Infinite・Genius 【インフィニット・ジーニアス】 作:EUDANA
なお転校生2人の出番はちょっと先です。
あと、今回あるキャラが出ますが、リイマジみたいなものです。
一応前回と同じく前後編ですがまだ書き終わってないので後日投稿します。
なので初投稿です。
天才物理学者の桐生戦兎が流れ着いたこの世界で、スマッシュが市民の生活を脅かしていた。
スマッシュと戦うために立ち上がったのは、この世界とは違う技術で作られた『仮面ライダー』だった。
仮面ライダービルドはIS学園のイベントである『クラス対抗戦』にて現れたスマッシュを倒し、さらに所属不明の無人ISにとどめを刺したのだった…
しかし、突如として現れた同じ世界の技術である『ナイトローグ』に翻弄されたうえ、何も聞けずに逃げられてしまう…。
なぜ俺はこの世界に来たのか、あのスマッシュは何なのか、無人機を差し向ける理由は、そして奴らの狙いは何なのか…!?
どうなる?第10話!
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IS学園地下 ある一室
教員にのみ立ち入りが許されたこの部屋に、中央の台に横たわる形で所属不明のISが置かれていた。
先日のクラス対抗戦にて乱入してきたこの機体は、機能を停止したあとにこの部屋まで運ばれていた。
機体の装甲が一部剥がされていたり、取り付けられたコードがパソコンに接続されている。
部屋に入った千冬は、その機体が細かくチェックされている様子を見ながら、近くに立っている山田先生から詳細を聞いていた。
「やはりあれは無人機です。しかも登録されていないコアでした。遠隔操作と独立稼働、どちらかは判りませんがいずれも現時点では実現されていない技術です。」
「あー…やっぱ機能中枢が完全にオシャカになってる…こりゃ修復、解析は無理ですね。
多分俺や一夏たちとの戦闘で、って言うよりは機能停止になると自動で破壊される…要は自爆するようにプログラムされてたかと思いますね。」
山田先生の話に続くように、この学園の生徒の1人にして仮面ライダービルドである桐生戦兎はボヤいた。
「そうか…」
「でもこれだけのこと出来るのなんて、俺を除けばこの世界には1人しかいなくないです?」
戦兎がそういうと、千冬は少し戦兎を睨み、しかし諦めたように目を伏せながら渋々と言った感じで肯定した。
「確かに、現状もっとも怪しむべきは
「ですよねー…けどもしこの機体の開発者がホントに
だるそうに、しかし思い詰めるように呟く戦兎。
フルボトルは地球上の技術だけでは到底作れるものではない。その上1本だけでもかなりの動力源となるだろう。そんな物、技術をテロリストに近い彼女に持たせてしまえばどうなるか…
そう考えていると、千冬が話題を変えるように戦兎へと質問していた。
「で、このISが停止した後に現れたのは誰だ?お前はヤツを知っていたようだが…」
「……あれはナイトローグ。スマッシュを作り出した連中のボスみたいなヤツが変身する物でして、条件さえ整えば誰でも変身出来るんですよ。なんで誰なのかはちょっと…」
頭をかきながら無人機に取り付けたコードを引き抜いていく戦兎はナイトローグの戦闘力について話した。
「ナイトローグに変身するために使うトランスチームシステムには、ビルドと違ってハザードレベル……まあISランクみたいなものなんですけど、それが上がらないようになってるんですよ。つまり、変身者の実力がダイレクトに反映されるんです。
俺も結構修羅場乗り切って来たって自負はあるんですけど、あそこまで渡り合えるとは…」
「なるほど…となると、今のうちの代表候補生たちの実力では、到底太刀打ち出来んだろうな……。ヤツ自身があまり戦闘に乗り気じゃなかったのは幸いだったわけか。」
そんな2人の会話を聞きながら、山田先生がどこか不満そうに口を開く。
「と言うか織斑先生、なんで私には桐生くんが
「ああ……まあ、このことは不必要に喋るべきではないと思ってな、すまない。」
真耶だと何かの拍子で漏らしかねない——そんな本音をおくびにも出さずに説明した千冬。
そんな千冬の考えを察した戦兎は苦笑いしていたが、ふとそのことが気になった
「そういえば、先生2人以外で俺のこと知ってるのって他に誰がいるんです?」
「私からそのことを話したのは、学園長や上層部数人、それから生徒会長の
「ふーん……理事長とかはともかく、生徒会長?…でもまあ、それくらいならバレる心配はないか。」
そう言った戦兎に対し、千冬は呆れたように言う。
「誰かが喋る可能性よりも、自分のミスでバレないかを心配したほうがいいぞ。私が話したのは皆信用に足る人物だからな。」
「まさか!俺に限ってそんなことありませんって!」
「織斑先生、それってつまり私は信用されてないってことですか?」
笑いながら言う戦兎にため息を吐く千冬、そして頰を膨らませて怒ったように言う山田先生。
そうこうしているうちに戦兎は機材を片付け終えていた。
部屋を出る際に、先生2人からこの件は口外無用だと改めて釘を刺されてから自室へと戻った。
部屋を出て行った戦兎の後ろ姿を見ながら、千冬は話題に上がった重要人物である友人のことを考えた。
(確かに束なら無人機やISコアを作ることが出来るだろう…。だが桐生の話が本当なら、あのとき現れたナイトローグなるヤツは束と協力関係にあることになる……他人に一切興味を持たないアイツに限って、そんなことがあり得るのか?)
