Infinite・Genius 【インフィニット・ジーニアス】   作:EUDANA

13 / 23
待たせたな!(スマブラでスネークを使いながら)

矛盾させてしまって一通り消して、挙句ゲームにうつつを抜かして執筆を怠る作者がいるらしい。
言い訳すると、映画を観てから書きたいとも…

今回もアンチヘイトっぽい描写があるので、そういうのはNGな方はブラウザバック推奨です。

あとサブタイにチェイサーと書いてますがチェイスは出ません。

また、誤字とか変なところとかあるかもしれません。

来年も良いお年を。

なので初投稿です。


真実へのチェイス

仮面ライダービルドに変身する桐生戦兎は、誘拐された同じIS学園の同級生で友人の織斑一夏を救出するため、犯人だった神代剣の指定した場所へと乗り込んだ。

難なく一夏を救助したビルドだったが、神代剣は突如としてスマッシュへと変貌を遂げてしまった。

高速の戦闘に苦戦するビルド、しかし一夏、そして同じクラスメイトのセシリアから受け取ったフルボトルを使って新たなベストマッチ『ローズコプターフォーム』に変身して、剣が変貌したスマッシュを撃破するのだった。

 

…けど、まだ謎が残っている。

なぜ剣はスマッシュになったのか、裏で手を引いていたのは誰なのか…

そして一夏たちにフルボトルを渡したナイトローグの真意とは一体なんなのか……

これは一度、情報を整理する必要があるみてえだな。

 

どうなる?第12話…。

 

———————————————————

 

先日

採石場

 

 

『あるぞ、出来ることなら…』

 

そんな声が背後から辺りに響いた。

一夏たちが一斉に振り返るのと、背後で煙が吹き出るのは同時だった。

 

「なんだ…!?」

 

急な出来事に身構える一夏、視線をわずかに周りへ向けると、箒、セシリア、鈴も同様だった。

困惑しながらも様子を見ていると煙が徐々に晴れていき、その中から1つの影——異形が姿を現した。

煙突のような角、黄色いコウモリのようなバイザー、銀のパイプを胸から肩にかけてまで伸ばしたその姿に、4人は心当たりがあった。

 

それは数週間前にアリーナで行われたクラス対抗戦、その最中に無人の未確認不明ISと同じように現れた存在と全く同じだった。

 

「お前は…あの時のコウモリ男…!」

「アンタ、今度は一体なんの用よ!」

 

一夏が驚愕しているのを他所に、鈴がいつでもISを展開出来るように構える。

セシリアもまったく同じ様子だった。

…3人の姿を後ろから見ていた箒は自身の専用機が無いため、ただ悲しそうとも怒りに震えているとも取れない表情で見ていた。

 

活気立つ一夏たちを前に、異形——ナイトローグはため息でも吐くかのように肩を揺らす。

 

『ナイトローグだ…まあいい、実は君たちに少し頼みがあってね。』

「た、頼み…?」

「一体なにをすると言うのです!?」

 

突然の頼みに困惑する箒、セシリアは警戒をさらに上げて叫ぶ。

 

『そう警戒するな…今回の一件は、私としても止めておきたいんだ。』

「お前の仕業じゃないのかよ?対抗戦の時も、未確認生命体と同じように現れてたしな。」

 

睨む一夏の言葉を受けながらも、ナイトローグは肩のパイプから煙を噴出した。

その煙の中から、1枚のパネルのようなものが現れた。

灰色に近い色彩と全体にヒビが入ったそのパネルから、ナイトローグは2つの物を取り外した。

それぞれ指に挟み、軽く振りながら4人に見せた。

その物体がなにかは分からなかったが、見覚えはあった。

 

「アレって…騎士が使ってやるヤツじゃないの?」

『その通りだ。…頼みと言うのは他でもない、これを騎士に届けてやってほしい。』

 

鈴の言葉を肯定しながら、ナイトローグは持っていた物体——フルボトルを近くにいた一夏とセシリアにそれぞれ投げ渡した。

 

「…お前みたいに訳のわかんないヤツの話なんて信じられるかよ!」

「そうですわ!罠に決まっています!」

 

ボトルを受け取った2人がそう言うも、ナイトローグは4人に背を向ける。

近くの倉庫…その屋根へと視線を向けながら、ナイトローグは語る。

 

『信じなくても構わない…だが、騎士が敗れてしまう…最悪、神代剣が助からないかもしれない。それでも良いのなら好きにすると良い。』

 

再びパイプから煙を噴出させたナイトローグ

3人は攻撃を警戒してISを起動させようとするが、煙が晴れると、既にナイトローグは影も形もなかった。

 

「ど、どうする…?」

「どうするって言っても…」

 

心配そうにそう言う箒と一応警戒を解きつつ困惑する鈴。

しかし一夏は手の中のボトルを見つめた後、強く握りしめて走り出した。

 

「悪りぃ、俺やっぱり行ってくる!」

「な!お、おい一夏ッ!」

 

走る一夏へ手を伸ばして制止しようとする箒、しかし一夏は振り返ることなくビルドとスマッシュが消えた方へと走って行ってしまった。

 

「…やっぱりわたくしも放っては置けませんわ!お2人は先生方に連絡なさってて下さい!」

「あ、ちょっとセシリアまで!あーもうどいつもこいつも!馬鹿!」

 

一夏を追うように走り出すセシリア、その速度は一夏ほど速くはなかったが程なくして一夏と同じように見えなくなってしまった。

頭をかきながら先生たちに連絡を入れようとした鈴だったが、あることが気になって視線をそちらへと向けた。

 

視線の先には手を胸の前で抑えて2人を見つめることしか出来なかった箒の姿があった。

さきほどからのやけに控えめな意見を言う彼女に違和感を感じていた鈴は口を開いた。

 

