次回あたりで鈴ちゃんを中国送りにしよう。
ガウェインを見送ったあとに"薔薇騎士"と"焔獅子"の両方を量子化して回収する。
それを切っ掛けにしたかのように軍人が俺を囲むが、俺はそれを気にせず一夏が誘拐された部屋へと近づく。
だが軍人共はそれを良しとせず、俺に拳銃を突きつける。
「先に言っておくが、俺も篠ノ之博士もドイツが人体実験を行っているのは知っていたし詳細レポートも掴んでいる。それとも俺を今ここで殺すか?」
一応ドイツ語で言ってやったが、こいつらは構えを解かない。
アレ?ドイツ語通じないのか?
まあいいや一斉射撃されても俺には効かないし…
この状況で何も対策を練らないはずもないだろうに…
膠着状態に陥ってしまって暇だったのでアリサちゃんに秘匿回線で無事に済んだことを伝える。
『貴方…何やったんですか?』
「ごめん。ドイツの人体実験に巻き込まれてやむを得ず…」
『人体実験?相変わらずこの国は…ドン引きです』
「いや、俺に言われても…」
『まあ、もう倒しましたけどね』
速いなぁ…
後は他愛ないことを話し回線を切る。
これで残るは決勝戦だが、姉さんは不戦敗になる。
リミッターは外すのは簡単だが付けるのに時間がかかる。
一応今すぐに姉さんが戻るのならギリギリで間に合うように出来るが、それをよく思わないものがいる。
まあ、国というか政府か?こうゆうのよくやってるから不思議にも思わんけど、俺の弟まで巻き込んだんだ…
ただで済ませるつもりはない。絶対に後悔させてやる。
第2回モンドグロッソが終了し、一週間が過ぎた。
俺と無事姉さんに救出された一夏は日本へ帰国し、姉さんはドイツで一年教官をやることになった。
モンドグロッソは結果を見れば姉さんの不戦敗によるアリサちゃんの不戦勝なのだが、アリサちゃんはそれを認めずブリュンヒルデを辞退した。
他の国家代表も同様で姉さんを倒さずにはブリュンヒルデにはなれないと口を揃えて言った。
姉さんは国家代表を引退し、単身ドイツへ渡って教官をしているが俺にもドイツ政府から要請があり数ヶ月に一度の割合でドイツへ行っている。
一夏は誘拐されて以来何かと思いつめるようになり、鈴とノッポに心配をかけている。
アリサちゃんはモンドグロッソが終わった後直ぐに国家代表を引退してIS学園の非常勤医師として専用のラボで平和を享受しているそうだ。
ただ、ロシア代表をアリサちゃんから継いだ刀奈は父親から当主の座を受け継ぎ現在かんざしと大喧嘩中らしい。
来年からIS学園に行くらしいけどアリサちゃんにドン引きされる未来しか見えない。マジでお気の毒。
まあ、姉妹なんだから喧嘩ぐらいいくらでもすればいい。俺も流石に一夏が暗くなり過ぎた時に鬱陶しくなってしばき倒した。
その後、大乱闘(文字通り)を学校で繰り広げて二人揃って自宅謹慎を言い渡され更に姉さんからのお説教をテレビ電話越しにされた。
喧嘩をしてそのままって時もあるが基本は仲直りをしてお互いの気持ちを確認するのが常だろう。
簪も何れわかるだろう。というかあの二人ろくに顔も合わせずにいるらしい。
『ねえ、博士。わたしって居ない方がいいのかな?』
「刀奈がどう思っているかはともかく、俺は簪と話せて楽しいぞ?」
『え…それって……』
「他人の不幸は蜜の味ってゆうじゃん?」
『あ、うん。知ってた。』
簪からは週一の割合で連絡が入り愚痴られる。だが、個人的には特別扱いされないこの距離感は結構気に入っている。
ただ、連絡するのはなんでいつも真夜中なのかを問い質したい。いや、どうせ深夜アニメ始まるまでの繋ぎなんだろうけどさ…
『あ、それじゃあ今日はこのへんで』
「はいはい」
連絡が途切れた携帯をベッドの脇に置いて、俺は目を閉じる。思い返すのはモンドグロッソで暴走していたISに乗せられていた少女のこと。
あれから束姉からの連絡はないが調整で忙しいんだろう。あれから調べてみたが、予想通り人工授精の試験管ベビーだった。
しかも量産済み。そして、あの少女はその中の失敗作の一人だったようだ。
成功例が既に生まれて既に量産は凍結しているが、既に生まれた分についてはどうするつもりかは大体の予想をしている。
外れていて欲しいとも思うし、あの計画もドイツ軍の一部が隠れてやっていたことだから大丈夫だとは思うが一応用心と脅しをかけておく。
いっそのこと穏健派にリークして保護してもらうのも手だが、下手なことすると今の世界情勢が崩れかねんから動きたくても動けん。
最悪こっちで保護すればいいだけだし、たったの数百人程度なら俺の貯金で余裕で保護できる。
だが、下手なことして動くわけにも行かない事情もある。暫くは束姉に任せるか。
時刻は既に2時過ぎ。そろそろ寝るか…
明日も学校あるし…
『ヤッホー、しーくん!!みんなのアイドル束さんからのラブコールだよ~ん』
はぁ、今日は徹夜か。授業中に寝よ。
束姉から安眠妨害されて授業中に惰眠を貪ってから数ヶ月が過ぎた。
特に珍しいこともなかった。あるとすればアメリカが馬鹿共にISを一機奪われたぐらいか?