行方をくらましている友人の性格を少しは理解しているつもりだった。
しかしその上で疑問に思ったのだ。彼女が誰かと手を組むなど考えられないと…
自分と同じような存在だったのか、或いは——
(普通の人間ではない、か……?)
しかし、疑問が浮かんだところでその答えが出ることはなかった……。
▼
学生寮 1049号室
自室へと戻った戦兎は鍵を開けて部屋へと入った。
仮面ライダービルドであることを気付かれないために個室にして貰っていた…一夏には悪いと思いながら。
部屋の中は巨大なボードが置かれていたり、天井付近にコーヒーメーカーを起動させる実験用器具のチューブが設置されていたりと、元の世界で拠点にしていたカフェ
パソコンを起動させながら、戦兎はあのナイトローグがどうやってこの世界に来たのか、そして該当しそうな人物を考え始めた。
(恐らく俺と同じように飛ばされて来た…と見るのが自然だろうな。篠ノ之博士クラスともなればデータさえあれば復元できるだろうから、トランスチームガンだけが飛ばされた…て感じでもいけるけど。
問題は誰が変身したか…あれだけの戦闘力は相当なものだ…)
そこまで考えた戦兎の脳裏にある存在が思い浮かんだ。
この世界に飛ばされてきた自身と同じ空間に存在し、トランスチームガンも持っていただろう存在…
——地球外生命体・エボルト——
ヤツならあの強さも納得がいく、と…しかし戦兎はその可能性を自ら否定した。
(いや…もし仮にエボルトなら、もっと俺を動揺させてくるだろう。織斑先生も言っていたが、あの時のナイトローグは戦闘自体は乗り気じゃ無かった。
ヤツなら相手の精神を揺さぶって、動揺したところでさっさと帰る…もしくは煽りながら戦闘そのものを楽しむか…少なくともあんなに無言を貫こうとはしない。
それにヤツならナイトローグよりも、慣れているブラッドスタークに変身するハズだ。)
しかし、この世界に飛んできたのが自分たちがいた空間だけならば、一番可能性が高いのはエボルトであることも間違いない。
それに自分たちの世界の人間が変身しているという確証も持たなかった。
そう考えながら、戦兎はネットでとあるニュースサイトを開いた。
そこには見出しと写真が大きく掲載されていた。
『ORE JOURNAL
仮面騎士は本当に実在していた!!
