Infinite・Genius 【インフィニット・ジーニアス】   作:EUDANA

8 / 23
前回書いた通り今回は戦兎がメインです。
ただそのせいで、あるキャラが悲しいことに……
あと今回若干アンチ・ヘイトっぽい描写もあります。


なので初投稿です。


兵器とのボーダーライン

スマッシュが現れるこのISの世界で、人々はスマッシュの脅威に晒されていた。

しかしそこに現れたのは我らがヒーロー、仮面ライダー!

って俺、前回まったく出番なかったじゃん!

少年少女の甘酸っぱ〜い恋模様に割食らってるよ!?

 

一夏のヤツは幼馴染の篠ノ之の恋心に気付いてねえし、その篠ノ之は一夏に勉強まったく教えてないし…

けど仮にも代表候補生のオルコット相手によくあそこまで戦えたよ、実質勝ってたようなもんだしな。まぁたあんな無茶しないか心配よホントに…。

でもオルコットのヤツも様子が変なんだよな…

……って!これは学園恋愛ストーリーじゃなくて、勧善懲悪な王道ヒーローストーリーなんだからな!

 

でもまあ安心しなさいって!今回第7話はこのてぇんさい桐生戦兎が大活躍!フルスロットルだ!!

 

———————————————————

 

放課後

食堂

 

「織斑くんクラス代表決定おめでとう!」

「「「おめでとう!!」」」

 

パンッ!といくつものクラッカーが鳴り響いた。

今、食堂では1年1組の織斑一夏クラス代表就任パーティーなるものが貸切で行われていた。

 

「本当になんで俺なんだよ…」

 

クラスメイトの少女たちに囲まれながら席に座っていた一夏は、嬉しそうな少女たちと異なり未だに不服そうだった。

 

(行ったことないからわかんねえけど、なんかキャバクラみたいだな…)

 

戦兎は食堂の端から少女たちに囲まれてもてはやされる一夏を見てそんな事を思っていた。

 

「大体、なんでセシリアはクラス代表辞退したんだよ…勝ったのはセシリアじゃないか」

 

一夏がそう呟くと、隣に座っていたセシリア自身がその問いに答えた。

 

「確かに勝負はあなたの負けでしたが、しかしそれは考えてみれば当然のこと。なにせわたくしが相手だったのですから、それは仕方のないことですわ。」

 

そう言うとセシリアは少し顔を赤くしてから話を続けた。

 

「それでまあ…わたくしも大人気なく怒ったことを反省しまして、"一夏さん"にクラス代表を譲ることにしましたの。」

 

笑顔で言うセシリアとため息をつく一夏の2人を側から見ながら、戦兎はあることを疑問に思った。

 

(……一夏…さん?)

 

急に態度を変えたイギリスの代表候補生の様子を見ながら、戦兎はまさか…と思っていた。

しかし戦兎のそんな様子を誰も気づくことなくクラスメイトたちはセシリアの判断を褒め称えていた。

 

「いやぁセシリアわかってるね!」

「せっかくの男子なんだから持ち上げないとねー」

 

クラスの声を聞いてセシリアは誇らしげな様子になっていた。

戦兎は隣の席の仕切り越しに一夏に声をかけた。

 

「なあ、あれどういう変化だ?一夏お前、オルコットとなにかあったのか?」

「いや別に——」

 

そう答えようとした一夏だったが、セシリアとは逆の位置で一夏の隣に座っていた箒がそれを遮った。

 

「何もない!」

「お、おう…」

 

すごい剣幕でこちらをにらんでくる箒を前に、戦兎は頷くことしかできなかった。

箒はすぐさま腕を組みながら今度は一夏に声をかけていた。

 

「しかし…人気者だな一夏。」

「本当にそう思うか?興味の目で見られてるんだぞ…俺は動物園のパンダかよ」

「……ふんっ」

「…なんでそんなに機嫌悪いんだよ?」

 

不機嫌な箒とそれを疑問に思っている一夏

幼馴染2人のやり取りを後ろで見ながら、前途多難だなと戦兎は思い始めた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廊下

 

