Infinite・Genius 【インフィニット・ジーニアス】 作:EUDANA
今回は『仮面ライダービルド×IS』ではなく実質『仮面ライダービルド×仮面ライダーディケイド』です。IS要素ェ……
また、なるべく原点にそった性格で描いているつもりですが、もしかしたらキャラが違うところがあるかもしれないので、ご了承下さい
ちょっと物足りないから追記しよーと思って書いてあった結果、いつの間にか1万字以上増えて、多分前後編除けば本作最長。前回含めれば除かなくても最長かと。
おかげで投稿予定から1ヶ月以上伸びました
だからなんだと言う話なので初投稿です。
前回までの、インフィニット・ジーニアスは
「……この世界もやけにイヤな風が吹くな……早く帰ったほうがいいぞ」
「不審者前にして、はいそうですかで帰るわけには行かねぇだろ!」
「瞳に映った自分自身、仲間や光景は、お前がそうだと想い続ける限り真実になる。例え何回間違えても、裏切られても、どんな残酷な現実が突きつけられたとしても。お前が信じ続ける限りな」
「……ディケイドめ。ビルドの世界、そしてISの世界さえも破壊するつもりか……!」
「一体何者だ!?」
「通りすがりの仮面ライダーだ、覚えておけ」
【 ボルテック・フィニッシュ ! 】
‖ FINAL ATTACK RIDE ‖
‖ FA・FA・FA・FAIZ ‖
世界の破壊者ディケイド
幾多もの世界を巡り、その瞳に何を映す……?
———————————————————————
「……ッ」
全身に走る痛みで意識を取り戻した戦兎は、ゆっくりと起き上がると周囲に視線を巡らせる。
「起きたか。まぁ、まだ10分位しか経ってないがな」
声の主はすぐ背後から。慌てて振り返った先で、首からカメラを下げた青年——仮面ライダーディケイド 門矢士は、近くの木に寄りかかりながら視線だけをこちらに向けていた。
「改めて自己紹介しておこうか。門矢士、仮面ライダーディケイド。見ての通り、世界を着の身着のまま旅してた所だ」
先程まで闘っていた相手に自らの名や立場を語る士。
そんな彼の自己紹介を聞きつつ、戦兎は己の内側に存在する葛城巧に心の中で問いただす。
(どうなんだよ、ディケイドってライダーもエグゼイドたちと同じ世界のライダーなのか?)
——いや、彼らの世界にそんな仮面ライダーが居たとは記憶していない。ディケイドという名前にも聞き覚えはないね——
葛城巧とのわずかな問答の後、先程の言葉で自分が僅かな間とはいえ気を失っていたと察した戦兎は、今度は自身がまだ生きている事に関して士に問いかける。
「どうしてトドメを刺さなかった」
「別に、お前を殺すのが目的じゃないからな」
アレだけ戦いを繰り広げながらあっけらかんと答える士の返事に、戦兎は困惑を隠せずにいた。
「なら、どうして襲ってきた!?」
「今は戦うことが必要だと思ったって言っただろ」
「いやだから、どうして必要だと思ったかって聞いてるでしょうが」
突発的な士の考え方にやりづらさを感じつつ、戦兎は真意を問いただす。
そんな戦兎の様子を前に、士は溜息を吐きながら説明することにした。
「なら手短に、わかりやすく言ってやる。……お前は、何のために戦ってる?」
「何のためにって、それは……」
「エボルトを倒して新世界に帰る。それは結構だ。だが、今のお前じゃあ……1人だけのお前じゃあ、それは無理だ」
「なに?」
「お前の強さは一人の力じゃあなく、仲間との絆だ。そうだろ?」
かつてのエボルトと同じことを言う士に物申したい気分を抑え、様子を伺う戦兎。そんな彼の内面を知ってか知らずか、士も自身の考えを続ける。
「じゃあお前にとっての仲間は、手に触れれる距離にいる心許した奴らだけなのか、という話だ。それも分からないようじゃあどんな話をしても無駄だろうからな。わかりやすく、わざわざ追い込んでやったってワケだ」
「……」
この世界に居ない仲間たちのことを言っているのだと。戦兎がそれを理解するのにそれ以上の言葉は不要だった。
だが仲間が居ないことも。そして自身の行動によって巻き込まれたのであろうこの世界の者達に負担を掛けさせる訳には行かないことも事実。
それを簡単に吹っ切れ受け入れるほど、戦兎は楽観視出来なかった。
「ここにみんなが居ないのを『無事だろうし何とかなるだろ』って考えたくないし、何にも知らない……知る必要のない連中もこれ以上巻き込めない。お前の言おうとしていることは分からない訳じゃないけどよ……」
気持ちだけ受け取っておく、と。そう続けようとした戦兎に、士は目を伏せて一方的に話す。
それは門矢士と言う青年の物語にとって必要であり、しかし懺悔に等しいもの——なのかも知れない。
「俺はかつて、仲間や他のライダーたちを手に掛けたことがある」
「なに……?」
戦兎は余りにも突然に、それも思いがけないことを言う士に困惑する。
他のライダーと言うのも気がかりだが、何故仲間を手にかかるなどと言う選択をしたのか、それが理解出来なかったからだ。
「なんでそんな……」
「状況が状況だった。だが仕方ないで済ませるつもりはない。俺は世界を救うために、俺以前の全てのライダーを世界ごと破壊した」
以前のライダー、それらを世界ごと破壊
今の戦兎にはさっぱり理解が及ばないことだったが、士の表情からそれらが冗談でも何でもないのはすぐに窺い知れた。
「その後色々あってライダーたちは復活し、逆に俺は消滅した。俺が消えたあと世界は再び危機に陥ったが、アイツらは自分を殺した俺を仲間だと言って、俺を自分たちの思い出を元に復活させたんだ。他のライダーたちもそれを受け入れた。……少々こそばゆい話だがな」
「……」
「ビルドの世界の仲間たちはどうだ? いや、きっと連中もそうだろう。お前はそいつらを死に追いやってしまったと、世界ごと失われたかもしれないと嘆いてるかもしれないが、少なくともお前の仲間たちは気にしてはいないと思うぞ。そして俺も言ってやる。お前のこれまでの旅は、決して間違ってないだろう」
何を根拠にそんなことを言えるのか、それは分からなかった。
考え込んでいた戦兎を尻目に、士は言うべきか言わないべきか考えていたことを告げるために口を開く。
「そうだな……これくらいは言ってやってもいいか。あまり干渉する気は無かったんだがな」
「なんだよ?」
ため息と共に軽く判断を決めた士の言葉に疑問を口にする戦兎。
そしてそれは、戦兎を次の一歩へと踏み出すための後押しとなった。
「お前の世界や仲間たちは消えてはいない、無事だぞ。……今の所は、な」
▼
「どうなっている……?」
某所の研究所にて、あらかじめ現場に待機させていたドローンを使いビルドとスマッシュの戦闘データを取っていた内海だったが、突如としてドローンの反応が現場からロスト、あろうことかこの研究所に戻ってきていた。
「破壊ではなく長距離間の精密な移動……一体何者だ?」
両者の戦闘に巻き込まれたとは考え辛く、ならば第三者の可能性もある。そう踏んだ内海は、一通り考えを巡らせると背後の装置をいくつか起動する。
『……!』
【 ーーー 】
蓋が開かれた装置の中から二体のスマッシュが起き上がる。さらにその隣ではコンテナのような物が起動し、その中で停止していた胸に蝙蝠のようなマーキングを施された数十機のガーディアンの大群が一斉に起動する。
「これだけの戦力を動かすのはまだ先にしておきたかったが、念には念だな」
眼鏡を押し上げながら内海は呟き、スマッシュたちを一瞥するとトランスチームガンを手に取った。
▼
「無事って……本当なのか!? ってかどうしてわかるんだよ!?」
ビルドの世界、そして仲間たちは無事である。どうしても知りたかった情報をあっさりと語った士に、戦兎は詰め寄りながら質問をぶつける。
「俺にはわかるから……としか言いようがないな。それに……」
「それに?」
「もしビルドの世界が消えたのなら、お前の存在も消えているはずだからな」
「世界が消えたら、その住人は違う世界にいても消えるってことか?」
「まあ、大体そんな所だ」
「そうか……」
あまり確証は無いが、目の前のライダーは恐らくこれらの情報が自分以上に詳しい。敵ではないのならば、その情報は信じるに値する筈だ。
そう考えて僅かに安堵する戦兎を横目に、士は続ける。
「だが素直に喜んでもらったら困るな。帰る世界は……いや、創り直す世界は健在だが、そんなに悠長にしている暇はない……そして勿論、お前にはやるべきことが残っている」
「エボルトか」
「ああ。お前たちの世界は新世界創造とやらが中途半端な状態だ。その不足分は、このISの世界に潜むエボルトから追加してひねり出すしか無い。言っておくが、ビルドの世界と同じ物は兎も角、この世界由来の物はエネルギーとして使えないからな」
