僕のヒーローアカデミア ─とある男の物語─(仮) 作:楽園の主
東方の小説書いてたらこんなに時間が経ってました。
緑谷は思考する。
地雷は踏みつけると信管が作動するタイプで、威力は少し吹き飛ぶくらい。
しかし体勢を崩せば連鎖的に爆発して大幅なタイムロスになる可能性がある。
ダメージと体力面を鑑みれば、速度を失ってでも地雷を避けるのがベター。
跳躍系の"個性"持ちの人たちも迂闊には跳べない。
そして先頭ほど避ける地雷は多い。さらに妨害も盛んでスピードは出せない。
(目を凝らせ…!!)
何か打開する策はないか。彼は思考をフル回転させながら周囲を見渡す。
ふと、地雷に目がいく。それでひとつ、思いついた。
「よし!」
─ザクッ─
手にしている仮想敵の装甲を地に突き立てる。
地雷を掘り起こそうとしているのだ。
前方の人達が避けていく場所。入口付近には地雷が多い。
何故ならば警戒意識が1番高いからだ。
対人地雷は深くても15cmくらい。すぐに掘り返せた。
いくつかを集め、そして。
(借りるぞ…かっちゃん!!)
緑谷は仮想敵の装甲を体の下に敷くように持ちながら跳ぶ。
そして、いくつか集めた地雷へ落下。
瞬間。
(大─爆速ターボ!!)
大爆発が起きた。爆炎を上げながら周囲に爆風を撒き散らす。
皆、それに注目して足が止まる。
爆発に乗じ、緑谷は空を舞う。驚くべき速度で飛行していた。
爆風で吹き飛ばされる推進力を利用して飛んでいるのだ。
そして仮想敵の装甲でダメージを回避。さらに飛行することで先の地雷を無視。
緑谷、渾身の策だった。
「A組緑谷!爆発で猛追!っつーか…抜いたぁぁぁああーっ!!!」
そのまま、1位争いをしていた轟と爆豪を抜いた。
「デクぁ!!俺の前を行くんじゃねぇ!!!」
爆豪は轟を妨害していたが、それをやめて緑谷を追い抜くため、爆発で低空飛行をしながら彼を追いかける。
彼にとって、緑谷はどうしても負けたくない、というよりは負ける訳には行かない相手なのだろうか。
(後続に道作っちまうが…後ろを気にしてる場合じゃねぇな)
轟も同じく、爆豪の妨害をやめて地面を凍らせ、地雷を無効化して道を作って緑谷を追う。
共通の敵が現れれば争いを辞める。まさにそれだった。
緑谷は爆風で猛追したが、それも一瞬。
既に失速していた。しかも、着地のことは考えていなかった。このままだとすぐに抜かれてしまう。
着地のタイムロスを考えればここで抜かれてしまえば追い越しは不可能に近い。
(くっそ!ダメだ!放すな!この2人の前に出られた最高のチャンス!掴んで離しちゃダメだ!!)
さらに思考をフル回転させる緑谷。打開策は、一つしかなかった。
(追い越し無理なら…抜かれちゃダメだ!!!)
緑谷は仮想敵の装甲に着いていたコードを掴む。
そして、空中で前転するように回転。そして、仮想敵の装甲を地面に叩きつけた。
カチカチカチ、と地面から音が鳴る。
─ボォォォン─
再び地雷が炸裂する。爆豪と轟を爆風で巻き込んで妨害しながら自身は爆風によって前方へ。
その勢いで、地雷原を突破した。
爆豪と轟は体勢を崩してしまったことにより、ほかの地雷も誘爆。
その隙に、緑谷は進む。
「さァさァ序盤からこの展開を誰が予想出来た!?今1番にスタジアムへ帰ってきたその男──…」
スタジアムの観客はモニターから目を離し、スタジアムの門へと目を向ける。
一人の男が、現れた。
「緑谷出久の存在を!!!」
瞬間、強烈な歓声がスタジアムを覆う。
1位になれた。そんな喜びを口にする前に、緑谷は観客席の中でも、特別な人達が座るVIP席。そこを見渡し、オールマイトを探す。
そして彼を見つけ、目が合った。
「…!」
泣きそうになりながらもぐっ、とガッツポーズをして見せた。
それを見ていたオールマイトは、考える。
緑谷の芯であろう「"人を救ける"ヒーロー」。
この体育祭は露骨にそこに相反する"他を蹴落として"競う場。
人気商売の面が大きい現代ヒーロー。
"他人より上に"という貪欲さは緑谷だからこその弱点だと考えていた。
しかし。
(超杞憂だったな!ごめんな!泣き虫は早く治した方がいいけどな!)
