まあ、時間停止ぐらいならなんとかなるけど永劫回帰なんてどうやろうか?
最期の隔壁を破壊し最下層にたどり着いた時、一番近くにいたのはISを装備していた女だった。
日本製のISじゃなく、フランスの第2世代型IS《ラファール・リヴァイヴ》だ。
フランス所有のISが一機盗まれる事件が数ヶ月前にあったがそうゆうことか。
一夏に手が出せないから日本政府の一部に手を回して弾を回収しようとした訳か。スコールにしては雑な作戦だな。
まあ、いいや。喧嘩売ってくんなら纏めて叩き潰すだけだ。
一瞬遅れて反応したラファールの動きに合わせてこちらも動く。
ラファールは量産目的に作られたバランス型のISだ。近接も遠距離もどちらもそれなりにできるようにシステムが調整されている。そしてこの女が選んだのは遠距離での銃撃。
だが、そう簡単にやらせるほど俺は甘くはないし、このリーゼは鈍重ではない。
リーゼの瞬間突破力は他の追随を許さない。後ろに下がったラファールに一瞬以下の時間で接近しゼロ距離からバンカーを見舞う。
女の顔が焦りから恐怖そして激痛に変わり最下層の壁まで一気に吹っ飛ぶ。壁に罅を入れそのまま床に崩れ落ちる。
床に崩れ落ちたラファールは損傷が酷く直ぐに待機状態に戻った。
静寂が空間内を支配し、俺は何も言わずに檻に囚われた五反田一家を開放する。ここまで来たらISがなくても問題ないのでリーゼを待機状態に戻す。
「四季君…」
蓮さんが声をかけてくるが俺は迷わず政府の馬鹿に向けて歩を進めてその馬鹿の顔面に渾身のストレートをブチ込む。
「グペッ!」
意味のわからない言葉を発して倒れる馬鹿を睨みつけ、もう一発殴ろうとしたところを厳さんに止められる。
「もういい。止めろ」
俺は掴まれた腕を振りほどき高官を殴るのを止めた。別に厳さんに言われたからではない。最初から一発だけと決めていたからだ。
弾は既に蓮さんと妹ちゃんに助けられており、拘束も解かれていた。
「何故だ…」
声がした方を向くと、秘書に支えられながら立ち上がった高官がいた。
「何故貴様はISに乗れるのだ!!」
なんだそんなことか…
「あのなぁ、自分の使えないものを開発するような間抜け共と俺を一緒くたにするな」
俺が無表情で冷ややかに言った言葉を聞き、高官は顔を赤くさせ怒りに震えた。
俺を睨みつけ、その目は怒りというよりは殺意に満ちていた。
怒りに震えていた高官は無言で懐に潜めていた拳銃を俺に向けて警告もなしに引き金を引いた。
最下層に銃声が響き渡り、俺は未だに立っていた。俺の姿を見て高官は残弾全てを俺に向けて撃ち、弾が尽きた後も引き金を引き続けていた。
それでも俺は倒れなかった。いや、正確には拳銃より放たれた弾丸は俺に届く前に止まっていた。
「危ない奴だな…」
今、この空間の視線は俺に向いている。俺がISを展開もせずに拳銃の弾丸を止めているからだ。
そして、床に崩れ落ちていたラファールが立ち上がり、その手にはアサルトライフルが握られていた。
銃口から火が吹くように、弾丸が連続で息をつく暇もなく俺を襲う。が、これも俺には当たらず俺に中る前にその速度を止めてその場に停滞する。
ラファールが射撃を止めると搭乗者は舌打ちをしてラファールを待機状態に戻す。
「"AIC"か?」
「いいや、俺の周囲の空間の時間を止めているだけだ」
俺の発言に空間内の全員の顔が驚愕する。
俺の背後には人型の機械がいた。その手に断頭台のような刃物を付けた3m程の人型。俺の作り上げた切り札の一つ。
"永遠の刹那"
まだ時間停止も完璧ではないし、体も素体の状態なのであんまり無茶はさせたくないのだが今回は仕方ない。
"死喰い"や"戦姫"を使ってもいいのだがあの2体にはこれから仕事があるので今は使えない。
他の奴らも今はメンテナンス中なので"永遠の刹那"の出番というわけだ。
「ちっ」
ISを解除した女は舌打ちをして俺の動向を伺う。
"ヤツラ"の仲間とは思ってたがまさかオータムとはな…
今回の計画はスコールまで絡んでるのか?相変わらず俺に対して虐めじみたことしてくる女だ。
まあ、いい。俺が吹っかけなきゃ大人しくしてるだろうし。
「ああ、そうだ。お前、逮捕状出てるから大人しくしておけよ?」
残弾の尽きた拳銃を握り締めて呆然としている高官に向けてそう言い放つと高官はさらに呆然としている。理解が追いついてないな、これは…
「簡単に逃げられると思うなよ?」
一応釘を刺しておくと観念したのか項垂れるように地面にへたり込む。
こっちはこれでいいとして、オータムは放置プレイ安定として、弾だな。
「四季…」
「迷惑かけたな」
「え?」
