Infinite・Genius 【インフィニット・ジーニアス】   作:EUDANA

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新年あけましておめでとうございます(2月遅れ)
今年も投稿続けていきますのでよろしくお願いします。

正直前回は「年末までに最新話を〜」と思って急ぎすぎたので展開は駆け足だわボルテック・アタックがブレイクだわ消防車が救急車だわとひどい有様でした。
第1話の時点で投稿不定期とタグに登録してるんで今後はもっと慎重にやっていこうと思います。申し訳ございません。


白ウォズ、シノビ、クイズ、キカイ、ジオウⅡ、仮面ライダービルドNEW WORLD 仮面ライダーグリス、剣15周年&ブレイバックルコンセレ、サバイヴ×③セットオーディン、スーパーパトレン1号、くっ殺姫騎士or退魔忍と化したドグラニオ、HUGプリ&ルパパト最終回、運転手門矢士、ディエンド、リュウソウジャー、スタートゥインクルプリキュア、放送開始数日で歴史から消されて生まれたリュウソウジャーライドウォッチ、光るそばマンetc…

ニチアサに限っても話題が盛り沢山な2ヶ月でした…
投稿が遅れるたびに上の部分が追加されていったのは密に密に…

ところでIS最終巻の発売はいつ頃なのでしょう?
場合によってはストーリーに影響が…

なので初投稿です。


進むためのアンサー

エボルトは生きている——

受け入れがたい事実に直面した、仮面ライダービルドこと桐生戦兎は、スマッシュと戦いつつエボルトやスマッシュに関わる情報を整理していた。

ところが、そんな状況に対応しようと焦った結果か、同じクラスメイトの篠ノ之箒にビルドドライバーを盗られてしまった。

なんとか取り返した桐生戦兎は、そのマリアナ海溝よりも深ーい寛容さで彼女を見逃すことにしたのでした。

 

けど近いうちにこの件もちゃんと聞いておかねえとな…

 

てな訳でどうなる第13話!

 

———————————————————

 

真昼間の公園にスマッシュが現れていた。

そのスマッシュと相対する仮面ライダービルドは、戦いの余波で地面を転がりながら目の前のスマッシュを睨みつつ分析する。

 

「ったく、厄介なヤツだな……なら、コイツの出番だ!」

 

起き上がりながらそう言うと、ビルドは何処からともなく2本のフルボトルを取り出した。

 

「さあ、実験を始めようか!」

 

言い終えると、ビルドは赤茶色と薄黄色のフルボトルを振った。

フルボトルを振るビルドの周囲に無数の数式が飛び交う。

そしてボトルのキャップを開けると、ビルドドライバーへとボトルを装填した。

 

【カップ麺!】 【エナジードリンク!】

C/E

 

【ベストマッチ!】

 

「ベストマッチ!?……来たアァァッ!」

 

ガッツポーズを取ったまま拳を空に掲げるビルド。

気を取り直して勢いよくビルドドライバーのハンドルを回す。

 

機械の製造音が辺りに鳴り響き、ビルドの周囲を装甲の製造小型ファクトリー、<スナップライドビルダー>が展開されていった。

 

【 Are you ready ? 】

 

「ビルドアップ!」

 

叫ぶビルドに反応して、スナップライドビルダー内の装甲が前後からビルドへ装着された。

 

左眼とアンテナはカップ麺の容器と、その中から飛び出した麺を

右眼とアンテナはエナジードリンクが入っていると思われる長い瓶をそれぞれ象っていた。

 

背中には割り箸を模した武器と、少し大きめのドリンク瓶を模したブースターが取り付けられていた。

 

右肩には蓋の開いた大きなカップ麺の容器そのものが、左肩には瓶の王冠キャップが装着されていた。

 

上半身と比べると、下半身は大きな特徴は見受けられなかった。強いて言うならラビットハーフボディでスプリングが付いている場所に麺が絡み付いていることだろうか。

 

【速攻元気! カップエナジー!】

【イエーイ!】

 

仮面ライダービルド カップエナジーフォームは直感的に右手を天に掲げた。

すると右手の掌にトゲが付いて中心で渦を巻いているエネルギー波…ではなくエナジードリンクが発生した。

 

「おおっ、すげぇ!あ、これ鳴門か!」

 

そんなことを言いながらビルドはその鳴門型エナジードリンクをスマッシュ目掛けて投げた。

 

空を切り裂くような鋭い音を立てて、鳴門がスマッシュへ迫る。

 

『…!』

 

スマッシュは迫る鳴門を両腕でガードした。防がれた鳴門は明後日の方向へと飛んで行き、壁にぶつかると元のエナジードリンクとして飛散した。

 

スマッシュは反撃とばかりに、そのままビルドへと突進した。

 

「ふっ…!」

 

ビルドは軽快な動きで迫り来るスマッシュの体を踏み台にして跳躍した。

背中のドリンク瓶型ブースターから黄色に近い液体が噴出された。

そのまま辺り一面にエナジードリンクを撒き散らしながらジェットスキーの要領で空を飛んだ。

 

「おお!こんなこともできるのか!」

 

感動したように叫ぶビルドは、背中の割り箸型の武器を割りながら分離させ両手に持った。

ビルドは背後ががら空きとなったスマッシュへブースターを吹かせながら接近すると、2本の箸をスマッシュの体へ何度も叩きつけた。

 

『…!?』

「おしっ、これで決める!」

 

そして最後に2本を再合体させてスマッシュを思い切り突き飛ばした。

突き飛ばすと同時に右肩のカップ麺の容器から、緑の大きな海苔が飛び出した。

吹き飛ぶスマッシュの胴体へ海苔が巻きつき、その動きを封じる。

 

地面をゴロゴロと転がるスマッシュを見下ろしながら、ビルドは瓶型の右眼のアンテナをなぞってから手を開く。

 

「勝利の法則は…決まった!」

 

決めポーズを取ってからビルドはビルドドライバーに付いているハンドルを回し始めた。

 

【Ready Go!】

 

音声が鳴ると、右肩のカップ麺の容器から大量のスープが勢いよく溢れ出した。

ビルドとスマッシュの周囲に足首まで浸かるほどスープが貯まっていく。

 

海苔で動きを拘束されながらもノロノロとスマッシュが起き上がるが、その足元に何処からか出てきた麺が強く絡みついた。

 

『!!?』

 

完全に動きを封じられたスマッシュのすぐ目の前に、麺のレールが引かれていた。奇しくもその形はビルド ラビットタンクフォームのボルテック・フィニッシュで現れるグラフに非常に酷似していた。

 

