Infinite・Genius 【インフィニット・ジーニアス】 作:EUDANA
書いてたら二万字超えたので初の前後編です。
なので初投稿です。
スマッシュと呼ばれる怪物が現れるこの日本で、とある都市伝説がまことしやかに囁かれていた。
何処からともなく颯爽と現れてはスマッシュから人々を守る正義のヒーロー…その名も
仮面ライダービルドに変身するてぇんさい物理学者の桐生戦兎は、IS学園の同級生(年下)との価値観の違いからすこーしだけナイーブになったりしたけど難なくスマッシュを撃破したのだった。
でもスマッシュとの戦い以上に、最後の廊下の壁ダイブは痛かった…鼻が折れたかと思ったぞホント。
いよいよクラス対抗戦の始まり、どんな戦いになるんだろうな!
さて、一体どうなる!?第8話!
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2年前
中学校
「それにしても鈴のとこは助かるぜ、安くて美味いから毎日通えるもんな。」
ある決心をしていた鈴は、一夏のその言葉を聞いて覚悟を決めてから話した。
「…そんなに中華が好きならさ、わざわざうちに来なくっても…酢豚でよければ毎日作ってあげるわよ、料理が上手くなったら。」
「本当か?それは助かる!」
顔を赤くしながら言った鈴の言葉に、一夏は喜んで了承した。
▼
クラス対抗戦 当日
アリーナ ピット
「これってつまり『毎日酢豚をご馳走してくれる』ってことだよな?どこもおかしくないだろ?なのに鈴のヤツ、なんで怒ってるんだ?」
「いや、どう考えたってお前が悪いに決まってるでしょ。」
出撃準備のため白式をまといながら、鈴との約束について話した一夏に対して冷ややかに突っ込む戦兎。
「な、なんでだよ!戦兎までそう言うのかよ!?」
「当たり前だろう!」
「一夏さんたら、乙女心をさっぱり理解していませんわ…。」
腕を組みながら怒る箒と頭を抑えてつぶやくセシリアも加わり一夏を攻め立てていた。
そうか?と首を傾げながら、しかし一夏はすぐに気を取り直しながらゲートの前まで移動していた。
「けどまあ…この試合で勝ったら説明してもらうって約束だからな、負けるわけにはいかねぇよ。」
(多分、一夏に説明したところで通じないんじゃねえかな?)
そんなことを思っていた戦兎を他所に、山田先生から一夏に鈴のISの説明がなされていた。
『あちらのISは
説明が終わった後セシリアと箒、戦兎からも激励が飛んでいた。
「わたくしの時とは勝手が違いましてよ!」
「あれから更に特練したんだ、今度こそ勝ってこい一夏!」
「ま、俺はあんまり特訓見てやれなかったけどさ…頑張れよ。」
『それでは両者、規定の位置まで移動してください』
アナウンスを聞くと一夏は、振り返って3人に向かって笑顔でサムズアップしながらは答える。
「ああ、サンキュー!」
そう言い残して一夏と白式はアリーナ上空へと飛翔した。
「一夏…」
「一夏さん…」
飛び立った一夏の後ろ姿を見つめながら、共に一夏の名をつぶやく箒とセシリア。
「…3人とも一夏のああいうとこに惚れたのかー。」
「ほ、惚れっ!?」
「な、ななな…!?」
ボソッと言った戦兎の言葉に顔を赤くしながら2人が抗議しようとした。
が、その続きは試合開始を告げるブザーによって打ち消された……。
▼
アリーナ上空
すでに先にスタンバイしていた鈴と甲龍の元へ飛んできた一夏と白式。
そんな一夏に対して、鈴は通信で話しかけた。
「今謝るなら、少しくらい痛めつけるレベルを下げてあげるわよ?」
「そういうのは好きじゃないな。それに雀の涙くらいなんだろ?必要ない、全力で来い!」
鈴の言葉に答える一夏、そんな彼に鈴は最終通告とも言える警告を発した。