あの後しばらくパーティーは続いた。

新聞部が一夏とセシリアのツーショットを撮ろうとしていたのにクラスメイト全員が押しかけて、ただの集合写真になっていた…ちゃっかり戦兎も1番後ろに混ざっていたが……

戦兎は前を歩く一夏と箒の2人の姿を見ながら今後の2人の関係を気にしていた。

 

(幼馴染だから1歩リード。と行きたいけど、相手は専用機持ちだからな、練習に付き合うって言われたら、オルコットが有利だろうな…)

 

そんなことを考えながら歩く戦兎だったが、不意に一夏に声をかけられる。

 

「あ、そういえば戦兎に聞こうと思ってたんだけどさ。」

「ん?なんだよ、わからないところは篠ノ之に聞くんだろ?」

「そうだぞ一夏、私を頼れ!」

 

勉強のことかと思った戦兎と憤慨する箒に、一夏は手を横に振りながら否定する。

 

「いやそうじゃなくて…ホラ、俺はデータ収集なんてモルモットみたいな理由で白式…専用機もらったけどさ、戦兎には無いのかなって。」

「む…確かにそうだな。一夏の方が早かったとはいえ、世界でたった2人の男子なのだから、優遇してもらえるはずなのでは…?」

 

2人の言葉に戦兎は答えた。

 

「あーそれか…断ったんだよ。」

「え?なんでだよ、せっかく男子だからって理由でもらえる専用機なのに。」

 

そんな当然の疑問に戦兎はサラッと、しかしとんでもないことを言ってのけた。

 

「いや、今創ってるんだよ。」

「「は?」」

 

2人してすっとんきょうな声を上げていた。

それに戦兎はさらに続けた。

 

「だから、今整備課の部屋借りて創ってるんだって。設計図から…つまり一から。」

「…お前何言ってるんだ?」

 

専用機を創っている…そんなことを言うクラスメイトに冗談だろ?と言いたげな一夏、そんな様子を見ながら戦兎は不服そうに話す。

 

「お前なぁ…散々言ってるけど、俺はてぇんさいよ?それに前例もあるらしいしな、IS1機くらい余裕だって!」

「いや…それいつ完成するのだ?夏休みの間に終わらせるとかか?それでも間に合うかどうか…」

「まぁ見てなさいって!クラス対抗戦までは流石に無理だけど、学年別トーナメントまでには終わらせるからよ!」

 

そこまで言うと戦兎の携帯、ビルドフォンに着信が入る。

 

〜♪〜〜♪

 

ビルドフォンの画面を確認した戦兎、画面にはサーチャーから届いているスマッシュの出現情報と現在位置が記されていた。

 

「悪りぃ、ちょっと急用が出来たわ!じゃあな!」

 

そういうと戦兎は外へ出るため全速力で走っていった。

 

「戦兎のヤツ、本当に大丈夫なのか?専用機を自分で創るって…」

「…わからん」

 

よく分からない同じクラスメイトの背を見ながら2人は呟くのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スマッシュの反応が確認された工場から爆炎が上がっていた。

暗い夜の中、巻き起こる炎が夜空を明るく照らしていた。

作業員たちが門から慌てた様子で、しかし無事に逃げるのを見ながらも、戦兎は心中は穏やかではなかった。

 

「こういう時に消防車フルボトルがないのが痛いな。なら…って言ってる場合じゃないか!」

 

すぐさまマシンビルダーから降りながらビルドドライバーを腰に装着

そしてラビット、タンクフルボトルを降り始める。

 

「さあ実験を始めようか!」

 

【ラビット!】 【タンク!】

R/T

【ベストマッチ!】

 

2つのフルボトルを装填、ハンドルを回しスナップライドビルダーを形成、装甲展開終了と同時にハンドルから手を離した。

 

【 Are you ready ? 】

 

「変身!」

 

【鋼のムーンサルト ラビットタンク!】

【イエーイ!】

 

2つのハーフボディに押し潰される形で装甲を装着し、仮面ライダービルド ラビットタンクフォームに変身した。

そのままビルドは兎の跳躍を駆使し、燃え盛る工事へと飛び込んでいった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドドドドドドド!!