歓声以外の声が1部から上がっていた。
「どう思う?」
「とりあえず緑谷の株価急上昇だね」
「けど現状"個性"を見せてないとなると先が読めないな」
話し合うのは数人の生徒。経営科だ。
「事務所経営を請け負ったと仮定して彼をどう売り出していくか、意見を交えたいのだけど、どうかな」
「見た目じゃまず無理だね。ほかのみなと違って特徴性が低い。」
「実力面や彼なりのアーティスティックな面があればそこを売りだすのだけど材料が揃わないことには…」
雄英高校経営科。基本的に体育祭に参加するメリットはない。
故に売り子や経営戦略等のシミュレーションなどで勘を培う場としている。
言ってしまえば、暇なのである。
それは余談とし、ところは変わってスタジアム。
続々と生徒達が戻ってくる。
「ハァ…クソッ…クソが!…またッ…!!」
爆豪は、3位だった。また、というのは恐らく、戦闘訓練に引き続き、緑谷に負けたことだろうか。
悔しそうに、怒りを感じながらそう呟いていた。
その中の2人、麗日と飯田はゴールした後、緑谷の所へと向かっていた。
「デクくん…!すごいね!」
息を切らせながらの麗日。
「くっ!この"個性"を持ってしても遅れをとってしまうとは…やはりまだまだだ、僕は…!」
どんよりとしながら、飯田。
「麗日さん、飯田くん!」
「1位すごいね!悔しいよちくしょー!」
「い、いやぁ…(ち、近い…)」
褒められる中、緑谷は分かっていた。
自分が1位を勝ち取れたのは運が良かっただけだ、と。
使えそうだと思ったものが、たまたま上手いこと使えただけ。
すごいのは実力ではなく緑谷自身の運。ラッキーパンチだった。
本当に実力を試されるのは、ここからだ、と。
「くっ、こんなはずじゃ…!」
そう言いつつスタジアムの門から現れたのは八百万百。
息を切らせながら、比較的ゆっくりと走っていた。
「一石二鳥よ!オイラ天才!!」
「サイッテーですわ!」
峰田の声が八百万の背中から放たれる。
峰田の"個性"で八百万の背中にくっついていたのだ。
さらに、グラウンドの門の中央、刀を片手に、峰を肩に乗せつつ悠々と歩いて門を潜る者がいた。
「香月くん?」
緑谷がそう呟く。近かったからか、緑谷の存在に気付き、そちらへと近づいていく。途中で、刀を納刀した後、それを消して。
「1位だったみたいだな。さすがだ、おめでとう。やはり君からはなにか、強烈な何かを感じるよ」
息切れすることなく、疲れた様子も特になく。緑谷に気づくや否や賞賛する彼。
(未だに香月くんの"個性"が全く予測できない…どういう"個性"なんだろう…?)
そんなことを香月を見ながら考えていた。
体力測定や戦闘訓練の時と先程にみた武器出し、USJで見せた肉体強化。それでありながらレーザーを放ったり、衝撃波を出したり。
やれることが多すぎて、どう言った"個性"か、理解できない。
しかし"個性"である限りはなんらかの傾向はあるはずだと考えてみるが、それらを一つにまとめるには傾向がなさすぎた。
「どうした、緑谷?」
途中からブツブツと言葉に出ていたようで、香月が不思議そうに話しかける。
「はっ!ご、ごめん!つい、癖で…!」
「はは、いいさ。そうだ、麗日も速かったな」
「ありがとー!でも玲ちゃんも凄かったよ!ロボインフェルノのとこ!」
そんな会話をしている間も生徒達は帰ってくる。
そして、全員が帰ってきた頃、結果が表示される。
1位緑谷 出久 2位轟 焦凍 3位爆豪 勝己
4位塩崎 茨 5位骨抜 柔造 6位飯田 天哉
7常闇 踏陰 8瀬呂 範太 9切島 鋭児郎 10鉄哲 徹鐵
11尾白 猿尾 12泡瀬 洋雪 13蛙吹 梅雨 14 障子 目蔵
15砂藤 力道 16麗日お茶子 17八百万 百 18峰田 実
19芦戸 三奈 20口田 甲司 21耳郎 響香 22回原 旋
23円場 硬成 24香月 玲 25上鳴 電気 26凡戸 固次郎
