは任せろ。)
スマッシュとの戦闘で出来たヒビを開けてアリーナへ飛び込んで行ったセシリアを隠れて見ていたビルド
すでに終わりそうだったが、心配だったためそのまま待機していた。
しかし再起動をした不明機を目の当たりにしたことで、その不安は的中した。
そしてビームが一夏へと迫る前にロケットで飛んできて、さらにゴリラモンドへとビルドアップし、今に至る…。
ビームの照射を終えた不明機が再び立ち上がった。
しかし、さきほど零落白夜によって斬り飛ばされた胴体はそのままの状態だった。
修復しているわけでなく、エネルギーが補充されて無理矢理動いているようだった。
不明機はさきほどとは逆の左腕のビーム砲を、今度はビルド目掛けて発射しようとした。
「まだ撃てるのかよ!?」
(させるかっての!)
ギリギリなように見えてもまだ動ける不明機に驚愕する一夏
それに対して、ビルドは一夏を射線から離すため横に飛び退き同時に左手で地面を強く叩いた。
するとビルドの周囲の地面の砂がダイヤモンドに還元されて行き、ビルドの左手の動きに合わせて不明機目掛けて発射された。
勢いよく飛んで行った小さな大量のダイヤは不明機が向けていたビーム砲の穴目掛けて突っ込んで行った。
直後、不明機によって発射されたビームが砲身の中で乱反射し始めた。
腕から細かなビームが次々と四方へ飛び出して、そのまま左腕が爆発を起こした。
「なによアイツ…あれもISだって言うの?」
「不明機と同じ全身に装甲を装着したタイプ…ですが、既存のISと共通する箇所がほとんどありませんわ…!」
鈴とセシリアがそれぞれ思ったことを口にしていた。
そんな光景を前にしながら、ビルドはすでにドライバーのハンドルを回し終えていた。
【 Ready Go ! 】
ビルドは右腕のサドンデストロイヤーを大きく構えた。
不明機はビームは不利と判断したのか、巨大な右腕の拳を振り上げながら猛スピードで接近してきた。
【ボルテックフィニッシュ!】
【イエーイ!】
対するビルドも右腕のサドンデストロイヤーで接近して殴りかかって来た不明機にカウンターのように拳を放った。
大きな音を立ててぶつかり合う右腕
しかし、ビルドの動きはそのままだったのに対し、不明機の右腕は大きなヒビが入った。
直後、左腕と同じく右腕も大きく爆発した。
そして不明機はそこで残っていたエネルギーを全て使い切ったのか、数メートルほどヨロヨロと後退した後、今度こそ倒れるのだった……。
▼
目の前で繰り広げられた所属不明機と都市伝説のぶつかり合いを、一夏は呆然としながら見ていた。
それはさながら正義のヒーローのようで、けれど自分たち3人が追い詰めた相手を後から来て倒しにきたハイエナのようで……
しかし一夏が思っていたのは、そのどれでもなかった。
(みんなを守る…そう誓ったのに……逆に…守られた……!)
不明機との戦いの中で誓った言葉が、ほんの一瞬で崩れ去った。
その現実と、そして自身の無力さから来る怒りで一夏は苦悶に満ちた顔を浮かべながら、拳を強く握りしめていた。
(もっと…もっと強くならねえと……)
目の前の仮面を付けた騎士を見ながらそう考えていた。
仮面騎士は一夏を一瞥したあと、ゆっくりと不明機へと歩いて行った。
「ちょっとアンタ、一体何なのよ!横から突然やって来て!」
「そうですわ。敵で無いのなら、まず名乗るのが常識だと思いますわ!」
警告していた鈴とセシリアがそれぞれ龍咆とスターライトを仮面騎士へと向けていた。
しかし直後に管制室の千冬から通信が入った。
『3人とも、終わらせたようだな。…まもなく部隊が突入する、後始末は任せて帰投しろ。』
「けど織斑先生、アイツはどうすんの!?」
『アイツは構わん、無視しておけ。』
「む、無視…ですか……?」
鈴とセシリアがそれぞれ困惑しながら喋っていた。
そんな2人の様子を見届けてから仮面騎士は再び不明機へと近づいて行った。
あと5メートルほどという距離まで近いた仮面騎士だったが——
その瞬間、不明機と仮面騎士のちょうど真ん中の位置から白い煙が何処からともなく噴き出した。
「なっ…!今度はなんだよ!?」
「一夏、アタシの後ろに!」