ビルドは背中のドリンク瓶型ブースターで麺の先端まで上昇した。

麺の先端のすぐ目の前で上昇を止めると同時に、背中のドリンク瓶型ブースターがビルドの背中から外れて後方へと下がった。

その直後、ドリンク瓶型ブースターがビルドを上回るほどの大きさに一気に巨大化した。

さらに左肩の王冠キャップが外れ、キャップは自動的にビルドの右脚の裏に装着されたあと、高速で回転し始める。

 

【ボルテック・フィニッシュ!】

【イェーイ!】

 

続けて音声が鳴ると、巨大化したドリンク瓶型ブースターから中身のエナジードリンクが勢いよく噴射された。

そのエナジードリンクに押されて、ビルドが麺のレールの上を滑走して行く。

 

そして目の前まで迫ったスマッシュの腹部に高速回転する王冠キャップをキックと共に叩き込んだ。

スマッシュは僅かにもがいた後、緑の爆炎を——

 

 

 

「おーい、戦兎!起きろって!」

 

 

 

「————……ん?」

 

 

 

気付けば戦兎は、部屋の椅子の背もたれに寄りかかりながら座っていた。

視線をずらすと現在同じ部屋で同居している織斑一夏が呆れたように立って戦兎を見下ろしていた。

 

「…やっと起きた。今日も授業あるんだから、早く準備しろよ。千冬姉——じゃなくて、織斑先生に怒られるぞ。」

 

「あ、ああ………なんだ、夢か。」

 

あたりを見回し、先ほどまでの光景が夢だったことを悟った。

そして名残惜しそうに呟きながら、戦兎は椅子から立ち上がった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1年1組 教室

 

朝のホームルームが始まる数分前、戦兎は教室の自分の席で座りながら今朝の夢を思い返していた。

 

(カップ麺とエナジードリンクでベストマッチって、どう言う基準だよ?どちらかといえば両方無機物だろ…それともアレか、それを食べる人間がいるから有機物判定に……いや両方ともそうだろ。

あ、分かった。カップ麺の原材料は動物や植物で構成されてるから有機物扱いに——)

 

そこまで考えると同時に教室に千冬と山田先生の2人が入ってきた。

 

戦兎の心の声を知る由もなく、教壇に立った山田先生からクラスに向けてある発表がなされた。

 

「今日はなんと、このクラスで新しくお友達になる転校生を2人紹介します!」

 

その発言を受けてクラスが異様にざわめく。

興奮や興味もそうだが、ざわめきの多くは困惑だった。

色々あって忘れそうだが、鈴が転校してきたのだってつい1ヶ月ほど前だ。

それに今回は1人どころか2人で、さらに両名ともこのクラスに転入する、疑問に思うのも当然だろう。

 

(そういや、この前そんな話を聞かされたな。)

 

戦兎がそう思いながら教室の扉を眺めていると、山田先生が促してからすぐにその扉が開かれた。

 

入ってきた2人の生徒は、戦兎からすると対照的に見えた。

 

左側に立つ1人はパッと見ただけでも近寄りがたい堅気、軍人と言った雰囲気を醸し出していた。

身長と反比例して腰まで届きそうな銀の長髪は、伸ばしているというよりそのままにしているように見える。実際何ヶ所かボサボサになっていた。

そして目を引くのは左眼に備えられた眼帯だろう。

黒く染まったソレは医療用というより軍服に合わせてある印象だ。ファッション性ならむしろこちらの方がそれらしいだろうか?

表情も仏頂面でまるでこのクラスには興味もないと言いたげだ。

 

逆に右側に立つ1人は明るい印象を感じられた。

身長はそれほど高いわけではなかったが、スラッとした手足の長さやスタイルの良さからかなり高めの印象を受ける。

美しいブロンドな髪は後ろで綺麗にまとめていた。

表情も明るく、愛想がいいのだろうと一目でわかる。

 

ふたりとも一般的に見ればかなり人気がありそうなのは戦兎でもわかった。

 

だが今1番注目を浴びているのは、やはり2人目の生徒の服だろう。

何故ならその生徒が着ていたのは——男性用の制服だったからだ。

 

(あー…アイツが織斑先生が言ってた例の…)

 

数日前に千冬から聞いたことを思い出しながら戦兎がそう考えていると、山田先生から2人目の生徒に自己紹介を促されていた。

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。

皆さん、よろしくお願いします!」

 

明るい笑顔でそうクラスに自己紹介した転校生の1人、シャルルの言葉を前に誰かが呟いた。

 

「お、男…?」

「はい。こちらに僕と同じ境遇の方々が居ると聞いて、本国より転入を——」

 

そうシャルルが言うが早いか、クラス中に歓声と悲鳴が溢れた…

 

「「「「「きゃあああああ!!!」」」」」

 

「男子!3人目の男子!?」

「しかもうちのクラス!」

「美形!守ってあげたくなる系の!」

 

一部除いたクラス中の女子たちの歓声が教室を震わせる中、担任と副担任の声が遮る。

 

「騒ぐな、静かにしろ。」

「そ、そうですよ皆さん!まだ自己紹介は終わってないんですから!」

 

教師2人の声で——正確に言うなら千冬の言葉を受けた段階で——静まり返った生徒たちを前に、もう1人の生徒の自己紹介の番が回ってきた。

クラスの生徒に目を向けようともせず、ただ突っ立ってるだけの転校生に戸惑いながらも、山田先生が彼女の名前をクラスに告げて居た。

 

「えっと…こちらはドイツから転校生して来た、ラウラ・ボーデヴィッヒさんです。」

「…………………」

 

が、山田先生から紹介されたラウラと呼ばれた生徒は、まるで自己紹介のことなど関係ないとばかりに無言を貫いていた。

 

しかし、そんなラウラの様子を見かねたのか呆れながら千冬が自己紹介を促した。

 

「挨拶をしろ、ラウラ」

「はい、教官!」

「ここではそう呼ぶな。もう私はお前の教官ではないし、お前も生徒だ。私のことは織斑先生と呼べ。」

 

ビシッと姿勢を整えながら敬語で答えるラウラ、その姿は文字通り上官と部下のソレだ。

そうしている間にラウラがクラスに自己紹介を行った。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ。」

 

……………

 

直後、再び教室に沈黙が訪れた。

彼女の雰囲気からか、クラスの生徒たちも一夏の時のように促したり茶化すことが出来ないでいた。

 

「い、以上ですか…?」

「以上だ。」

 

沈黙に耐えかねて聞いてきた山田先生の質問にキッパリと即答したラウラ。

余計なことを言わないスマートな挨拶と言うよりはそれ以上クラスと関わる必要もないと判断したのだろう。

 

(俺も人のこととやかく言える立場じゃねぇけど、なんだ随分冷たいやつだな…)

 

などと呑気に考えていた戦兎だったが、そんなラウラに動きがあった。

 

彼女はどこにも向けていなかった視線を、すぐ目の前のある一点に注いでいた。

視線の先に居た人物——一夏は直前までぼけっとしていたが、しばらくしてその視線に気付いた。

 

「——?」

「貴様が…!」

 

ラウラは何か呟くと直ぐに一夏の机の前に立つ。

お、なんだ?と戦兎が考えていると——

 

パァンッ!