「一応言っておくけど、絶対防御も完璧じゃないのよ?シールドエネルギーを突破する攻撃力があれば、本体にダメージを貫通させて死なない程度に痛めつけることだって出来るんだから。」
『それでは両者、試合を開始してください』
言い終わると同時に、試合開始のアナウンスとブザーが流れた。
ブザーが鳴り終え、まず真っ先に一夏が動いていた。
「うおおおおおお!」
雪片弐型を構えて、鈴めがけて突撃していった。
それに合わせてか、鈴も甲龍を加速させた。
白式の雪片と甲龍の青龍刀——
鍔迫り合いのまま2機は更に上昇し、互いに弾き飛ばすようにして距離をとった。
「ふうん、初撃を防ぐなんてやるじゃない、けど——」
そう言うと鈴は待機状態だったもう1本の双天牙月を取り出し、白式へと迫った。
二刀流による攻撃で一夏を相手取る鈴。
しかし一夏もこの数週間箒とセシリアによる特訓の成果か、雪片1本でなんとか乱撃をさばいた。
「チッ…」
少し不利と見た一夏は一時離脱するため、白式を加速させて鈴との距離を離す。
甲龍よりも機動性に優れた白式の動きを前に、しかし鈴はその様子を見て不敵に笑いながら、肩部の装甲が展開した。
「甘いっ!」
——次の瞬間、轟音と共に一夏の背中が爆発した。
「ぐあっ!」
【シールドエネルギー残量397】
勢いよく地面に叩きつけられる一夏、すぐさま体制を立て直して上空を見上げた。
「フフ…今のはジャブだからね。」
そう言うと再び甲龍の肩部装甲が展開されていた。
「なんだあれは…?」
「おおっ!あれが噂の
管制室のモニター越しで見ても視認出来なかった攻撃を見て怪訝な表情を浮かべる箒、それとは逆にその攻撃を見て興奮する戦兎。
「りゅ、龍咆…?」
「ええ、要は衝撃砲ですわ。空間自体に圧力をかけて砲身を生成し、余剰で生じる衝撃を砲弾化して撃ち出す…ブルー・ティアーズと同じ第三世代兵器ですわ。」
箒に龍咆の説明を述べるセシリア、その2人の様子を尻目に戦兎は未だ興奮したまま龍咆の強みを述べていた。
「そう、そうなのよ!あれは弾でもレーザーでも無く圧力そのもの、つまり砲弾も砲身も視認不可ってこと!だから今どこに攻撃が来てるのか、どこを狙ってるのかも相手からしたら分からない、もしくは分かりにくいって訳よ!おまけにユニット自体浮遊してるのもあって、360度どこでも狙える…死角無しなんだよ!
ちなみに空間に圧力をかけるって、言うのは簡単だけどすっげえ難しくてだな、まず必要になってくるのは——」
髪が寝癖のように跳ねながら、戦兎は誰も聞いてもいない龍咆の具体的な説明をベラベラと喋り始めた。
その説明をほとんど聞き流しながら箒は再び目線をモニターへと戻していた。
モニターでは全てとは言えないまでも、何とか衝撃砲の直撃を避け続ける一夏が映し出されていた。
(第三世代兵器による見えない攻撃——あんなに一方的に…クラス対抗戦に向けての特訓と称して無茶ばかりさせて……
私は何も役に立つことをしてあげられてないではないか——勝てなくてもいいから、無事に帰ってきてくれ一夏…)
いまだ逃げ惑う一夏を見守りながら、箒はただ祈ることしかできなかった…
「よくかわすじゃない、この龍咆は砲身も砲弾も見えないのが特徴なのに。」
鈴の見下ろす先では一夏が息を切らして雪片を構え直していた。
【シールドエネルギー残量247】
(鈴の言う通り、砲弾が見えないのはキツイ。おまけに一撃貰っただけでエネルギーが大幅に減らされる…どうする?)
そこまで考えて一夏は構えていた雪片へと視線を落とす。
『バリアー無効化攻撃?』
『雪片の特殊能力がそれだ。相手のバリアー残量に関係なくそれを切り裂いて本体に直接ダメージを与えることができる。』
以前、姉である千冬に教わった雪片弐型の特殊能力——
だが零落白夜は自らのシールドエネルギーを引き換えにして発動する特殊能力——まさに諸刃の剣だった。
(バリアー無効化攻撃…使えるか……?)