「アンタさ…さっきからなにぼけっとしてんのよ。最初は勢いよく突っ込んでたのに、今じゃお淑やかに黙りこくってさ。ちょっとおかしくなったんじゃないの?」

「わ、私はどこもおかしくなんか…!」

「おかしいでしょ、そんなにあの男に負けたのがショックだったわけ?それにアイツの援護に行くかって話じゃ、アンタの肩持ってあげたけど…いくらなんでも内向的すぎでしょ。」

「そ、それは……。」

 

切り込んでいく鈴に対し、箒はうまく言い返せなかった。

その様子を見て鈴はある疑問をぶつけようとしたが、

 

「もしかして、さ。アンタ、アイツの——」

 

しかし、そこまで言った瞬間に学園側と連絡が繋がった。

箒に訝しむ視線を向けつつ、鈴は話を中断して連絡を始めた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園

地下

 

教員らにのみ立ち入りが許されているその部屋に2人の人物がいた。

1人はスーツをまとった教師…織斑千冬。

彼女は腕を組みながら、部屋の椅子に座っていた人物へと視線を映していた。

 

その視線を受けている学制服を着た人物…桐生戦兎は、先日の一夏誘拐事件の顛末、そして一夏たちから聞いた内容を話していた。

 

「————とまあ、こんなとこです。」

「…なるほど、一通りは理解した。」

 

神代剣がスマッシュへと変化したことやナイトローグが一夏たち…延いては仮面ライダーに味方するような行動を取ったことを聞いた千冬は目を伏せて答える。

 

「そうだな。…まずは良くやってくれた。」

「まあ結局、無罪放免になっちゃいましたけどね。」

「ふっ…構わないさ、織斑が決めたことだ。私からは言うことはない。」

 

目を伏せつつ薄く笑う千冬を見て、この人もこんな顔するんだなぁ…と少しだけ思った戦兎。

しかし、千冬はすぐさま顔を引き締めて話を戻す。

 

「しかし分からないな。お前の話では、そのナイトローグには人間をスマッシュなるものに変える力があると言っていたが。」

「ええ…。」

 

その疑問を口にした千冬に戦兎は相槌を打った。

その顔には曇りが見られた。

 

ナイトローグの所持する武器のうち、スチームブレードには人間をスマッシュへと変貌させる能力が備わっている。

スマッシュ化した剣と戦っている際はナイトローグによって行われたと戦兎は思っていた。

しかし一夏の話を聞くと、どうしてもその行動に一貫性が見られなかった。

 

「…ナイトローグ自身の自演って線もありますけど…。俺のデータを取りつつ、新しいフルボトルも入手出来ますし。

でもそれだとフルボトルを奪いに来なかったのが不自然だ。今は取る必要が無いってことなのか、あるいは…」

 

そう言いつつ、戦兎は手を顎に当てて他の可能性を考えていた。

ナイトローグが行うよりも、むしろこちらの方が可能性が高いだろう。

 

「ナイトローグ以外の第三者か…だがそんなことが出来るヤツに心当たりはあるのか?」

「…ええまあ。」

 

同じことを考えていた千冬に問われると戦兎は肯定した。

そしてナイトローグ以外の可能性を話す。

 

「トランスチームシステムにはナイトローグと他にもう1体存在するんです。ブラッドスタークって言う…」

「ブラッド…スターク?」

「トランスチームシステムの1号機で、ナイトローグと同じ武装をしてるんです。つまりナイトローグと同じく、そのスタークにも人間をスマッシュに変えることが出来るんですよ。」

 

そこまで話を聞いて、千冬はある疑問を口にした。

 

「待て、もし仮にそのブラッドスタークとやらが犯人だとして、何故ナイトローグと反目し合っている?同じシステムなら作った人間も同一ではないのか?ましてや違う世界の技術だ、そう簡単に敵対する物同士にそれぞれが渡るとは考え難いが。」

「そこなんですよねぇ…いや俺も考えて見たんですけど……やっぱり『この世界で造られた』って言うより『この世界に元あるものが飛んできた』って線なのかも知れませんね。先に拾った連中が使っている…とか……。」

 

そこまで話した戦兎だったが、ある1つの疑問が生じた。

 

トランスチームシステムがこの世界に最初から存在しないと仮定したとして、ナイトローグのトランスチームシステムがエボルトが持っていたものがこの世界に飛んできたとする。

そうなると、もし今回の件がブラッドスタークの仕業だとすると、そのトランスチームシステムは一体どこから入手したのか…

 

(やっぱり違うのか——いや、待てよ…!)

 

もう一機だけ存在する。

所有者が死亡…と言うよりも活動停止したことで消滅を免れたトランスチームシステムが…。

 

(もしそうだとすると……そういや、この前やってたニュースで…!)

 

いつだったか、TVで隕石が降ってきてと言うニュース見たことを思い出した。

そしてネットでそのニュースを僅かに見たとき、『隕石が光るのが大気圏突入にしては遅かった。』と書かれていたことを思い出した。

戦兎は千冬にその隕石のことを尋ねた。

 

「…この世界で最近、隕石の落下が多発してましたよね。」

「? ああ、そう言えばそうだな。この数ヶ月で既に5回ほどあったらしいが……それがどうかしたか?」

「……あの隕石、ニュースでなにか言ってましたか?」

「なにか…?……光を放つのが大気圏突入にしてはやけに遅いことや、直前まで一切観測されなかったなど聞いているが……あとなにか人工の壁のような形状をしていたと言っていたが…。」

 

そこまで聞いて戦兎は気づいた。

その隕石の正体が一体なんなのか、トランスチームシステムが2機存在するのは何故なのか…。

 

情報をまとめる戦兎の頭の中のにイメージ、そして過去の経験がまるで映像のように周囲を流れていく。

 

 

「そうか、そう言うことか…。」

「さっきから一体なんなんだ?話がまるで見えないぞ。」

 