 

そんな音を立てながら、腹部にガトリング砲をつけたスマッシュが無差別に銃撃していた。

放たれた弾丸が機械や可燃性の燃料に当たり、そこから炎が噴き上がる。

しばらくしてオーバーヒートを起こして砲身が赤く染まると、スマッシュは何処へともなく歩き出した。

 

地上から数十メートルほどの階では1人の作業員が取り残されていた。

 

「た、助けてくれぇ!!」

 

そんな叫びも虚しく、あたりは火の海と化していた。

必死にヘルメットを抑えながら、火の手から逃れようと燃えていない外の柵へと走っていた。

柵に手を掛け、飛び降りれないか下を覗き込む作業員。

しかし地上数十メートルの地点、飛び降りれるはずもない。さらに下には硬いアスファルトの地面しか見えなかった。

助けが来るまで待つしかない…そう思っていた彼だったが、その背後の炎の中から1つの影が音を立てて近づいて来た。

 

「よ、良かった!レスキューか!?」

『…!!』

 

錯乱して助けが来たと思い込んだ作業員、だがそこから現れたのは先のスマッシュだった。

スマッシュは徐々に速度を上げて近づいていった。

 

「うわあああ!!」

 

迫り来るスマッシュが拳を振り上げ作業員を殴り殺す——ことはなかった。

直前、スマッシュの後方から猛スピードで走り込んできた赤と青の影が、スマッシュを押しのけると作業員を担いで柵に足を掛けた。

そしてそのままジャンプして地上目がけて飛び降りた。

 

「え!?え!?うおおおお!!?」

 

絶叫をあげる作業員を担いだままビルドは地面に着地し、そのまま彼を下ろした。

 

「う…うわぁ……」

 

情けないような声をあげ、その場に座り込んだ作業員を尻目にビルドは先程までいた階でコチラへ威嚇するスマッシュを見上げながら橙と青緑のフルボトルを取り出した。

軽く振るとすぐさまビルドドライバーへと装填、ハンドルを回しきった。

 

【タカ!】 【掃除機!】

 

【 Are you ready ? 】

 

「ビルドアップ!」

 

左右から装甲が装着され、ラビットタンクが橙と青緑の姿…トライアルフォーム タカ掃除機に姿を変えた。

そしてビルドは背中のソレスタルウイングを展開し、夜空を飛翔した。

 

 

 

『……!』

 

一連の流れの間にオーバーヒートから回復していたスマッシュは腹部のガトリングを空を舞うビルド目がけて乱射していた。

 

「よっ!ほいっ!」

 

迫りくる弾丸の雨を潜り抜けるように躱し、右手で持っているホークガトリンガーをスマッシュ目がけて発射した。

灰色の弾丸と橙のタカを模した弾丸が空中でぶつかり合ってそのまま爆ぜる。

しかしぶつかり合った爆煙の中から何発ものタカの弾丸が弾幕をすり抜けてスマッシュに命中した。

 

『!?』

 

ダメージを喰らって仰け反るスマッシュ、その隙にビルドは左腕に装着されている掃除機——ロングレンジクリーナーを工場全体へと向け吸引を開始した。

 

掃除機の吸引力によって工場中の炎がビルドの左腕へと集まり、そのまま吸い込まれていった。

しかしすぐさまスマッシュが態勢を整えて射撃を再開した。

ビルドは自身への対空射撃をさきほどと同じように隙間を縫って飛び続け、工場内の炎のほとんどを吸収し終わった。

ビルドの左肩に取り付けられている掃除機本体のような分解装置——トラッシュコンバーター内で炎が渦を巻いている。

ひとしきり吸収し終わったことを確認したビルドはスマッシュの前方へと降り立った。

 

『!!』

 

目の前に着地したビルドを威嚇すると、スマッシュは腹部のガトリングの標準を合わせた。

そのスマッシュの動きを前にビルドはトラッシュコンバーターの近くに取り付けられているパイプを押した。

するとコンバーター内の炎が渦を巻きながらビルドの真上に留まった。

そのままホルダーから茶色と水色のフルボトルを取り出してビルドドライバーへと装填した。

本来なら3つ目に変身可能だったベストマッチだった。

 

【ゴリラ!】 【ダイヤモンド!】

G/D

 

【ベストマッチ!】

 

音声が終わるとすぐにハンドルを回す。目の前のスマッシュが射撃を開始したが、その攻撃はビルドの周囲に展開されたスナップライドビルダーによって阻まれた。

そして前方に茶色、後方に水色の装甲を展開してハンドルから手を離した。

 

