蓮さんから弾の荷物(マンガとラノベとゲームとエロ本)を受け取り、そのまま家へと向かう。
流石に荷物が邪魔なので車に置いておくが。
家の中に入ると、特に異常はなかった。既に地下に回収されたか…
束姉と一緒に姉さんに内緒で改造した家の地下にあるIS用の整備室。そこへと通じる扉を開け、中へと入る。
「やっぱり、"紅蜘蛛"置いといて良かったわ。お前らみたいな馬鹿が来るだろうからな」
合計6名。全員が身動きも取れずに声も出せない状態で喋ろうとしたり、手足を動かそうとしているが、無駄の一言に尽きる。
下っ端だし大した情報も持ってないだろうから生かしておく必要性すら感じないが、こうゆうことを考えると…
「しーくーん!!!」
本当にどこから湧いてきた…
「束姉、単体ワープするの止めない?」
「おやおや。流石は束さんの旦那様、私の神出鬼没の原因に気付いたようだね!!」
何時から俺はアンタの夫になった!?
絶句して何も言えないままの俺を見て、満足そうに頷く束姉。
「この塵芥共は私が回収するよ。チョットばかし気になることがあってね…」
珍しく真面目な顔でシリアスな雰囲気を演出する束姉。性格を知ってる俺としては超シュールに感じる。
俺の返事を待たずに、更に身動きを取れなくしたアホ6名を回収してロケットに詰め込む。
「じゃあ、アデュー」
そして、消える。
「まあ、いいか。深く考えたらキリがないし、後始末もめんどくさかったし…」
さっきまでの光景を封印して、地下室を後にする。
俺と一夏の荷物(マンガ、ラノベ、ゲーム)を詰めて学園に帰った頃には既に門限を過ぎていた。
ラウシュも帰らせたので重たい荷物を部分展開したリーゼで持っているわけなんだが、1年寮の入口に姉さんが日本刀を地面に突き刺して騎士王立ちしてるので入るに入れない状況です。
何故か姉さんの隣にいるアリサちゃんが両手に大量の文房具を持ってガハラさんスタイルで仁王立ちしてるのは訳がわからない。
そして、既にこちらをロックオンされてる状態。最早、詰んだ…
打てる手は何一つ残されてないので、正面から堂々と向かうと案の定二人がかりで襲撃して説教を始められた。俺が覚えているのはここまで。
「気付いたら部屋とか……、しかも夜も明けてるし」
既に次の日だった。寝落ちとかそんなレベルじゃない。ザ・ワールド使われた気分。
部屋を見回すと、入口側が俺のスペースのようだ。相方は誰なのか大体予想はついてる。窓際のベッドに向けて足音を殺して近づく。
ほら、早朝だし。お越したら可愛そうじゃん。俺は安眠を妨害されたら、束姉と遊び半分で再現したマクロスキャノンを撃ってる自信がある。
予想通り、簪だった。寝落ちしたような変な体勢で、周りには漫画やラノベが散乱しているしヨダレ垂れてるし、ドン引きです…
アリサちゃんの口癖が移った。仕方ないので見なかったふりをして部屋を出る。
早朝ということもあり、人影はない。食堂すら開いていないので、そのまま外へと出る。
俺の体は現在半分以上が義体状態だ。内蔵は一部を除いて人工臓器に入れ替えて、両手足は完全に入れ替えた。アリサちゃんは俺の生身の部分が少なくなっていくごとに顔を悲痛に歪ませた。
俺個人としてはもういっそのこと全身擬態にしてもいいぐらいだ。束姉とアリサちゃんが協力して作った俺専用の全身義体は船にあるが少々問題があるとのこと。
擬態関係に関しては門外漢なのでよくわからんが、ナノマシン型治療カプセルに入ってるところを見るに自己修復関連と見た。いや、わからんけど。
全身義体になればもう二度と成長はないと言われているがそれに関しては未だに予測の域を出ない。何故なら……
未だに全身義体になった者がいないからだ。アニメや漫画等では最早よくある設定ではあるが、現実にするに至っては問題は山ほどある。
ISの登場によって技術的問題は殆どがクリアされたが、ぶっちゃけ倫理やらが邪魔をする。
どうでもいいことだ。俺にはそれがそんなに重要なこととは思えない。そんなことでこの技術を批判している奴らもどうせ家族や大切な人がその技術でしか助からないとなったら見事な掌クルーテオしてくることだろう。
「"万人に受け入れられる人物がいないように、誰もが受け入れる技術は存在しない。"か…」
束姉がいつだったか言っていた言葉だが、まさにその通り。クローン技術なんかはその一例だ。生命への冒涜とか言うが、人口減少への対策や労働力の確保という側面があるのも事実だ。
まあ、クローンで生まれた者は迫害されるとかそんな展開になりそうだが…
そして、この義体技術も。事故などで手足を失った者に関しての医療行為が建前ではあるが、裏では兵士改造計画なんて噂もあったぐらいだ。というかどこかの国が考えてやがった。軍部の独断ではあったが…
まあ、計画が立ち上がったその日に束姉に頓挫させられたらしいが…
外は明け方ということもあって薄暗く、春先ということで肌寒い。義体にした体は未だに慣れない部分がある。なにせ、未だ研究開発中の技術だからだ。
仮想ディスプレイを複数展開し、リアルタイムで記録をつけていく。準備運動をし、ランニングがてら立ち寄ったIS整備室で
そこそこ使ってるようで何よりだが、フレームに若干の歪みが見られる。無理して動かしてる証拠だ。オーバーホールしてもいいが、今回は矯正に留めておく。
コアの方にアクセスしてみると、ウェルカム状態だった。いらん情報まで見せられた。俺の作ったコアとは全然違うから勝手がわからん。いや、身長体重体脂肪率スリーサイズとかいらんから。あ、あいつ太ったな。
そろそろいい時間なので待機状態にして整備室を後にする。待機状態になったミステリアスレイディがキラリと光った。
寮に戻る途中で楯無と会ったのでミステリアスレイディを(投げて)返しておいた。勿論顔面に当たった。
お礼を言われたのは流石に引いた。こいつドMか…?