呆れたように口を開く千冬に対して戦兎は仮説を話し始める。

 

「さっき言った通り、この世界にはナイトローグとブラッドスタークの2人がいると見ていいです。

そして今聞いた隕石は、俺たちの世界のスカイウォール…いや、多分スカイウォールじゃなくてパンドラタワーか。それがこの世界に流れ着いたと見て間違いないでしょう。」

「スカイウォールは前に聞いたが、パンドラタワーだと?」

「パンドラタワーは俺たちの世界でスカイウォールの一部が集まって出来た塔なんです。

スカイウォールが飛ばされたにしては、規模に対してそれ以外のものが少なすぎる。スカイウォールだけがピンポイントで飛ばされたとは考え難いし、それこそ俺みたいな異世界人が何十人も存在するはず……だからこの世界に飛ばされて来たのは俺だけじゃなくて最小限…おそらく、パンドラタワーの頂上付近からある一定の距離までの物がバラバラになってこっちの世界に飛んで来たかと。」

 

より正確に言うならば、『世界同士の狭間にいた自分たちと、その空間を繋いでいたパンドラボックスの周辺…即ちパンドラタワーの頂上付近』なのだが…。

そこまで聞いて千冬は隕石とは違うもう1つの件を問う。

 

「…ではトランスチームシステムは?何故2機あると?」

「俺が直前まで戦っていたヤツと、そいつに倒された人が持っていたもの…それが俺と同じようにこの世界に流れ着いたんでしょう。あの付近にあったトランスチームシステムは2機だけですし、数も合う。

…そしてナイトローグはフルボトルのことも知っていた。そうなると、俺たちの世界の誰かから情報を聞いたと考えるのが自然です。」

 

落ち着いたように話す戦兎だったが、内心はまったく穏やかではなかった。

もしこの仮説が正しければ、自分や万丈だけでなく、パンドラタワー頂上に居た石動美空や滝川紗羽も同じようにこの世界に流れ着いている可能性が出たことになる。

彼女たちがこの世界にいるのか、或いは元の世界にいるのか…それを確かめ術はなかった。

 

そしてパンドラタワーの一部が転移したならば、その中心点となったであろうパンドラボックスもまたこの世界に飛んできている可能性もある…。

 

 

その後、戦兎は今後の対策を考えるためにも一度状況を整理すべく、千冬との話が終わったあと、部屋に急いで戻るのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学生寮

1049号室

 

nacitaの地下秘密基地を模したその部屋の中心で、戦兎は壁の前に置いてあるキャスター付きのホワイトボードにペンで情報を書き込んでいた。

 

「とりあえずこんなところか…」

 

そう呟くとペンにキャップをしてから、近くの椅子に座り込んでボードを睨んだ。

ボードには次のように記されていた。

 

『トランスチームガン×2 ○

パンドラタワー、並びにスカイウォールの残骸 ○

パンドラボックス ○⇨確率は高い

万丈 ? 元の世界に要る、又は違う世界に飛んでいる可能性も有

美空、紗羽さん ? 〃

少なくとも誰か1人は確実に来ている』

 

改めて現状を見ると確定しているのは2つだけだった…もちろん、それだけでも充分に脅威なのだが…

 

「でもこの間も考えたけど、俺の知名度もそれなりに上がってるはずだしな…分かるのなら連絡が来てるはず……」

 

何者かに匿われてる、或いは幽閉されて要る可能性もあるのだが…。

可能性、仮説ばっかりだな。と内心思いながら、戦兎は一つの確信も得ていた。

 

この世界に来ている漂流者にたどり着くには、この世界のことをよく知り、且つその漂流者から自分たちの世界について聞いたであろう人物…すなわち、篠ノ之束へとたどり着くしかないと。

 

ナイトローグとも繋がっているであろう彼女は、少なくとも戦兎たちの世界から来ている人物と接触しているのはまず間違いない。

テロリストでもある彼女は今、世界中の国や機関から姿をくらましており、簡単には見つかりそうに無い。

しかし目的こそ不明だが、先日のクラス対抗戦に一枚噛んでるとすれば、いつかまたIS学園に何らかの形でアプローチする可能性は高い。

ならば闇雲に世界中を探し回るよりは、付近に出没するスマッシュを相手にしつつ学園のバックアップを受けながら待ち構える方が確実だ…。

 

そう考えながら、戦兎は次にテーブルに置かれているフルボトルを確認した。

 

テーブルには

ラビット、タンク

ゴリラ、ダイヤモンド

タカ、ガトリング

ライオン、掃除機

ハリネズミ、消防車

パンダ、ロケット

ローズ、ヘリコプター

ドクター、ゲーム

 

…これら各種、現状ベストマッチに変身可能な組み合わせが。

 

それ以外に

ドラゴン

忍者

電車

 

…この3本を所持していた。

以上のフルボトルを見ながら戦兎は顎に手を当てて思案する。

 

「全体的に東都のボトルが多いな…偶然なのかもしんねぇけど。

……それから…。」

 

そう言って戦兎は、それらとは少し離して置いていた1本の茶色のフルボトルを手に取った。

神代剣から採取した、サソリのフルボトルだ。

あの後データを確認してみたが、やはり自分たちの世界に存在した60本のフルボトルの中にサソリのボトルは存在しなかった。

振ってみると、普通のフルボトルと同じように成分が入っていることや、その成分が活性化する様子も見て取れた。

 

「今までのスマッシュと決定的に違うのは、やっぱりスマッシュ化した人間の有無か。あと場合によっては生み出した奴が違う可能性もあるけどな…。」

 

そうつぶやいた戦兎だったが、思い切ったように椅子から立ち上がってビルドドライバーを手にした。

そしてもう片方の手に持っていたサソリのボトルを再び振って、慎重にドライバーへと装填した。

 