驚愕する一夏と今度は守るといった様子の鈴、そこから数メートルほど離れた位置でセシリアもスターライトを煙へと構えていた。
見れば仮面騎士も警戒するように動きを止めていた。
しばらくの間噴き出していた煙が晴れ、中からまた新たな影が——所属不明機とも仮面騎士とも違う、第3の異形が姿を見せた。
《
《
突如現れたその姿を見てビルドは驚愕していた。
黄色のコウモリのようなゴーグル、煙突のような1本角、身体に流れる赤と緑の配線、肩や首元に取り付けられたダクト……
その姿は、彼にも因縁深い…そしてスマッシュと同じく、この世界に存在するはずのないものだった。
「ナイトローグ…!?」
目の前に現れた異形…ナイトローグを前に、ビルドは最大限の警戒をしながら構えた。
しかしナイトローグは、何をするでもなくビルドに背を向けた。
「何…?」
警戒するビルドを他所に、ナイトローグは倒れている不明機の人のような箇所…その心臓部分目掛けて手を突っ込んだ。
バキゴキ…と機械が砕ける音が響いたあと、ナイトローグはあるものを取り出した。
それは小さな赤いボトルだった。
「やっぱフルボトルか!?」
アリーナ突入前に不明機から発せられた光を見て、まさかとは思っていたが、予想通りフルボトルが内蔵されていた。
フルボトルを取り出したナイトローグに近づくとビルドはその肩を掴む。
「おい、アンタ……誰かいるのか?」
『……………』
反応はなかった…
だが、突然ナイトローグはビルドに振り向きざまに裏拳を叩き込んで来た。
「あっぶねぇな!」
すんでのところで避けるビルドに、ナイトローグは歩いて近づいて来た。
煙を上げ、その中から取り出したバルブの付いた剣——スチームブレードを握っていた。
ナイトローグのようすを見ながらビルドは右腕を大きく構え、そしてナイトローグ目掛けて走り出した。
目前まで迫ったところで右腕のサドンデストロイヤーで殴りかかるビルド、しかしナイトローグはその拳を姿勢を低くする形であっさりかわして見せた。
そしてビルドの腹部を横一閃にスチームブレードで斬りつけた。
「ぐおっ!」
堪らずよろけるビルド、なおもナイトローグは余裕を崩さなかった。
実質、1対1と言う状況…しかしその戦いに割って入って来た人物がいた。
「コッチ無視して、なに勝手に盛り上がってんのよ!」
鈴は叫ぶと同時に龍咆を構えて発射した。
しかしナイトローグはあろうことか視認することなく、体を最低限ずらすだけでかわした。
外れてすぐ付近に着弾した龍咆に特にリアクションも見せていない。
「嘘だろ…!龍咆を直接見もしないで!?」
鈴の後ろにいた一夏は終始驚いていた。
鈴はすぐさま双天牙月を構えてナイトローグへと突撃した。
ビルドは手を伸ばして静止しようとするが無視していた。
「くっ…!舐めんじゃないわよ!」
背中を見せたままのナイトローグの背後へと双天牙月を振り下ろす鈴…
しかしナイトローグはここでようやく存在に気づいたかのように振り向いて右手のスチームブレード1本で防いだ。
鈴が両手で振り下ろした巨大な青龍刀である双天牙月を、片手…それも半分以下のサイズの剣で鍔迫り合いに持ち込んだのだ。
「こいつ…!」
『………』
ナイトローグはスチームブレードを使って器用に双天牙月の軌道を逸らし、鈴の体制を大きく崩した。
そしてそのまま右脚を使って綺麗なフォームの回し蹴りを叩き込んだ。
「…っ!」
「鈴ッ!!」
大きく吹き飛ばされた鈴は、連戦による影響でとうとうISの甲龍が解除されてしまった。
一夏は鈴が飛ばされた地点に走ってキャッチした。
「大丈夫か!?」
「うっさい!エネルギーさえ残ってればあんなヤツ…!」
そう言いつつも悔しそうな顔を浮かべる鈴
ひとまず安全を確認しホッとするのも束の間、今度はセシリアが射撃を開始していた。
「鈴さんと違って、わたくしのブルー・ティアーズは健在でしてよ!」
叫ぶとセシリアは持っていたスターライトを発射しつつ、ビット兵器のブルー・ティアーズを飛ばしていた。
『………』
ため息でもつくように肩を動かしながら、ナイトローグはスチームブレードのバルブを回した。
《 アイススチーム ! 》