そう思っているや否や、再び龍咆が発射される。
何とかかわし、直撃を防ぎながら一夏は思いを走らせる。
(鈴は強い…千冬姉と違って出来の悪い俺はその実力差を何かで埋めるしかない。
気持ちだけは負けない、その強い意志が絶望的な戦いにも一筋の光明を指す——)
直後、再び背中に衝撃。
【シールドエネルギー残量116】
さきほどと同じくアリーナの地面へと勢いよく叩きつけられる一夏…しかしさきほどと違うのは、その顔には決意が滲んでいたことだった。
雪片を杖代わりにして立ち上がると、一夏はまた雪片を構え直した。
(1人じゃ無理でも、俺には仲間がいる…箒は剣の修行や心の強さも鍛えてくれた。セシリアはISの基礎を、接近戦に持ち込むための技能を教えてくれた…
俺は1人じゃない、仲間と一緒に戦ってるんだ!)
「…鈴」
「何よ?」
「……本気で行くからな。」
笑いながら言う一夏を前に、鈴はさきほどまでの余裕を失いながらも、しかし強い態度のまま叫ぶ。
「だから何なのよ、そんなこと当たり前じゃない!とにかく、格の違いってのを見せてあげるわよ!」
そう言うと鈴は両手の双天牙月を構えて一夏へと突撃した。
一夏は鈴の二刀の攻撃を全身の神経を集中させて回避し続ける。そして回避したまま、雪片の特殊能力…零落白夜を発動させた。
「ああもうしつこい!」
しびれを切らして両肩の龍咆を起動させ、一夏へと狙いを定める。
そしてその衝撃砲は白式へと放たれた。
一夏はとっさにその直撃を雪片で防いだが、弾き飛ばされた雪片が2人の上空へと舞っていった。
「一夏!」
「雪片が…あれでは…!」
モニターを見ていた箒とセシリアは雪片が弾き飛ばされたその瞬間、勝敗が決してしまったと思った。
だがその様子を見ていた戦兎は、両手いっぱいに持っていた龍咆の計算式が書かれた紙を投げ捨てながらモニターへと走り、そして叫んだ。
「いや違う、わざとだ!」
鈴は雪片を失っていた一夏へと龍咆で狙いを定めていた。
しかし一夏は小さく笑うと飛ばされた雪片目掛けて飛翔した。
さきほどまで一夏がいた地点を2発の衝撃砲が通り過ぎ、アリーナのシールドへと命中する。
続けざまに飛んでくる衝撃砲をかわしながら、雪片に追いついてキャッチした一夏、しかしすでに鈴の龍咆が一夏へと照準を向けていた。
そして雪片を取るために足を止めた一夏へ再び2発の衝撃砲が発射される…
しかしそれと同時に一夏はさきほどとは比べ物にならない速度で鈴の真後ろへと急降下して行った…。
一夏はわざと上空へと弾き飛ばさせた雪片を回収して注意を引き、そのまま鈴の後ろへと回り込んだのだった。
「うおおおお!!」
雪片の刃が更に輝きを増していく。
後ろにいる鈴へと振り返りながら大きく雪片を構える。
「くっ…!」
鈴はすぐに真後ろの一夏へと龍咆を向けつつ自身も双天牙月で反撃を試みる。
しかしわずかに一夏の雪片の方が早かった。
一夏は勝利を確信して——
直後、アリーナの遮断シールドが割れる音と何かがアリーナの地面へと直撃し爆発する音が響いた。
「な、なんだ?何が起こって…」
「な、何?」
「攻撃が逸れたの?」
「地震?」
観客席からも次々と疑問の声が上がっていた。
しかし、直後に白式のアラートが鳴り響いた。
【アリーナ中央に熱源反応 所属不明機と確認】
【ロックされています】
▼
「い、一体なんですの?」
狼狽るセシリアの言葉に答えるように山田先生が叫ぶ
「シールド破損、何かがアリーナの遮断シールドを貫通しました!」
その報告を聞いた千冬は無線機をひったくるとアリーナの2人へと指示を飛ばした。