「使えない? どうしてだ?」
端からエボルトを狙っているために問題はないが、一応聞いておいて損はないと判断し、戦兎は情報を聞き出す。
「この世界由来の技術やエネルギーを使えば、新世界はこの世界の影響を受ける……最悪、二つの世界がより引き合って融合する可能性だってある」
「融合……」
「相違する世界同士の融合がどれだけ危険かは、お前も理解しているな?」
当然、戦兎はかつてビルドの世界とエグゼイドたちの世界を融合しようと目論んだ最上魁星と、平行世界合体装置エニグマの被害を忘れてはいなかった。
「あぁ、わかった」
「それに、今はどのライダーの世界も不安定になっている。もし二つの世界が融合してしまえば、それは大きな波紋になって他の世界にも影響を及ぼすだろうな」
「不安定? どう言うことよ?」
士の語る平行世界の融合を理解した戦兎だったが、さらっともたらされた情報に困惑を示した。その説明をしていないのを思い出したのか、士はそれに関する説明もしてくれた。
「簡単に言えば、碌でもない計画を立てている奴がライダーの歴史を消して新しくやり直そうとしている。お前のと天と地ほど違う新世界創造と言えるだろう」
「歴史を……」
「ま、お前たちの世界やこの世界に影響は出ていない。流れる時間が違うようだからな」
ライダーの歴史とは何なのか理解出来なかったが、世界に存在するライダーの過去の形跡や存在などだろうと仮説を立てて、取り敢えず納得する。
「新しくやり直す……か」
歴史を奪い、覆す。
かつて自分たちが目指した新世界創造とそう変わらないとも言えることを利己的な目的として悪事に利用する。
いつかそんな相手と相対した時、自分は彼らを否定出来る資格があるのだろうかと、戦兎は心の奥で思ってしまっていた。
具体性は不明だがあらかた説明し終わったからか、壁に背を預けていた士は何かを感じ取ったように話を打ち切って壁から離れて周囲を見回す。
「さて……そろそろ来るか」
「来るって、何がだよ?」
「さっきのお前とスマッシュの戦いの時にドローンが飛んでいたんでな。返却してやったんだが……もう持ち主が来る頃合いだろう」
「バッ——お前、そういうのはもっと早く言いなさいっての!」
戦兎が慌てて立ち上がるのと、少し離れた場所に煙が吹き上がるのは同時だった。
「!」
《電話の時以来だな桐生戦兎……》
「ナイトローグ……! それに、スマッシュやガーディアンまで!」
煙が晴れると、そこにはナイトローグだけでなく二体のスマッシュと無数のガーディアンが集まっていた。
「随分と賑やかになってきたな」
《お前は……?》
「俺は世界の破壊者だ」
ナイトローグは軽口を叩く士に視線を向けるも、思い当たる節が無いのか首を軽く傾げる。どうやらあちらの様子を見るに、士という存在はやはり想定外のようだ。
《? ……まあいい。この世界で新しい仲間を見つけたようだな。かつての仲間が知ればどう思うだろうな?》
「……」
士の存在は軽く受け流して、ナイトローグはエボルト同様戦兎を精神的に追い詰めるように仲間の話題を切り出した。
《だが、どうやらその仲間の死は新しい仲間を得て割り切ったようだな……どちらにせよ、この世界でお前は終わりだが》
「いや違うな。割り切ったんじゃない、先に進んでるんだ」
しかしナイトローグの言葉を遮ぎって、士がそれを否定する。
「かつて俺というライダーに物語は無かった。今もこうして旅を続けて、そして俺自身の物語の結末を……何時か来る旅の終わりを探しているのかもしれない。その先に何が起こるか、どうなるかは俺自身にもわからない。だが、一つだけ確かなことがある。……人は皆、誰もが旅の途中なんだ。俺も、そしてコイツの
士のその言葉を受けてなお、ナイトローグは彼の発言と今の戦兎の在り方を否定する。
《いいや、この世界で野垂れ死ねばそれも無意味だ。たった一人で、この世界の闇と戦えると思うな》
「それはどうかな。例えこの世界に居るライダーがコイツ一人だとしても、コイツはもう一人なんかじゃない」
そして、と。そう付け足しながら、士は己のマゼンタのディケイドライバーを腰に装着する。
「決して諦めず、誰かの為に這い上がって立ち上がり続ける。そんな奴を見れば、誰だって手を差し伸べたくなるもんだ。そこに世界なんて物は関係ない。そして共に支え合い助け合い、生まれる絆を繋いでいく……それが仲間、ベストマッチだ」
士の言葉を前に口を噤んでいたのか黙っていたナイトローグだったが、彼がそう言い終えるとそれを鼻で笑って一蹴する。
《ふん、そんなものは都合のいい妄弁だ。己の内に耳を傾けろ、聴こえるはずだろう? 仲間の恨みが、世界の憎しみが!》
再び戦兎へと向けられる言葉という刃を放つナイトローグ。
しかし彼が一蹴したその言葉は、戦兎を再び奮起させるには十分すぎる言葉だった。
「……ああ、ついさっきまでな。けど気付いたんだ」
《なに?》
異なる世界のライダーとの対話の末、自身の仲間に対しての後ろめたさに区切りをつける。
戦兎の脳裏には、エボルトとの戦いの中で万丈から掛けられた言葉と、自身の思いがよぎっていた。
『一度しか言わねえぞ……! 誰が何と言おうと、お前は俺たちのヒーローだ! ……だから生きてくれ!』
「…………あの顔を見たくなっちまったって言ったのに、このままじゃ一生見られねぇじゃねぇか。ってな」
安易な考えで逃げるように感じてしまっていたその言葉と、もう一度向き合おうと。
仲間たちが待っているあの世界へ。恨み言を募らせてしまっていても、ここでのたれ死んではその贖罪すら始まらない。
「みんなは、俺を信じて一緒に歩いてきてくれた。信じて送り出してくれたんだ。正義のヒーローが、そんな仲間やみんなの期待に背く訳にはいかねぇだろ?」
それが都合のいい言葉でも、今は闘う。
全く関係ないはずのこの世界を巻き込んでしまった罪を背負いながらも。
そしてその先に、誰からも記憶されなかろうと。信じて待ってくれている仲間たちがいる限り。
新たな覚悟を決めて今、正義のヒーローは世界を守るための力をその身に装着する。
「みんなが創ってくれたんだ、今の俺を! みんなの願いは、想いは……今だってこの胸に生きている!」
両手に持ったフルボトルを振ると、周囲に数式が浮かび始める。
そんな戦兎の様子を見て、ナイトローグは苛立ちを感じさせるように声を荒げる。
《なんなんだ、何を言っている? 桐生戦兎に何を吹き込んだ、お前は一体何者だ……!?》
ナイトローグの動揺を見せる声に応えるかのように、士は手に取ったカードを見せつけて、そして名乗る。
「通りすがりの仮面ライダーだ、覚えておけ!」
「さぁ、実験を始めようか!」
士はドライバーにカードを裏返し、戦兎はビルドドライバーにボトルを挿してハンドルを勢いよく回す。
【 ラビット! 】 【 タンク! 】
R/T
【 ベストマッチ! 】
自身の周囲に展開された小型精製ファクトリー スナップライドビルダーによって、戦兎の前後に赤と青の装甲が生成される。
装甲の生成を終えてスナップライドビルダーが消えると、ドライバーから音声が流れ出る。
【 Are you ready ? 】
そして両者から出たのは、幾多もの世界で口にされた、ライダーへと己を変える言葉。
「「変身!」」
‖ KAMEN RIDE ‖
‖ DECADE ‖
【 鋼のムーンサルト! ラビットタンク! 】
【 イェーイ! 】
半透明のライダーの姿が重なり、バーコードを模したマゼンタの戦士が現れる。
赤と青の装甲が装着され、兎と戦車を模した赤と青の戦士が現れる。
並び立つ二人の仮面ライダー、
手を軽くはたきながら、ディケイドはビルドに合図する。
「さて、今夜は俺とお前でダブルライダーと行くか」
「ああ……行くぞナイトローグ!」
ビルドの声とともに、二人のライダーはドリルクラッシャーとライドブッカーを手に取り駆け出した。
《ならば、二人まとめてここで散れ!》
迎え撃つかのように、ナイトローグはトランスチームガンから銃撃を開始。それを合図に待機していたガーディアンとスマッシュが一斉に走り出す。
俄然に迫り来る圧倒的な物量と攻撃を、二人は剣で斬り捨てながら突き進む。
「ハァッ!」
殴りかかるスマッシュの拳を裏拳で、銃剣武器セーフガードライフルの刃や銃弾は回避かドリルクラッシャーで弾き飛ばす。
詰め寄るガーディアンたちをすり抜けて、ナイトローグへの一刀目はビルドが務める。
目の前に辿り着いたナイトローグへ、ドリルクラッシャーで一刀両断と言わんばかりに強く振る。