 

沈黙を破るように、乾いた音が教室に響いた。

 

「——え?」

 

乾いた音——頰が平手打ちか何かをされた音の後に、された本人である一夏のつぶやきが漏れた。

このクラスの中で今一番困惑しているのは間違いなく彼だろう。

なにせ転校して初日の、それも初対面の相手にいきなり平手を受けたのだから。

そんな一夏のことなど意に反さず、ラウラは異常な剣幕で叫ぶ。

 

「私は認めない…貴様があの人の弟であるなど……認めるものか!」

 

小柄な彼女から放たれるそれはまさに凶器。

自身の内に浮かぶ怒り、憎しみ…感情をそのまま形にしたようなそれは圧力となってクラス中に恐怖、困惑を与える。

けっこう呑気してた戦兎もラウラの身体が一瞬巨大に見えるほどの膨大圧力(プレッシャー)にはビビった!

 

「——い、いきなり何しやがる!」

 

叩かれた瞬間こそ呆然としていた一夏だったが、すぐさま正気に戻ったようにラウラへ叫ぶ。

しかし当のラウラ自身はやることを終えたかのように自分に用意されていた席に座ろうとしていた。

 

「貴様っ…!いきなり平手打ちとは随分と失礼ではないか!?」

「転校初日で暴力沙汰ってどう言う神経してんのよ、転校生?」

 

そのラウラの背後を追うように箒が、前を塞ぐように戦兎が席を立つ。

その状況にも気にもとめずに戦兎の背後の席に向かうラウラ。

 

「おい待て!一言謝ったらどうなのだ!?」

 

そんな様子にしびれを切らしたように箒が彼女の左肩を掴む。

 

直後、どこから取り出したのかラウラは右手にナイフを取り出すと、振り向きざまに掴まれた左側の腕で箒を突き飛ばしつつ後ろに下がって距離を取った。

そして取り出したナイフでの刺突を試みる。

 

「いや馬鹿、何考えてんだっつってんだろ!?」

 

背後に立ち塞がっていた戦兎が、一歩大きく踏み込んでラウラの右手を後ろから掴むと捻ってナイフを落とさせようとする。

 

「——ッ!」

 

ラウラは手を捻られて自身の後ろに回されるとナイフを取り落とした。

しかしその光景を見て戦兎が手を掴む力を僅かに緩めた瞬間を見逃さなかった。

振り向きざまに戦兎の右脚へ自身の右脚による足払いを繰り出した。

 

「うぉお!?」

 

踏み込んでいた右脚を払われた戦兎は、綺麗に円を描きながら背中から地面へと叩きつけられた。

ラウラの方は地面に落としていたナイフを素早く拾い上げると、それを何処と無く仕舞って席に着いた。

 

その光景を見ながら頭を抑えてため息をついていた千冬は、ラウラを睨みつけながら口を開いた。

 

「ラウラ、今後私の前で勝手な行動は慎め。」

 

その言葉を受けたラウラの顔には、先ほどまでの苛立った表情でも興味のなさそうな無表情でもなく、明らかな緊張の色が見て取れた。まるで親に叱られた子供のようだ。

バツが悪そうに目を逸らしたラウラの姿を見てため息をついてから、千冬がクラスの生徒に指示を飛ばした。

 

「ではHRを終わる。すぐに着替えて第二グラウンドに集合。今日は二組と合同でIS模擬戦闘を行う。」

 

そう言ってクラスを解散させた千冬だったが、目の前に座る一夏と強打した背中を抑えながら席に座り直した戦兎を呼び止める。

 

「それから織斑、桐生。デュノアの面倒を見てやれ。同じ男子同士だ。」

「あ、はい。」

「わっかりました。」

 

困惑したままの一夏とけろっとしている戦兎の2人が、黒板の前に置き去りにされて苦笑と戸惑いの表情を浮かべていたシャルルを一瞥してから揃って返事をした。

その返事を聞いてから、千冬は山田先生を連れて教室から出て行った……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

模擬戦等授業でISを操作するとき、女子は教室で着替えをすることになっている。本来なら女子しかいない学園であるため当然なのだが。

そのため、男子は更衣室まで移動してから着替えることになっている。

男子の使う更衣室は教室からある程度離れてはいるがそれほど時間がかかるわけでもない。

 

 

が、それは何の障害もなかった場合の話である。

 

 

ただでさえ珍しい男子生徒がほかの女子生徒と一緒に居ずに単独で行動するタイミング、しかも眉目秀麗な男子転校生も一緒となると猶更であった。

 

結果、三人はまともに挨拶をする暇もなく、廊下で大多数の女子生徒の襲撃を受けることとなった。

わずかな隙間を抜けて強行突破した三人は更衣室へと逃げ込んだのだった。

 

 

 

「ハァ…ハァ……君たち、いつもこんな目に合っているの…?」

「まあな…」

 

息を切らせるシャルルを見守りながら答える一夏もわずかに息を切らせていた。

ロッカーに寄りかかりながら二人を見ていた戦兎は、今日やってきた女子生徒の人数を分析してつぶやいた。

 

「まあでも、今日は朝早いってのもあったし数は少なかったな。」

「ああ、休み時間になったら今の三倍に増えるぞ。」

「そ、そんなに!?」

 

戦兎と一夏の言葉に驚愕するシャルル。今朝の人込みを抜けるのでも十分な労力だというのに、あれでも少ないほうだというのだから当たり前だが。

 

「そうだ、自己紹介が遅れたな。俺は織斑一夏、気軽に一夏って呼んでくれ。」

「俺はてぇんさい物理学者(予定)の桐生戦兎だ。俺も戦兎でいいぞ。」

「う、うん。よろしく一夏、戦兎。僕のこともシャルルでいいよ。」

 

主に戦兎の自己紹介に苦笑しながら返すシャルル。

しかし自己紹介を聞いた彼はすぐさま先程の一幕を気にし始めた。

 

「ああっ、そうだ!二人ともさっきは大丈夫だったの?」

「え?まあ俺は平手されただけだし大丈夫だぜ。」

「俺も受け身はキチンと取れたからな、特になんともねえよ」

 