【 Are you ready ? 】

 

「ビルドアップ!」

 

装甲が前後からビルドを挟み込み、その姿を新たな姿へと変化させた。

 

【輝きのデストロイヤー! ゴリラモンド!】

【イエーイ!】

 

ビルドのベストマッチ、ゴリラモンドフォーム…ゴリラの怪力、ダイヤモンドの堅牢さを備えたパワー形態だった。

スマッシュは再び射撃を開始した、しかしビルドは左手を目の前に突き出した。するとダイヤモンドを模したバリアのようなものが展開され、スマッシュの弾丸を全て防ぎきった。

連続で打ち込んで砲身が赤く染まってオーバーヒートした様を見ると、ビルドはその左手を上空に渦巻く炎へと向けた。すると炎が次々とダイヤに変換されていった。

 

「勝利の法則は、決まった!」

 

ゴリラの右手でダイヤモンドの発した光を模したアンテナをなぞると、ドライバーのハンドルを回し始めた。

機械で精製する音が終わるとドライバーから音声が流れる。

 

【 Ready Go ! 】

 

ビルドは上空のダイヤをスマッシュへと発射した。

ダイヤは次々とスマッシュに取り付き、その体を拘束した。

 

『!?』

 

【ボルテックフィニッシュ!】

【イエーイ!】

 

「ハアアアアア!」

 

拘束したスマッシュ目がけて走り、そして右腕のサドンデストロイヤーで思い切り殴り飛ばした。

スマッシュはそのまま勢いよく飛んでいき、柵にぶつかった後、そのまま突き破って工場の外へと叩き出された。

赤い炎が消えた夜空を、今度は緑の爆発が明るく照らしていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっ」

 

工場から人知れず出ていたビルドは、近くの樹々の中まで吹っ飛んでいたスマッシュへとエンプティボトルを向け成分を採取した。

手の中に収まったガトリングフルボトルを満足げに振った。

ガトリングフルボトルは既に所持し、今日も使っていたタカフルボトルと組み合わせることで新たなベストマッチフォームに変身できるフルボトルだった。

そのベストマッチは空中戦に長けている為、エボルトとの最終決戦までの間、長きに渡って利用していたフォームだ。

 

 

しかしその組み合わせを考えていたビルドはふと、そのフォームを見つけることになった出来事を思い出していた。

 

 

 

【タカ!】 【ガトリング!】

【ベストマッチ!】

 

『どうよ? 俺の、第・六・感!』

 

 

 

未だ行方不明の相棒が見つけたフォーム…ベストマッチでもあった。

 

「どーこ行っちまったんだよ万丈…」

 

1人呟くビルド、しかしその声に答えるものは誰もいなかった。

ビルドはフルボトルを抜いてドライバーをしまって変身を解除すると、ビルドフォンをマシンビルダーに変形させ、そのまま乗って学園へと戻るのだった……。

 

 

 

 

 

【……】

 

そんな彼の姿を捉えている、1つの小さな影があるとは思いもせず………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝 SHR前

 

「ねえ聞いた?」

「聞いた聞いた!」

「工場の爆発事故でしょ?」

「え?転校生じゃなくて?」

「両方だよ!」

 

翌日、クラスの中では話題が2つに分かれていた。

そのうちの1つは昨日のスマッシュによる工場への被害だった。

しかし表向きではスマッシュはまったく触れられず、工場の事故として報道、処理されていた。

……なおもネットでは、すでにビルドやスマッシュの映像が流れているのだが…

 

「例の未確認生命体と仮面騎士(かめんライダー)絡みなんだって!」

「えー…でもそれ合成とかCGでしょ?」

「だってどう見てもISじゃないじゃん、デマよデマ。」

「でも3組の子が両方ともホントに見たって言ってたよ?」

 

現在ネットの世論ではビルドもスマッシュも存在する派としない派に分かれていた。いずれも見られたのが夜の中、さらには周囲に人があまりいないのが理由だ。

言わば仮面ライダーもスマッシュも、都市伝説のような扱いを受けていたのだった。

 

(まさかそんな都市伝説が今こうしてIS学園1年1組の教室で頬杖ついて暇してるなんて、彼女たちも世論も思ってもねえだろうな…)