ピザとコーラの国だからな。仕方ない。
御陰で俺にコアを作って欲しいと言われたので丁重にお断り頂いた。
あんまりにもしつこいのでかなり法外な値段を吹っ掛けたら迷った挙句に諦めた。
ふむ。流石に国家予算の数千倍は吹っ掛けすぎたか?
まあ、そんなことはいいや。
現在俺がいるのはIS学園の理事長室。この後ドイツにも行かないといけないというハードスケジュールなので真面目にやるとしよう。
目の前にいるのは優しそうなお爺さん。IS学園の真の親玉だ。
「博士にお越し頂いたのは他でもありません。どうか整備科の臨時講師をしていただけないでしょうか?」
爺さんは今まで俺に頼み事を言ってきた奴らとは一線を画すほどの真剣な表情で俺に頼み込んでくる。
その目には光があった。生徒たちに最高の環境を与えてやりたいという意思があった。
「来年からなら引き受ける。それと交換条件というわけじゃないがこちらの頼みも聞いて欲しい」
「ええ。構いませんよ」
「まだこっちは何も言っていないぜ?」
目の前にいる爺さんはニッコリと笑ってこちらの意見を封殺した。今までだってこんなことはあったが悪意をかけらも出さずにやられたのは今回が初めてだ。
いや、まさか…
この爺さんは俺に対して悪意を抱いていないのか?
今までの奴らは俺に対してかけらでも悪意を抱いていない者はいなかった。
それもそうだろう。女尊男卑の風潮になったとは言え国や政府、軍といった組織のトップには今でも男が居座っている。少なからずだが女性もいるが、その数は未だに少ない。
そして、女尊男卑の風潮の原因になった原因の一人が俺だ。憎むなという方が無理な話だ。現に女性権利団体からも恨み言が来ているくらいだ。
「わかった。じゃあ、今からアリサちゃん借りてくね」
爺さんは構いませんよとは言わずに微笑むだけだった。本当に変わっている。
憎まれなかったのは久しぶりだ。今時家族同士、兄弟姉妹でだって憎み合うのに…
姉さん以来かな、こういうのは…
気分もいいし、さっさと行こう。
部屋を出ると、すぐ傍にアリサちゃんがいた。それを遠巻きに見るように生徒達が野次馬のごとく群がっていた。
「それで?」
「ドイツに行くからボディーガードお願い」
「ISは?」
「準備万端」
「なら早く行きますよ」
アリサちゃんが校舎から出るために歩き出すのと同時に俺も歩き出す。
野次馬がモーゼのように割れて道ができる。まあ、アリサちゃんが視線で邪魔だと言っているだけなんだけど。
目指すはドイツのベルリンにあるドイツ軍最高司令部。
さあてと、救いに行こうか被害者を。俺のせいで不幸を望まれて生まれた子を。
既に何人もの犠牲が出ているが、これは全て俺の責任。その命を背負えるほど俺は人間性が出来ていないし間違っても背負えるとは言えない。
故に俺はこの時点で…いや、もうずっと前から殺人者だ。ISによって出来た傷は全て俺が悪い。
束姉は関係無いなんて言うつもりはないがあの人は他人に対して心を開くことがない。
全てに対して無関心。誰かがISのせいで傷ついたとしてもかけらも気にしないだろう。
だから俺だ。憎しみは全て引き受けよう。それで気が済むのなら安いものだ。俺が傷つくことで被害者の心が晴れるならお釣りが来るくらいだ。
何人救えるかはわからないが、俺は俺の全てを賭けてあいつらを救おう。
「また馬鹿なことを考えてますね?」
「なんのこと?」
「貴方が傷つくことで確かに気が晴れる人もいるでしょうが、私はあなたが傷つくことが嫌ですよ。そんなことになるぐらいなら私があなたを守ります」
「……………」
「貴方の考えていることがわかるなんて無責任なことを言い張るつもりはありませんが、無駄とだけ言っておきます。貴方が一人で背負えるものではありませんし少なくとも私はそんなことを望みません」
「わかってるさ。俺が犠牲になってもそれはただの逃げだ。」
「まあ、貴方の決めたことに口出しする理由も権利も私には有りません。好きにしなさい」
アリサちゃんはそれ以来黙ってしまった。
ドイツについてもそれは変わらなかった。ただ、俺の身を案じていてくれているということだけはわかった。
ギャグにしようと思ったら何時の間にかシリアスになっていた。
それだけまでならあるあるなんだが、四季くんがなんか詠唱しだしてるし…
おかしいな。アレ~?
取り敢えず、万仙陣やってくる