ビットのブルー・ティアーズの射撃を的確に回避するナイトローグ、そしてスターライトからの射撃が飛んできた瞬間に近くにいた1機を斬りつけた。
斬られたビットは瞬く間に凍っていき、最後には砕けた。
砕ける間に、ナイトローグは拳銃——トランスチームガンを取り出して、スチームブレードと合体させた。
《 ライフルモード ! 》
そしてライフルモードに変形させた状態で、スロットに緑のボトルを装填した。
《フルボトル!》
ナイトローグはライフルモードのトランスチームガンを持ったまま、背中から巨大なコウモリのような翼を生やすと、上空へと飛翔した。
ナイトローグはそのままセシリア目掛けて突進していった。
「舐められたものですわね!」
セシリアは残っている3機と腰に装着されている2機を使って迫るナイトローグを迎撃した。
その包囲網を易々と突破したナイトローグはライフルモードにしたトランスチームガンを大きく振りかぶって斬りつけようとする。
「そんな見え透いた攻撃を見切れないと思っていますの!?」
大振りなその一撃をスラスターを吹かせて回避するセシリア、しかしナイトローグはすれ違いざまに身体を回転させて上下逆さまになった。
そしてその不安定な姿勢でセシリア目掛けて引き金を引いた。
《スチームアタック!》
銃口から緑の電車を模したエネルギーが猛スピードで突撃していった。
「なっ…きゃあ!?」
「セシリア!?」
背中に直撃を貰い、バランスを崩しながら墜落しかけるセシリア
一夏の叫びを受けながらも、地上付近でなんとか体制を立て直した。
『…』
トランスチームガンをライフルモードから分離したナイトローグはトランスチームガンの引き金を引こうとした。
しかしそれは背後からの狙撃で中断された。
『…!』
ギリギリで回避し、後ろを振り返ったナイトローグの目の前にはビルド ホークガトリングフォームが飛んでいた。
「あんたに聞きたいことがある!
スマッシュを出現させてるのはあんたなのか!?あの所属不明のISとはどういう関係だ!?」
『……』
相変わらず無言を貫くナイトローグは手にしていたトランスチームガンの銃口をビルドへ向けて発射した。
そのまま両者はアリーナ上空へと飛翔した。
「突然現れたかと思ったら…アイツら本当になんなんだよ」
「知らないわよ…って!だから放しなさいっての!」
上空を見上げながらつぶやく一夏と、再び抱き上げられていることに気づいて顔を赤くして叫ぶ鈴。
その横にセシリアが飛んできた。
「お二人ともお怪我は?」
「ああ、俺は大丈夫…ってセシリアこそ大丈夫なのか?」
「ええ…あんな単純な手に引っかかるなんて…屈辱ですわ…!」
さきほどの鈴と同じように悔しそうな顔を浮かべるセシリア
2人の様子を見ながら一夏は自分も思っていたことだと考えていた。
(そうだよな…悔しいのは俺だけじゃないんだよな…)
鈴を降ろした一夏は、上空の2つの影を見上げた。
両者は空中で銃撃戦を行なっているようだった…
ビルドのホークガトリンガーから発射されたタカを模した弾丸が、ナイトローグへと迫る。
対するナイトローグもトランスチームガンからの射撃でそれを撃ち落としていく。
爆煙の中からナイトローグがまっすぐビルドへと突っ込んで行った。
ナイトローグはスチームブレードで近距離戦も行えるのに対して、ビルド ホークガトリングフォームは近距離戦向きの武器を所持していない…不利な状況だった。
「チッ!やっぱり誰かいるんだな!?」
そう叫ぶとビルドはソレスタルウイングを使って旋回した。
その動きに合わせてナイトローグも旋回し、ビルドの背後を取った。
そして勢いをつけてビルドの背中へとスチームブレードで斬りつける。
「ぐぁっ!」
姿勢が不安定になったビルド…しかし素早く振り向くと同時に真後ろのナイトローグの腕を掴んだ。
『!』
そしてホークガトリンガーをナイトローグの腹部に押し当てて連射した。
2人はそのまま地上へと落ちて行った。
大きな音を立ててアリーナに墜落し、相対した両者。
ナイトローグはフルボトルを取り出そうとする動作をしたが、何かに気づいたようにビルドを見た。
「気づくのが遅いんだよ。」
そう言うビルドの手にはさきほどまでナイトローグが所持していた緑の色をした、電車フルボトルが握られていた。