先日、日本のIS学園のイベント中に緊急事態が発生。ネットで噂されていた未確認生命体が実際に現れ、生徒に襲いかかったという。
▽生徒の1人が実際に撮影した写真
しかしそこに突如として、同じくネットで噂されていた『仮面騎士』が現れ、生徒たちを救った。
カッコいいと思うが、同じく生徒からの話ではパンダの映像でアフターケアを行なっていたらしい。
▽同じく生徒の1人が実際に撮影した写真、抱き上げられているのは他の生徒とのこと
そのコミカルとも取れる行動から、仮面騎士の正体は『どこかズレている、しかし我々と変わらない普通の人間』ではないかと筆者は思う。(OREジャーナル記者:城戸真司)』
『マジでいたのかよ…対策立てれてないとか、ホントに日本の政府は無能だな』
『そもISを繁栄させた時点でお察し』
『まあ俺は最初からいると思ってたけどな。』
『↑お前のログ見てきたけど、居るわけねぇじゃん、草。って呟いてんじゃねえか、嘘松』
『てか、正義のヒーローみたいなヤツを普通の人間とかコイツ何様だよ』
コメントも結構荒れていたが記事にはそのように書かれていた。
どうやら学園側としてはビルドとスマッシュを所属不明機の情報の隠れ蓑にするつもりらしい…。
「まあ別にいいけどよ、所属不明のIS大暴れ!ってバラされるよりマシだろうしな…。考えたところで仕方ない、そろそろ続きに行くか。」
そう言うと戦兎は一部機材を持って、自身の専用機を保管している整備科へと向かって行った……。
▼
休日
所属不明機、未確認生命体、仮面騎士の騒動が一段落した6月某日
その日、一夏は中学時代の親友である
2人で檀ファウンデーション製のゲームをプレイしていると、不意に弾から声をかけられた。
「——で?」
「で?って何がだよ。」
「だから女の園の話だよ。いい思いしてんだろ?メール見たけど楽園じゃねえか、何そのヘヴン。なんか騒動あったみたいだけどよ…なあ招待券ねえの?」
「ねえよ…実際、聞くと住むとじゃ大違いだっての。」
そう言いながら、一夏は同じ男子や転校してきたセカンド幼馴染のことを考えながら返答する。
「けど、同じ男子がいてホントに助かったぜ。それに鈴も転校してきたしな。話し相手本当に少なかったからなあ。」
「鈴か…鈴ねえ……そういえば、鈴より前の…ファースト幼馴染だっけ?彼女とはうまくいってんのかよ?」
弾に箒の話を振られた一夏は、少し顔を曇らせた。
「いや…それが箒のヤツ、最初の頃はやけに素っ気なかったし、最近もなんか距離を図りかねてるって言うか…なんでだろうな?」
「へー…ったく、相変わらず女泣かせなヤツだねぇお前は。」
「なんだよ女泣かせって…」
ゲームをプレイしながら肘を当ててくる弾に若干呆れながら一夏は呟いた。
すると部屋の扉がノックされ、同時に扉が足で蹴られて開いた。扉の先には弾の妹、
「お兄!ご飯できたよ!さっさと食べに——」
「あ、蘭久しぶり、邪魔してる。」
「いっ…一夏さん!?き、来てたんですか?」
一夏が居ると知らなかった蘭は顔を赤くし、激しく狼狽しながら入り口の端から顔を覗かれるように体を隠した。
「ああ、うん。今日は外出、家の様子を見に来たついでに寄ってみた」
「そ、そうですか……なんで言わないのよ…」
そう言いながら蘭は兄の弾をすごい形相で睨んだ。
「い、いや言ってなかったか? そうかそりゃ悪かった…ハハハ……」
その後、弾は蘭に口では説明できないような方法でボロボロにされた。
兄妹の実家は食堂だったため、そこで昼食を取ることにした。
箒や鈴の話をすると、蘭は狼狽したあと、自身も来年IS学園を受験することと入学した暁には先輩として指導してほしいことを一夏に話し、一夏もこの約束を了承した。
…弾からすごい形相ですぐに彼女を作れと言われたが、一夏にはいまいちピンと来なかった……。
▼
数時間後
五反田家から駅へと向かっていた一夏は、ふと弾のような男子生徒が居れば…と考えていた。
(五反田みたいな話しかけやすい男子生徒なら、俺も少しは気が楽になるかもしれないよなあ。
なんて言うか…戦兎も明るく振る舞ってるし、クラスのみんなと仲も良いんだけど、どこか周囲と壁を作ってるみたいなんだよな……『俺は天才だから、お前ら凡人と遊んでる暇はないんだ』って束さんみたいな感じではないんだが。
やっぱ例の仮面騎士の率直な感想のことをまだ気にしてるんのかな…?謝りはしたんだが…でもそれだと俺以外のクラスメイトにまで同じ態度なのはなんでだ?)