【スコーピオン!】

 

「え?何で反応するんだ?…オイ!これどういうことだよ!?」

 

自分の内に存在する、ビルドの製作者である葛城巧に叫ぶ戦兎。

すると葛城は渋々と言った感じで語った。

 

——…没フォームさ。——

「ぼ、没フォーム…?」

 

以外なその答えに、戦兎は首を傾げた。

 

——そう…。ビルドを作る時点で、僕もフルボトルの種類までは把握していなかったのさ。だからそのスコーピオンを含めて、幾つかのボディが該当フルボトルが無いって理由で没になっているんだ。

もっとも、設計しただけで、まさかボトルが存在してあまつさえ認証もちゃんとされるとはね…——

 

その葛城の言葉に戦兎は少しだけテンションを上げていた。髪をクシャクシャとかきむしると、そこから寝癖のようにくせ毛が飛び出た。

 

「マジか…まだ見ぬ新フォーム…実験したい…!」

 

行方不明の仲間たちのことを心配しつつ、今は仮定でもない現実を前にして戦兎は興奮していた。

そんな戦兎に冷水を浴びせるかのように、戦兎がまとめた情報の穴を指摘した。

 

——1人で盛り上がってるところ悪いけどさ…君、大事なことを忘れてないかい?

…いや、見て見ぬ振りをしてるのかな?——

 

その言葉を聞いた戦兎は、すぐさまテンションを下げて黙り込んでしまった。飛び出たくせ毛も引っ込んでいた。

 

——たしかに万丈龍我たちがこの世界に来ている可能性はあるだろう。

けど、ナイトローグだけでなくブラッドスタークも存在している可能性がある今、1番この世界に来ている可能性があるのは……エボルトなんじゃないのかな?——

 

地球外生命体・エボルト…桐生戦兎たちが暮らした世界を襲った悪意の権化。彼は自身の所有物たるパンドラボックス共々、新世界創造のためのエネルギーとして消滅した…はずだった。

しかし、パンドラボックスがこの世界に来ている可能性があると言うことはすなわち、パンドラボックスと同じように新世界創造のエネルギーになるはずだったエボルトもまた、消滅せずにこの世界に来ている可能性が十分あるということだ…。

 

——そして、パンドラボックスもエボルトも無事なら、僕らの世界は創り変えられてないことになる。——

「……。」

——今頃僕らの世界は中途半端な状態かもしれない…或いは白紙化されたか……最悪、消滅したか…。別の世界への移動に必要なエネルギーが備わっていたパンドラボックスの周辺や、世界の狭間という不安定な場所に居た僕らだけが飛ばされた…そう見ても不自然じゃない。

つまり、新世界創造は失敗だったってことさ。君と…そして父さんの計画は…。——

 

そんな葛城の言葉を聞きながら、戦兎はフルボトルを仕舞いつつホワイトボードの文字を消していった。

そして近くにあったパソコンを小さめのカバンに突っ込みながら呆れながらその言葉に答えた。

 

「勝手に言ってろ。俺は父さんを信じてる…。

いや、父さんだけじゃない。万丈も、美空も、紗羽さんも…俺たちの世界も無事だって…俺はそう信じてる。エボルトのヤツがまだ生きているのなら、今度こそヤツを倒してみせる。」

——…楽観的だね、どうも。——

 

葛城もまた、呆れたようにそう言い残して黙り込んだ。

戦兎はそんな葛城を尻目に荷物をまとめて玄関前に置いてから整備課へと足を運んだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学生寮

1025号室

 

「お引越しです!」

「「はい?」」

 

部屋に入ってきて早々に発言した山田先生の言葉を聞いて、一夏と箒は困惑していた。

しかしそんな2人の様子を気にせずか、山田先生は話を続けた。

 

「えっとですね。部屋の調整が付いたので、篠ノ之さんは他の部屋にお引越しです。今日から同居しなくて済みますよ。」

「なっ…!?」

 

笑顔でそう話す山田先生に一夏はへぇ、とだけ答える。

それに対して箒はあからさまに狼狽していた。

 

「織斑くんの方はですね、数日だけ桐生くんと同室になります。ほら、先日の誘拐とかありましたから。」

「うっ…」

 

痛いところを突かれたように抉られる一夏を尻目に、山田先生は今度は箒に話しかけていた。

 

「それじゃあ篠ノ之さん、私もお手伝いしますからすぐにやっちゃいましょう。」

「ま、待ってください!」

 

終始ペースを握られていた箒だったが、ここに来て口を開いた。

 

「そ、それは今すぐてないといけませんか?」

「それはまあ、そうです。いつまでも年頃の男女が同室で生活するというのは問題がありますし。篠ノ之さんもくつろげないでしょう?」

「い、いや…私は別に……!」

 

なおも食い下がろうとした箒だったが、ここで彼女にとって思いがけない追撃が来た。

 

「そんな気を使うなって、俺のことなら心配するなよ。戦兎も居るみたいだけどさ、箒が居なくてもちゃんと起きれるし歯も磨くぞ?」

 

一夏が相変わらずの朴念仁ぷりを満面の笑みで発揮させた。

その様子にイラだった箒は語気を強めながら、先ほどの自身の言葉を撤回した。

 

「先生!やはり今すぐ部屋を移動します!」

「はいっ!じゃあ始めましょう。」

 

態度を急変させた箒を前に、一夏は自身の言葉に納得したんだろうか?と首を捻っていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雑木林

 

真夜中の林にバイクのエンジン音が鳴り響く。

木々をすり抜けてマシンビルダーを駆る戦兎は、自身の視界にスマッシュが映り込むと同時にマシンビルダーを急停止させた。

その音に気づいたスマッシュが振り返る。

 

『…!』

「あいつが今回のスマッシュか!」

 

