吸い込まれるような緑の絨毯の上に、美しい女性が寝転んでいた。
緑色のシャープな瞳に流れるような黒髪。
誰が見ても美女である。
「はぁー今日もスズカさんは美しかったぜ...」
中身以外は。
このウマ娘の名前はキンイロリョテイ、勝った主なレースは阿寒湖特別
とてつもなくガラが悪く、この前などスペシャルウィークを睨みつけて泣かせてしまうなど、問題の絶えない女性である。
彼女は勝ったレースこそ条件戦だが間違いなくG1レースを勝ち抜ける実力はある、、、あるのだが、惜敗続きである
それは何故か?
あろうことかこいつ、先頭のウマ娘をニラみつけていたら
いつの間にかレースが終わっているのである。
そして彼女、あの逃亡者サイレンススズカの大ファンである。
天皇賞 秋、あの沈黙の日曜日が起こったレースで、彼女は言い方は悪いが勝てるレースで、スズカさんの故障を気にして
またも貫禄の2着
しかもである、そこからテイエムオペラオーさんに負け続けているにもかかわらず、そんな事は二の次とばかりにスズカさんの復帰3度目のレースを見に来ていた。
「あたしは次はなんになんのかねー、目黒記念かなぁ
なーんか気分乗らないんだよなぁ〜
この前はスペの野郎ニラみつけてたらレース終わりやがるしよぉ〜」
あの清楚な見た目とは真逆の言葉遣い、まさに残念美人である。いつも本気を出して欲しいと切に願っている人達が不憫である。
そのとき
「次いつのレース見る?」
「目黒記念かなぁ、キンイロリョテイちゃんが出そうだからな」
「そうするか、でもキンイロリョテイちゃんっていっつも2着とかだよな」
「わかる、美人だけどあれじゃ銀色のアカン子だなww」
「それがまた好きなんだけどなwww」
それがキンイロリョテイちゃん()の耳に入ってしまった。
「うっせええええよ!そんなに言うなら1着見せてやんよ!いっまに見とけよ、お前ら!」
ばーかばーかと叫んで走っていくキンイロリョテイだが、思わぬところで気合いが入ったようだ。
そんな気持ちで望んだレースは....
「フンッ!」
まさかの1着、重賞初勝利である。
応援している大きいお友達も、まさかの出来事に口が開きっぱなしだ。
しかもここで大きい知らせ。
なんとキンイロリョテイちゃんのトレーナー、まさかの彼女をドバイへ送り込もうというのである。
負け続きで、やっとG2初勝利をあげたアカン子。
まさかの海外遠征である。
え?
「おい、飛行機ってこんなんなのかよ...」
上空1万m、キンイロリョテイちゃん、リバース寸前である。ひどい顔色をしている。元々若いわけではないが、更に老けた気もする(美人には変わりないが)
「おい、水」
「は、はい」
酷い扱いである。真っ直ぐ走れないくせになんでいつも掲示板に入っているのか…不思議なウマ娘である。
そして
「うっひょお!おいおい金持ちどもがガン首ならべてやがるぜ!」
なんだこいつ
飛行機であれだけリバース決めてたくせに口だけはいっちょ前である。しかし体調は崩しているようでいつもより声が小さいような気がする(当社比)
「なぁなぁ、ドバイってのはどんな奴が出るんだ?」
「頼むから逆立ちしながら喋んないでくれ、あと練習をちゃんとやってくれ」
「うるせぇ、バシッと走ってやりゃいんだろ。いいから教えろ」
「わかったよ、あっと、こいつぁすごいぞファンタスティッ「呼んだかね?」
「「え(あん)?」」
「やぁやぁ遠く日本からご苦労なことだね?
僕はファンタスティックライト、まぁ世界一のウマ娘だね」
なにやら大仰な登場をしてきた豪華な衣装を見にまとった女性、とそこでキンイロリョテイは思い出した。
「あっこいつオペラオーに負けてたやつじゃん」
「ん?」
「あ?」
ニラみ合う両者、というかキンイロリョテイは初対面で煽りすぎではないだろうか?
「まぁテイエムオペラオーは強かった、それは認める。
だがね?所詮日本のウマ娘なんて強いのは一握りさ。
ドバイまでご苦労様、1着は僕が貰っていくから。惨敗して泣いて日本に帰るといい」
「自称世界最強様はお優しいなぁおい、オペラオーに負けたようなやつにあたしが負けると思うか?
そっちこそしっぽ巻いて負けないうちに母国に帰っといた方がいいんじゃないか?」
「なに?」
「あん?」
しばしニラみ合ったあと、呆れたように
「まぁ今日のところはこれで帰るとするよ、長い船旅を労おうと挨拶に来ただけだったんだがね、
とんだじゃじゃ馬に当たってしまったようだ。」
「うっせ、早く帰れ、お前だけにはぜってーまけねー!」
(なんてことをいっていたのだがね?
やはり1着は僕のようだね)
最後の直線前、ファンタスティックライトは先頭集団に付け、抜け出す準備は万全
そしてキンイロリョテイはというと...
(クッソ前があかねぇ!)
中団から未だ抜け出せずにいた。
ちくしょう、走れ!走れ!!!
(あのキザな野郎は...どこだ?
まだいない
いた。
そして前が開く
「うぉぉおおおおるるぁあああ!!!!」
「ファンタスティックライト抜け出した!内からキンイロリョテイ!!」
(なに?アイツが?)
「おらぁ!!追いついたぞ!この野郎!」
(くそっなんだアイツなんで叫びながら走ってくるんだ)
(くっそめっちゃはえぇ!ぜってぇまけねぇ!これを勝ってオレもG1ウマ娘の仲間入りだ!!!!)
(なんだこいつ!なんで振り切れない!だがこのまま逃げきれば勝ちだ!)
追いつけ追いつけ追いつけ!!!
逃げ切る!!!!
追いこ..し...
「ファンタスティックライトか?キンイロリョテイ!ファンタスティックライトか?キンイロリョテイ!!キンイロリョテイ!!!二頭並んでゴールイン!」
「ハァ.....ハァ.....アタシの勝ちだ!!!」
「ハァ....気にくわないが、僕の、負けだ。」
そして、、、、
「ハッハッハ!ドバイで負けはしたが!聞けば君はG1が未勝利だそうじゃないか!戦績では僕の勝ち!!つまり世界最強は僕だ。」
「こいつううう!負けたくせに!勝ったんだから気分良く帰らせろ!
くっそ!ドバイなんたらって豪華な名前してっからG1だと思ったのにG2なのかよ!!」
「来年からG1になるらしいぞキンイロくん」
「うっせぇ!日本に帰ったらG1なんてバンバン勝ってすぐお前なんて越してやるから待っとけよ!」
帰りの飛行機
「もう飛行機なんてきらいだ。海外なんて2度といくかばかやろー!」
なおこのG1勝利宣言は近いうちには果たされることはなかった。
レースってどうやって書けばええねん(戦慄)