そう考えながら歩いていた一夏だった……
が、そんな一夏の様子を路地裏から覗き込む影があった。
「………アイツが織斑一夏か……
悪いが、ディスカビル家の財政のための尊い犠牲になって貰うぞ…!」
影は一夏の背後からゆっくりと、しかし少しずつ足を早めて近づいていく。
そしてすぐそばまで近寄ったタイミングで、背後に気づいた一夏が振り返ると——。
▼
数時間後
整備科 整備室
ISの情報が映し出されたディスプレイを睨みながら、戦兎は思案していた。
「やっぱカスタム性は欲しいよな…でも
そう叫ぶと、バックアップが有るとは言えすぐさま今までのデータの大部分を削除し始める戦兎。
今までのデータを書き換え、予定していたパーツも変更して…そんなことをしていた戦兎だったが、不意にビルドフォンに着信が入った。
〜♪〜〜♪
「!…スマッシュか!?」
すぐさまビルドフォンを手に取り、画面を開いた。
しかし、そこに映っていたのはスマッシュ出現情報ではなく、メッセージの受信案内だった。
「…なんだよ。びっくりさせんなよな…。」
安心しつつもどこか怒りを滲ませながらメッセージを開いた戦兎。
しかし、その動きは直後に止まることとなった。
そこに映ったメッセージには——。
「……一夏が誘拐されたぁ!?」
一夏が誘拐されたと言うあまりにも衝撃的な内容が書かれていた。
そして戦兎の叫びが部屋中に木霊した……。
▼
『 決闘状
仮面騎士へ
IS学園初の男子生徒『織斑一夏』は預かった。
正義のヒーローならば、この申し出を断ることは出来ないだろう。
助けたくば、14時までに同梱の地図に指定されたポイントへ1人で来い。
そんな手紙が白い手袋と共に校門前に置かれていたらしい。
ひと通り手紙を読んだ戦兎は、メッセージを送ってきた千冬に質問した。
「これ見つけたのって誰なんです?」
「篠ノ之だ。特訓の時間になっても帰って来ない織斑に業を煮やして校門で待ち構えようとしたら置かれてあったらしい。」
「…その篠ノ之は?」
「…オルコットと凰と3人で先に向かってしまった。」
マジか、と呟いて戦兎はもう一度手紙に目を通した。
神代という名前には聞き覚えがあった…数年前に亡くなったという、イギリスの元国家代表IS操縦者と苗字が似ていた。彼女は神代=ディスカビルという苗字だったか…。
そして、彼女には弟がいると雑誌かネットで見た覚えもあった。
今回の手紙を送ったのは、内容を信じるならばその弟だろう。
「最っ悪だ……でも見過ごすわけにはいかねぇよな。」
「本来なら私も救出に向かうべきだろう…だが罠かもしれん。我々が離れたところで、また例のナイトローグがこの学園に現れる可能性もあるからな。」
「けど、行くしかないでしょ。相手が俺に用があるなら尚更…それに、オルコットと凰は仮にも国家代表候補生…そんな2人が学園の外でISの無断展開なんてすりゃ、それこそ国際問題ですし。
織斑先生はここで一夏の帰りを待っててやってください。」
そういうと戦兎は立ち上がって部屋から出ようとする。
しかし、不意に千冬に呼び止められた。
「…桐生」
「?なんです」
扉の前に立ち、開いた扉から外に出ようとした戦兎は振り返って千冬へ視線を向けた。
千冬はわずかに目を逸らしたあと、すぐさま戦兎へと視線を戻して続けた。
「…担任として、いやアイツの姉として言う……一夏を頼むぞ。」
「フッ…分かってますって!」
そう叫んでから、戦兎は学園の外へと走って行った……。
▼
一夏は、大きな燃料タンクの中間にある鉄の棒からロープで腕ごと身体を吊るされていた。地上10メートルほどの位置だ。
なんとか足を振るなりして脱出を試みるも、足は虚しく空を切るだけだった。
一夏は地上からこちらを見上げる人物を睨みながら叫んだ。
「オイ離せよ!誰なんだよお前!それに一体なんのつもりだ!?」
「フッ、俺は神代剣…『
優雅に答える年上の少年——神代 剣の言葉を聞いた一夏は困惑した。