相対するナイトローグも横から来る斬撃をステップで下がりながら避け、素早い身のこなしでサイドから迫る追撃をトランスチームガンの銃身で器用に弾いて防いでみせる。
追撃を試みるビルドの背後から、ビルドの世界で何度か交戦したアイススマッシュに似たスマッシュが襲いかかる。棘を失って丸みを帯びて、色が赤く所々に白の水玉が描かれたその姿はまさにタコそのものである。
『……!』
「チッ、スマッシュか!」
身体から垂れ下がった八本の触手を伸ばしてビルドを拘束しようと試みるも、その攻撃はドリルクラッシャーによって次々と撃ち落とされる。
「デァッ!」
《クッ……!》
ビルドの連撃を防いで隙を見せていたナイトローグに、何機かのガーディアンを始末して機能停止に追い込んだディケイドの刃が突き立てられる。
ダメージを受けた装甲から火花を散らして、ナイトローグが地面へと投げ出される。
そのナイトローグを守るようにガーディアンが盾となり立ちはだかり、セーフガードライフルから銃弾を一斉に発砲する。
その全てを防ぎきるディケイドだったが、ガーディアンたちの隙間から鮮烈な光が突き刺さる。
「!」
『……!』
目眩しから瞬時に回復してガーディアンの向こう側へ視線を移すと二体のうちのもう一方、黄色くなったバーンスマッシュに電球を取り付けたようなスマッシュがナイトローグと並び立ち、両肩を発光させて目眩しを行なっていた。
「ならこれだ」
そう言いながら、ディケイドはカードを取り出すとドライバーに装填し、片手でドライバーの両サイドを押し込む。
「変身」
‖
‖
‖【 タ・ト・バ ! タトバ タ・ト・バ ! 】‖
なにかのメロディーを奏でながら、ディケイドの目の前に鷹、虎、バッタを描いたサークルが現れ、それが胸に吸い寄せられるとディケイドの姿を新たな姿に変えてみせた。
頭部には赤い鷹を模した装甲、胴体には黄色い虎を模した装甲と爪が、そして両足には緑のバッタを模した装甲が付いている。
「なんだ今の歌……たとば?」
迫るタコの触手を斬り飛ばし、飛んでくる墨を回避しながら、振り返ったビルドはディケイドのドライバーから流れ出る歌に思わずツッコミを入れていた。
「歌は気にするな。向けるならスマッシュに気を向けておけ」
「それもそうか……うおっと!」
的確な言葉に納得しつつ、ビルドは拳を向けて殴りかかってきたスマッシュに慌てて振り返って攻撃を受け流す。
ビルドとスマッシュ、ガーディアンの攻防を尻目に、ディケイドオーズは足に力を溜め始めて一気にジャンプする。
放たれる銃弾やスマッシュの頭部から新たに放たれた破壊力を帯びたレーザーのような光を後にして、ディケイドオーズは上空を飛ぶ。
まるで空を照らすサーチライトのように発せられる光さえも置き去りにしたディケイドオーズは、攻撃が止むと重力に従ってガーディアンの壁に着地、その場にいたガーディアンを踏み壊しながら巻き込んでいく。
巻き込まれずにこちらへライフルの銃口を向けるガーディアンに対して、腕についていたトラクローを両手に装着しライフルごと次々に切り裂く。
その視界の先、ガーディアンの先に既にナイトローグの姿はなく、目の前にいるのはスマッシュだけだった。
『………!!』
「光を使ってくるならこいつだ」
あらかたガーディアンを切り裂いて破壊したディケイドは、ライドブッカーからカードを取り出すとそれを軽く放ってドライバーに装填する。
‖
‖
‖【 ラタラター ラトラーター! 】‖
再び流れる奇妙な曲をバックに、ディケイドオーズの前方に再びサークルが現れて吸収され、その姿を黄色一色に染め上げる。
頭部は青い瞳に雄々しいたてがみのライオン、胴体は引き続き虎、足はチーターを模した装甲が装着されている。
『!!』
姿を変えたディケイドオーズは、何をするでもなく手をはたくだけ。その様子に痺れを切らしたのか、スマッシュは両肩を発光させて目潰しを行った。
「効かないな」
しかし、その光は青い瞳のライオンアイによって調整されることでディケイドオーズの動きを封じることができなかった。それだけでなく、たてがみの形状をした頭部のライオネルフラッシャーによって一身に浴びた光が乱反射。
放たれた光を受け流しながら、ディケイドオーズはスマッシュや周囲に駆け寄ってきたガーディアンたちの真ん中で、全身を強く発光させながら放つ熱光線 ライオディアスを放った
『!?』
強烈な熱波をモロに食らって逆に動きを鈍くされたスマッシュは、しばらく呻くと両肩の光を使うのをやめて頭部の破壊力のある光の照射に専念する。
ディケイド目掛けて放たれたレーザーのような光は、しかしチーターレッグによって走り出した瞬間から猛スピードで駆け回るディケイドオーズを捉えきれないでいた。
放たれる光を躱しながら、ディケイドオーズは周囲に殺到していたガーディアン目掛けて軽く跳躍。その両足の圧倒的な脚力を破壊力として生かし、地面に着地することなくガーディアンの頭部を次々と踏み砕いていく。
頭部を破壊されて機能不全に陥って停止したガーディアンの山の上でようやく着地したディケイドオーズは、間髪入れずにスマッシュへと走る。
なんとか対応しようとしたスマッシュの光を回避し、ほんの一瞬で目の前まで到達する。
「ほらよ」
『?』
ディケイドオーズはスマッシュの目の前で突如急ブレーキ。そのまま左手をスマッシュの頭部にポンと当てる。
何事か理解できずにいるスマッシュのアクションを待たずして、ディケイドオーズは片手に全体重をかけて乗り越えるような体勢で宙吊りになると、引いていた右足でスマッシュの頭部を蹴り飛ばした。
タコ型のスマッシュを相手取っていたビルドは、ドリルクラッシャーでスマッシュの本体を斬ろうとするものの、当たる直前に粘液を放出したスマッシュの胴体によって当たらずにいた。
「あーもうヌルヌルしやがって、そんなんだからエボルトにも嫌われるんだろ多分! いい加減にしないとたこ焼きにするよホント」
【 消防車! 】
ガンモードに切り替えたドリルクラッシャーのスロットに消防車フルボトルを装填すると、スマッシュへと向けて引き金を引く。
【 Ready Go ! 】
【 ボルテック・ブレイク! 】
ドリルクラッシャーの銃口から、巨大な火の玉がスマッシュへと発射された。
【 アイススチーム! 】
しかし、その一撃は横から割り込んできたナイトローグのスチームブレードによって阻まれる。
刃から発せられた冷気とドリルクラッシャーから放たれた炎の塊がぶつかり合って水蒸気が発生する。
「また水蒸気かよ。一日に何度も、もういいっての!」
そう叫ぶビルドに水蒸気を越えてスマッシュとナイトローグが迫る。
アイススチームで冷気を帯びたスチームブレードを振るうナイトローグに、胴体から伸びた触手を武器に攻撃するスマッシュ。
二対一のこの状況で、さてどうするかと思案したビルドが一計を考えついた。
「あ、そうだ」
そう呟いた直後、ビルドの右腕にタコの触手が絡みつき、ドリルクラッシャーを取り落としてしまった。
「し、しまった!」
思わずスマッシュへと視線を向けていたビルドだったが、横から走ってきたナイトローグがスチームブレードを振るう。
「うおっ、危なっ!」
右腕を拘束されたまま、その場で身体を使ってなんとか回避するビルド。何度か斬り付けられた斬撃を回避すると、一か八かとばかりに右腕を無理矢理強く動かす。
「このっ!」
《くっ……》
冷気を帯びたスチームブレードはビルドではなく、その右腕に絡み付いていたスマッシュの触手に命中。その手を伝って本体も凍り始めていく。
『……!』
動きを封じることまでは叶わなかったが、スマッシュの表面に発生していた粘液は完全に凍ってしまい、使い物にならなくなっていた。
「よし作戦成功。題して、『魚介類は鮮度を保つ為に凍らせてしまえ作戦』!」
「そのまんまだろうが。と言うか鮮度関係あるのか?」
「まぁまぁ、そう細かいこと言いなさんなって」
気付けば向こうでスマッシュとガーディアンと戦っていたディケイドオーズが、ドリルクラッシャーを拾い上げたビルドのすぐ横に立っていた。向こうには既にボロボロのスマッシュが控えていた。
ビルドは黄色と薄緑のフルボトルを、ディケイドは新たなカードを取り出して、双方同時にドライバーに装填する。
【 ライオン! 】 【 掃除機! 】
R/S
【 ベストマッチ! 】
ハンドルを回したビルドの前後に黄色と薄緑の装甲が生成され、ビルドの掛け声とともに装甲を上から塗り替える。
【 Are you ready ? 】
「ビルドアップ!」
【 たてがみサイクロン! ライオンクリーナー! 】
【 イェーイ! 】
‖
‖