背中から叩きつけられていたのに、本当に受け身を取れていたのだろうかと疑問に思った一夏だったが、時計を見てすぐにその考えを打ち切った。

 

「うわっ、もうこんな時間か!やばいな、早く着替えちまおうぜ!」

「おお!そうだったな、忘れてた!」

 

そう叫ぶと二人は慌てて着替え始めた。

 

「う、うわっ!」

 

すると先ほどまで二人と向き合っていたシャルルが顔を赤くしながら、慌てて両手で顔を抑えつつ二人に背を向けた。

 

「…?どうしたんだ、早くしないと遅れるぞ?うちの担任はそれはもう時間にうるさい人で——」

「そうそう。俺もこの間、徹夜で発明品作って寝坊しちまってさ。3秒遅れたってだけで頭に出席簿喰らってよ——」

 

様子のおかしいシャルルを心配しつつ、自身の担任(兼姉)の恐怖をしみじみと語る一夏と戦兎に背を向けたままシャルルが返事をする。

 

「う、うん…着替えるよ?けど、その——あっち向いてて…ね?」

 

「「?」」

 

背を向けたままのシャルルの言葉を受けて互いに顔を見合わせつつ首をかしげる一夏と戦兎。

シャルルの要望通り、二人は彼を見ないように着替え始めた。

 

5秒経ったか否かという段階で、一夏はシャルルの方に振り返りつつ早めに着替えることを促そうとした。

 

「なんでもいいけど、早く着替えて——」

 

そう続けようとした一夏だったが、すでにシャルルは着替えを終えていた。

上半身のスーツを腹部に下げていた彼は、一夏の視線に気づくとわずかに動揺した様子で口を開いた。

 

「な、なにかな…?」

「いや、着替えるの超早いな……なんかコツでもあんの?」

「い、いや?別に……ハ、ハハハハハ…」

 

目をキョトンとさせている一夏と彼の言葉に無言で頷く戦兎に対し、シャルルは誤魔化すように笑った……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

————今日の模擬戦の実習授業は混沌としたものだった。

 

一つ、セシリアと鈴が即席のタッグを組むことになったが、対戦相手を(元日本の代表候補生とは言え)よりにもよって山田先生が務めることとなった。

 

二つ、空からISを身に纏って降り立ってきた山田先生が体勢を崩し、何故か一夏目掛けて落下。これまた何故か着地地点にいたはずの一夏が山田先生に覆いかぶさり、その豊満な胸を鷲掴みにした。

 

三つ、そのことにブチ切れたセシリアと鈴を相手取った山田先生が、見事な技量差で二人を圧倒。コンビネーションが全く取れていなかったことも相まって、二人は手も足も出ずに完敗したのだった。

 

 

 

そして現在、午前の実習が終わり昼休み

 

箒は授業中に一夏と昼食を一緒に取る約束をしていた。

 

朝から一夏の為に慣れない料理を勉強してきたのだ。そんな状況…千載一遇のチャンスを前に、箒は昼休みを心待ちにしていた。のだが……

 

 

 

「………どういう事だ?」

「せっかくの昼飯なんだし、大勢で食った方が旨いだろ?」

「それはそうだが…」

 

校舎の屋上に集まったのは一夏と箒の二人————だけでなかった。

話を聞いて飛んできたセシリアと鈴の二人、一夏に誘われたシャルルと戦兎の二人…合計6人が集まっていた。

 

「えっと…本当に僕も同席してよかったのかな…?」

「俺も別に良かったんだけどな。」

「気にすんなよ、同じたった3人の男子なんだからさ。」

 

素直に心配しているシャルルと、目の前で飛び散る女子三人の火花を見ながら本音を漏らす戦兎。

そんな二人に気楽に声をかける一夏…後者の戦兎の理由に関しては気付いていないのだが……。

 

「ありがとう…一夏って優しいね。」

「い、いやまあ…これから戦兎と入れ替わりでルームメイトになるわけだしさ…ついでだよついで。」

「なーに照れてんのよ、アンタ…」

 

シャルルのキラキラとした雰囲気に一瞬わけもわからずドキッとした一夏だったが、女子からの冷ややかな視線に気付くとすぐに否定した。

 

「いや、別にそういう訳じゃ…」

「ふーん…」

 

鈴が一夏に疑惑の視線を向けながら、自身が今朝作った酢豚を渡した。

 

その光景を見ながら、シャルルは先ほどの一夏からの返事である疑問が生まれていた。

なぜ後から転校してきた自分と、既に織斑一夏と同室である桐生戦兎が部屋を交代するのか。

 

それを確認するために、相手である戦兎にその疑問をぶつけた。

 

「ねえ。一夏のルームメイトって僕と戦兎が交代するんだよね?でも僕って後から来たんだから、個室になるかほかの女の子と同室になると思ってたんだけど…」

「ん?ああ、俺は自分のISを始めとした発明で忙しいからな。同じ部屋になるとうるさいし大変なんだよ。で、織斑先生に無理言って出来るだけ個室にしてもらってるんだ。……もしかして個室とかのほうが良かったか?なら悪いことしちまったな。」

「へえ…ああいや、別に嫌じゃないよ?その…同じ男子と一緒の部屋になれるとむしろ助かる…かなって。ほら、僕今日来たばっかりだから。」

 

戦兎の言葉を受けて慌てて首を振って否定した後、取り繕うシャルル。

そんな彼の様子を見て今朝と同じように首を傾げつつ、戦兎は自身が用意した弁当を開いていた。

 

ビルドの世界ではよくインスタントのカップ麺で済ませていたが、この世界に来て以降なにかと自炊する機会や必要が出てきていたため、それなりに様になるくらいに研究を重ねていた。

 

弁当の中には彼の好物であるアジの開きを始め、エビフライやポテトと言った炭水化物、ニンジンなどの野菜などがバランスよく入っていた。……異常に多い卵焼きを除けば割と普通の弁当と言ったところだろう。

 

「?なんでそんなに卵焼きが入ってるんだ…?」

 

鈴から貰った酢豚を食べつつ、セシリアの持ってきた(この世のものとは思えない)サンドイッチをどう乗り切ろうかと考えていた一夏は、戦兎の弁当を見るなり話題を変えようとするかのように切り出した。

 

「これか?『おふくろの味』ってやつを再現しようと思ったんだが、これがなかなかうまくできなくてな。気付けばこんなに大量に出来上がってたってわけよ。なんなら食うか?」

「おお、じゃあ遠慮なく…」

「あ、じゃあ私も!」

 

そう言いながら一夏と、セシリアの件で彼に突っ込んでいた鈴の両名が味見をした。

最初こそ普通の顔をしていた二人だが、次第に何とも言えない顔に変化していった。

 

そして一言。

 