 

…前の席に集まって騒ぐ少女たちを見ながら、戦兎はそんなことを考えていた。

そんな中、少女たちは話題をクラス代表(にされてしまった)の一夏へと振っていた。

 

「ねえねえ!織斑くんはさ、例の仮面騎士とかってどう思う?」

「え、どう思うって言われてもな…」

 

そりゃ都市伝説の話題をいきなり振られてもな、と苦笑していた戦兎だったが…

 

「だって正義のヒーローだよ、男の子ってこういうの好きなんでしょ?」

「いや、でもあれCGとかなんだろ?なんとも言えないっていうかさ……」

 

そう言ってしばらく考え込んだ後、一夏は自分の中の意見を言いよどみながら述べた。

 

 

「でももし仮にいたとしても…俺はあんまり好きじゃないかな。なんていうかさ、人間っぽく思えないんだよな。」

 

 

………。

 

 

「ヒーローなんて奴らは泣きもしなけりゃ笑いもしない…そんな風に思えるんだよ。

『誰かのために』じゃなくて『全ての人のために』なんて、普通の人間に出来るはずないだろ?

そりゃスゴイとは思うさ。けど、こう……それが使命だからみたいな感じなのが…うまく言葉に出来ないんだけど…ロボットみたいな?とりあえず敵がいるから戦うみたいな…そんな感じ。」

 

 

……………………………。

 

 

戦兎は自分でも気づかないうちに席を立ち、そして一夏の席へと近づいて声をかけていた。

 

「なあ一夏、ちょっといいか?」

「戦兎?ああ、なんだ?」

 

集まっていた少女たちの前で、戦兎は一夏に普段の雰囲気も出さずに会話していた。

 

「今お前、正義のヒーローはロボットみたいって言ってたろ?」

「…まあ、そう…かな?」

 

顎に手を当て考え込んでから微妙に肯定した一夏。

そこまで聞いた戦兎は、自分が抱いた疑問をぶつけていた。

 

「お前の思う『人々を守る正義のヒーロー』が『感情も無く戦う、人々を守る使命を帯びただけのロボット』と一緒ならさ……それって兵器と一体何が違うんだ?」

 

「え?」

 

意外な質問にキョトンとして言葉を失った一夏を見下ろしながら、しかし戦兎はすぐに…どこか寂しそうに笑いながら踵を返した。

 

「悪い、やっぱり忘れてくれ。」

 

後ろへ手をヒラヒラと振りながら戦兎は席に戻った。

 

「あ、ああ……」

 

「もしかして、桐生くんってヒーローもの好きだったのかな?」

「多分そうじゃない?」

 

クラスメイトのざわめきを聴きながら席に座った戦兎。

そんな様子を見かねてか、クラスメイトの1人が話題を変え始めた。

 

「えーと…そうだ、今日2組に転校生が来るんだって!」

「え…あーそうなんだ……今の時期に?」

「中国の代表候補生なんだってさ。」

「へー…どんな奴かな?」

 

 

 

どこか呆然としてた一夏は急に話しかけられて現実へと引き戻されていた。

 

「気になるのか一夏。」

「そりゃそうだろ?代表候補生って言うんだし、やっぱり強いのかな?」

「あら、わたくしの存在を今更ながら危ぶんでの転入かしら?」

 

箒が少しムッとしながら、セシリアが自身たっぷりに言うが、特にリアクションも無く少女たちが一夏を応援し始めた。

 

「勝ったクラスはみんな学食のデザート半年間タダなんだよ!織斑くんクラス対抗戦頑張ってね!」

「でも今のところ専用機持ってるクラス代表って1組と4組だけだから余裕だよ!」

 

そこまで言うのと教室の扉が開かれるのは同時だった。

 

「——その情報古いよっ!」

 

開いた扉から姿を見せたのは、ツインテールにリボンをしたどこか小さい印象を受ける少女だった。

 

「2組も専用機持ちがクラス代表になったの、そう簡単には優勝出来ないから!」

 

腕を組みながらそう叫んだ少女を見て、一夏は未だに残っていた先の戦兎との問答のモヤを吹き飛ばすような衝撃を受けていた。

 