全体的に蒼い色をした、肩に大砲を載せ、右手で鎖のついた巨大なアンカーを引きずっているスマッシュだった。

 

この世界にブラッドスターク…延いてはエボルトが居るかもしれない今、鍋島が変化したスマッシュの時のようにヤツが乱入した上でスマッシュを巨大化させるかもしれない。

そう考えながら、目の前のスマッシュを警戒しつつ戦兎は辺りを素早く見回した。

 

「…どうやら誰も居なさそうだな。」

 

そう呟くと戦兎は腰にビルドドライバーを押し当てて装着した。

そしてドライバーに、白と赤のフルボトルを装填した。

以前、バーンスマッシュとの戦いで入手した消防車フルボトルを使ったベストマッチだった。

 

【ハリネズミ!】 【消防車!】

H/S

 

【ベストマッチ!】

 

ハンドルを回すと辺りを機械の製造音が響く。

スナップライドビルダーが展開され、戦兎の前後に白と赤の装甲を生成していく。

 

【 Are your ready ? 】

 

「変身!」

 

構えた戦兎に装甲が挟み込む様に装着され、その姿を仮面ライダービルドへと変える。

 

【レスキュー剣山!ファイヤーヘッジホッグ!】

【イエーイ!】

 

左腕と右脚には消防車を模した赤のボディを、右腕と左脚にはハリネズミを模した白のボディを身にまとった姿、ビルド ファイヤーヘッジホッグフォームだった。

 

『…!』

 

様子を見ていたスマッシュが左手で鎖を掴み、右手でアンカーを軽々と振り回しながら突撃してきた。

ビルドはスマッシュと同じく左手の消防車のラダーを模した、<マルチデリュージガン>を突き出しながら走り出した。

 

『!!』

 

スマッシュは走りながらアンカーを一直線にビルド目掛けて飛ばした。

 

「よっ…!」

 

ビルドは左手のマルチデリュージガンから大量の水を放射して、飛んできたアンカーの勢いを殺した。

アンカーの目の前まで迫ると、そのアンカーを右手のハリネズミを模したグローブ、BLDスパインナックルでアンカーを横フックで強く殴り飛ばした。

 

『!?』

 

スマッシュの右腕がアンカーに釣られて引っ張られ、大きく体勢を崩した。

この機を逃すまいと、ビルドはマルチデリュージガンから今度は炎を噴射して追い討ちをかけた。

そのままスマッシュへと走り出したが、炎の中から見える丸い影に気づくと素早く側転をして回避した。

避ける瞬間、ビルドの頭部に影の正体…肩の大砲から発射された砲弾がギリギリの位置で真っ直ぐ飛んでいった。

砲弾は近くの木にぶつかった。

その直後、大きな轟音とともに爆発が起こった。

 

「ったく、危ねぇな!」

 

地面に膝をつきながら着弾点からスマッシュへと視線を戻したビルドは、懐から新しいフルボトルを取り出した。

それはこの世界に来てから始めて確認されたスコーピオンフルボトルだった。

 

「早速だけど…コイツを使ってみるか!」

 

そう言うが早いか、ビルドはドライバーに装填された2本のボトルを取り外すとスコーピオンフルボトルとタンクフルボトルを素早く振り始めた。

 

「さあ、実験を始めようか!」

 

2本のボトルのキャップを回し、ドライバーへと装填した。

 

【スコーピオン!】 【タンク!】

 

ドライバーのハンドルを回すと、再び辺りに機械の製造音が鳴り響く。

 

【 Are your ready ? 】

 

「ビルドアップ!」

 

左右から現れた茶色と青の装甲がビルドに装着された。

 

スコーピオンハーフボディには、肩の部分にサソリの尻尾を思わせるパーツが着いていた。

そして右腕、左足の先端と膝には巨大なサソリのハサミが着いていた。

特に左足の膝から生えたハサミは、一見するともう一本の足のようにも見える形状だった。

 

「うわなんだこれ、足が3本!しかも感覚あるぞこれ……なるほど、節足動物のサソリらしく足が増えるってことか…!」

 

膝からも足が生えている奇妙な感覚にほんの僅かに戸惑っていたビルドだったが、すぐにいつもの調子を取り戻した。

見れば既に晴れていた炎の場所から、スマッシュが再びアンカーを振り回していた。

そしてそのアンカーを頭上へと放り投げると、ビルド目掛けて勢いよく振り下ろした。

 

「ほい…っと!」

 

ビルドの肩に付いていたサソリの尻尾が伸びて、アンカー目掛けて射出された。

迫り来るアンカーを尻尾で絡め取ると、尻尾の先端の針でアンカーの鎖を切り裂いた。

ガキンッ!という大きな音を立ててアンカーがビルドの脇に落下した。

ビルドはそのまま尻尾を怯んでいたスマッシュの腹部へと射出する。

 

『!!?』

 

飛んで来た尻尾の一撃を腕で受け止めたスマッシュだったが、突如その身体を震わせながら膝をついた。

 

腕を僅かに掠めていた尻尾の先端から黄色の液体が漏れていた。

スマッシュは痙攣させながら完全に無防備な姿をさらした。

 

「なるほど、神経毒か!」

 

ビルドはそう言いながら尻尾をスマッシュから引き離すと、ビルドドライバーのハンドルに右手をかけて勢いよく回した。

回し終わると同時に、頭部の戦車の砲塔を模したアンテナをなぞる。

 

「勝利の法則は…決まった!」

 

【Ready Go!】

 

再び尻尾を射出され、今度はスマッシュの身体にまとわりついた。

そしてそのまま上空へとスマッシュを投げ飛ばした。

その後を追うようにビルドは右脚で地面を強く蹴って高くジャンプした。

 

【ボルテック・アタック!】

 