『……フルボトルを奪うために、わざと誘ったのか。』
「まあな、おかけでこっちもボロボロだけどな……けど成果は出せた。」
やっと言葉を発したナイトローグに、電車ボトルを振って笑いながら話すビルド。
ナイトローグは立ち上がるとビルド目掛けてトランスチームガンを構えた。
攻撃に備えるビルドだったが、ナイトローグはトランスチームガンを撃つことなく全身のダクトから煙を発した。
「なっ…!?おい、待て!」
まだ聞きたいことがある…そう言おうとしたビルドだったが、煙が晴れるとそこにナイトローグの姿はなかった。
ビルドは舌打ちするように首を少し振るとソレスタルウイングを再び展開し、自身やセシリアが入ってきた穴へと飛んで行った。
あとには一夏と鈴、セシリアの3人だけが残された……。
▼
放課後
一夏は医務室で寝かされていた。
本人としてはなにも問題は無かったのだが、最大出力の龍咆の直撃を始めとした攻撃を受け続けたこともあってか千冬に無理矢理入れられていたのだった。
——お前の思う『人々を守る正義のヒーロー』が『感情も無く戦う、人々を守る使命を帯びただけのロボット』と一緒ならさ……それって兵器と一体何が違うんだ?——
医務室でかつて戦兎に言われた事を考えていた一夏の部屋に、音を立てて箒が入ってきた。
少し気難しい顔を浮かべていた箒は咳払いをしてから一夏に話しかけた。
「い…一夏、今日の戦いだが……。」
「…箒、すまなかった。」
どう続けたものかと考えていた箒だったが、そんな彼女よりも先に一夏は謝罪していた。
「な、何故一夏が謝る…?」
「俺が弱いせいで、箒や鈴、それにセシリアを危険に晒せてしまった…みんなを守りたい…そう思ってたんだけどな……逆に3人や
どこか意気消沈といった趣の一夏を前に、箒は言葉を失っていた。
そして意地を張ったように強気のまま言葉を絞り出した。
「そ、そうか…なら今以上に強くならなければな!これからはさらに訓練の量を増やしていくぞ!」
「…ああ、よろしく頼むぜ箒!」
いつだかのように笑って一夏は答えた。
それを聞いた箒は早足で医務室を出ていった。
箒が出て行ってから、一夏は疲れからくる睡魔に負けて眠りについていた。
そんな一夏の部屋に鈴が入ってきた。
眠っている一夏を前に、鈴は今日の戦いのことを思い返していた。
(何よ一夏のくせに…弱いのに無茶して。それでケガしちゃ元も子もないじゃない!……ホント考えなしなんだから…)
鈴は眠っている一夏へと静かに近づいた。
「一夏…」
一夏の名前をつぶやくと目をつぶり、顔を赤くしながら顔を近づけた。
眠っている間にキスをしようとしたのだが…
「…鈴?何してんのお前?」
「——っ!?いいい…一夏っ!?おっおっおっ起きてたの!?」
一夏は起きて不思議そうに鈴の顔を見ていた。
あからさまに狼狽する鈴に対し、一夏は首をひねった。
「お前の声で起きたんだよ…ていうか何をそんなに焦ってるんだ?」
「あ、焦ってなんかないわよっ!勝手なこと言わないでよ馬鹿!」
顔を真っ赤にしたまま鈴は叫んだ。
鈴が落ち着くのを待ってから、一夏は約束について話し出した。
「あー…そういえば試合無効だってな。勝負の決着どうする?次の再試合って決まってないんだよな?」
「そのことなら別にもういいわよ。あたしもムキになってたし…」
「俺も悪かったよ、あのことも今日のことも…いろいろとすまん。
…そういえば、その約束のことなんだが……上達したのか?料理。」
そこまで聞くと鈴はうっ、と言葉を詰まらせた。
そこへ畳み掛けるように一夏は問い質した。
「なあ、もしかしてその約束って違う意味なのか?」
「ちっ、違わない!違わないわよ!誰かに食べてもらったら料理って上達するじゃない!?そう、だからっ!」
全力で腕を振って誤魔化す鈴に、一夏は頭をかいていた。
「確かにそうだな…いやもしかしたら『毎日味噌汁をー…』とかの話かと思ってさ。違うならいいけど…深読みしすぎだな…」
「へぇっ!?そ、そうね!深読みしすぎじゃない!?あ、あっはははは!!」
完全に図星を突かれた鈴は目を逸らしながら笑って誤魔化した。
そんな鈴のようすに気づかないまま、一夏は料理で思い出した。