「甘っ!?」

「なによコレ!?戦兎アンタこれ砂糖入れ過ぎじゃないの!?」

 

絶賛大不評な二人の言葉を聞きながら、戦兎はそうか?と首を傾げつつ自分で食べてみた。

しかし、心底不思議そうな顔をしながら顎に手を当てて考え込む。

 

「いや、むしろ足りねえな…母さんの卵焼きはまだ甘かったはず…砂糖が足りねえのか…いやもしかしたら違うのが入ってたのか?はちみつとかバニラエッセンスとか——まさか…ココアパウダーか?」

「止めろ!変な方向に走ろうとするな!!」

「あーもう!そうだ、セシリア!アンタのサンドイッチを戦兎に振舞ってやりなさいよ!少しは料理に対する目も覚めるでしょ!」

「え?ええ、よろしいですわよ。本当は一夏さんのために作ったものだったんですけれど。」

 

全力で暴走する戦兎を止めるため(?)、鈴の手によってセシリア製のサンドイッチのような何かかが戦兎の口目掛けて突っ込まれる。

 

「うお!?何しやがる、俺はまじめに考えて——」

「まじめに考えたらバニラエッセンスとかココアパウダーなんて発想でないわよ!ほら良いからさっさと口開けて食べてみなさい!アンタがやろうとしてることがすぐにわかるから!」

「お、おい鈴!なにもそこまでしなくても…!」

「お待ちください!その二つは普通に料理に使えますわよ!?」

「えぇ…」

 

止めに入ろうとする一夏、抗議の声を上げるセシリア、困惑するシャルル…

 

混沌としたこの光景を前に、箒は頭を抱えながら呟いた

 

「だから…だから二人きりが良かったのだ…!」

 

そんな少女の切なる願いを打ち消すように、己の可能性を文字通り味わった男の悲鳴が校舎の屋上に響き渡るのだった……。

 

「豚の餌ぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1025号室

授業も終わり、時刻は夜。

放課後の自室でくつろいでいたシャルルは、自分と一緒にお茶を飲んでくつろいでいた一夏と話をしていた。

 

「そういえば一夏はいつも放課後にISの特訓をしてるって聞いたけど、そうなの?」

「ああ、俺は他のみんなから遅れているから地道に訓練時間を重ねないとな。」

 

そう言って困ったように笑う一夏。

しかしシャルルには引っかかるものがあった。

 

「あれ?でも一夏もそうだけど、戦兎も今年からISに関わり始めたんだよね?」

「本人もそう言うんだけどな…戦兎のやつ、IS稼働時間と比べて、どういう訳かやたらと強いんだよ。」

「そんなに?」

 

意外なその返答に聞き返すシャルル、彼の言葉にああ。と肯定しながら一夏は続ける。

 

「前に自分のデータが取りたいからって模擬戦をやったことがあるんだけどさ。俺は白式で戦兎はリヴァイヴだったんだけど…その……一撃も当てることが出来なくてさ……まあ白式はすぐエネルギー切れするし、戦兎もそれを知った上で色んな射撃武器で牽制と砲撃し続けたってのもあるんだけどな。

それでもたまに近づけたと思っても的確にこっちの攻撃を避けるんだよ。」

「へぇ…戦兎って自分で天才っていうくらいだから頭脳系って思ってたんだけど。」

「俺もそう思ったんだけどな。

あれは多分、こっそりトレーニングとかしてるんじゃないかと思うんだ。あいつ、自分は天才だからこれくらい努力なんてしなくても余裕って思わせたいんじゃねえかな?」

「ふーん、そっか…」

 

シャルルがつぶやくと、一夏はお茶のお代わりを注ぎに台所へ向かった。

一夏がいなくなると、シャルルは自身の携帯端末から二つのデータを投影していた。

それは事前に調査されたのであろう二人の生徒の個人データだった。

シャルルはそのうち一方のデータを閲覧した。

 

 『

   桐生戦兎

   NO DATE

        』

 

(お姉さんでありブリュンヒルデの千冬先生と同じ唯一仕様を使える一夏は確かにイレギュラーだ、けどそれは戦兎も同じだ。

日本人のようだけどどこで育ったのか、学校はどこに通っていたのか、いつどこでISを操縦できると知ったのか。一夏がISの適正を確認された後、世界中の政府が男性適正者を探し始めるよりも前に戦兎の適正も判明したわけだし…

そもそも彼は一夏と違ってわかっていることが余りにも少なすぎる。まるで突然現れたかのように。

それにその高いIS操縦や戦闘スキルはどこで身に着けたのか。自分でISを造るとの事だけど、それだけの頭脳をもっていながら今まで表舞台に現れることが無かったのはどうしてなのか。)

 

ルームメイトとはまた違った意味で不確定要素が多すぎるクラスメイトのことを考えてると、一夏がお茶を持って戻ってくるのが見えた。

急いでデータを消すと、シャルルは誤魔化すように部屋に置いてあったテレビの電源を付けた。

 

テレビでは連日ニュースが続いている、未確認生命体に関する討論が行われていた。

 

 

 

『我が国から世界へと広まっていったISが、あの訳のわからない生き物に一方的に敗北するなど——』

『ですが現状、政府があの仮面騎士なる存在に頼り切りなのは事実です。』

『何もわかっていない男は黙っててもらえるかしら!?あの不気味な存在が、本当に人類の味方であるなど誰が決めたというの!?』

『そうよそうよ!大体あんなISモドキな兵器がこの世に存在してること自体おかしいのよ!』

 

 

 

テレビの向こうでは女性の著名人数名と、その捌け口として呼ばれたのであろう男性一人が討論を重ねていた。

そしてスタジオのスクリーンには今までにメディアに確認されていた未確認生命体と、それらと戦う謎の戦士 <仮面騎士(かめんライダー)> が映し出されている。

 

男性が何か言うたびに、女性の著名人や観客席から怒声やブーイングが巻き起こる。

 

 

「男の子ってああいうの好きそうだよねー…」

「?シャルルだって男だろ?」

「え?……あ!うん、そうだね!ハハハハハ…」

 

シャルルの変な態度に違和感を感じつつ、テレビの画面越しの様子を見て一夏は苦虫を嚙み潰したような顔を浮かべていた。

 

「しっかし、こんな時だっていうのにいまだに男がどうとかこうとか…そんなこと言ってる場合じゃないだろっての。」

「うーん…でも彼女たちの言ってることも少しわかるかな。所属不明の兵器が圧倒的な力で敵と戦ってるけど、その目的は不明だし、こちらにその矛先を向けないとも限らない。

それにホラ、ISはその登場で今までの既存兵器の常識を覆したでしょ?僕も映像を何度か見てみたけど、あれはそのISとかけ離れている全く新しいタイプの兵器だからね。場合によってはこの10年で生まれた女性有利のアイデンティティーが崩壊する訳だし…」