‖【 シャシャシャウタ シャシャッシャウタ! 】‖
ビルドはライオンと掃除機を模した装甲のベストマッチフォーム ライオンクリーナーに、ディケイドオーズは青いシャチとウナギ、水色のタコの装甲のシャウタコンボにそれぞれ姿を変える。
しかしそれぞれが構える中で、ビルドは姿を変えたディケイドオーズに若干不服なコメントをしていた。
「お前、こっちがわざわざそっちのライオンちゃんに合わせてやったってのに、それはちょっと連れないんじゃねぇの?」
「知るか。それより、ここでスマッシュを倒しきるぞ」
「はいはい、わかってますよっと」
軽口を叩き合いながら、万丈程ではないがまあ悪くない感覚だと心中思いながら、ビルドはタコ型のスマッシュから飛来してくる墨を左手の掃除機を突き出して吸引する。
「はい、お返ししまーす」
胸についたボタンを押してBLDトラッシュコンバーターを起動、胸元のボタンを押すと、掃除機の先端から吸引した墨が電球型スマッシュへ勢いよく発射され、その全身を墨でベトベトに黒く塗りつぶした。
『!』
自身の最大にして唯一の武器である電球を黒く塗られて潰されて、スマッシュは動揺するかのように体を震わせる。
一方、タコ型のスマッシュは再び八本の触手を放つも、それを迎え撃つようにして放たれたディケイドオーズのウナギの胴体を模した二本の電気ウナギウィップに纏めて絡め取られる。
「ふん!」
ディケイドオーズが力を込めるとウィップから電気が発生し、触手を通してタコ型のスマッシュに電撃を浴びせて動きを封じる。
「これで!」
ビルドはハンドルを回し、ディケイドオーズは新たに取り出したカードを切る。
【 Ready Go ! 】
【 ボルテック・フィニッシュ! 】
‖
‖
武器を封じられて退避しようとした電球型スマッシュは、ビルドが掃除機から発生させた吸引力によって引き摺り込まれ、そのまま力なくビルドの前まで強制的に吸い寄せられて移動していく。
【 イエーイ! 】
目の前まで吸い寄せられたスマッシュのがら空きの背中に、ビルドの右手のガントレットから放たれたライオン型エネルギーが襲いかかり、そのエネルギーに呑まれたスマッシュは緑の爆炎をあげる。
ディケイドオーズは両手に持っていたウナギウィップを伸ばしてタコ型スマッシュの身体に巻き付ける。
再度の電撃を放ってスマッシュを完全に無防備にしたディケイドオーズは、ウィップを振ってスマッシュを上空へと放ると両足にタコの八本足を纏ってスマッシュを追うように跳躍、ドリルのような形状となったタコ足でスマッシュの胴体にキックを叩き込んだ。
地上と空の二ヶ所で発生する緑の爆炎が止むとその中から発生した要素が、それぞれ向けられていたビルドのエンプティボトルに収まりフルボトルに変化した。
「さて……」
「今度こそお前の番だ、ナイトローグ」
目の前で二体のスマッシュが撃破されたにもかかわらず、ナイトローグは参戦どころか観戦していたかのように突っ立っていた。
相対する三人の周囲には損壊を免れていたガーディアンたちが円を描いて取り囲んでいたが、ナイトローグが指示を出しているのか、ライフルの銃口を向けるのみで発砲までは行われなかった。
戦闘データでも収集しているのかと訝しむビルドの前で、ナイトローグはゴーグルの部分を抑えて呟く。
《ハザードレベルが上昇し、ある程度回復したようだな。そして、そこのライダーは更に強いと来た。ならば、今のお前たちにはこれを使って相手をしよう》
ナイトローグの目の前で小さな煙が発生し、その中からトランスチームガンとよく似た紫の銃が姿を見せた。
「! ネビュラスチームガン!」
カイザーシリーズやヘルブロスの変身に使われ、更にエボルトやローグ、マッドローグの武装としても使われてたネビュラスチームガン。
それは最上魁聖の創り上げた、トランスチームガンのオリジナルにあたる装備だ。
ナイトローグは元から所持していたトランスチームガンと新たに取り出したネビュラスチームガンを両手に持ち、二丁射撃を行う。
同じ場所に立っていたビルドとディケイドオーズは互いに突き飛ばしあって距離を取り、ナイトローグの側面に回り込むように走り出す。そしてそれを追うように、ナイトローグも両手を広げて射撃を続ける。
背後に迫る銃弾に物怖じせず、ビルドはナイトローグの前を、ディケイドオーズは後を挟むような位置まで到達する。
「おおおっ!」
「ふんっ!」
そして、再び両者はナイトローグへと急接近。挟まれる形となったナイトローグは、左の方へ回避をしながらトランスチームガンにバットフルボトルを装填する。
【 フルボトル! 】
【 スチームブレイク! 】
放たれた銃撃は、命を狙う貪欲な蝙蝠の大群のように素早くビルドの元へと突っ込んでいく。
しかしビルドは命中する直前にライオンの力強い脚力で地面を蹴って銃弾を回避。行き場を失った蝙蝠たちは背後のガーディアンの壁に命中し、爆音とともに何機かのガーディアンが爆ぜる。
放たれたビルドの右手の拳のラッシュを回避しながら、ナイトローグは背後まで迫っていたディケイドオーズのウナギウィップの攻撃を、取り出したスチームブレードを使って弾いて防ぐ。
見ればナイトローグはディケイドオーズの攻撃を掻い潜りながらトランスチームガンとスチームブレードを合体させてライフルモードへと変形させていた。右手に剣の様に持ったライフルモードのスチームブレードを、左手にネビュラスチームガンを装備し、近遠双方に対応できる様にしていた。
ウィップによる中距離間の攻撃を弾きながら進んでいったナイトローグは剣のように装備したライフルモードをディケイドオーズの懐へと突き立てる。
「チッ」
装甲を突き刺され火花を散らしながらディケイドオーズはすぐさまウィップを放り、バックステップで距離をとった。
距離をとったディケイドオーズのすぐ横に、駆け出していたビルドが動きを止める。
「こっちもさっさと終わらせてやるか」
言うが早いか、ディケイドオーズは新たに取り出したカードを切って装填する。
同じく、ビルドも素早く動ける様に姿を変えようとしていた。
「変身」
‖
‖
【 Are you ready ? 】
「ビルドアップ!」
笛の様な音色が鳴り響くと、ディケイドオーズの身体に波紋が広がり、その姿を鎖を巻いた蝙蝠の様な鎧 ディケイドキバに変えてみせる。
ビルドもまた、紫の忍者ハーフボディをライオンハーフボディの上から塗り替え、掃除機とのトライアルフォームへとビルドアップを果たした。
「ハァッ!」
今度はディケイドキバは先陣を切る。素早い身のこなしでナイトローグのネビュラスチームガンの銃撃を縦横無尽に回避。
ナイトローグの眼前へたどり着く直前、そのまま突っ込まずに相手の背後のガーディアンの群れと跳躍、そのままガーディアンを蹴ってジャンプし、斜め下のナイトローグ目掛けて急降下する。
《……!》
目の前に迫っていたディケイドキバの姿を見失ったナイトローグは、自身の背後から迫る影でディケイドキバの存在に気付くと、剣の様に持っていたライフルでパンチを防ぐ。
しかしパンチは一撃で終わらない。一発目を防がれたディケイドキバは、そのまま地面に着地すると同時に一気にナイトローグに詰め寄って左右の素早い連続パンチを繰り出す。
二人同時の範囲の広い近接戦に対応できる様に、ライフルを剣として装備していたが、それが仇となった。
最初の数発こそなんとか捌けていたものの、懐まで入り込んだ相手の超至近距離からの連続攻撃に対応し切るには、ライフルモードのままでは取り回しが悪く、先程と立場が逆転することとなった。
一度距離を離すべきだと判断して、ナイトローグはバックステップと同時にライフルの銃口をディケイドキバへと向けて構える。
しかしその抵抗も、引き金に指を掛ける直前に起こった強い吸引力によって阻止される。
後退したつもりが、ジリジリと引き寄せられることで逆に前進し、ディケイドキバのパンチを腹部にモロに喰らうこととなった。
《クッ……!》
前のめりに倒れ込みそうになり、しかしそれも次の吸引力に引き寄せられて叶わない。今度はビルドの方へと引き込まれて行く。
背後に翼を展開してなんとか逃れようとするも、吸引したまま近付いたビルドの四コマ忍法刀による斬撃を防ぐのに手一杯になってしまう。上空に退避するには、目の前のビルドの斬撃を防ぎつつ吸引を辞めさせるように攻撃するしかない。
空いた左手のネビュラスチームガンで至近距離の射撃を行ってビルドに回避を選択させると、姿勢を崩させたことで吸引が止まる。
そのまま上空へと飛翔するナイトローグだったが、地上からドライバーの音声が流れていた。
‖
‖