27柳 レイ子 28心操 人使 29拳藤 一佳 30宍田 獣郎太
31黒色 支配 32小大 唯 33鱗 飛龍 34庄田 二連撃
35小森 希乃子 36鎌切 尖 37物間 寧人 38角取 ポニー
39葉隠 透 40取陰 切奈 41発目 明 42吹出 漫我
それ以下の順位は表示されず、結果発表は終わった。予選通過は上位42位。
しかしそんな者達にも他に競技は残されており、見せ所は用意してあるから安心しろと先生は言う。
そして次からいよいよ本戦。ここからさらに取材陣も白熱してくる。
「さぁキバリなさい!第2種目は…これよ!!!」
生徒達の目の前のモニターの表示。
"騎馬戦"だった。
「騎馬戦…」
「騎馬戦?」
「個人競技じゃないけどどうするのかしら」
ざわざわと疑問の声が上がる。
この騎馬戦は2〜4人のチームを自由に組んで騎馬を作る。
基本は普通の騎馬戦と同じだが、違う点は先程の結果によってポイントが配分されること。
つまり組み合わせによってポイントも違ってくることになる。
入試の時のようなポイント稼ぎ方式だ。
制限時間は15分。個人に割り当てられた総合ポイントが騎馬のポイントとなる。
騎手はそのポイントに表示されたハチマキを装着。
終了までハチマキを奪い合って保持ポイントを競う。
取ったハチマキは首から上に巻かなければならず、取れば取るほど管理が大切になる。
そして重要な点はハチマキを取られても、騎馬が崩れても失格にはならない点。
つまり、10数組が常にフィールドに存在することになる。
しかしそこはやはり騎馬戦。崩し目的の攻撃はレッドカードとなる。
そして重要な、ポイント。
42位が5P、41位が10Pと言った具合に5Pずつ増えていく方式。
そして1つ、ポイントについても例外がある。
1位に与えられるポイント。それは。
「第1位緑谷出久!持ち点1000万P!!」
その瞬間、皆の目が緑谷に集中する。
上位ほど狙われる下克上サバイバル。その頂点。
その時、緑谷は思い出していた。
─無個性のお前が何を出来んだ!?─
中学の頃、爆豪達に言われ、向けられた目。今はそれとは、違った周りの目。
ラッキーで立ったような刹那的なトップの差。
(それでも…こんなに重いのか!!トップって!!)
それに、NO.1ヒーロー、オールマイトの立ち位置を想起させていた。
「それじゃあこれより15分!チーム決めの交渉タイムスタートよ!」
ところ変わって、スタジアム警備のヒーロー達の控え室。
そこでモニターを見ていたヒーロー達は呟く。
「この雄英体育祭…ヒーローとしての気構え云々ってよりはヒーロー社会に出てからの生存競争をシュミレーションをしてるな」
ヒーロー事務所がひしめく中で生き残るには他を蹴落としてでも活躍見せなければならないというのがヒーロー。
この障害物競走による予選も、意味を同じくとしていた。
一方で、商売敵と言えど協力していかなければならない時もある。
次の騎馬戦はそれである。
自分の勝利が仲間の勝利。
相性や他人の"個性"の把握など、持ちつ持たれつ。
サイドキックとの連携、他事務所との合同"個性"訓練。
「プロになれば当たり前のことを…子どもが今からやってんだなー…」
「大変ですよねー」
ところを戻してスタジアム。既にチーム決めは始まっていた。
皆、同じクラスで騎馬を組もうとする。
味方の"個性"が少しでも理解出来ていた方が連携が取りやすいからだ。
A組の中で人気なのは轟と爆豪。
轟はともかく、爆豪も性格に難があるとはいえ成績はいいからだ。
皆組もうと2人に集まる。轟は以前から考えていたのか即決。
爆豪は言い寄られていた人の中から自分の思う人間を3人選んだ。
1番避けられているのは、もちろん、緑谷。
1000万を抱えて逃げ切るより、終盤で1000万を奪い取る方が安定するからだ。
(轟くんとかっちゃんと違って"個性"もちゃんと見せてないから信用もない…!何とかしないと…!)