スマッシュのすぐ真上まで跳んだビルドは、真っ直ぐの姿勢で左脚を折り曲げた。逆に膝に着いている足のようなハサミを真っ直ぐに伸ばしてスマッシュへと猛スピードで落下して行った。

第3の足のかかと部分に着いた巨大なハサミが、かかと落としの要領でスマッシュの背中に突き刺さる。

 

「はあっ!」

 

そして今まで折りたたんでいた左脚を強く蹴り上げた。

左足の先端から伸びたハサミがスマッシュの腹部に突き刺さった。

背中と腹部に突き刺さったハサミが、ギリギリと鈍い音を立てながら徐々に奥へと刺さっていく。

そして最後に左足をサマーソルトの要領でさらに強く蹴り上げた。

ガキンッ!と大きな音を立ててハサミがスマッシュの身体を貫通した。

直後、周囲に緑の爆炎が辺りを包み込んだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザアァァァァ——

 

数時間後、自室でシャワーを浴びていた箒は考え事に耽っていた。

 

——何故……何故私はあそこに居られないのだ…——

 

あの日、彼女は傷つく想い人を見守ることしか出来なかった。

 

——この程度で俺を止めようとは笑止千万、やはり仮面騎士でもなければこんなものか。——

 

あの日、彼女は攫われた想い人を助けることが出来なかった。

 

そして今日、想い人と部屋を離れてしまった。

それも彼自身からは何とも思われていなかった。

 

(……私は…)

 

眼にはうっすらと涙を浮かべながら、箒は上を見上げていた。

 

(私は弱い…!何が指導だ!一夏の方が、身も心もずっと強いではないか…!)

 

それは悲しみよりも、自身に対する怒りからだった。

唇を強く噛み締め拳を強く握りしめていた。

 

(強くならなければ……一夏と一緒に居るために……もっと!もっと!!)

 

歯をむき出しにして虚空を睨み続ける箒。

その後悔と無念によって出来た時間は、彼女自身にとっては永遠に続くかのように感じられていた。

 

 

 

数十分後に箒は更衣室で服を着ていた…が

 

「!た、足りない!?」

 

一夏と相部屋だった時と比べて、明らかに下着の数が減っていた。

まさか泥棒か。と考えた箒だったが、その考えをすぐに打ち消した。

 

(いや、どうせ一夏だろう。また私の物まで一緒に洗ったのだろう!そうに決まっている!)

 

顔を赤くしながら箒はかつての自身の部屋である1025号室へと走り出した……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰もいない学生寮の廊下を歩いていた戦兎は、手に持っていたフルボトルを軽く振りながら見ていた。

今日の戦いでスマッシュから採取して得た、海賊フルボトルだった。

以前ナイトローグから奪取した電車フルボトルと組み合わせることで、更なるベストマッチフォームへと変身出来るフルボトルだ。

 

「しっかしスコーピオンフルボトル…色々エグいな…。」

 

ボルテック・ブレイクもそうだけど足3本って…そう呟きながら自室の鍵を取り出した戦兎だったが、ここであることを思い出した。

 

「あ、そうか。俺、何日か一夏と同室になるんだっけ?」

 

今日千冬から呼び出されたのは話をまとめることと、その話を聞くためだった。

なんでも数日後、1組に転校生が2人やってくるらしい。

 

また転校生かよ、と最初は思った戦兎だったが、よく考えてみればISはこの世界において国家間のパワーバランスにさえ影響を与える程のものなのだから、それも仕方ないか、と納得した。

 

その転校生にはこの世界で2人目となる男子生徒がいるらしい。

その転校生が来次第、一夏と同室になる予定だ。

そしてそれまでの数日は(一夏が誘拐されたこともあって)、この学園で最も動きやすく強い人間として戦兎に白羽の矢が立ったのだった。

一夏や転校生と同じく男子故、1番問題が無いとのことだ。

 

…最も戦兎としては今日のようにスマッシュの出現に際して動かなければならないため、怪しまれる可能性がある同室は出来れば避けたかった。

学園の上層部もその点は理解しているらしく、転校生が来るまでの間だけ、来たら即チェンジ…との事だった。

 

(関係ないやつまで巻き込みたくないしな…。)

 

一夏たちのことを、あくまで友人であって万丈や美空たちのように仲間とまでは考えていない戦兎としては、この数日間ほど不安になる日は無いだろう。

幸い、一夏はこの時間までならアリーナで箒やセシリアたちにしごかれているはずだろうが…。

 

そう考えながら戦兎は海賊フルボトルを隠して1025号室の前に立った。

鍵を取り出そうとしたが、扉の向こうからの明かりが隙間を通って外に漏れていた。

ドアに手をかけると、鍵は掛かっていなかった。

疑問に思いながらドアを開いて中に入ると既に一夏が部屋に戻っていた。

 

「あっ戦兎、遅かったな。」

「ああ…いやそういう一夏は早いな。学年別トーナメントに向けて3人に特訓してもらうはずだっただろ。」

 

戦兎がそう聞くと、一夏も顎に手を当てて目を伏せてうーんと唸りながら考え込む。

 

「そうなんだが…実は箒が特訓の指導を辞退してさ…。」

「…お前、またなんか余計なこと言ったんじゃ無いだろうな?」

「余計なことって……強いて言うなら部屋が戦兎と交代するときに、俺なら大丈夫だから気にするなって送り出したくらいだぞ?…ああそうだ、あと箒の下着を一緒に洗ってたんだけど箒のヤツ持っていくの忘れてるんだよな。」

「言ってるじゃねぇか、そしてやってるじゃねぇか……もーなんで一夏ってこう…理解できないのよ…。」

 

一夏の相変わらずの朴念仁ぷりに頭を抱える戦兎。

そんな戦兎を尻目に一夏は腰をかけていたベッドから起き上がった。

 

