多分怒りの日の効果だ。
人というのは基本的には群れて暮らすことを望む。まあ、望まないうちに孤独を味わうのはよくあることだ。
女尊男卑の世の中になる前から『ニート』や『ヲタク』、『引きこもり』という存在はいたが、今はそれが途端に増えている。
まあ、学校に行ってもボッチ。更にクラスの女子からは虐められそれを告げ口しようものなら冤罪で警察行きなんてのはザラだ。
『女性権利団体』。ISが出来る前からその組織は存在していた。当時は男女平等を謳っていた真面目な組織だったが今では当時の面影はなく、男を虐げるための組織に成り果ててしまった。
まあ、組織の中には当時の思想を受け継いでいる真面目な構成員もいるが圧倒的に少ない。
要は何が言いたいのかというと、久々にイジメを受けたというそれだけの話だ。
まあ、一応教師でもある俺が生徒から虐められたなんて口が裂けても言えないとでも向こうは思っているのだろうが、それは悪手だ。
やったのは女尊男卑の考え方が凝り固まったはっきり言って害悪としか言えない新入生だった。
さてどうしたものかと思案しているところにやってきたのは俺と同じ非常勤という称号を手に入れたアリサちゃんだった。
そう、アリサちゃんに虐められていることがバレたのが全ての原因なのか、虐めてきたアホ女が原因なのかはわからんが俺に対する生徒の視線が妙になったのはその時からだった。
アホ女は入学から数日で退学した。まあ、はっきり言ってどうでもいいので記憶の隅に追いやっていたが数ヶ月経った今、女性権利団体から今更としか言い様がないような苦情が来た。
しかも、そのアホ女のことでだ。
はっきり言って呆れて何も言えない状態だ。職員室の自分に割り当てられた机でメールを見て硬直していたので姉さんやアリサちゃんを筆頭にした教師陣にも見られてしまった。
「え、今更?」
俺の口から絞り出せた言葉はそれが限界だった。
「呆れてモノも言えませんね、ドン引きです」
アリサちゃんはメールの送り主である女性権利団体に対して絶対零度の視線を送るがそれは届くことはなかった。向こうも元国家代表を敵に回したとは夢にも思っていないだろう。
というか、職員室の室温が下がった気がする。背筋が震えてるし。山田先生なんてガチで震えて顔色を青くしている。
「まあ、束姉がなんか手を打ってるし無視でいいか」
「そうだな。私からも束に言っておく。四季あまり気にするなよ?」
姉さんに頭を撫でながら言われ嬉しく思うもここが職員室だったのを思い出して姉さんの手を振り払う。だが、時すでに遅く教師陣からは慈愛の視線が送られてきた。
なんだ、俺はマスコットか何かか?
視線を無理矢理無視して束姉に連絡してみるとすでに処理済みらしく、ネットニュースを見てみると速報の欄に『女性権利団体、予算横領』という見出しで上の人間が何人か捕まっていた。
敵にした相手が悪かった。これがそこらの男だったら向こうの思い通りに運んだだろうが、俺や束姉に関係ある者に手を出せば当然こうなる。
というか、弱みを一つも握られていないとでも思っていたのだろうか?お粗末すぎて同情する。
姉さん達も済んだこととして自分の仕事に戻る。アリサちゃんも自分の研究室へと帰っていった。
さて、俺も2年生の相手と行きますか。入学式から数ヶ月が経過したが八つ当たりは未だに終わっていない。
俺は根に持つぞ、馬鹿ども。
「いい加減に許してやれ」
「………」
姉さんにはいつも考えが筒抜けになってるので最近は姉さんが苦手だ。
さて、
既に予鈴が成り終わった学園の廊下を白衣を身に纏い片手で整備科で教える教書を持ち人気のない廊下を目的地に向けて早歩きで歩く。
IS学園の教室というよりもこの学園自体が最先端技術を使用している。そのため昔あった黒板消しトラップとかは使えない。なぜなら教室の扉は自動ドアになっているからだ。
だが、自動ドアの機能を利用したトラップぐらいは出来る。つまりは次世代型黒板消しトラップというものが出来上がる。
そして、教室の前でそれが仕掛けてあることに気づいた。ドアを離れた位置から遠隔で開けて回避することもできるがせっかくなので無理矢理粉砕してみることにした。
にしても、黒板消しは既にIS学園では使ってないというよりも設計当初でデジタル式にしてあるのでチョークすらないはずなんだがな…