「まあ、それはそうだが…」

 

シャルルの言葉と、それに引っかかるものを感じて戸惑う一夏だったが、ふと以前桐生戦兎から問いかけられた言葉が頭をよぎった。

 

 

——お前の思う『人々を守る正義のヒーロー』が『感情も無く戦う、人々を守る使命を帯びただけのロボット』と一緒ならさ……それって兵器と一体何が違うんだ?——

 

 

かつて受けたその問いを思い出した一夏は、ポツリと呟く

 

「………アイツ、本当に兵器なのかな…。」

「え?」

 

一夏の呟きに疑問を浮かべて頭を傾げるシャルル。

そんな彼に一夏はなんでもない、と告げると部屋を出た。

 

 

 

 

特に当てや用事があるわけでもなかったが、そんな気分だった。胸にこみあげるモヤモヤとした何かを感じながら廊下を歩き始めた。

 

廊下を数分ほど歩いた時点で、曲がり角から人の気配が感じて取れた。

その角からは箒が現れた。一夏はどこかへ行こうとしている彼女に話しかけた。

 

「よお箒、こんな時間にどこ行くんだ?」

「む…なんだ一夏か。いや…少し道場に行こうかと思ってな。」

「こんな時間にか…?」

 

素朴な疑問を口に出した一夏に対し、箒はムッとしジト目になりながら答える。

 

「私はお前たちのように専用機を持ってないから、練習する時間もタイミングも限られてるのだ。何か問題でもあるのか?」

「いや、別にねえけど…」

 

どこからか感じる圧に後ずさりしそうになる衝動を抑えながらそう答える一夏に、逆に箒からも疑問が飛んできた。

 

「そういう一夏こそどこに行く気なのだ?特に何も準備していないようだが…」

「ああ。特に目的があるわけじゃないんだが…その……」

「?」

 

 

少し言いよどみつつも、一夏は吹っ切れたように箒に先ほどのテレビの内容を語った。

 

 

「まあ、デュノアさんの言いたいことも理解できる。普通なら最初、誰でもあの騎士のことを不審に思うだろう。ISと全く違う上、中にいるのが男という可能性とてあるわけだしな。そんな物、あの人(篠ノ之束)が知ればどう思うか…」

「……俺さ、最初は『正義のヒーローなんて奴は感情なんてない』って思ってたんだ。まるでロボットみたいにさ…」

「?」

 

廊下の窓に寄りかかり、空に見える月を見上げながらぽつりと語る一夏の姿を見て、箒もその隣に立って壁に寄りかかる。

 

「俺も最初、どうしてそんなこと考えるようになったのか分からなかったんだ。けど…」

「けど?」

「……この間アイツに助けられたときに気付いたんだ。俺は多分、ヒーローって言うのが憎い…いや、純粋に嫌いだったんじゃねえかなって。」

「嫌い…?」

 

首をかしげる箒に対し、一夏は続ける。

 

「俺、中学の頃にも誘拐されたけどさ…その時に俺を助けてくれたのは千冬姉だったんだ。

けどそのせいで千冬姉は第二回IS世界大会の決勝も棄権しちまったんだよ…だからこそ——だからこそ、千冬姉が俺にとってのヒーローだったのかもしれない。

けど、普段はあんな感じでも、俺は千冬姉の人間らしいところをちゃんと知ってるし、人間らしい欠点だって分かってる。だから俺は千冬姉のことをそんな風に見れなかったんだ。」

「ではどうしてヒーローを嫌うようになったんだ?」

「簡単な話さ。あの時、本当にヒーローなんてものがこの世にいてくれたら、俺のことを助けてくれたはず。そうなったら、千冬姉は世界大会で二連覇出来て、ブリュンヒルデでいられ続けれたかもしれないって…もしそうなっていたら、俺は自分は弱いんだって思えるだけで済んでいたのかもしれない。

情けないだろ?要はただの八つ当たりだったんだ…」

 

窓についていた手を強く握りしめる一夏、彼の様子を見て箒。

 

「一夏…確かにお前がそう思うのも仕方ないかもしれない。私はそんな存在に頼らずに——などと、偉そうに言える立場ではないからな。」

 

——そんなものが本当に、かつて居たのなら…あの人を止めることだって出来たはずだ——

 

そう心の中で呟いた箒だったがその直後、一夏は暗くなっていた表情を明るくしながら振り返った。

 

「だから最初のクラス別トーナメントの時にアイツが現れた時は、正直良い気分じゃなかったし信用も出来なかった。

でもこの間、またアイツは現れた。俺個人を助けるために。そりゃ元々はアイツを誘き出すためだったから当然だったかもしれない。けどさ…自分の無力さに直面したと同時に、なんか安心できたんだ。

『一度だけじゃなくて何度も誰かの危機にやって来る。そんなヒーローみたいな奴は本当にいた。なら、俺はもう一度ヒーローって奴を信じられるかもしれない——』ってさ。」

 

そう告げた一夏の言葉を聞いた箒は、一瞬キョトンとしたような顔をしていたが、すぐにふふっと笑った。

 

「なんだそれは。助けて貰ったのに上からなのか?」

「そりゃあ、さっきも言ったけどあの時は俺はとばっちりだっただろ。迷惑かかったのはこっちだからな。」

「そうだな、その点は本人も反省しているだろう。

…ああ、一夏と話したら私も頭の中を整理できたよ。それと覚悟もできた。」

「?覚悟ってなんのだ?」

 

首を傾げる一夏に対し、箒は少しツンとしながら答える。

 

「女には男に知られたくないことがある…ということだ。

まあ、私もアイツのことを信頼できそうだな。」

「? まあいいや、役に立ててよかったよ。」

 

そう答えてから2人は顔を見合わせて微笑んでいた。

箒は道場のある方向へとわずかに歩いたあと、数日前にそのヒーロー本人と交わした会話を思い返していた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日前

 

「悪い、今こっちに集中してて聞いてなかった…なんだって?」

 

整備課の部屋の一つ、貸し切り状態に近い一室に二人の生徒がいた。

一人は今日この部屋に初めて来た箒、もう一人はこの部屋を使用している件の正義のヒーロー・仮面騎士である桐生戦兎の二人だった。

二人のうちの一人、箒は戦兎の後ろから腕を組みながら彼の作業を見ていた。

 

彼の前には一機のISが鎮座されており、その間には空中に投影されたディスプレイが表示されていた。戦兎自身は時折その画面を確認しては、デスクに備え付けられたパソコンのキーボードを触っていた。その作業の手を緩めることなく、戦兎は後方の箒に聞き返した。