「織斑、凰、試合は中止だ!今すぐピットに退避しろ!」
指示を聞いた鈴は一夏へと通信していた。
「一夏、試合は中止よ!すぐにピットに戻って!」
「無理だ、ロックオンされてるみてえなんだ!」
そこまで聞くと鈴は両手の双天牙月を構えて一夏の前へ出る。
そして一夏へ振り向きながら叫ぶ。
「あたしが時間を稼ぐから早く!」
「稼ぐって…女を置いてそんなことできるか!」
「馬鹿!アンタの方が弱いんだからしょうがないでしょうが!」
そう言うと鈴は未だに爆煙に包まれたまま見せない所属不明機へと視線を向ける。
「あたしだって最後までやる気なんて無いわよ、もうじき学園の先生たちが来るだろうからそれまでに——」
しかしその瞬間、爆煙の中からピンクのビームが鈴へと放たれた。
【高エネルギー反応】
【高出力ビーム】
「あぶねえ!」
一夏は叫ぶより早く鈴の元へと加速するとそのままお姫様抱っこの要領で鈴を抱き上げると、共にレーザーを避けた。
鈴は顔を赤らめ、しかしすぐに正気に戻って一夏の顔を押さえつける。
「…!ちょ、ちょっと馬鹿!放しなさいよっ!!」
「おい、暴れるなって!」
「うるさいうるさいうるさいっうるさいっ!!」
ポカポカと一夏を殴りつける鈴だったが、一夏は煙の中から姿を現した所属不明機を見ていた。
腕や脚が異常に長く、全身を包むような装甲、操縦者と思える胴体と一体化している頭部らしき箇所には幾多もの眼球が付けらている…まさに異形と呼べる造形をしていた。
「なんなんだ、こいつ……例の未確認生命体ってやつみたいな感じだけど…。」
そう呟く一夏の視界に白式のアナウンスが表示された。
【
「フルスキン…?そんなIS聞いたことないぞ。」
そう言うと山田先生から通信が入って来た。
『織斑くん!凰さん!今すぐアリーナから脱出してください!すぐに先生たちが制圧に行きますから!』
しかし一夏はさきほど所属不明機によって開けられた遮断シールドを思い出しながらその指示を拒否した。
「いや、あのISの攻撃はシールドを突破してきた…つまりここで相手しないと観客席にも被害が及ぶ可能性だってある。…先生たちが来るまで、俺たちで食い止めます。」
『え、ええっ!?だ、ダメですよそんな!生徒さんにもしものことがあったら——』
しかし山田先生の言葉を聞くことなく、一夏は未だに抱き上げていた鈴へと声を掛けた。
「鈴もそれでいいか?」
「だっ、誰に言ってんのよ!それより放しなさいってば!」
そう言って鈴は無理矢理一夏から振りほどき、一夏の横に降り立った。
「あたしが援護してあげるから突っ込みなさいよ、武器それしかないんでしょ?」
「ああ…じゃあ行くか!」
そして一夏は雪片を手にとって不明機へと突撃し、鈴も龍咆を不明機に向けて発射した…。
▼
管制室
「もしもし!?織斑くん!凰さん!聞いてますー!?」
山田先生が2人に通信で呼びかけるが一切返答がなかった。
そんな慌てふためく山田先生の後ろで腕を組みながら千冬が口を開いた。
「本人たちがやると言っているのだから、やらせてみてもいいだろう。」
「ええ!?お、織斑先生まで、何のんきなこと言ってるんですか!?」
振り向きながら驚く山田先生に対し、アリーナの状況が表示されているモニターを見ながら千冬は続けた。
「仕方あるまい、どのみちアリーナは正体不明機にハッキングされて完全に封鎖されている…あいつらが自分たちで打破するしかあるまい。」
モニターにはハッキングされた影響か、遮断シールドの設定変更や扉のロックが強制的に行われていることが表示されていた。
「そんな…!」
「この状況も、あのISの仕業ですの!?」