寮に戻ると普通に何人か起きていて食堂も開いていた。死肉に群がるハイエナのように俺の周りに寄ってくる(顔も知らない)同級生をデビルバットゴーストのようにすり抜けていく。
部屋に戻ると寝起きの簪がモソモソと着替えていた。貧乳か…
「本音ー、手伝ってー」
寝ぼけて俺を誰かと間違えているようだが、今は黙って従っておく。
キチンと制服を着せて…、パンツ見えた。髪を整えて…、谷間がない。顔を洗って、ナチュラルメイクを施しメガネをかけてやる。
「ありがと、本…音……じゃない…」
「おはようさん」
俺は既に制服なので着替える必要なし。顔を洗って荷物を持って食堂に向かう。
扉を閉めたところで中から悲鳴が聞こえた。にょわっ!?って感じの。
「おはよう、四季」
途中で弾と会い適当に挨拶を交わして食堂に向かう。弾の同室はダブ子か。なんでこいつは弾の背中に張り付いてるんだ?
「蝉の幼虫だよ~」
心を読むな。そして、そんな黄色い電気鼠のような蝉はこの世に存在しない。
「グンマー産なんだよ~」
グンマー産なら仕方ないな。
「という感じなんだ、助けてくれ四季」
「それなら鼻の下を伸ばしてんじゃねえよ」
昨日弾がダブ子と部屋でどんなことをしていたのかは知らないが未だに童貞であるのは確実なので、問題はなかったんだろう。
ただ、懐かれただけのようにも見えるがハニトラ……の可能性はないな。一応弾に其処ら辺の注意はしてるし大丈夫だろう。
されたらされたで更識家の管理下に置かれるだろうが悪いようにはならないだろう。現当主があのヘタレだし…
食堂につき朝食を食べ、教室に向かう。それだけのために1時間近くかかったのは言うまでもなくハイエナの存在だろう。
決闘が決定した翌日の授業の合間に、一夏の専用機の話が出たのがそもそもの原因だった。
倉持技研。俺や弾にとっても因縁の研究所であり、日本のIS研究のお膝元とも言える場所が、現在の仕事を放り出した。
正確には束姉から送られてきた一夏の専用機の方に集中しだして、現在進行中だった日本の代表候補生の専用機を放り出したのだ。日本の代表候補生である簪は開発途中だった『打鉄弐式』を自分で開発させようとしている。
らしい、というのが先ほどヌルから送られてきた報告だった。もう
教室では一夏の専用機の話で浮ついている。だが、弾の話はない。つまりはそういうことだ。
「あれ、でも弾はどうなるんですか……織斑先生」
姉呼びしそうになって少し吃ったが、きちんと先生呼びすることに成功した一夏が姉さんに聞くがその表情は冷徹そのもの。姉さん個人としては弾にも専用機を渡しておきたいんだろうがコアの数が限られてる現在、そう簡単にことが運ぶわけでもない。
「五反田のはない」
「ですよねー」
姉さんの発言に誰よりも早く反応したのは弾自身だ。
学力では中の下に分類されているが頭の回転自体は早いし、決断力もある。コアの数は世間に公開されているし、IS自体が小国の国家予算に匹敵するほどの値段がすることも知っている弾としてはそこまで期待はしていなかったのだろう。
だからこれは、俺からの祝福でありIS学園にまで付き合わせてしまった贖罪だ。いや、巻き込んだのは一夏だな。
「弾の専用機なら俺が今作ってる」
そして予想通りに騒がしくなる教室。遠巻きに覗いている野次馬たちから直ぐに全生徒に伝播するだろう。
姉さんもあまりに騒々しさに頭を抑えている。俺のせいじゃないです。
弾が珍しく目を見開いている。本当に珍しいことだ。
「いいのか?」
「いらないのか?」
弾が聞き、俺が返す。そして、いつもの表情で、
「頼むわ」
任された。言葉にはせずに開発を急がせる。作ってるのは船だから、ヌル達も少し忙しくなるな。