そう。これは俺に責任の一端がある。俺がISのコアを作らなければ弾は今までどおりの生活を送ることができた。だが、これからは違う。
もう弾には普通の生活を送ることはできないだろう。ISを動かした男。それが永遠に弾に付き纏うからだ。
「いや、お前の責任じゃねえ。不用意に触った俺自身の責任だ」
弾はそう言って俺の言葉を否定した。
「だが…」
そう。俺はお前のその言葉を否定する。
「俺のせいだよ。家族みんなに迷惑かけたのもIS動かしたのも全部俺の責任だよ」
弾はそれでもなお俺の言葉を否定し続ける。
「誰がなんと言おうとお前のせいなんかじゃない。」
俺はこの言葉も否定するつもりだった。だが、言葉が出てこなかった。
「はぁ、もういい。勝手にしろ」
「なんだ、四季坊。照れてんのか?」
「うるさい」
珍しく茶化してくる厳さんをあしらいつつ今いる最下層から出ようとする。
五反田一家もついて来ているのを確認してどうしようかと考える。
「おい」
声のした方へ振り向くとオータムがいた。
「あ、忘れてたわ」
「てめえ、死にてえのか?」
「できるものなら?」
喧嘩を売ってしまったものは仕方ない。脅してくる相手に煽りで返すのは俺の趣味だ。
「とゆうか、さっさと帰れよクソテロリスト。中東らへんで人殺しでもしてろ、このバカ」
「あぁ!?最初にてめぇからぶち殺すぞ、このクソガキが!!」
煽りすぎると殺気をぶち当ててくるオータム。沸点低すぎだろコイツ…
「だから、出来るもんならやってみろっつってんだろ?先に蒸発させるぞ?」
紅蓮の右腕を部分展開していつでも
まあ、ただの脅し合いだしいっか。俺も向こうもそこまでやる気ないし。
オータムは舌打ちをして床に唾を吐いて《アラクネ》を展開して飛び去っていった。やっぱりアイツ等が盗んだのか。いや、わかってたけど。
流石オータムさん。マジバッチイっす。
「唾吐くなよな、汚い奴だなぁ…」
そんなことを呟きながらヌルに連絡して迎えをよこすように指示を出す。
五反田家まで迎えに来た特殊軍用バギーで帰ってきた五反田一家と俺と運転手と護衛の5人の娘(仮)。
運転手のラウシュ。護衛の4人がヒュンフ、ノイン、エルフ、エルガだった。
ノインとエルガの二人を外で警備させ、内部での護衛として残り3人を配置する。
「一応説明は日本政府に任せるから」
「くるのか?」
俺の言葉に厳さんが苛立ちながらも聞いてくる。そりゃあ、起こるわな。俺が怒られていないのが不思議なくらいだわ…
「ああ。来ないなら日本政府が人体実験しようとしたの世界中にバラすって脅したから確実に来るだろう」
「お前、鬼だな…」
次に反応したのは弾だった。その実験されそうだったのはお前だぞ?
そのまま他愛のないことを話しながら待つこと10分。
「遅いな、バラすか…」
「もうちょっと待ってやれよ」
苦笑しながら弾が突っ込んできたので待つことにした瞬間、表で警備しているノインから通信が入る。
仮想ディスプレイに表示させると現総理と護衛が10人ほど来ていた。
「御父様、日本政府のクソ野郎どもがこられました。殺しますか?」
妙に苛立ったノインの言葉にそれもいいかと考えながらエルガにノインを落ち着かせるように言っておく。
「全員通せ」
「よろしいのですか御父様?」
「ああ。いざとなったら蒸発させるからいい」
俺の言葉が聞こえていたのか総理は顔を青ざめさせている。
通神を切って、ラウシュに迎えに行かせる。
「御父様?」
妹ちゃんが呟き、五反田家全員でこっちを見る。こっち見んなし。
「保護しているだけで実の娘じゃねえよ」
「そんな御父様!!私達のことがお嫌いなのですか!?」
あ、めんどくせえことやりやがったな、コイツ…
このバカヒュンフが。めんどくさいのでスルー。
「あ、無視ですか?無視なんですか、御父様?」
コイツの絡みウザイ…
エルフは俺も含めてスルーか。相変わらずのヒッキーだな。
さて、ラウシュに連れられて入ってくる総理に視線を向けて、思考を切り替える。
ヒュンフには言わなくても伝わったのか、既に真面目な顔で総理に視線を向けている。
ギャップでちょっとアレだわ。シリアスになれないわ。
「なんで人体実験しようとしたのか説明してもらおうか?」
まあ、まずはめんどいことから片付けるか。
時間停止はAICの超絶発展型とお考え下さい。
つまりは止める対象を空間に指定してその空間内にあるもの、空間内に入ってきたものの動きを止める。
未だに試作段階なので人間が入ってきてら時間停止じゃないことがバレる。
銃弾とかなら平気で止めれるけどね。
時間止めるとかどうやればいいんだろ…
まあ、なんとかなるだろ(白目