「そうだ、俺今帰ってきたばかりだけどさ、風呂先入るか?」

「いや、俺この後整備課に寄るから先に入って良いぞ。」

 

そっか、と言ってから一夏は浴室に向かって行った。

 

本当にどうしてあんなにわかんねぇんだろうな…そう思いながら戦兎は、パソコンにラビットとタンクのフルボトルを装填したビルドドライバーを繋いで起動した。

 

 

数分ほどビルドのデータを確認していた戦兎だったが、部屋の扉がノックされた。

 

「? 誰だ、こんな時間に…?」

 

疑問に思いながら、戦兎は自身のベッドの下にビルドドライバーを急いで隠してから入り口に向かい扉を開けた。

扉の先には山田先生が息を切らせて立っていた。

 

「あ、桐生くん!ちょうど良かった!」

「? あー…山田先生、何か?」

 

息を切らせている山田先生を見下ろしながら首をひねる戦兎、しかし山田先生はそんな戦兎のようすを気にも止めず(余裕がないだけか)話を続けた。

 

「実はですね、学園の方が神代剣くんから先日の騒動の話を聞いてきたんですが…その剣くんが契約者なる人物から、箱のようなものを見せられたって話が聞けたらしくてですね…」

 

直後、戦兎は黙り込んだ。

箱…そんな物に心当たりは一つしかなかった。

 

「で、詳しい話は地下の部屋で織斑先生から話すって…」

 

(やっぱりパンドラボックスは…そしてエボルトはこの世界に来ているのか!)

 

拳を強く握りしめる戦兎に、再び葛城が声をかけて来た。

 

——決まりだね。神代剣が異常な思考を持ったのはパンドラボックスの影響…そしてパンドラボックスを扱えるのはブラッド族だけ…。

すなわちこの世界にやって来たエボルトだ……。——

 

そんな葛城の言葉を聞きながら、戦兎は話の続きを聞くべく千冬の元へと向かって行った……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一夏ァッ!入るぞッ!」

 

戦兎が山田先生と出て行った数分後、凄い剣幕で、かつ顔を真っ赤にして叫びながら扉を開ける箒。

バンッ!と大きな音を立ててドアが開かれたが、その先には誰も居なかった。

 

「む…一夏は何処に…?」

 

首を傾げながらあたりを見回すと、浴室からシャワーの音が聞こえた。

どうやらシャワーを浴びているようだった。

 

(そうか…ならば都合がいい。はっきりと下着を返せなど言えないからな…。)

 

なんとか怒りをクールダウンさせながら、箒は部屋を隈なく探した。

流石に一夏も他の男子がいる部屋で堂々と女性物の下着なんか置いておかないだろう。

そう考えながら箒はタンスやクローゼットを開けてしらみつぶしに探して行った。

しかしめぼしい所にはどこにも置いていなかった。

 

「えぇい、一夏め!一体どこに置いたと…!」

 

焦りながら次々と探し回る箒はベッドの下を覗き込んでいた。

すると手が届くほどのすぐ近くに見慣れない、しかし見覚えのある物が置いてあった。

 

「? これは…確か……」

 

怒りを忘れてそれを拾い出した箒だったが…

 

「あれ?箒、そんなとこで何やってんだ?」

「!?い、い、いいい一夏ッ!?」

 

背後から突如声をかけられて、思わず跳ね上がりながら素早く後ろを向く箒。

風呂上がりの一夏は、箒のその動きを目の当たりにして困惑していたが、すぐに目的を思いついた。

すぐに更衣室の籠の中に入っている袋に詰められていた下着を取り出して箒に差し出した。

 

「ああ、下着ならコッチに…」

「そ、そうだ!早く返せっ!」

 

右手を後ろに回しながら左手で袋をもぎ取ると、背を見せずに睨みつけながら大急ぎで扉へと走って行った。

 

「じゃ…邪魔したな!」

「お、おう……じゃあな…。」

 

猛スピードで外へと駆け出した箒の背を見送りながら、一夏は首を傾げた。今日何度目だろうかと考えながら……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

学生寮の廊下を歩く戦兎は、先ほど千冬から聞いた話を思い返していた。

 

分かった点は

 

神代剣が契約者なる人物からパンドラボックスを見せら、かつ光を照射されたこと。

じいやと言う執事がこの地球上では確認されていない毒素で緊急搬送されたこと。

そして契約者は血のような真っ赤のスーツに緑のバイザーを装着していたこと。

 

以上の点から、この契約者はブラッドスターク=エボルトと見てまず間違いないだろう。

 

だが最悪の事態はどうにか避けられそうだった。

 

それはエボルトがブラッドスタークの姿で現れたことから分かった。

すなわち、『エボルトは今、仮面ライダーエボルに変身することが出来ない』ということだ。

恐らくあの戦いでエボルトを完全に倒すことは出来なかったが、少なくともエボルドライバーやエボルボトルに起動不能レベルのダメージを与えることには成功したのだろう。

 

戦兎はラビットタンクスパークリングやフルフルラビットタンクフルボトルを使えないが、今のハザードレベルならばエボルトの変身したブラッドスターク相手でもビルドの多彩性で相手取ることも可能だ。

故にエボルトも迂闊には行動出来ないはず。

 

正に不幸中の幸いとでも言うべきだろう。

 

「ヤツが篠ノ之束と行動を共にしてるとすれば、彼女と同じように後手に回るしかないのが辛いけどな…。」

 

ブラッドスタークとナイトローグは敵同士かとも考えたが、ブラッドスタークの変身者がエボルトならば勝手に動いた結果だとしてもおかしくはない。

 

そう考えながら戦兎は1025号室の扉を開いて中に入った。

中では一夏が参考書を相手に悪戦苦闘していた。

戦兎が部屋に足を踏み入れると気配に気づいてから振り返った。

 