そのことを聞いた箒とセシリアは驚愕していた。
突如シールドを突破してきて、挙句に最先端技術の結晶たるこの学園にハッキングまで仕掛けてきたのだから無理もない。
戦兎はモニターを見ながら観客席への扉などは無事なことを確認すると管制室の出口に走って向かいながら叫んだ。
「じゃ俺、観客席の生徒への避難誘導してきます!」
「…ああ、わかった。」
一瞬こちらへ振り返った千冬の視線を受けた後、戦兎はそのまま外へと飛び出した。
「シールドが解除されれば部隊が突入できるのですよね、でしたらわたくしも部隊に合流できるように!」
そう叫んだセシリアも同じくアリーナの出入り口へと向かおうとしたが、
「駄目だ、お前は突入部隊には入れない…むしろ邪魔になる」
「な!…そんなことはありませんわ!」
千冬に却下されたセシリアは思わず反論した。
しかし相変わらずの様子で千冬は腕を組みながら続けた。
「では連携訓練はしたか?その時のお前の役割は?」
「!……そ、それは…」
そう切り返されてセシリアは何も反論出来なくなった。
その様子を見ながら千冬は小さく笑っていた。
「わかればいい、私だって教え子を失いたくはないからな。」
意気消沈しながら、しかしセシリアはあることに気づいた。
さきほどまで自身のとなりでモニターを見ていた箒の姿がどこにも無いことに。
「あら?篠ノ之さんはどこへ…?」
しかし、その問いに答えれる者は誰もいなかった……。
▼
アリーナ内 観客席
観客席までたどり着いた戦兎は、赤いライトに照らされ薄暗くなっている辺りを見回した。
既に生徒のほとんどが避難しており、観客席には誰もいなかった…もっとも、アリーナの出入り口はハッキングにより封鎖されているため、出入り口前で立ち往生しているのだろうが…
緊急事態の為かグラウンドと観客席の間にはシャッターが展開されており、一夏と鈴の様子は確認出来なかった。
しかし、2人と不明機との戦闘による爆発やレーザーの音は絶え間なく響いていた。
遮断シールドは通常兵器やISの攻撃を防ぐ役割があるが、さきほどの不明機のように高火力の攻撃をもってすれば、無理矢理突破出来なくもない。
…ビルドの攻撃パターンも想定出来てはいないだろう。
「よし、行くか」
そう言うと戦兎は懐からビルドドライバーを取り出して腰に押し付けて装着した。
そして火力を出せそうなフルボトルを取り出そうとして——
〜♪〜〜♪
直後、戦兎のポケットからビルドファンの着信音が鳴り響いた。
「な、なんだよ?」
まさか、そう思いながら戦兎はビルドフォンを起動した。
…そこにはスマッシュの出現情報が表示されていた。
「嘘だろ!?このタイミングでかよ!?」
規則性は一切不明だったこの世界のスマッシュは、夜間での出現は一貫していた。
にもかかわらず今日、それも今アリーナで襲撃を受けているこのタイミングでスマッシュは出現した。
さらに位置情報は……ここから数十メートルほど先の場所…アリーナ内部からだった。
封鎖されたこの場所にどうやって入ったのか…それはまだ分からないが。
「最っ悪だ…。」
グラウンド…それを遮るシャッターとスマッシュが居るであろう位置、その2つを見比べながら戦兎は考えた。
モニターの様子を見る限りグラウンドの不明機は一夏と鈴の2人掛かりでやっとと言うレベル、出入り口が封鎖されている今、増援も見込めない。
しかし、観客席側のスマッシュには戦える人物が居ない…専用機持ちであるセシリアがいるが、彼女とて実際に見たこともないスマッシュを相手に戦えるかどうか。それに成分を採取しなければスマッシュはギリギリまで戦い続けるだろう…。