「え、エサ?」
「そうだ。ヤツはIS学園に関与している…それは先日の未確認生命体乱入事件で容易に想像できる。未確認生命体が出現してからたったの数分で現れたのが、何よりの証拠だ。
そんな学園の貴重な男子を拐えば、ヤツは確実に動く。そのためにお前を連れて来たんだ。」
「ふざけんな!」
剣の言葉に怒りをあらわにする一夏、そんな一夏の様子を見ながら剣は笑いながらで話す。
「安心しろ、俺としてもショ・ミーンを傷つけるつもりはない。ヤツが現れたらお前は無傷で放す…貴族の誓いに偽りはない!」
「そんな話、信じられるわけねぇだろ!それにそう言う問題じゃない!」
なおも怒りをぶつける一夏は、しかし冷静に対処するために一度深呼吸をして落ち着きを取り戻そうとする。
そうしてから、一夏は根本的な疑問を剣へとぶつけた。
「…大体お前、なんでアイツに会いたいんだよ?」
「…言われたんだよ、ディスカビル家の新しい契約者に。『仮面騎士を倒すことが出来たなら、ディスカビル家の財政難を解決するほどの資金を援助する』とな」
「た…たった、それだけでか…そんなことのために……?」
自身を誘拐し、仮面騎士と戦う…その理由が金銭。
その事実に一夏は、呆然とすると同時に再び自身の中に怒りが沸くのを感じた。だがそれよりも先に対する剣の方が怒りをあらわにした。
「そんなこと…?そんなことだと!?俺はお前のようなショ・ミーンと違う!
…曽祖父よりも更に前の代から続くディスカビル家は、オルコット家と並ぶイギリスの名門貴族だった。
ISが歴史に現れてからも変わらなかった。俺の父は必死に家を相続させ、そして姉さんはイギリスの国家代表IS操縦者にも選ばれて家を継いだ…全てが上手く行っていた……あの日が来るまでは…!」
心の奥から湧き上がる怒り、そして圧を前に、一夏はつい黙ってしまった。自身の怒りさえも忘れて呆然としながら彼の言葉を聞いていた。
「数年前、俺の父、母…そして姉さんはテロに巻き込まれて殺された。それからと言うもの、ディスカビル家は大きく没落していった…だからどんな手を使ってでも、俺はディスカビル家を存続させなければならない!俺の代で終わらせるわけにはいかないんだよ!」
その話を聞いた一夏は少しだけ言葉を詰まらせた。
しかし、どんな理由があろうと犯罪に手を染めるなんて間違っている…そう叫ぼうとした。
しかし——
「いいえ!そんなことが許されるはずがありませんわ!たとえどんな理由があれ、貴族たるもの庶民に手を出した時点で間違ってますわ!!」
その言葉に2人が視線を向けると、採石場の入り口の前でセシリアが腕を組んで仁王立ちしていた。
「セシリア!」
「なに、セシリーヌだと!?」
一夏と剣がそれぞれ叫ぶ。
2人の叫びを無視しながらセシリアは2人に近づきながら続けた。
「そもそもディスカビル家が衰退した理由は、貴方の身勝手な生活と思想のせい、ならばその責任を取るのは貴方自身ではなくて!?」
「黙れ!俺はお前と違って男だ、ISの操縦だって出来ない…ならば…!」
「そうやって男だからと逃げるのがそもそもの間違い。誰かに手を差し伸べられるまで自分で立ち上がろうとしない…そんな貴方に、貴族を名乗る資格はありませんわ!」
両親を失ってからたった1人で努力を重ねて家を守り続けた彼女からしてみれば、金銭を平気で使い潰し、誰かに助けてもらわなければならず、あまつさえ犯罪に手を染めようとしている剣の行動や主張は、到底我慢できるものではなかった。
そんなセシリアの言葉を受けて、あからさまに狼狽した剣。
そんな彼の視線の死角から、叫び声が上がった。
「一夏ァッ!!」
入り口から離れた位置の塀を乗り越えてきた箒が竹刀を持って、一夏目掛けて一直線に走り出していた。
「箒!?」
「セシリーヌは囮か!チッ…させるか!」
狼狽していて反応がわずかに遅れた剣だったが、すぐさま箒の動きに反応してその行く手を阻んだ。
「邪魔だぁ!」