「あそうだ、こっちに戻ってきたってことはまたお店やるのか?鈴の親父さんの料理うまいもんな。また食べたいぜ。」
笑っていた鈴はその言葉を聞いた途端、固まってしまった。そして顔を暗くしながら家のことを言う。
「あ、その…お店はしないんだ……うちの両親離婚しちゃったから……あたしが国に帰ることになったのもそのせいなんだ…。」
「そうだったのか……。」
どこか呆然としながら鈴の言葉を聞いていた一夏。
曰く、今の女尊男卑の影響か母親に親権があるらしい…
「父さんとは1年会ってないの。多分元気だとは思うけど…家族って難しいよね…。」
(家族がバラバラになる…それは絶対にいいことじゃない…鈴は明るく振る舞っているけど、辛くないはずない……何か元気付けてやりたいな…)
その後、鈴に中学の友人と共に遊びに行くことを提案した一夏。最初は顔を赤くして話に食いついていた鈴だったが、徐々に機嫌を悪くしていった。
さらに入ってきたセシリアと一夏の特訓のコーチについて喧嘩を始めるのだった……。
▼
IS学園 上空
ビルドはホークガトリングフォームのまま飛行していた。
あの後、この時間になるまで付近にナイトローグ或いは不審者がいないか上空から偵察していたのだ。
しかし、周囲近辺のどこにもナイトローグやそれらしき人物を確認することはできなかった。
(…今日の所属不明のIS、同時に侵入してきたスマッシュ、そしてナイトローグ……この3つは繋がってるとみて、まず間違いねぇだろうな。)
そう考えていたビルドは不安を覚えつつも、どこか懐かしく感じていた。
(まーたナイトローグを追いかけることになんのか…)
かつて記憶を失い、石動惣一——エボルトに拾われたとき、ただ唯一覚えていた光景であるナイトローグを追いかけた…そんな頃を思い出しながら、ビルドはIS学園へと降下し、学園内の茂みへと隠れた。
▼
校舎外
放課後すでに空が暗くなった頃、箒は1人で考えごとに耽っていた。
(…一夏に謝らせてどうする…一夏はなにも悪くなかった……むしろ足を引っ張っているのは私ではないか…!)
クラス代表決定戦のときも、勉強をまったく教えていなかった。そして今日も鈴やセシリアのように一夏とともに戦うことも出来ず、それどころか気を取られた一夏は所属不明ISに攻撃されていた。
そして再び、あのとき放送室から見た光景を思い出した。
3人がずっと遠くに行ってしまう、自分だけが置いていかれてしまう……
そんなことを想像してか、箒はあのときと同じように涙を流した。
(もっと…強くなりたい……一夏とともに歩めるように…けどどうすればいい…どうすれば強くなれる……!どうすればもう足を引っ張らないで済む……!)
いっそ
「! だ——」
誰だ?…涙を拭いながらそう言おうとした箒だったが、茂みの中からわずかに見えた影を見ると思わず口を閉じ、近くの木の裏に隠れた。
見えたその影——橙と灰色の装甲をした騎士は、こちらに気づいていなかった。
(あれは…!)
今日、アリーナの戦いに突如乱入した人物…仮面騎士だった。
(何故こんなところに!?と言うより不法侵入ではないか!私がコソコソと隠れる理由がどこにある!)
顔をキリッとさせながら叫ぼうとした箒だったが、再びその動きを止めてしまった。
目の前で仮面騎士はなにかを取り外すと、その装甲が左右に分かれて光とともに飛散した。
中から1人の人間が現れた。その人物はこの学園の制服をまとっていた。
そしてその人物…IS学園の生徒は、相変わらず隠れていた箒に気づくことなく校舎へと小走りで駆けて行った。
校舎へ駆けた後ろ姿を見ていた箒は、その人物に心当たりがあった。
奇妙奇天烈なキャラクターで、自らのことを天才と言ってはばからない…自身の姉と似た、その人物の名前をつぶやいた。
「桐生…戦兎……?」
驚愕した表情のまま、箒は遠ざかっていく後ろ姿をただ眺めることしか出来なかった……。
長くなってしまって、本当に申し訳ない。
それだけは言いたいです。
シナリオの流れは頭の中に浮かんでても、それを文字で書き起こせるかは別なのがよくわかりました。
次々とベストマッチが登場していますが、ニンコミの登場はもうちょっと後になります。本当に申し訳ない。