「鈴…? お前鈴か!?」

「そうよ、中国代表候補生 凰 鈴音(ファン リンイン)!久しぶりね一夏、今日は宣戦布告のついでに挨拶に来たってわけ!」

 

その少女——鈴を見ながら一夏はさきほどとは打って変わって懐かしさを感じながら、しかし困ったように笑った。

 

「鈴、お前何格好付けてるんだ?全然似合ってないぞ!」

「んなっ!?なんてこと言うのよアンタは!」

 

さきほどのキリッとした雰囲気も何処へやら、素が出たのかムキになって怒り始める鈴。

しかしその鈴の頭へ出席簿が振り下ろされた。

 

「痛っ!…何すんの——」

「SHRの時間だ、教室に戻れ。」

 

そこには1年1組担任、織斑千冬が出席簿を持ちながら立っていた。

 

「ち、千冬さん…!」

「織斑先生と呼べ。さっさと自分のクラスに戻れ邪魔だ。」

「す、すみません…。一夏!また後でね!」

 

頭を抑えながら廊下へ出ると、一度入り口から顔を覗かせながら一夏へそう叫ぶと鈴は2組へと向かっていった。

 

「い、一夏!今のは一体誰だ!?」

「そうですわ!説明を、説明を求めますわ!!」

 

箒やセシリアを始めとした少女たちが一夏へと詰め寄る…が、

 

「…オイ」

 

 

再び教室に千冬による出席簿の炸裂音が何回も響いた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後

 

結局、一夏と例の転入生…鈴という少女は箒より少し後に出来た幼馴染という関係だった。

その鈴を相手に対抗してか、アリーナでは箒とセシリアの2人が一夏を相手にISを使った特訓を施していた。

 

箒は学園の訓練機である打鉄(うちがね)を駆っていた。昨日の戦兎の心配とは裏腹に学園から使用許可が下りたらしい。

 

2人は例の2人目の幼馴染——一夏曰く『セカンド幼馴染』とのこともあってか、半ば八つ当たり気味に一夏にスパルタ特訓を施していた。

 

そんな3人の特訓を観客席から眺めていた戦兎は、しかしどこか暗いとも言える浮かない表情をしていた。

 

 

 

『まだわかってないようだな。 いいか?消滅した青羽(あおば)もお前も、ネビュラガスを注入した時点でもう人間じゃないんだよ。

だからお前は兵器を壊したにすぎない。』

 

 

(ロボットか…ま、ネビュラガスも注入されてるし、少なくとも普通の人間じゃないのは確かだな。)

 

"あの日"ブラッドスターク——エボルトに言われたことを思い出しながら自嘲気味に笑う戦兎。

そんな中、珍しく戦兎の中の葛城巧(かつらぎたくみ)が声をかけて来た。

 

——結局、彼らにとっての正義のヒーローなんてそんなものさ。

人間って生き物は、自分たちと価値観や考え方が違う相手っていうのを理解しないし、恐怖や懐疑の目さえ向けるんだ……それは僕たちの世界でわかってたことだろう?——

 

元の世界で戦った時、不信感を露わにされたり代表戦の折に責任を押し付けられた。

あまつさえ洗脳されていたとはいえ、ブラッド族の口車に乗せられて襲いかかった…そんな市民たちを槍玉に挙げて、葛城は戦兎を尻目に話しかけた。

 

「…どう思われても構わないさ、それでも」

 

——愛と平和(ラブ&ピース)、か……彼の言う通りなのかもね。

君はそうやって自分のことも気にせずにその心情を掲げているけれど、普通の人間なら誰だって自分のことを大切にする、そうで無くとも考えたりするさ。

……例えば、自分の目的のためだけに動いたりね——

 

そう言い終えると葛城は戦兎から視線を外した。

かつてジーニアスボトルが使えなかった時に万丈龍我(ばんじょうりゅうが)に言われたことを思い出しながら…。

 

しかし戦兎は笑いながら葛城の言葉を否定した。

 

「そんなことはない。俺はロボットでも兵器でもねえよ。」

 

——…どうしてそんなことが言えるのさ?——

 

そう聞いた葛城の一言を内心『わかってるだろ?』と思いながら、戦兎は目の前の青春を謳歌している少年少女たちを眺めながら答えた。

 