「あ、戦兎か。もう整備課から帰ってきたのか?」

「あー…いやちょっと先生たちに呼び出されてな。これから行くんだよ。」

 

そっか、と呟いてから一夏は再び参考書の相手に戻った。

 

(入学してすぐの時は辺りをキョロキョロ見回すくらいしか出来なかったってのに…これもあの3人からの指導の賜物かもな…)

 

と背中を見つつ微笑ましく思いながら、戦兎は隠したビルドドライバーを取り出すために静かにベッドの下に手を突っ込んだ。

 

が、その手には冷たい床の感触しか感じられなかった。

 

「ん?」

 

そんなに奥に入れたか?と思いながら更に手を奥に伸ばすが、掴み慣れたあの感触はどこにも無かった。

 

「どうなってんだ?」

 

焦れて一夏の背中からベッドの下を覗き込む形で視線を移した。

 

ベッドの下は掃除がよく行き届いており、目の前に広がるスペースには埃のひとかけらも無かった。

そして、ビルドドライバーの姿もそこには無かった…。

 

「————————は?

えええええええええええぇぇぇ!!??」

 

夜の学生寮に、戦兎の絶叫が木霊した……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学生寮外

 

外には既に月明かりが辺りを照らしていた。

耳をすませても風が吹く小さな音しか聞こえない。

そんな中、木に隠れるように箒が座り込んでいた。

 

「……い、勢いのまま…持ってきてしまった…。」

 

その手には、今世間を騒がせている正義のヒーロー・仮面騎士が腰に着けている、何かのガジェットが握られていた。

 

もちろん、彼女自身取ってくるつもりはなかった。

しかし一夏に声をかけられた時点でベッドの下に戻したとしても怪しまれて覗かれていただろう。

 

「…そ、そうだ!仕方なかったのだ、うん!」

 

結果的には一夏に知られることはなかった。

だがその代わりにドライバーは今、彼女が所持してしまっていた。

あの時見た光景では、騎士はこのガジェットに小さなボトルのようなものを刺して姿を変えていた。

つまり、このガジェットこそ仮面騎士の力の源と言えることは想像できた。

 

「……今からでも遅くはない、即刻返還すべきだろう…。」

 

そう思いながら学生寮へと戻ろうとした箒だったが…。

 

——何故……何故私はあそこに居られないのだ…——

 

あの時、何も出来なかった自身の姿が——ガラス越しに見守ることしか出来なかった自身の姿が脳裏に浮かぶ。

 

そしてそれと同時に浮かんだのは…一夏やセシリア、鈴の3人が何とか機能停止に追い込んだ所属不明機を、既に半壊状態だったとは言え、ISの常識を超越し、圧倒的な力でねじ伏せた騎士の姿だった。

 

ぞわっ、と箒の身体を何かが駆け巡る。

ドス黒い何かが自分の常識を蝕んでいく感触を感じながら、箒がその顔に浮かべていたのは——笑顔だった。

目を見開き緊張を隠しもしていない…それでも彼女は笑っていた。

 

「————い…1回くらいなら……良いんじゃないか…?」

 

誰に言うでもなく、自分自身に言い聞かせるその言葉は、後悔や背徳感に押し潰されそうになっている自身の背中を押した。

 

自分が今、もっとも欲しているものが…力が目の前にある。

 

その事実が彼女の行動をエスカレートさせた。

箒にとってこのガジェットは、正にパンドラの箱と言えるだろう。

 

「…どうやって使うのだ、コレ」

 

…もっとも、使い方まではあまり理解できていなかったのだが…。

 

 

数分後、悪戦苦闘の末、腰に当てたら自動で装着された。

その状態でボトルを指したがうんともすんとも言わなかった。

しかし仮面騎士を真似て振ってみると、周囲に幾つかの数式が流れた。

 

「こ、これで指すのか…?」

 

恐る恐るといった様子で2本のボトルをスロットへ装填していった。

 

【ラビット!】 【タンク!】

R/T

 

【ベストマッチ!】

 

静まり返っていた周囲にガジェットから流れたデバイス音声が鳴り響く。

 

「…ッ!」

 

辺りを急いで見回したが、周囲には人の気配は無かった。

箒は気を取り直してガジェットに視線を移した。

 

「…それから…コレを回すのか…?」

 

そう呟きながら、ドライバーの右側に備え付けられたハンドルを回し始めた……が。

 

ビリビリッ!と音を立ててガジェットから電撃のような何かが漏れ出した。

 

「な…!?う、ぐうっ!?」

 

ガジェットから発生したその電撃が身体中を駆け巡る。

箒の身体が痺れたように動かなくなり、ガジェットは装着されていたベルトを外した。

倒れ込んだ箒の前にガジェットが転がっていた。

 

「くっ…ま、まだ…!」

 

必死にガジェットへと手を伸ばす箒だったが…。

 

「ったく、危ねぇな…。」

 

そんな声が聞こえると同時に、声の主……桐生戦兎が箒の目の前に落ちていたガジェット——ビルドドライバーを拾い上げた。

 

「き、桐生…!」

「…コレはな、そんな軽々しく使えるもんじゃないんだよ…。どこで嗅ぎつけたんだか…。」

 

箒を見下ろし、ガチャッと音を立てながらビルドドライバーを軽く降る戦兎。

 

「うっ……。」

「…とりあえず互いに見なかったことにしねえか。…しばらくしたら動けるようになるからよ、さっさと帰って寝ろよ。じゃあな。」

 

そう言い残して箒を置き去りにしながら、頭を掻きむしりつつ戦兎は学生寮へと戻って行った……。




スコーピオンのハーフボディは下半身はほぼオリジナルです。
足のハサミの部分はタジャドルのプロミネンスドロップみたいな形状になってます。
ボルテック・アタックはそのプロミネンスドロップとギルスヒールクロウを足して割ったイメージです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。