そして戦兎は決断した。
「悪りぃな2人とも…そいつの相手はしばらく任せたぞ。」
そう言うと戦兎は今度こそフルボトルを取り出した。
カチャカチャと音を立てて振ると、戦兎の周囲には幾多もの方程式が飛び交っていた。
ひとしきり振ってから、戦兎はビルドドライバーへとボトルを装填した。
【ラビット!】 【タンク!】
R/T
【ベストマッチ!】
ボトルを装填し待機音が流れる中、戦兎は2人に任せる覚悟を決めてからハンドルを回した。
機械による製造音と共に周囲にスナップライドビルダーが展開されていく。
そして前には赤の、後ろには青の装甲が展開された。
ハンドルを回し終えて戦兎は左手を引き、右手を開いて前に出して構えた。
【 Are you ready ? 】
「変身!!」
腕を交差させて腰に回し、戦兎は叫んだ。
それと同時に前後の装甲が迫り、戦兎を挟むと煙を上げた。
【鋼のムーンサルト! ラビットタンク!】
【イエーイ!】
赤と青の姿…仮面ライダービルド ラビットタンクフォームはそのままスマッシュの現れた方向へと走り出した。
▼
複数あるアリーナの出入り口前では既に生徒たちが待機していた。この出入り口でも同じだった。
しかし出入り口は封鎖されており、今すぐ出ることは叶わなかった。
アリーナから絶え間なく聞こえる戦闘音を聞きながら生徒たちには不安が広がっていた。
「ねえ、結局なにが起こったの?」
「分からない…トラブルみたいなのは確かだけど」
「あの2人大丈夫かな…それに私たちも……」
辺りから心配と不安の声が広がっていた。
しかし、その不安を掻き立てるように小さな声の悲鳴が響いた。
「きゃっ!」
その場にいた生徒たちの視線がその方向…観客席へと向けられた。
長い通路の先に逃げ遅れていたと思われる生徒がこちらへと走り込もうとして——直後、その生徒の背後で火柱が上がった。
火柱の勢いで転んだ生徒はかけていた眼鏡を戻しながら後ろを振り向いた。
その火柱の煙の中から1つの影が見えた。
まっすぐ突き進んできたそれは赤と黒の色をした異形…スマッシュだった
「え、何アレ!?」
「化け物?」
「例の未確認生命体ってやつ!?ホントにいたの!?」
「嘘、こっちに来る!?」
突如現れたスマッシュに生徒は動揺、我先にと奥へ逃げようとする。
しかし出入り口は未だに封鎖されており脱出は叶わなかった。
「た…たす、けて……」
逃げて来た生徒は、目の前へと迫ってきたスマッシュから逃げれないと悟り、涙を流しながら目をつぶっていた。
スマッシュは生徒へバーナーを模した右腕を向けた。
そしてその腕から炎が噴き出した。
誰もが生徒が焼かれたと考えた、次は自分たちの番だと…
だが、そうはならなかった。
炎が生徒を包む直前、赤と青の影が飛び込んでいた。
自身は死んだ。そう思っていた生徒は、しかしいつまでたっても意識を失っていないことに気づいた。
恐る恐る目を開けると、まず最初に目に入ったのは出入り口にいた他の生徒たちの姿だった。
しかし彼女たちの視線は恐怖と言うよりも驚愕、困惑だった。
それと同時に彼女は自分が誰かに抱き上げられていることに気づく。
そして顔をそらすと、自身を助けた人物…赤と青の異形の顔が視界に映り込んだ。
「か…
今日この日をもって、都市伝説『
抱き上げていた少女を降ろすと、仮面ライダービルドは後ろから迫っていたスマッシュの火球を取り出したドリルクラッシャーで打ち消しながら迫っていた。
しかし、その心中は穏やかではなかった。
(よりによって……よりによって、このスマッシュかよ!)