箒は足を止めることなく、剣の胴体目掛けて横薙ぎに竹刀を振るう。
その素早い動きに剣は難なく対応して躱して見せた。
「ショ・ミーンにしては中々…だが!」
そう言うと剣は自身が持っていた長い直剣を鞘に収めたまま縦に振る。その攻撃を竹刀を上段に横にして構えて防ぐ箒。
しかし剣はその動きを予測したように直剣の軌道を素早く変えて、横に振るった。
「ッ!」
その動きを見て、箒は竹刀によるガードが間に合わないことを察すると前進をやめ、後ろに大きく下がった。
その隙を逃さずに、剣は直剣をフェンシングのように何度も突き出す。
幾重にも繰り出される攻撃を紙一重に避ける箒
ついには近くに立っていた施設用の倉庫の壁を背にして追い込まれていた。
その様子を見て剣は笑って、力を込めて強く直剣を突き出した。
「フッ!悪あがきも終わりだ!」
「…!ハアッ!」
箒は一瞬呼吸を整えたあと竹刀を手放し、その攻撃を見切って前進しながら突き出された直剣を躱して、その手首を掴んだ。
そしてそのまま背負い投げのような動作で剣を背後の壁に叩きつけようとした。
「アイキドーか!なるほど狙いはいい!だが相手が悪かったな!」
投げ飛ばされながら叫んだ剣は足を曲げた状態で壁に叩きつけられる…しかし、その直前に両足を壁に合わせた。
まるで壁へと着地したような体勢になった剣は、直後に足に力を入れて強引にその場で回転した。その動きによって、手首を掴んでいた箒の拘束を無理矢理解いた。
壁に立って箒を見下ろす形になった剣は、強く壁を蹴って前方に回転しながら箒のすぐ真後ろの地面に着地した。
「なっ!?」
呆気にとられたあと、すぐさま落としていた竹刀を拾って後ろへ振り抜こうとした箒だったが、その眼前に勢いよく振り下ろされていた直剣が、当たる直前に静止した。
「勝負あったな…この程度で俺を止めようとは笑止千万、やはり仮面騎士でもなければこんなものか。安心しろ、俺が倒したいのは仮面騎士だけだ。」
「クッ…!」
悔しそうに剣を睨む箒、その光景を見て剣は落ち着きを取り戻したかのように背を向けた。
「まあそう落ち込むことはない、なにせ俺はISを除いたあらゆる分野において頂点に立つ男…完璧で当然なのだからな!」
空を見上げながら高らかに笑う剣…
目を開け残るセシリアへと視線を向けようとしたとき、ふとすぐ横に人の気配を感じた。
そちらに視線を向けるとその眼前に拳が迫って来ていた。
「なブッ!?」
箒に気を取られてた結果、目前まで迫っていた鈴に気付かなかった剣はパンチを顔面からモロに食らって吹き飛んだ。
倒れている剣を睨みながら一瞥ことなく箒の無事を確認した。
「油断してんじゃないわよ!…大丈夫?」
「あ、ああ…」
肯定して、しかし箒は座り込んだまま意気消沈していた。
倒れていた剣は、現れた鈴を睨みながら立ち上がる。
仮にも軍部上がりの鈴の不意打ちが直撃したにも関わらず、あまりダメージは見受けられなかった。
「くっ…2対1とは卑怯な!」
「なにが卑怯よ!誘拐なんてするようなヤツに言われたくないわ!」
相対する両者を他所に、入り口から燃料タンクへと駆けながらセシリアはなんとか一夏を降ろそうとしていた。
「一夏さん!今降ろしますわ!」
「す、すまねえ…」
悔しい表情を浮かべる一夏、セシリアは人命救助のためと自分に言い聞かせながらISを起動させようとするが——
突如、採石場にバイクのエンジン音が響いた。
「!来たのか!?ええい、こんなショ・ミーンなどどうでもいい!」
「ちょっと、待ちなさいよ!」
鈴と格闘戦を行なっていた剣は、その音を聞くと鈴を無視して音の鳴る方へと向かった。
入り口へと視線を向けるのと、採石場の敷地内へ赤と青の異形がバイクを飛び跳ねらせながら駆って現れるのは同時だった。
剣の数メートル先に停止した仮面ライダービルドは、バイクから降りて吊るされている一夏の方へと歩いて行った。
「待っていたぞこの時を!いざ尋常に勝負!うおおおお!!」