そんな緑谷に、一人の人が寄る。
「デクくん!」
そんな声にはっと振り向く緑谷。
「組も…わっ」
「麗日さん!?!?」
splashと言わんばかりに涙を撒き散らす緑谷。まるで横方向に流れる滝のようである。
緑谷の持ち点は1000万。狙われることは必至である。
しかしそれを見越した上で組むことを選択した。
もし緑谷が敵になったとして、逃げられれば緑谷の勝利は確定するからだ。
そして何より。
「仲いい人たちと組んだ方が、いい!」
ニパ、と笑いながら麗日はそう言う。
「…!!」
─キュン!─
「どうしたのデクくん不細工だよ!?」
「いや、直視出来ないくらいうららかで…」
とはいえ緑谷としても最初から麗日にはチームを要請するつもりでいた。
何故ならばチームを組むならば意思疎通がスムーズに出来た方がいいからだ。
そしてさらに、作戦も考えていた。それにはもう一人必要な人がいる。
「飯田くん!」
「ん?」
飯田である。
作戦はこうだ。飯田を先頭に緑谷、麗日で馬を作る。
そして麗日の"個性"で緑谷と飯田を軽くしてしまえば機動性はかなり上がる。
それで逃げ切る、というものだ。
騎手にはフィジカルの高い者が望ましいが緑谷にはまだ決めかねている。
しかし今の彼には逃げ切りを可能にする策はそれくらいしかなかった。
「流石だ、緑谷くん」
飯田は素直に賞賛した。
チーム決めが始まって数分。僅かな時間で作戦を立てられたことに。
しかし。
「だがすまない。断る」
彼は思っていた。緑谷には入試の時から負けてばかりだ、と。
「素晴らしい友人だが、だからこそ…君について行くだけでは、未熟者のままだ。」
緑谷をライバルとして見ているのは轟や爆豪だけではなかった。
「僕は君に挑戦する!」
もう始まっているのだ。全員、敵。
緑谷はトップなのだ。友達ごっこではいられない。
次は誰を、と考えている中、一人の者が背後から近づく。
「フフフフ…やはりいいですね目立ちますもん!」
ガチャガチャとした足音を立てながらゆら、と現れる人影。
「私と組みましょう1位の人!!」
「わぁあ近!!誰!?」
サポート科の発目 明。先程の障害物競走第2関門ザ・フォールで企業を意識した動きを繰り広げた女子である。
「あなたのことは知りませんが立場を利用させてください!」
明け透けと発言する。その後も怒涛の勢いで言葉が放たれた。
「貴方と組むと必然的に注目度がNO.1となるじゃないですか!?そうなると必然的に私のドッ可愛いベイビー達がですね大企業の目に止まるわけですよそれってつまり大企業の目に私のドッ可愛いベイビー達が入るってわけなんですよ」
ペラペラペラペラと。
矢継ぎ早に出てくる言葉の雨に麗日は理解が追いついていなかった。
「ちょちょちょ、ちょっと待って…ベイビーが大企業?なにを…?」
「それでですね、あなた方にもメリットはあると思うんですよ。」
それをスルーして発目は緑谷に話しかけ続けた。
(あ、私に興味無い)
発目の主張はこうだ。
サポート科はヒーローの"個性"に合わせて役立つアイテムを開発する。
発目は大量のアイテムを開発していて、きっと緑谷に合ったアイテムを渡せると。
サポート科と同じチームになればチームの人間がどの学科であってもアイテムの使用が許される。
もちろん、そのサポート科の人間が開発したものに限るが。
その主張の後、今持ってるアイテムを説明を始める。
「これなんかお気に入りでして!とあるヒーローのバックパックを参考に独自の解釈を加えたもので…」
「それひょっとしてバスターヒーロー"エアジェット"!?」
それから"個性"の話、ほかのアイテムの話などで盛り上がっていた。
(即ィ気あっとる)
麗日はそんなことを黙りながら考えていた。
しかし緑谷とて話ばかりしている場合ではないことは承知している。
「あと一人…!」
残りの1人のチームメイトを探さねばならない。
緑谷本人的には飯田と組めなかったのはかなり大きな痛打。
しかし、発目のサポートアイテムがあるならまだほかの手で補える。
そして、緑谷のチームに足りない力。それを補える可能性があるのは。
「君だ!」
そこにいた誰かに、緑谷は話しかけた。
それと同じ時、違う場所で。
「俺はお前と組みたい」
香月は、一人の男に話しかけた。
「利害の一致だ。悪いようにはしないが?」
その男は、少し話をした後、頷いて彼とチームを組むことになった。
──────
「15分経ったわ。それじゃあいよいよ始めるわよ!」
皆、スタート地点へ立ちながら騎馬を組む。
それぞれの思いを胸にしながら。
B組の、ある男はこう呟いた。
「ここにいる人は皆、A組ばかり注目してる…なんでだ?」
彼のクラスメイト、鉄哲は言った。A組は調子付いてると。
それはその通りだと彼は考えた。そして、それがおかしいとも。
なぜ、A組ばかりが注目される。学科は同じなのに。
何が違うか?それは敵と会敵しただけ。
「…なぜB組が予選で中下位に甘んじたか…調子付いてるA組に知らしめてやろう」
皆の知らぬところで、静かな思いが光った。
「さァ上げてけ関の声!!血で血を洗う雄英の合戦が今!!狼煙を上げる!!」
その放送とともに、皆の気持ちは引き締まる。
「みんな、よろしく!」
「ああ」
緑谷チームの騎手は緑谷、騎馬は麗日と発目に加え、前に常闇がいた。
新たな作戦と共に彼を誘い、この布陣で勝利を狙うようだ。
そして、香月は。
「よろしく、心操人使」
「…ああ」
心操人使とは以前、A組の教室まで来て宣戦布告をしてきた普通科の男だ。
香月は何を思ってか、彼とチームを組んだ。2人は戦いを前に不敵な笑みを浮かべている。
尾白とB組の庄田二連撃。その2人がチームにいた。2人は虚ろな目をしていたが。
決戦の火蓋は今切って落とされた。
また気が向いたら帰ってきますね。