周囲が赤黒くなったかと思えば、ディケイドキバはナイトローグを上回る速度で上空へと大ジャンプ、上下逆さまのまま月を背後にナイトローグを見下ろしていた。
「ダァッ!」
姿勢をその場で戻したかと思えば、自身の下を飛んでいたナイトローグへ急降下キックを叩き込む。
《ッ!?》
腹部に差し込まれた右脚を両手で掴んで防ぐナイトローグだったが、そのまま到達した大地と挟まれる形で防ぎきれずにモロに喰らうこととなった。
地上のガーディアンの壁とともに地面に叩きつけられたナイトローグの周囲には、なにか模様のようなクレーターが発生していた。
一旦後方へジャンプして着地したディケイドキバの横に、遅れてビルドが駆けつける。
「まだ終わってないみたいだな」
「むしろ、ここからが本番のようだぞ……見ろ」
顎を使って指し示すディケイドキバに続くように、ビルドは倒れていたナイトローグに注視する。
ナイトローグは先ほどまで喰らっていたダメージを感じさせず、しかし無理矢理かのように起き上がると、ネビュラスチームガンを片手に何かのボトルを取り出した。
《これは、まだあまり使いたくはなかったが……!》
【 ギアエンジン! 】
渋るように言ってから、ナイトローグは金色をメインに銀色の歯車が生えているボトルを装填してからすぐに取り外すと、同じく薄緑の歯車が生えているボトルをネビュラスチームガンのスロットに装填し直した。
【 ギアリモコン! 】
【 ファンキーマッチ! 】
「! アレはまさか……!」
ビルドの想像した通り、ナイトローグはその姿を、ビルドと同じく二つの力を一つにした兵器へと変えてみせる。
《潤動》
【 フィーバー! パーフェクト! 】
煙と大量の火花、エネルギーで出来た歯車に包まれて、蝙蝠の怪人から鋼鉄の歯車の戦士が姿を現した。
「ヘルブロス……!」
かつてビルドの世界で難波重工の兵士として戦っていた難波チルドレン 鷲尾兄弟が変身していたエンジンブロスとリモコンブロス。
その二つの力を収束させ二倍以上の出力に上げた強化形態ヘルブロス。
その出力はナイトローグを遥かに上回る。只でさえ今のビルドに追従できる戦闘センスを持った相手が更にパワーアップを果たした、その事実に緊張が走る。
ヘルブロスは両腕に取り付けられた大型攻撃装置ギアトルクガントレットから白と藍色のエネルギーカッターを射出した。
迫り来る二発のカッターは、先ほどよりも遥かに強力だろう。
しかし、今のビルドは一人ではない。
この場にいる新たな仲間、この場にいないビルド世界の仲間たち。その全てとの繋がりを胸に、ビルドもディケイドキバも姿を新たに変えてみせる。
【 電車! 】
【 Are you ready ? 】
「ビルドアップ!」
「変身」
‖
‖
‖【 ドライブ タイプスピード 】‖
こちらへと射出されたエネルギーカッターは、出現したハーフボディと何処からか飛んできたタイヤに弾かれて、火花を散らして消滅する。
ビルドの薄緑の掃除機ハーフボディが、翠の電車ハーフボディに塗り替えられて、トライアルフォームへとビルドアップを果たす。
ディケイドは赤い車の姿をメインに、タイヤをたすき掛けしたかのような姿 ディケイドドライブへとカメンライドする。
【 バット! 】
ヘルブロスは再びトランスチームガンにバットロストボトルを装填すると、二丁の銃口をそれぞれのライダーに向けて引き金を引いた。
【 ファンキーショット! 】
【 スチームブレイク! 】
ネビュラスチームガンからは四つの歯車型のエネルギーカッターが、トランスチームガンからはエネルギーで出来た蝙蝠の大群が発射された。
更に、ここまでライフルを構えていただけだったガーディアンたちが起動し、二人のライダーへと殺到する。
双方にやってくる攻撃を前に、二人のライダーは一旦背を合わせると、それぞれの方法で対処するため正面へと走り出す。
【 ライオン! 】
【 Ready Go ! 】
【 ボルテック・ブレイク! 】
ディケイドドライブが走り出すと同時に腕についたシフトレバーを数回倒すと、胸部にたすき掛けされたタイヤが高速回転を始める。
するとヘルブロス目掛けて一気に加速しつつ、エネルギーで構成された蝙蝠の大群を左右の素早い動きで翻弄しながら回避。周囲に群がり始めたガーディアンを取り出したハンドルの着いた剣——ハンドル剣で次々と切り裂いていく。
足元に発生した線路に沿って加速するビルドはドリルクラッシャーに装填したライオンフルボトルの能力で黄色いライオン型のオーラを纏うと、馬力を上げながら更に直進して突っ込んでいく。ライオンのオーラに押され、近づいたガーディアンたちが逆に凄い勢いで弾き飛ばされ爆散する。
目の前に迫るエネルギーカッターの一撃に対し、直進したまま最低限の動きでそれをギリギリ回避すると、背後で起こるガーディアンと流れ弾となって外れたエネルギーカッターの爆発を置き去りにする。
遠距離攻撃が外れ、周囲に展開していた残りのガーディアンたちが全滅したことを確認したヘルブロスは、胸部の特殊強化装置ツインネビュラジェネレーターを起動。迫り来る二人のライダーに対抗して一気に加速する。
先ず最初に接敵したのはヘルブロスとディケイドドライブ。
加速し合った両者は呼び出した剣と発生させたエネルギーカッターを相手に向ける。ヘルブロスの方が僅かに早く攻撃が当たろうとした。
その寸前、ディケイドドライブは攻撃をかいくぐるようにスライディングを行いつつ、ハンドル剣のハンドル部分を回して斬撃を操作、低姿勢のまま猛スピードで駆ける自身を捉えられず攻撃を外したヘルブロスのガラ空きの胴体に直撃させる。
【 Ready Go ! 】
【 ボルテック・アタック! 】
怯んだヘルブロスの隙を逃さず、周囲を走り回っていた電車と黄色のオーラをまとったビルドが、カーブしながらさらに加速しヘルブロス目掛けて突撃する。
反撃や回避より早く突撃してくるドリルを両手で押さえ込もうと試みるヘルブロスだったが、相乗した二つの必殺技の威力と無理矢理の防御によって勢いに押され、ドリルによる刺突によって弾き出された。
地面につけた足から大量の砂煙を上げながら態勢を立て直したヘルブロスの前で、ディケイドドライブはまた新たなカードを切った。
「確かそいつはバイカイザーとやらの改良型らしいな。ならこいつの力を試してみるか」
そういうと、ディケイドドライブはカードを裏返してドライバーへと装填し両側を押し込む。
「変身」
‖
‖
ディケイドドライブの周囲にゲームのキャラクターのようなアイコンが展開され、そのうちの一つがディケイドドライブの目の前で停止すると吸収されて、その姿をピンクと緑の蛍光塗料のようなカラーリングのライダーへと変えてみせた。
‖【 マイティジャンプ! マイティキック! マイティマイティアクションX! 】‖
そのディケイドの姿に、ビルドは見覚えがあった。それはかつて最上魁聖と戦った際に共に戦ったライダーと全く同じ姿だったからだ。
「その姿は、エグゼイド!?」
「ああ、奴の姿だ」
そう言いながら、ディケイドエグゼイドはソードモードにしたライドブッカーの刀身を撫でるとヘルブロスへと突撃する。
ライドブッカーでヘルブロスと斬り合うディケイドエグゼイドを見ながら、ビルドは対抗心を燃やしたのか、思いついたかのように二本のボトルを取り出した。
「だったら俺も!」
ビルドは取り出した白とピンクのボトルを取り出して蓋を回して振ると、ビルドドライバーへ装填する。
【 ドクター! 】 【 ゲーム! 】
D/G
【 ベストマッチ! 】
ハンドルをひとしきり回すと、周囲に展開されたスナップライドビルダーに白とピンクの装甲が前後に生成される。
【 Are you ready ? 】
「ビルドアップ!」
【 エグゼイド! 】
ビルドを挟み込んだ白のピンクの装甲は、一瞬放たれた光に包まれると、その姿をディケイドエグゼイドとドライバー以外全く同じ姿へと変化させた。
【 マイティジャンプ! マイティキック! マイティマイティアクションX! 】
エグゼイドフォームにビルドアップしたビルドは、先にヘルブロスと戦っていたディケイドエグゼイドに追いつくと、パンチを放とうとしたディケイドエグゼイドと全く同じタイミングでヘルブロスを殴り飛ばした。
HIT! HIT!
「お前、その姿は……」
「俺もエグゼイドと同じ姿になれるんだよ」
ビルドは何処からともなく取り出したガシャコンブレイカーとドリルクラッシャーを両手に構えると、ヘルブロスと相対する。
ヘルブロスが放ったエネルギーカッターを両手の武器で振り払いながら胴体へと攻撃を直撃させる。
HIT! CRITICAL!