そう叫びながら、剣は今まで鞘にしまっていたままだった直剣を引き抜いた。
鞘を投げ捨てて、こちらを見ようともしないビルドへとその刃を渾身の力で振るった…が。
キンッ!と言う大きな音が鳴った。
ビルドへと切り込まれた刃は貫くことはおろか、逆にその刀身にヒビを入れていた。
「な、なに!?…ならば!」
直剣を放り投げて、今度は深く腰を落としながらボクシングのコークスクリューを顔面へと放った。
だがこれも大したダメージも無く、ビルドは微動だにしなかった。
そんな剣の様子に呆れたビルドは、さらに攻撃しようとした剣目掛けて腕を横に思い切り振った。
「な…うおお!?」
とっさにガードしたものの、その威力を減らすことすら叶わず、剣は大きく吹き飛んだ。すぐ近くの倉庫のシャッターを突き破ってそのまま見えなくなった。
(やべ、流石にやり過ぎたか?…でもさっきまでダメージがなかったっぽいし大丈夫か…?ってそれより今は一夏の方が先か)
ビルドはそう思いながら燃料タンクへと近づいてジャンプした。
一夏の身体を担ぎ上げると、取り出したドリルクラッシャーでロープを切った。
着地してから一夏を降ろすと、すぐそばまで寄っていたセシリアと鈴が一夏へと駆け寄った。
「一夏無事だった!?」
「一夏さん無事ですの!?」
「あ、ああ…俺は大丈夫、その…サンキュー。」
薄く笑いながら2人に答えた一夏は、少し離れた位置で立っていた箒に声をかけた。
「箒もありがとうな。危険を冒してまで来てくれて…」
「い、いや私は別に…前と同じで、何の役にも立てなかった…」
「そんなことねえだろ、箒がいたおかげで鈴がアイツに1発入れてやれたんだからさ。」
顔を伏せながら目を背ける箒を見て励ます一夏。一通りフォローを入れたあと、少し罰が悪そうな顔を浮かべてから振り返ってビルドへと向いた。
「あんたもだな……ありがとう。また助けられちまったな…。俺、正直正義のヒーローって人間ぽく無くて、あんまり良い印象抱いてなかったんだけどさ…アンタは違うのかもな。」
「……」
一夏の言葉を聞いたビルドは笑うように肩をすくめた。
(嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか…その素直さをもうちょっと3人にも向けれればな…)
そこまで思ったビルドは、ふと思い出したように倉庫へと視線を向けた。
(そういえば、吹っ飛ばした犯人が来ねえな…中の声が聞こえないにしても、そろそろ出てきてもいいと思うんだけどな)
タフな犯人にしてはやけに静か過ぎた。そのことが気になったビルドはまさか殺してしまったのでは、と言う不安を抱きながら倉庫を凝視した……。
▼
倉庫内
「ええい、クソ!」
シャッターを突き破って倉庫へ飛ばされた剣は、辺りの砂埃を払っていた。
「仮面騎士め、やってくれる…だが、じいやが言っていた。『男は燃えるもの、火薬に火を点けなければ花火は上がらない』ってな!
…しかし、『ヤツ』は俺に騎士に対抗できる力もやると言ってたはずなのに…いつ来るんだ!?」
事前に結んでいた契約を反故にする気かと怒り任せに立ち上がった。
すると背後に誰かが居る気配を感じた。振り返るとそこには、先日彼の前に現れた『契約者』が立っていた。
「おお、居たのか契約者!約束通り織斑一夏を誘拐して、仮面騎士をおびき出した。あとはお前が言っていたアイツに対抗できる力さえあれば…さあ、早く寄越せ!」
近づきながらそう話す剣に対して、『契約者』は肩をすくめながら目の前に来た剣を見下ろした。
そして——
《 デビルスチーム! 》
倉庫にガスと、そして剣自身の叫び声が広がった……。
ぼっちゃまの性格が若干違うのはリイマジ同様、違う世界の人物だからってことで…キャラが濃すぎて再現しきれなかったとも言う。
次の話でビルドの本格的な戦闘が入ります。
そしてなぜ登場させたのがぼっちゃまなのかも判明します。