 

ISを造り出した生みの親である人物、篠ノ之束の妹である箒ははっきり言うとあまりIS…特に構造や設計などに詳しい訳ではない。

しかしそんな彼女から見ても、目の前のISは他の機体とは何かが違うことはよく理解できた。

 

 

 

【Love&Peace MODE:S】

【Love&Peace MODE:W】

 

【Infinite・Moment × Bortex・Reactor Link:CLEAR】

【HyperSensor × TargetSearcher Link:CLEAR】

【各部正常 問題無し】

【Infinite・Moment 各機関との連結確認】

 

 

【Love&Peace MODE:B】

 

【System=DoubleThink:error】

【System=DoubleLink:error】

【各部連結不可】

【error】

【各部接続拒否 修正中】

【error】

 

 

ディスプレイに映し出されている詳細不明の単語の数々に見とれつつ、箒はこの部屋に来た本題を改めて伝えた。

 

「だからそのだな…私にも専用機を作ってはくれないだろうか…?」

 

そう箒が言い終えると、戦兎はわざとらしく大きなため息をついた後デスクの椅子にどっかりと座り込んだ。

背もたれ部分に寄りかかりながら戦兎は椅子を回転させて、後ろの箒へと振り返った。

 

「お前それいつまでかかると思ってんのよ?少なくとも学年別トーナメントまでには無理だぞ。」

「無理も不躾なのも承知している…お前のISが終わった後でいいんだ、何とか出来ないか?」

「いやそんなポンと出せるようなリアクションされてもよ。俺どっかの青い狸じゃねえんだぞ…」

 

呆れながらそういう戦兎に、箒はムッとしながら続ける。

 

「てか姉に頼めよ、生みの親だろ?」

「誰に頼もうと良いではないか。それに大体お前は既に騎士なのだから、今更ISが無くても問題ないだろう!」

「俺には俺の事情ってもんがあるんだけどよ……」

 

頭をかきながらどうしたものかと思案した戦兎は、取りあえず話題をそらすことにした。

 

「てか篠ノ之、お前俺がビルドだっていつ気付いたんだよ?」

「?び、ビルド…?ああ、あの兵器の名前か?クラス対抗戦の時にお前が脱ぐところを見たんだ」

「……うそーん」

 

ビルドを兵器と呼ばれたところに感じるものがあった戦兎だったが、直後に続いた言葉を聞いてショックを受けた。

 

千冬にバレるわけがないと豪語していた時にはすでに彼女に正体を知られていたことになるからだ。

そのことにショックを受けていると、箒が話題を元に戻してきた。

 

「それでどうなのだ!?」

「んー…てかお前、なんでそんなに専用機が欲しいんだよ?

「そ、それは——」

 

言いよどむ彼女に対し、戦兎は追い打ちをかけていく。

 

「一夏と一緒に居たいから…か?」

「——ッ!」

 

あからさまに狼狽する箒の様子を見てから、戦兎は再びわざとらしいため息をついた。

 

「やっぱりそうか。まあ薄々察してはいたけどよ。」

「り、理由など別にいいだろう!?」

「…ああ、やっぱりダメだな。」

「な、何故だ!」

 

顔を赤くしながらも、疑問をぶつけるように叫ぶ箒だったが、戦兎も続ける。

 

「いいか?確かにISの本来の開発目的は宇宙開発だ。けどな、今のこの世界にとってISの主な使用目的は…戦争、国家間の兵器開発競争の見本だ、そうだろ?」

「……!」

 

無言で俯く箒に構わず、更に話を続ける戦兎

 

「そんな物を——文字通り世界を変えた発明を、『好きな男と一緒に居たいから』なーんて理由でハイ、そうですか。って渡せるわけないでしょうが。」

「……」

「大体お前ら姉妹は——まあ別ベクトルでなんだろうけど。なんでこう、ISが世界に与える影響が分からねぇんだよ?」

 

言い終えて再びディスプレイやパソコンの方向に椅子を回転させて作業に戻る戦兎。

 

彼からの説教を聞かされた箒は、震えながら手を強く握っていた。

 

「………ではどうすれば良い?」

「…は?」

「どうすれば良いかと聞いている!

後から来た女子が同じ専用機持ちとして馴れ馴れしく一夏と放課後もずっと触れ合っている中、わたしだけ惨めに訓練機で決められた時間だけしか共に触れ合えず!

経験の差から特訓で一緒に居られるのもあの2人だけ!ああそうだろう、私のような経験不足な女なんて一夏にしてみれば用はないだろうからな!

それだけならまだ良い……だが、私は…!」

 

そこまで叫んでから、一呼吸ついてゆっくりと続けた。

 

「私は…一夏の命がかかっている状況でさえ……見ることしかできなかったのだ…!」

「………。」

「答えてみろ!どうすれば良い!?どれだけ特訓しても、時間も何もかもがあの2人と比べて足りない!

これ以上何を頑張れば良い!?どうすれば強くなれる!?教えてくれ!正義のヒーローなんだろう!?」

 

筋違いの八つ当たり——そう分かっていても、今の彼女に己の中から溢れ出るその感情を押さえるすべはなかった。

 

溜め込んだ醜い物を吐き出して激しく呼吸する箒に対し、戦兎は背を向けたまま椅子の背もたれに寄りかかってボソッと呟く。

 

「そこまで言ってなんで分かんねえのかな…?」

「…何がだ?」

 

聞き返す箒をスルーしながら、戦兎は再び箒に向き直ると、静かに続ける。

 

「力を持つってのはな、それ相応の覚悟が必要なんだよ。」

「……覚悟…?」

「覚悟と言っても意気込みって意味だけじゃねぇ。それに伴う動機、そしてその力を持って何をするか——お前にはその2つが足りてない…。

例えばお前のいう2人は『国の名前、誇り、名誉、威信を背負う』って覚悟、相応の動機がある。対してお前はそれがない。

強いて言うなら一夏と一緒に居たいだけ。或いはただ漠然と強くなりたいってだけ。

そして動機がないからこそ、そこから先がないんだ。

つまり、お前は『ISが欲しい』という思いは強いけど、『何故欲しいのか』

『そうして手に入れたISで何をするか』

この2つを見据えてないんだ。お前にとってのゴールはISを手に入れた時点なんだよ。2人にとってのスタートラインでな。

そんな奴に渡したところで意味がない。」

 

そこまで言われて、初めて箒は己のことを振り返れた。

 

(ああ、その通りではないか。……確かに私はあの2人ほどの覚悟なんて持ってない。そのくせブライドばかりは高くて…本当に最低な女だな、私は。)