「誰かの力になれたらさ…心の底から嬉しくなるとクシャッてなるんだよ、俺の顔……。

一夏のヤツ言ってただろ?アイツにとってのヒーロー…兵器と変わらないかもしれないそれは、笑いもしなけりゃ泣きもしないって。

けど俺は違う。心の底から笑えるし、悲しくなったこともあるし…泣いたことだってある。

そんな自分の弱いところ隠して、それでも足踏ん張って戦うんだ…。理解されなくったっていい、どう思われてたって構わない。

前にも言っただろ?俺はそんなことのために今まで戦って来たわけじゃない。

それが本当のヒーローってヤツなんだって、俺はそう思ってる。

そして、人類の愛と平和…ラブ&ピースのために俺は戦うんだ。」

 

そこまで言って振り向き、柵にもたれながら戦兎は続けた

 

「それが万丈や美空や紗羽さん、カズミンとげんさん…みんなが創ってくれた、俺…『自意識過剰でナルシストな正義のヒーロー、仮面ライダービルド・桐生戦兎』だ」

 

そこまで言うと戦兎は逆に葛城に話しかけた。

 

「ただ改めて言われたから、ちょっとナイーブになってただけだっての。…でもお前がそんな言う必要もないことを尋ねるなんてな…まさか、俺のこと心配してくれたのか?」

 

さきほどよりもにやけた笑いを浮かべる戦兎。

 

——…君ってやつは、本当にどこまでもお人好しだね。——

 

呆れたようにそう言うと、葛城は再び黙った。

 

(…けどお前のお陰で改めて自分と向き合えたさ…まあ、ありがとな。)

 

聞こえているか分からなかったが、戦兎は心の中で葛城に感謝していた。

 

〜♪〜〜♪

 

そう思っていると、ビルドフォンから昨日と同じように着信音が鳴った。

見ればやはり、スマッシュの出現情報だった。

 

「さーてと!行ってきますか!」

 

アリーナで今なおシゴかれている一夏を同情しつつ笑って見ながら、戦兎はアリーナの出口を走って行った……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

港の真ん中で全身にプレス機構を施されたスマッシュが歩いていた。なにかを目的としているわけでもないのか、近くにあった看板などを手当たり次第に両腕で挟み込んでプレスし破壊し回っていた。

 

マシンビルダーから降りた戦兎はその様子を見ながらもビルドドライバーを腰に装着した。

 

「さあ…実験を始めようか!」

 

両腕でフルボトルをカチャカチャと降る戦兎、そしてドライバーに装填してハンドルを回した。

 

【ラビット!】 【タンク!】

R/T

【ベストマッチ!】

 

【 Are you ready ? 】

 

スナップライドビルダーから生成された装甲の真ん中で戦兎は叫んだ。

 

「変身!」

 

【鋼のムーンサルト ラビットタンク!】

【イエーイ!】

 

ビルド ラビットタンクフォームに変身し、そのままスマッシュへと走った。

 

 

ビルドに気づいたスマッシュは走ってくるビルドに合わせてか、自身もビルド目掛けて走り出した。

大きく開いた両腕を叩きつけ、挟み込むように攻撃する。

 

「ほっ!」

 

しかしビルドは迫る腕を左足で踏み、前方へ回転しながらスマッシュの背後に回り込んだ。

 

『!!』

 

ビルドを見失ったスマッシュは辺りをキョロキョロし始めた。

 

「やっぱ近距離戦特化のスマッシュ相手ならこいつだな!」

 

そんなスマッシュのコミカルな動きを見つつビルドは橙と灰色のボトルを取り出した。

つい先日入手したばかりのボトルを使ったベストマッチフォームだった。

 

【タカ!】 【ガトリング!】

T/G

 

【ベストマッチ!】

 

ようやく気づいたスマッシュを前に、ビルドは慌てることなくハンドルを回した。

前後に展開されたスナップライドビルダーによってスマッシュが弾かれる。

そしてそのタイミングで変身準備を終えた。

 

【 Are you ready ? 】

 

「ビルドアップ!」

 

前後の装甲がビルドを挟み込み、また新しい姿へと変化させた。

 

【天空の暴れん坊! ホークガトリング!】

【イェーイ!】

 