空気の抜けるような音と共にドアが開く。ドアに挟んであった紐が自由を得て先っぽに括りつけられた黒板消しの自重によって下へ落下する。つまりは俺の頭上だ。
教室内にいる一部の
教書の持っていない自由な左手を真上へ上げて黒板消しを掴みそのまま
左手はほぼ丸ごと義手に変えてあるのでこのように姉さんの真似をすることができる。まあ、それも片手で出来る範囲に限られるが…
左手からバキバキと音が教室中に響き黒板消しの上部分が粉々に砕け散り床にパラパラと零れ落ちる。下部分の布を片手でビリビリと中に入っているスポンジごと器用に引き裂く。
教室内は静寂に満たされているが俺はそれを気にせずに教卓へと歩を進める。丁度授業開始のチャイムもなったので俺は仕事の時間だ。
「よし、アレを仕掛けた奴は3秒にないに出頭しろ。でないと酷いぞ?」
教室内は未だに静寂に包まれている。いや、ダブ子姉は正気に戻って冷や汗を流している。
「3…零。ハイ終わり」
「「2と1は!?」」
「あん?ねぇよんなもん」
教室内の生徒の全員が再起動しているようなのでこのまま授業に移る。
「よし、36ページ開け。今回の主犯格の浅田はPICについて音読した後、お前なりの言葉で簡単に説明してみろ」
「え!?は、はい」
教室内の視線が窓際で冷や汗を流している浅田に注目している。というよりも非難の視線が集中している。
悪戯好きとは言っても流石にお嬢様なだけあって返事はきちんとしている。
浅田は周囲の視線に罪悪感を抱きつつも椅子から立ち上がり教書に書いてある基本的な内容を読み始める。
これは読んでいる本人がどこまで理解できており、かつ自分が本当に理解しているか解らせるためだ。理解していないのならそこを指摘すればいい。
『PIC』。パッシブ・イナーシャル・キャンセラーと呼ばれるISの基本システムの一つだ。
ISを浮遊させたり、加速減速などを行うシステムだ。まあ、簡単に言えば慣性を無効化するための装置だ。これは本来宇宙空間での使用を目的としたシステムなんだが、知っての通りISが宇宙空間で利用されたことはない。
これがないとISは浮かばないし、場合によっては歩くことはおろか立ち上がることすらできない。
「――このように『PIC』はISにとって一番重要な機関でもある。」
丁度浅田が読み終わったので俺は視線で浅田自身の答えを促す。
「えっと、『PIC』は…ISの心臓みたいなもの…かな?」
ギリギリ及第点レベルか?
「理由は?」
問題は浅田が自分の考えを説明できるかどうかだ…
「えっとですね。最初はコアが心臓に当たるかもと思ったんですが、コアはどちらかというと脳に当たるんじゃないかと思ったからです」
成程。人によって考え方は千差万別だがその考え方はなかなか面白い。
「まあ、及第点だな。座っていいぞ」
「よかった~」
浅田が胸を撫で下ろして着席するが教室内にいる生徒の半分ほどが未だに顔を強ばらせている。ダブ子姉は既に諦めムードだ。
「そういや、浅田。なんで黒板消しトラップなんかやった?」
「へ!?いや、先生の泣き顔が見たくて…」
浅田の声を聞いた瞬間教室内の空気が固まった。というか教室内の生徒全員が顔を強ばらせた。今まで以上に。
「そうか。じゃあ、全員連帯責任で評価段階一つ下げるから」
「「ええええええええええええええええええええええええええ!!??」」
教室内が阿鼻叫喚の悲鳴で包まれ、混沌と化す。
「という訳で赤点者が過半数超えたので来週と再来週の土日は朝から晩まで補修です。全員強制参加。不参加の場合は留年、以上」
「「そ、そんなあああああああああああ!!??」」
これも全て浅田が悪い。俺は悪くないというよりも俺の休みも潰されるんだぞ。
「先生!!来週私彼氏とデートがあるんですけど!!」
「そうか、残念だったな。お預けプレイを楽しめ」
「「裏切り者だ、囲め!!尋問の時間だ!!」」
「騒ぐなら授業が終わった後にしろ。もう一段階下げるぞ」
「「すいません!!」」
この騒ぎの中でダブ子姉だけが声を出さずにため息をついていた。はあ、帰りたい。
アニメ化決定したね。何がとは言わないけど。
この作品でも一応若干、それとなく関係あったりなかったりするのでステマ(?)しておく。
そういえば、35人の娘の名前って公表したほうがいいですか?
別にいらないようなら公表しませんけど
次回は一夏がIS起動しちゃうところだと思う。
原作と違って弾も起動しちゃうんだけどね