 

心の中で自分を下卑ていた箒に対し、戦兎は腕を組んで言葉をかける。

 

「けどな、その2つは別にずっと前に持っていないとダメ。なんてことはねぇんだ。」

「……え?」

「当たり前でしょうが、最初から覚悟も動機も伴ってるやつなんてそうそう居ねぇんだ。それは今すぐにと言わなくても、自分自身と向き合えれば何時だって作り上げれるんだ。」

 

笑顔で微笑むようにそう告げる戦兎に呆然としていると、彼は最後にこう言った……。

 

「ISを持つ…それに相応しい理由を——自分だけの『答え』を見つけるんだ。

自分自身と向き合って、それを見つけることができたらもう一度来い。その時はISの製造も考えてやる。

一応ヒントを教えてやるけど……篠ノ之、お前もうその答えにたどり着いてるからな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在

箒は数日前のことを思い返しながら、振り返って一夏に顔を向ける。

 

「そうだ一夏、私もお前に話すことがあるんだ。」

「おう、なんだ?」

「私はお前たち専用機持ちと違って自由に練習出来ない。だからお前たちに追いつくにはどうしたらいいかと思っていたんだ。けど、まず根本的なものを見落としていたよ。」

「へぇ、それって?」

 

一夏に問われた箒は、わずかにバツの悪そうな顔をしたあと、かつての自分を語った。

 

「……ISに乗る理由だ。

私は最初はあの人の影響で無理やりこの学園に通わさせられた。だから、セシリアや鈴のように国の誇りを背負っていたわけじゃなかった。

それに、お前のように文字通り命がけの戦いで何かを守りたい…と思うこともなかった。ただ追いつきたいだけだったんだ。

けど、今日でその考えは改めることにした。

これからは——一夏、お前を守るために強くなるぞ。」

「は、はぁ?なんだそれ?」

 

思わず困惑する一夏に対し、箒はわずかに顔を赤く染めながら続けた。

 

「あ、いや、今のはだな…そ、そう!お前がこの髪留めを渡した日のことを覚えているか?覚えているだろ!?

あの日やこの間のクラス対抗戦の仮を…という意味でだな…!うん!」

 

慌てて取り繕ったあと、わざとらしく咳をして自分を落ち着かせてから、改めて続ける。

 

「それに!あの日しかり、この間のクラス別トーナメントしかり…お前はすぐに頭に血を登らせてしまう悪癖がある!」

「な!?そ、そんなに言うか!?」

「ああ!言う!だから、お前にはストッパーがいるだろう?だ、だから…私がそれになる…うん、そうだ、それがいい!

鈴は一夏と同じタイプだし、セシリアは遠距離からの狙撃メインですぐにはお前に対応できないだろう?」

「た、確かに……うん?いや、そうか?」

 

自分と2人の少女のことを考え込む一夏の目の前にズズイ、と迫りつつ、箒は目をわずかに晒しながら言った。

 

「そうだ。……だからその共に戦えるようになる。なってみせる。

けど、それで私が強くなっても守られたなどと考えないでくれ。私も一夏のおかげで強くなるんだからな。」

「そっか……わかった。箒はもうとっくに強いと思うけど、俺も箒と一緒に強くなれるよう頑張るよ。」

「そ、そうか!それは良かった!」

 

パアッと表情を明るくして影でガッツポーズをしたあと、先ほどとはまた違うなにかを覚悟した箒は思い切って尋ねた。

 

「それは良いとして一夏。……こ、今度の学年別トーナメントのことなんだが……その…」

「今度はどうしたんだ?」

 

一夏が声をかけるが、今の箒の耳にその言葉は届かなかった。

そして意を決して告げた。

 

「わ、私が優勝したら…その………つ、付き合ってもらう!!」

 

その言葉を告げた瞬間、箒は自分の周りの時間が急速に遅くなる感覚に陥った……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十分後

 

「だからっていきなり告白する奴がいるかよ!?」

 

箒のあまりにも大胆すぎる発言を大声で突っ込む戦兎に対し、箒は顔を赤くしながら言い返す。

 

「別に告白ではないぞ!それに仕方ないではないか!その…気持ちの問題だ。これくらいの意気込みでやらなくてはと言った感じのだ!」

「意味わっかんねぇよ!」

 

言い争う2人が来ていたのは第4アリーナだった。

既に夜も遅かったためか、アリーナ内には2人を除いた生徒や教師は誰も居なかった。

 

 

ここに来た目的は一つ、箒のIS操縦技術を上げるためのトレーニング…特訓だ。

 

残り数週間ほどで新型の専用機を作るのは不可能、そう判断した戦兎はせめて自身のビルドで培った戦闘技術の一部を叩き込むしかないと判断したのだ。

 

 

アリーナの中心に置かれた学園のIS、打鉄を見ながら箒は質問した。

 

「けど良いのか?訓練機使用の順番がまだ遠い私が乗ってしまって…」

「本来ならアウトだろうが…俺は学園側から特例で、ある程度なら好きに動けるようにされてるんだよ。で、今回は俺の専用機のためのデータが取りたい。それも俺以外のやつの操縦データがな。」

「それはつまり…」

「そ。今日からしばらくの間、お前は俺のアシスタント…まあ、要は助手だな。或いは実験台」

 

戦兎は腕を組みながら、箒をISに乗せる理由を語った。

しかし箒は最後に付け加えられた理由に待ったをかけた。

 

「ふむ、なるほど……いや待て待て待て待て!最後のはなんだ!?実験台と言ったか!?」

「当たり前でしょうが、ただでお前を強くしてやるなんて誰が言ったのよ。ましてや特訓を施すとか正義のヒーロー以前に、本来なら俺の専門外なんだぞ。

お前は特別にISに乗れるし強くしてもらえる、俺はデータを取りつつ実験も出来る。どうよ、win-winでしょ?」

「まあそれは…そうなのかも知れないが……」

 

本来よりハードになるとは言え、結局することはいつもと同じように訓練。しかも場合によっては実験台にされる。

 

開始前だというのに、彼女はあまりにも多い不安材料に頭を抱えるのだった……。




拙者、ギャグやネタのセンスが壊滅侍

冒頭の夢オチは新年1発目と言うことで初夢風のネタ…のつもりでしたがまあ投稿が遅れに遅れてしまいました…
一応今回戦闘は無かったのでその代わりに、と言うことで1つ…

途中で唐突に挟んだ変なナレーションは何だ。だって?
「なんだよ、知らねーのかよ。ジョジョだよ」


前書きでこれからもゆっくり投稿と書きましたが、出来るだけ早く投稿するように心がけていますので何卒お願いします。
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