そうして戦い始めたビルドの姿を見てなにかを考えていたかのように動きを止めていたディケイドエグゼイドは、首を軽く振ると思考を打ち切る。
「今はいいか。それにエグゼイドが二人なら、コイツが御誂え向きだな」
そう言ってディケイドエグゼイドは一枚のカードを取り出すと、軽く振ってドライバーに装填する。
‖
‖
‖【 俺がお前で お前が俺で マイティマイティブラザーズ! ダブルエックス! 】‖
カードを装填したディケイドエグゼイドと、今まさにヘルブロスに再度の攻撃を試みていたビルドが橙と緑の光の波紋を放ちながら姿を変えた。
「うおっ、なんだ!?」
光が収まると、ディケイドエグゼイドの姿は橙色をメインに、右肩に巨大な顔の半分が、
ビルドエグゼイドフォームの姿はライトグリーンをメインに、左肩に巨大な顔の半分が装着されていた。
「え、なんで俺まで姿変わってるの!? どういうこと!?」
「俺たち二人がエグゼイドに変身していることと、このフォームの特異性、そして俺の力を組み合わせれば、この程度は可能だ」
《姿を変えたところで!》
並び立つ二人のマイティに、ヘルブロスは容赦なくエネルギーカッターを放つが、それもディケイドエグゼイドが取り出した巨大なボタンの付いた剣 ガシャコンキースラッシャーに一刀両断され、二人の背後で爆発する。
両者共にかなりの跳躍力でジャンプしてヘルブロスの頭上を飛び越える。
着地するとディケイドエグゼイドはキースラッシャーを、ビルドはガシャコンブレイカーとドリルクラッシャーの二本を構えてヘルブロスに突撃する。
《直線で来るとは単純だな》
ツインネビュラジェネレーターを起動したヘルブロスは高速移動するとまずやって来たディケイドエグゼイドを森の方へと蹴り飛ばし、次に向かってきたビルドを殴り飛ばす。
「クソッ!」
二本の武器を地面に突き刺して勢いを殺して態勢を立て直そうと試みるビルド。後退りしながらもなんとか持ち直し、いざ反撃と思ったビルドの太ももの裏に何か硬いものがぶつかった。
「痛った! ……て、なんだこれ?」
見ればそれは、この場には似つかわしくないにも程があるゲームなどで見そうな茶色のブロックだった。
「そういえば前にこれが出てきたな……ん?」
IS学園敷地内にまでもつれ込んだフライングスマッシュとの激闘の折にこのブロックを利用したなー。と考えていたビルドの前で、ブロックは砕け散り、その中から何やら黄色い丸い物が出現した。
丸い物体には、残像を残して走る人影の描かれており、ヘルブロスに気をつけながら慎重に触ったビルドに反応したのか、その場で勢いよく回転したかと思えばビルドの体内に入り込む。
それと同時に、ディケイドエグゼイドも自身の近くにあった全く同じ物を掴むと、同じタイミングで体内にそれが吸収されていった。
【 高速化! 】
‖【 高速化! 】‖
「おおっ!? なんかこう……動きが早くなってるな!」
丸い物体——エナジーアイテムが体内に入り込んでから、両者のスピードは一気に上昇したようで、軽く手を振ったり跳ねているビルドの動きは倍速にしたかのように高速で動いていた。
速度に慣れたビルドと既に構えていたディケイドエグゼイド、そしてヘルブロスの間で、先程と同じように高速戦闘が繰り広げられる。
森の中に入り、木々を飛んで駆け巡るディケイドエグゼイドとそれを追うヘルブロス。
発射された二発のエネルギーカッターが高速で駆けるディケイドエグゼイドを追いすがるように追尾し、ヘルブロスとの近接戦に持ち込もうとすれば自身の背後から斬りかかるという状況へと持ち込んで行く。
だが、ヘルブロスを追い抜く形で走ってきたビルドがドリルクラッシャーをガンモードに変形、エネルギーカッターへとスピニングビュレットを発射すると、エネルギーカッターは標的に当たるよりも先に爆発を起こした。
正面で起こる二箇所の爆発、その爆炎の中から折り返してきたディケイドエグゼイドが飛び出した。
「でやぁ!」
《グッ……!》
縦にまっすぐ振り下ろそうとしているディケイドエグゼイドのキースラッシャーを前に、ヘルブロスはすぐさまエネルギーカッターを発生させると、それを手に掴みメリケンサックのようにして構える。
直後、脳天目掛けて振り下ろされたキースラッシャーを、ヘルブロスは白刃取りのような形で掴み取る。
両手に掴んでいたエネルギーカッターとキースラッシャーの刀身がガリガリと音を立てて削り合う。
空中で僅かな間行われた拮抗は、ディケイドエグゼイドが片手でキースラッシャーを掴み、もう片方の手を動かしたことにより動き出した。
‖
‖
‖【 キメワザ! 】‖
ドライバーから流れる音声と共に、キースラッシャーの刃から淡い橙と緑の光が漏れ出す。
‖【 マイティ ダブル クリティカルフィニッシュ! 】‖
「ハァッ!」
キースラッシャーの刃から光で出来た刀身が伸び、抑え込んでいたエネルギーカッターを押し退けてはじき返し、無防備になったヘルブロスの顔面へと迫る。
《……!》
自身へと伸びる光の刃を前に、ヘルブロスはとっさの判断で上半身を晒してダメージを減らそうと試みる。
HIT!
直撃こそ免れたが、ヘルブロスの肩の装甲をかすめるように振られた刃によって、ヘルブロスが火花を散らして地面に墜落する。
着地したヘルブロスは取り出したネビュラスチームガンの銃口を、今まさに地面へと着地しようとしているディケイドエグゼイドに向ける。
しかし、横からなにかの気配を感じたヘルブロスはネビュラスチームガンの銃口をその方向へと向ける。
すると視線の先で、光の刃を発生させたガシャコンキースラッシャーを持ってビルド エグゼイドフォームが突撃してきていた。
《何!?》
一本だけしかなかったはずのキースラッシャーを持ったビルドを迎撃するために引き金を引こうとするも、それよりも早く追撃がヘルブロスに命中する。
HIT!
「浅いか……!」
命中を確信した直前、ビルドの手を弾いたヘルブロスは直撃を回避し、最小限の威力に抑えていた。だが攻撃そのものは命中したためか、ヘルブロスは火花を散らして地面を転がった。
ディケイドエグゼイドの切ったカードによる効果で出現した二本目のキースラッシャーは、必殺技を放って役目を終えたからか光を放って消滅した。
全身から火花を散らし膝をつきながらも立ち上がるヘルブロスに対し、高速化の効果が終わりスピードを落としながら着地したディケイドエグゼイドは、キースラッシャーを地面へ放り投げると腰に装着されていたライドブッカーを開いて一枚のカードを取り出した。
最初はぼんやりとした絵柄だったカードは、やがて光とともに輪郭のはっきりした物に書き換えられた。
そこに描かれていたのは、赤と青の姿をしたライダーの姿と、『
「さて、コイツでトドメだ……ん?」
しかしディケイドエグゼイドがそのカードを切ろうとする直前、カードが突如として赤と青の光を放ち始めた。
「コイツは……」
光を放つカードは見る見るうちに固まって、一つのボトルとなってディケイドエグゼイドの手に収まった。
「なるほどな、大体わかった」
「何が?」
ディケイドエグゼイドのつぶやきに、同じく加速を終えつつ並び立ったビルドが聞き返す。
すると、ディケイドエグゼイドはカードが変化したボトルをビルドに投げ渡す。
「ほらよ」
「えっ? ちょっ!?」
急すぎる動作になんとか対応し、咄嗟に出した右手でキャッチするとボトルをまじまじと覗き込む。
ボトルにはなにかのカードのようなレリーフが彫られており、ビルドの世界の六十本のボトルのどれとも一致しない物だった。
「なんだよこのボトル?」
「それが、俺とお前の力だ」
「だから説明になってないでしょうが」
「なんでもいい。そいつと……そうだな、カメラのボトルとでも組み合わせておけ。持ってるだろ?」
用件だけ述べてしまうディケイドエグゼイドにブツクサ言いながら、ビルドは言われた通りカードのフルボトルとカメラフルボトルを振り始める。
周囲に数式が流れ始めると、ビルドは二本のボトルの蓋を開けてビルドドライバーに装填した。
【 カード! 】 【 カメラ! 】
C/K
【 ベストマッチ! 】
言われた通りに組み合わせた二本のボトルを装填すると、ビルドドライバーからベストマッチを知らせる音声が鳴り響いた。
「え!? いや、カメラのベストマッチはカブトムシだったはずだろ!? てか無機物同士だし!」
「俺のボトルにそんな常識は通用しない」
「な、なんだそりゃ……」
呆けつつ突っ込みながらもハンドルを回転するビルドを尻目に、ディケイドエグゼイドも新たなカードを取り出す。
新たに取り出したカードも最初こそボヤけていたが、次第に輪郭がハッキリとした絵柄に書き換えられる。
書き換えられたカードには、先程と同じ赤の兎と青の戦車を模した仮面ライダーが描かれていた。
【 Are your ready ? 】
「「変身!」」
【 ディケイド! 】
ビルドの前後に展開されたスナップライドビルダーから生成された装甲が、ビルドの掛け声を受けて挟み込むように装着される。
さらにビルドの姿を変えると同時に、いつの間にか発射されていたライドプレートがビルドの頭部に突き刺さる。
‖
‖
そしてディケイドエグゼイドもまた姿を変える。周囲に小型ファクトリー スナップライドビルダーが展開されるとそこから赤と青の装甲が前後に生成され、ディケイドエグゼイドの身体を挟み込む。
‖【 鋼のムーンサルト! ラビットタンク! 】‖
‖【 イエーイ! 】‖
そこには最初と同じくマゼンタのカラーの仮面ライダー、そして赤と青の装甲の仮面ライダーが立っていた。
相違点を挙げるならば、両者のベルトが逆になっている。という事だけだろう。
「……ん? んんん??? ……ええええええっ!?」
双方の姿を見比べて一度納得しかけたものの、直後に困惑が最高潮になるビルド。
ビルドの自分がディケイドに、ディケイドのあちらがビルドになっているという、非常にややこしい状況に直面しているからだ。
「いやいや、どうなってんのよこれ!? なんで俺がお前の姿してるの? でなんでお前が俺の姿してんの? どういう事? どういう原理で出来てるのこれ!?」
エグゼイドの時と違い、端から搭載されるはずがないこの姿に違和感を感じながら、ディケイドの姿をしたビルドは頭を落ち着かせる。
「とにかく、これが俺とお前の力だ……さあ、行くぞ」
「お、おお!」
その言葉を合図に、ビルドの姿をしたディケイド——ディケイドビルドとビルド ディケイドフォームが走り出す。
《しつこい奴らだ……!》
向かってくる二人のライダーに、ヘルブロスはエネルギーカッターを発射しながらネビュラスチームガンとトランスチームガンの二丁から発砲。
しかしそれらも全てディケイドビルドのライドブッカーとビルド ディケイドフォームのライドブッカーとドリルクラッシャーの二刀流によって阻まれて打ち消される。
双方の距離が数メートル程になった瞬間、ディケイドビルドは兎の跳躍力で跳ねるように前方へ一気にジャンプ。その勢いのまま戦車の勢いを持った拳を叩きつける。
「デェア!」
《グッ……!》
咄嗟の飛びかかりに迎撃が間に合わず、ヘルブロスは振り抜かれた拳で殴られた左手のトランスチームガンを取り落とした。
「あらよっと!」
更に間髪入れずにビルド ディケイドフォームの追撃。ディケイドビルドの攻撃の合間を縫って投げ付けられたドリルクラッシャーをネビュラスチームガンの銃撃によって弾くも、隙を逃さず差し込まれたライドブッカーで斬り付けられてネビュラスチームガンも弾かれる。
《……ッ!》
双方の武器を取り落として丸腰になったヘルブロスに二人のライダーは同時にパンチ。その拳を両手で掴んで防ぐヘルブロスだったが、そのまま放たれた両足の蹴りが胴体に炸裂、たたらを踏んで後退させられる。
「よし……行くぞ」
「ああ。勝利の法則は……決まった!」
互いに顔を合わせて意思疎通。ビルドが頭部で戦車の砲身をなぞって爆ぜるようなポーズをとると、両者ともに必殺の準備に入った。
ディケイドビルドはライドブッカーから一枚のカードを取り出してディケイドライバーへと装填し、片手で両サイドを押し込んだ。
ビルド ディケイドフォームはビルドドライバーのハンドルを勢いよく回し、必殺を放とうとする。
‖
‖
【 Ready Go ! 】
【 ボルテック・フィニッシュ! 】
ディケイドビルドの前方にグラフが出現し、ヘルブロスへとグラフのレールを敷いていた。
ビルド ディケイドフォームの前方には十枚のカードを模したエネルギーが左右から集まり、ヘルブロスへと一直線に並び立つ。
二人のライダーは同時に跳躍。ディケイドビルドはグラフを逸って、ビルド ディケイドフォームは十枚のカードを貫通する形でそれぞれ必殺のキックを放った。
「デェアアアア!!」
「ハアアァ!!