橙と濃灰色の姿…ビルド ホークガトリングフォームに変身したビルドは専用武器であるホークガトリンガーを取り出した。

そして背中のソレスタルウイングを展開して夜空へと飛翔した。

遠距離攻撃を一切もたないこのスマッシュは地上から威嚇することしか出来なかった。

 

「勝利の法則は…決まった!」

 

伸びたガトリング砲を模したアンテナをなぞり、手を開いたビルドはホークガトリンガーの中央のリボルマガジンを回して弾丸を装填していった。

 

10(テン)!……20(トゥエンティー)!……30(サーティー)!……40(フォーティー)!……50(フィフティー)!……60(シックスティー)!……70(セブンティー)!……80(エイティー)!……90(ナインティー)!………100(ワンハンドレッド)!!】

 

弾丸を装填し終えると同時にスマッシュの周囲を球体状のフィールドが発生、スマッシュを閉じ込めて隔離した。

 

【フルバレット!】

 

その音声と共に、ホークガトリンガーから100発のタカを模した弾丸が発射される。

フィールドの中央で身動きが取れずにいるスマッシュの周りを飛び回りながら、360度全方位から弾丸を浴びせていく。

そして100発目が命中するとスマッシュは爆発を起こしたのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スマッシュから成分を採取した戦兎は、パンダフルボトルを懐にしまうとマシンビルダーに乗り込んで学園へと戻っていった。

 

 

学園の端の茂みの中でマシンビルダーをビルドフォンへ再変形させ、学園の中へと戻っていた。

 

学生寮の自室へと向かい、廊下を歩いていた戦兎だったが、

ぱんっ! となにかを叩いたような音が聞こえた気がした。

聞こえた先…すぐ隣を見ればその部屋は1025号室だった。

 

(まーた一夏が篠ノ之を怒らせたのか…あいつもよくやるよな…)

 

そう思いながらスルーしようとしたのだが…

 

『最っっっ低!女の子との約束をちゃんと覚えてないなんて男の風上にも置かないクズ!!バカ!!!犬に噛まれて死ね!!!!』

 

部屋から聞こえたのは一夏でも箒の声でも無かった。

聞き覚えはあまりなく、しかしどこかで聞いた気もする…そんなことを思っていた戦兎だったが、突如1025号室のドアが勢いよく開かれた。

 

「邪魔!どいて!!」

「うおおわぶべっ!」

 

中から猛スピードで出てきた人物…鈴に跳ね飛ばされ、そのまま向かいの廊下の壁に顔から叩きつけられる戦兎。

 

部屋の一夏と箒が呆然としたまま鈴を見送るしかない中、壁からズルズルと崩れ落ちる戦兎は呻きながら呟いた。

 

「誰からどう思われても構わないって言ったけどよ…流石に少しは気にしてくれよ……。」

 

その後一夏から絆創膏を貰いつつ、戦兎は這々の体で自室へと戻っていった。

 

 

こうして正義のヒーロー、仮面ライダービルド・桐生戦兎の1日が幕を下ろした……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、クラス対抗戦のトーナメントが発表された。

一夏は1回戦から、それも相手が鈴との組み合わせだった。

それを知ってからか箒とセシリアの両者の特訓もさらに激しくなっていった。

しかし、あれから鈴は一夏と口を聞こうともしなかった。そういう一夏も特訓で忙しく、鈴に謝ることも出来ていなかった。

 

対する戦兎はある日はISの開発を、またある日はラビットタンクスパークリングの修理を…という具合に休日も平日の放課後も整備課に篭っていた。

スマッシュが出なかったのは唯一の救いだろう…。

 

そしてそれぞれの思惑の中、遂にクラス対抗戦当日を迎えるのだった……。

 

 




正義のヒーローがロボットみたい…だからと言って兵器に例えるのもなんか違う気がする…本当に申し訳ない。
今回戦兎の心境というか意気込みを描写しましたが、正直本編と矛盾してないかとか、戦兎はそんなこと言わない!なことになってないか、と心配してビクビクしながら描きました。

一夏が割と酷いこと言ってますが、アニメの影響とだけ…原作者監修脚本の被害者故…

後、今回で鈴が初登場となりましたが完全に戦兎の描写で割りを食らってる…
鈴は犠牲となったのだ……クラス代表決定戦直後に転入してきた展開スピード…その犠牲にな。(責任転嫁)
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