思い出すのは…救うことができなかった命だった。
『私と出会わなければ…もっと幸せな人生があったはずなのに……ごめんね…』
『ふざけるな!…これ以上の人生があってたまるかよ。
俺は、お前と会えて…最高に幸せだった…!』
『…………ありがとう』
ビルドはその攻撃を避けてドリルクラッシャーで胴体を切りつけ、戦車を模した左腕で殴った。
『!!』
後ずさりしながら体制を立て直したスマッシュは、右腕をビルド…そしてその後ろにいる生徒たちへと向けた。
その光景を前にビルドはすばやく青緑のフルボトルを取り出し、振ってからビルドドライバーへと装填した。
「やらせるかよ!」
【掃除機!】
【 Are you ready ? 】
「ビルドアップ!」
青の装甲が横から現れた青緑の装甲と交換されてかき消えた。
ビルド トライアルフォーム・ラビット掃除機は発射された巨大な火球目掛けて左腕のロングレンジクリーナーをかざし、吸引を開始した。
掃除機の吸引力によって巨大な火球がトラッシュコンバーターへと吸い込まれていった。
『!!』
その様子を見てか、スマッシュは小さめの火球を周囲にいくつも生成して発射していった。
さきほどから湧く怒りとも驚きとも取れる感情を心の中で振り払いながら、発射される火球に神経を集中させた。
「よっ!ほっ!」
左腕を器用に動かし、後ろの生徒たちに当たりかねない攻撃を次々と吸い込んでいった。
スマッシュは炎を撃ち尽くして燃料が切れたかのように、その場に座り込んでしまった。
ビルドはさらに取り出した白と水色のフルボトルを振り始めた。
ひとしきり振ってからフタを回して、ラビットと掃除機と交換して装填した。
現在、ビルドが変身可能なベストマッチの1つだった。
【パンダ!】 【ロケット!】
P/R
【ベストマッチ!】
ハンドルを回し始めると、周囲にスナップライドビルダーが展開される。
前方に白、後方に水色の装甲が生成された。
【 Are you ready ? 】
「ビルドアップ!」
そして準備が完了し、装甲がビルドをはさむ形で装着された。
【ぶっ飛びモノトーン!ロケットパンダ!】
【イェーイ!】
手から肩までがロケットを模した左腕とパンダを思わせる巨大な右腕を装着したベストマッチ形態…ロケットパンダフォームに変身した。
変身が終わると同時に座り込んでいたスマッシュが起き上がり、再びビルド目掛けて火球を発射した。
「ほっ! はぁっ!」
ビルドはパンダの右腕に付いている巨大な爪——ジャイアントスクラッチャーで火球を切り裂いてかき消していく。
そして左腕の手から肩に取り付けられているロケットパーツを分離させた。
分離したパーツは徐々に合体していき、突撃ロケット——コスモビルダーになった。
「よーし行ってこい!」
ビルドは頭部の右眼のアンテナ——ブースターフェイスモジュールでコスモビルダーをコントロールした。
勢いよく飛んだコスモビルダーは、スマッシュへと加速した。
『!?』
スマッシュの腹部に命中したコスモビルダーはブースターの勢いをさらに増しながら、スマッシュと共に観客席側へと飛んで行った。
「よし…っと、危ねぇ危ねぇ。」
スマッシュを追いかけようとしたビルドは、しかしその動きを一旦止めて出入り口付近に固まっている生徒たちへと近づいた。
困惑する生徒たちの前で止まったビルドは、左眼のアンテナ——ラブリーフェイスモジュールを起動して、左眼から生徒たちの前に立体映像を投影した。
その装置からは……幼いパンダが戯れる映像が流れ始めた。
「うわっ可愛い!」
「え、えぇ…」
「どういうこと?何これ?」
歓声と困惑、疑問…様々な声が流れる中、ビルドは投影を終えて観客席へと走って行った。
ビルドが生徒にパンダの映像を見せてアフターケアを行なっている間、アリーナ全体の観客席を何周もグルグルと回り続けていたコスモビルダーは、ビルドが観客席へたどり着くと同時に目の前のシャッターと遮断シールドにスマッシュを叩きつけた。
シールドに大きなヒビを入れながら、コスモビルダーは分離してビルドに再合体した。
その壁に叩きつけられたスマッシュはグッタリとしたように崩れ落ちていた。
ビルドはドライバーに付けられたハンドルを回し始めた。
【 Ready Go ! 】
その音声が流れると肩に付いたロケットのエンジンパーツが点火した。そのままロケットの推進力に身を任せた後、ビルドはスマッシュの周囲に展開された白い円状のグラフに沿って猛スピードで周回した。
【 ボルテックフィニッシュ! 】
スマッシュは円グラフの内側の端におり、その端を通り過ぎるたびにジャイアントスクラッチャーで何度も切り裂いて行った。そして最後にロケットで突撃し、ロケットを叩きつけると同時にジャイアントスクラッチャーを深く突き立てた。
少しだけもがいたスマッシュは、その後すぐに緑の爆炎を上げた……。
後半の方に書きます。