《コレは……!》
タイミング的に回避やガードは不可能。ヘルブロスに残された選択は反撃だけだった。
幾多も発射されたエネルギーカッターは、両者のキックの前にいとも簡単に打ち砕かれていく。
そして、全身から煙を上げながらエネルギーカッターを伴ったパンチによる反撃を試みるヘルブロスの拳、エネルギーカッターの双方を突き破った二人のライダーキックが炸裂した。
「ダァッ!」
「ハァッ!!」
《グアァッ!!》
キックか命中したヘルブロスは両者の前へと投げ出され、直後に爆散。暗闇に包まれた空を赤い炎が照らし出した……。
▼
変身を解いたビルドとディケイドだったが、爆炎の残滓が広がる場所にヘルブロスの姿は無かった。
「くそっ、逃げられたか……!」
「その様だな……だが奴の様子からすれば、今回のような戦いは早々仕掛けてこないだろう」
「あぁ。今までであれだけの量のガーディアンやスマッシュを動かせたタイミングはいくらでもあった筈……それだけが不幸中の幸いか……」
焔が揺らめく場所を見ながら苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる戦兎、そんな彼に冷静な表情のまま分析する士。
周囲に敵の姿が見受けられなくなったこの状況で、士は戦兎に先ほどの戦いの中で生じたある疑問を問いただした。
「それよりお前、さっきエグゼイドのボトルを使っていたな」
「エグゼイドのボトル……? ああ、ドクターとゲームフルボトルのことか」
「エグゼイドから採取したボトルだな。お前、かつてそれを手に入れた時、最後にどうした?」
そう言われて記憶を辿った戦兎は、ある事実に気付く。
「そう言われれば、あの二つのボトルはエグゼイドに返したはず……どうして俺の手元に……?」
ドクターフルボトルとゲームフルボトルは、元々葛城巧が仮面ライダーエグゼイドから採取したエグゼイドフルボトルを美空の能力で浄化して生まれたものだ。
そしてエニグマによる世界融合の折に合流した仮面ライダーエグゼイド 宝生永夢にボトルと彼の相方 パラドを返還したはずだったのだ。
新たに生まれた謎だが、士は仮説と共にその答えを示した。
「それはライダーの歴史が不安定になったことと、一度お前たちの世界がエグゼイドたちの世界と中途半端に融合してしまった副産物だろう……一応確認しておくが、何か覚えがあるんじゃないか?」
「覚え……?」
「エグゼイドや他のライダーたちの歴史が消えるような、そんな光景を……抽象的にでもいい。何かあったはずだろ」
うーんと唸る戦兎は、意識して思い返し始めたからか、かつてビルドの世界にいた頃に見た夢のような光景を微かに思い出し始めた。
「そういえば、前にパンドラパネルの解析と実験してる時にエグゼイドに会った……ような、そうでないような……?」
「……なるほど、それか」
おぼろげに存在する記憶の中で、エグゼイドのようなライダーが怪人と闘っていた気がすると。
それが歴史が消える件に関係あるのか定かではないが、その話をすると士は納得したような表情をする。
「白いパンドラパネルだったか? あれは世界を繋ぐ性質を持っているそうだな」
「あ、ああ」
「恐らくだが、お前がエボルト共々この世界に飛ばされる時、そのパネルとパンドラボックスのエネルギー、実験の際に会ったエグゼイドの記憶。それらを伝って、不安定になったエグゼイドという概念が空のボトルに宿ったんだろう。元々フルボトルは記憶を元に概念を取り込んだ物だからな」
白いパンドラパネルやフルボトルの存在や性質を、まるで見ていたかのように解説する士だが、それも今更だろうと戦兎は己に言い聞かせる。
「概念って言うが、そんなこと可能なのか?」
「口で説明するのは難しいが、仮面ライダーは誰かの記憶と存在という概念に影響されやすいものだ。理屈や理由は俺も知らないがな」
「そうなのか……けど不安定にって、じゃあエグゼイドたちの歴史は」
科学で証明出来ることを軽く超えているためか、あまり理解が及ばないが一応納得したとしつつ、戦兎はあることに気付く。歴史が不安定になったと言うことはすなわち……その推測を士は肯定する。
「恐らくさっき言った碌でもない組織に奪われたか、或いは継承でもさせたか。お前がエグゼイドにボトルの成分を返した記憶が曖昧だったのも、その影響を受けたせいかも知れない」
「そんな……」
かつて共に肩を並べて戦った異なる世界のライダーの歴史が奪われ存在が消えてしまった。その事実に大きなショックを受けた戦兎だったが、士はカメラを弄りながらフォローを入れていた。
「そう気に病むな。お前が会ったエグゼイド本人かどうか決まったわけじゃない。それに僅かに概念が残るということは、消されたというよりは後者の継承の方が可能性としてはあるだろう」
「継承……」
今はエグゼイドたちが無事なのを信じるしかないのか、と。自身のことで手一杯の今の戦兎には、そう心の中で考えることしか出来なかった。
そんな戦兎の重い空気を察してか、士はエグゼイドから話題を変えるような話をし出した。
「……しかし、ライダー以外の世界に関わることになるとはな、珍しい」
「ライダー以外のって、ライダーの世界自体珍しいんじゃないのかよ?」
いくら様々な世界が存在し、そこに仮面ライダーが存在すると言っても、そうそう在るものでも無いのではないかと。疑問を持たずにはいられなかった。
「大きく見ればな。だがライダーの世界はライダーの世界と引き合う傾向にある。鳥籠だの劇場だの変な場所で会うこともあるが、逆にライダー以外の世界と邂逅するのは、そう多いことじゃない」
「へぇ……」
士の説明を素直に聞いていた戦兎。そんな彼の様子を見ながら、士は過去の数少ない例を挙げていく。
「その僅かな実例として、仮面ライダー電王と言う時空を超える電車 デンライナーに乗るライダーがいる。アイツらはライダーのいない世界に住む連中を何度か偶発的に乗せたことがあるらしい。前に聞いたのは確か、春日部とか言う街に住む五歳児だったか」
「電車に五歳児? なんだそりゃ……?」
「さあな。かく言う俺も、『トリックスターを持つから、お前も何とかホテップだ』とか言われて、他のその何とかホテップ共々召喚されたことがある。断ってやっても良かったが、しつこそうだったんで少しだけ戦ってやったな」
「ダメだ、全然わかんねぇ」
「別に理解しようとしなくていい。特にアレはな」
そんなライダーとしての戦いを聞く戦兎。しかし、その顔には仲間たちと自身の世界に関わるものとはまた違った憂いが帯びているようだった。
士はそんな戦兎の置かれた現状に関わる会話を切り出した。
「お前、この世界にいる連中を戦いに巻き込むのに抵抗があるな」
「そりゃそうでしょうが。罪を背負う覚悟はできても、もともとこの戦いは俺のせいでもあるんだし……」
「まあ、同じライダーならともかく、子供に戦わせたくないと思うのは無理ないがな……」
空を見上げながら、士は続けて口を開く。
「だがな、かつて俺と共に戦った連中もそうだったが、『子供だから』なんてのは大した理由になりはしない。平和や自由を掴みとろうとするのは人間であれば誰だって皆等しい。それに、一人でなんとかしようと思っても、俺たちが戦う相手は何時だって一人で太刀打ち出来るような相手じゃない。そんな奴らに手こずって泥沼になるくらいなら、その世界の連中と手を取り合った方がいい。エグゼイドたちともそうしてきただろ?」
あと、と続けながら士はカメラから視線を上げてこちらを見ていた戦兎に視線を向けた。
「お前がこの世界に来たのは、きっと偶然じゃない」
「えっ? ど、どういうことだ?」
「詳しくは言えないな。何故なら俺が深く干渉すると、世界が歪むからな。ただ、ひとつだけ言うとすれば……」
少し間を開けてからまたカメラへと視線を向けると、士は戦兎へとレンズのピントを合わせてシャッターを切った。
カメラから出てきた写真を手に取りそれを少し確認すると、再び口を開く。
「どんな旅にも無駄はない、どんな人生にも無駄がないのと同じようにな」
「旅……」
「今はこの世界に来たことを前向きに捉えておけ。きっとこの世界に来たことや、この世界での出会いは無駄なんかじゃあない。世界への影響を抑えて、かつ上手くやっていくコツは、その世界で仲間を得ることだ。お前自身に後ろめたいことがあっても、お前の生き様を見て手を差し伸べたいと思う奴も、きっと現れる……多分な」
今まで旅を続けてきた士だからこその言葉。それを自身の心の中で反復しながら噛み砕いていた戦兎。
しかし、その思考は突如として浴びせられた怒声によって掻き消された。
「だが唯一の例外はお前だ、ディケイド!」
「チッ……また現れたか」
突然の怒鳴り声に、戦兎は驚きながら、逆に士はウンザリと言った表情のまま振り返る。
背後の高台の上には、グレーのコートにハットを被った眼鏡の男性が怒りの形相を浮かべ、見下ろすように佇んでいた。
「やっぱりお前か、鳴滝」
「当然だ。お前のいる所私ありだからな!」
「えっ何? 誰? お知り合い?」
互いの顔を交互に見ながら、戦兎は率直に問いただす。しかし、士はその答えに表情もそのままに雑に返す。
「知るか。俺の旅の先々で勝手に現れる暇人だ……しかし、今回は随分大人しかったな。また他の世界のライダーでも呼び出してくるかと思ったぞ」
知ってるんじゃねぇかと呟きながら、戦兎は再び鳴滝と呼ばれた男性に視線を向ける。
「今貴様が干渉を始めたこの世界は、まだライダーの影響が少ない。私がこの世界にトドメを刺すわけにはいかないのでな」
どうも士が干渉すれば世界がとんでもないことになるらしい。
目の前の男の言葉の真意も目的も皆目見当もつかないが、鳴滝と呼ばれた男は尚も士一人に敵意を前面に押し出して非難する。
「だが、お前の存在が仮面ライダービルドと、そしてライダーの存在しないインフィニット・ストラトスの世界を繋げてしまったのだ! ディケイドが、二つの世界の全てをも破壊するのだ!」
「本当のことなのか?」
「話半分で適当に聞き流しておけ」
何のことだがわからない説明を荒げながら言う鳴滝の言葉の真意を問うも、士自身も呆れたような顔を浮かべるだけで特にコレと言った答えが返ってくることはなかった。
そんな士の言動に業を煮やしでもしたのか、少し溜めてからこれまでの何倍も大きな声で叫ぶ。
「おのれディケイドオォ!!」
「それが言いたいだけだろ」
渾身の叫びも士に冷ややかに返された鳴滝と呼ばれた男は、さらばと叫びながら一瞬のうちに姿を消した。
「なんだったんだ……?」
「俺が深く関わると世界が破壊されるから、その注意に来たってとこだろう。……さて、と。奴の言い成りになるのは尺だが、俺もそろそろ行くか」
そう呟くと、森の奥からバイクのエンジン音が鳴り響く。
見れば先程の戦闘の際に自立操縦で走り、人型バイク兵器に変化したマゼンタカラーのモザイクのようなデザインのバイクが、再び自立操縦で走って来た。
「行くのか?」
「ああ。これ以上長く居続ければ、この世界に悪影響が出かねない」
それに。と付け足して、士は次の行き先について話をし始めた。
「預言者と名乗る変な奴に自分のいる世界に来いと言われててな。なんでも、魔王とやらに会って欲しいんだと」
「魔王?」
「詳しくは知らない。大体はわかったが、あくまで大体だ」
あいも変わらずわからない会話をしながらも、戦兎は先の鳴滝なる男との会話の時からすでに思っていた疑問を聞いてみることにした。
「さっきから思ってたんだが、なんで世界にいるだけでそんなことになるのよ?」
「言っただろ、俺は世界の破壊者だ。世界が俺を受け入れようとしない。そうして起こる拒絶反応が、やがて世界そのものを消し去るんだ」
「はー……大変だな」
「そうでもない。お陰でいろんな世界を旅出来ているからな」
自身と違う仮面ライダーが去ることに何処か寂しさをを感じつつ、戦兎は彼を送り出そうとする。
「そうか……世話になった」
「どうだろうな、無数にあるとは言え、俺たちの世界は基本的に繋がっている。旅路が交われば、また何処かで会うだろう。……それこそ、またこの世界で会うかもな」
「そう言うもんか……」
そう言って互いに軽く笑ってから、戦兎は軽く手を振る。
「じゃあな」
「あぁ。また会おう」
どこからか取り出したヘルメットを深くかぶると、士は自身の愛機 マシンディケイダーを駆って夜空の下を走る。
バイクの先には、突如として現れたオーロラのカーテンが揺らめいていた。士がその中へ突っ込んだ直後、オーロラは搔き消え、士の姿もまた消えていたのだった。
こうして、異なる世界の仮面ライダー 仮面ライダーディケイド 門矢士は、また新たなる旅路へと向かうのだった……。
▼
全身の至る所から火花をあげながら帰還を果たした内海は、無人になっていた研究所へ入ると、パソコンの置かれたデスクの椅子に這いずるように倒れこんだ。
「……フッ」
既に身体の殆どを機械へと置き換えていた彼にとって、この程度の損傷は修理してしまえば問題ない。
それになにより……
「フハハハハッ!!」
笑いを堪え切れなくなったのか、内海は普段からは想像が付かないように、高らかに笑い出す。
ひとしきり笑い終えて眼鏡を押し込んだ内海は、USBを取り出すと目の前のパソコンに挿入し、その内部に存在していた今日の戦闘データを画面に広げた。
「やはり、君との実験は最高だな……桐生戦兎……!」
そしてなにより、これだけのデータを得られたならばこの程度の損傷は安いものだと。機械に成り果てた身体のどこかにある心の中でそう呟きながら……。
▼
既に時刻は4時過ぎ。途中でマシンビルダーをビルドフォンに戻した戦兎は、徒歩でIS学園の敷地内に戻った。
何の用か、ビルドフォンには消灯時間直前に一夏と千冬からの連絡が来ており、それに当たり障りのない返信をメールで送り返しながら学園の校舎の中へと入った。
無人の廊下で、なるべく足音を立てずに向かった先は自室……しかしすぐさま出て行き、今度は無人になっていた整備課の一室へと足を運んでいた。
合鍵を(無断で)作っていた戦兎はそれを使って整備課に入る。いつも使っている一室に入ると、作業台の上にラピス・ピジョンを、そのすぐ目の前にL&Pを起動する。
そして部屋から取ってきたビルドの……再調整で再びIS用に戻した戦闘用追加兵装をL&Pの隣に設置した台に鎮座する。
部屋に置いていたいくつかの器材を起動しながら、戦兎は道中の自販機で買ったオリナミンCを一気に飲むと、両頬を叩いて集中する。
「よし、いっちょやってやりますか!」
そうして器材に他の機械やボトルを装填するなどして何かをし始めた戦兎。
彼が手を止めたのは、朝日が昇って生徒たちが起き始めるような時刻だった……。
※今回の後書き少し長めです。
今回のエピソードでとうとう戦兎が仲間のいない環境によるメンタルを回復しました。
IS学園のクラスメイトたちと戦兎が互いを仲間だと真に認め合えるのも、そう遠くはない……かも?
タコスマッシュと電球スマッシュやガーディアンの戦闘シーン、ライオンクリーナーとディケイドオーズ、二人のマイティの部分は全部前書きに書いた追記した箇所です。
元々内海さんぶん殴ったらドロップアイテムとしてフルボトル落とす展開の予定でしたが、流石に二人のライダー相手にずっと内海さんボコボコにされ続けるだけはどうなんだと思って追加しました。その結果がコレ(予定から1ヶ月オーバー)だよ!
この話の執筆した際、よくよく考えたらウルトラマンメビウスのヤプール戦とほとんど同じやりとりしてたことに書き始めた段階で気付いてしまいましたが、時すでにお寿司
ダブルアクションゲーマーにフォームライドしてビルドもパワーアップするのは、かつて考えていた「ディケイドが最強コンプリートフォームに変身した際にその効果でビルドが一話限りでジーニアスフォームになる」というシーンの名残です。
没になった理由はエボルトならともかく内海さん相手に流石にそれはオーバーキル過ぎるなと思ったためです。
後もう一つある没案は「オリジナルのファイナルフォームライド ビルドでちょっとくすぐったいぞする」というのもありました。
コレも大体大ボスクラスにやるヤツなのと、ジオウでディケイドビルドにカメンライドしたので今回の内容を優先にしました。
士が言っていたのはもちろんジオウとタイムジャッカーのことですが、本作では我が魔王もス氏たちも出ません。